枠なしファイルはここをクリック
「地雷生存者サミット宣言」
・説明
地雷生存者サミット宣言
・写真 1
・写真 2

説明

「地雷生存者サミット宣言」は、ICBLの地雷犠牲者支援作業部会が起草し、20041128日、ナイロビ・サミット開会式の日の午前中に、29ヶ国の45人の地雷生存者(註1)が、トウン・チャンナレットICBL国際大使、ソン・コサルICBLユース大使、ペトリッシュ オタワ条約検討会議議長、各国政府代表6名の他約200名の臨席の下に審議をして採択し、地雷生存者全員が署名したものである。「地雷生存者サミット宣言」は123日のナイロビ・サミットの開会式の席上、「ユース・サミット宣言」と共にペトリッシュ議長に手交された。  続いて、同議長は110ヶ国の締約国代表(註2)が署名した「ナイロビ宣言」をトウン・チャンナレット、ソン・コサルの2名のICBL国際大使に手渡した。このことにより、一般市民社会は、各締約国政府が責任を持ってナイロビ宣言に答える行動をとるよう、求め続けることが出来る。

地雷生存者サミット宣言

ナイロビ、20041128

(a)      地雷被害を受けて生き残った生存者が集まる「地雷生存者サミット」、及びオタワ条約(正式名称:対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約)締約国がマイン・フリー・ワールドを目指して参集する「ナイロビ・サミット」が、世界で最も地雷汚染の激しいアフリカ大陸で開催されるという、意義の深さを認識し;
(b)      対人地雷の生産、保有、使用を続けることが、全人類に対し、より直接的には、これらの兵器により死亡し、あるいは深い傷に苦しみ続けている人々、その家族、コミュニティ、またその存在により日々の生活を脅かされてる人々に対し、由々しき事態をもたらしていることに深刻な関心を表明し;
(c) 〜(d)を省略
(e) 犠牲者支援の実施に大きい効果を得るためには、政策を立て計画を作るための討議、政策決定の段階から地雷生存者が積極的に参加する機会(参加の原則)を持たねばならないことを認識し、

   (f)を省略

g)条約の効果として、一部の国で年間の犠牲者数は減少したというプラスの効果はあるものの、犠牲者の総数は増加しつつあるというマイナスの事実を認識し;

i)マイン・フリー・ワールドに向けた「ナイロビ・サミット」及び条約の核である人道的な責務を果たすための行動の経路を描き、地雷生存者のための長期的支援を可能にする継続的な支援の実行を約束したその「20052009年の行動計画」の決定的な重要性を認識し、
h)、(j)を省略)

地雷生存者はオタワ条約締約国に対し以下を要求する。

(1)      地雷生存者に対する支援を、国としての保健・リハビリテーション政策、および開発の計画に組み入れること;

(2)      地雷生存者が、社会のすべての人々と同様に扱われ、市民権及び政治的・経済的・社会的・文化的な権利に関して、障害を理由に差別を受けないよう保護されることを認めることが、適切な犠牲者支援に必要な条件であると認識すること;
(3)      生活の糧を得る機会へのアクセス、社会の一員として受け入れられることなど地雷生存者の希望をかなえることを目標とする、社会・経済的復帰のための政策、計画、プログラムこそが生存者にとって最も重要であることを確認すること;

(4)      障害を持つ人の権利を守り、推進するための、地域的、国家的、国際的な法律、政策の進展、実施を優先すること;

(5)      地雷生存者に対し、彼らに関連する政策の策定、立法等、国家行動計画の設計、開発、実施に積極的に参加する機会を与えることを保証すること。このことは、「参加の原則」に基づき、地雷生存者には地雷生存者に関する知識と専門性があることを認識した上で、地雷生存者とのパートナーシップに基づいて行われること;

(6)      オタワ条約の未参加国に参加を勧誘する際や、条約の実施に際して、公式、非公式を問わず、国内、地域間、国際間の会合に地雷生存者を参加させ、すべてのレベルで地雷生存者が参加する機会を与えること;

(7)      犠牲者支援計画および資金計画を作成する担当者の必要に応えるため、また、地雷生存者が地雷問題に関する情報、統計データ入手の道を持つよう、国内の地雷犠牲者に関するデータの収集能力を発展させ、強化すること;

(8)      すべての締約国が犠牲者支援に対して人道的、技術的、そして/或いは 財政的に貢献していることを確かめること。さらに、新しい地雷の事故を予防するため、条約の実施状況をモニターすること; そして

(9)      すべての締約国の報告提出義務の中に、犠牲者支援に関する対策とニーズに対する行動を報告する義務を含めること。犠牲者支援の約束を履行しなかった国には実行を求め、実行しない国はその国名を公表すること。

地雷生存者は次のことを約束する。

. 締約国が条約の普遍化、実施のために行う努力に対し、犠牲者支援のみならず、条約上のすべての分野でこれを支持し、市民社会のすべての努力に可能な限り参画をする;

.国家行動計画の準備、立法、政策、規則の制定に参画し、締約国が行動計画の中に地雷生存者に関する事項を入れるよう協力をする;
.引き続き、締約国の会合、常設委員会、その他の会合に、地雷生存者に関する事項を持ち込む;
.締約国の条約の履行の進展状況を監視するために、ランドマイン・モニター報告書、常設委員会、および国内、地方の地雷対策と障害者対策の協調メカニズムの調整などに参加をする;

.条約の内容を犠牲者支援コミュニティイに周知し、地雷生存者は障害者コミュニティの一員であるから、国連で作成の過程にある「障害者権利条約」は地雷生存者のためのものである、として地雷生存者も条約作成に参加することをうながす;

  6.対人地雷を世界から取り除くための戦いを決して放棄しない;
  7.地雷生存者を支援するという世界の約束を決して忘れない; そして

  8.地雷生存者の権利を国内および国際間で促進するために、さらに積極的な唱導を行う。
                                                               以上

JCBL 北川泰弘訳, 長有紀枝, JANNET(障害分野NGO連絡会)上野悦子校正)

(註1) mine victimmine survivorについて

ICBL(地雷禁止国際キャンペーン)は、mine victimを地雷に被災した死者、負傷者、その家族、それを囲むコミュニティイと定義し、mine survivorを地雷で負傷した本人と定義している。ここでは、mine victimを地雷犠牲者、mine survivorを地雷生存者と訳した。

(註220041128日の開会式の参加締約国は108ヶ国であったが、2004628日に批准したパプア・ニューギニアにとっては121日が6ヶ月目で締約国の資格となり、1129日に批准したエチオピアは締約国なみに扱われて、参加締約国は110ヶ国とされた。

写真 1 ナイロビ地雷生存者サミット 20041128

国際会議の場で自分の立場を主張する訓練を受けた、29ヶ国の45人の地雷生存者が、締約国会議に出席の各国政府代表のほか200名の臨席のもと「生存者サミット宣言」を審議し、採択した。

(写真:長 有紀枝)
写真2 ICBL地雷国際大使(カンボジアの地雷生存者代表)

ソン・コサルさん(片足切断)とトウン・チャンナレット氏(レットさん)(両足切断)
右端は、シスター・デニーズ・コグラン(イエズス会、地雷廃絶カンボジア・キャンペーン代表)、地雷生存者が直接に地雷廃絶を訴えるインパクトは大きい。シスター・デニーズは1990年代の初めに地雷に被災して苦しむレット、コサル両名を立ち直らせ、英語を教え、プロのキャンペナーとして育てあげた。二人は地雷生存者
、ICBLを代表して、国際会議のみならず、ローマ法王、クリントン大統領等の各国首脳から小学生に至るまで広く世界の人々に地雷の廃絶、地雷犠牲者支援を訴え続けている。

(写真:長 有紀枝)

HOME