はがき通信ホームページへもどる No.96 2005.11.25.
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 読書メモ(9) 

C5受傷18年、56歳男性


 『文芸年鑑』『出版年鑑』を阿佐ヶ谷図書館で借り、マウススティックでパラパラめくる。何万円もする。昔のものより厚くなっていた。特に『出版年鑑』は2分冊に。それだけに出版に関する統計なら何でも載っている。各社社長の年収まである。早川浩は5000万。きのうテレビで見た幻冬舎の見城社長は1億だった。
 『文芸年鑑』は、ある著者の連絡先が知りたくて見たのだが載ってなかった。掲載されているのは文芸家協会の会員だけのよう。著作権継承者まで載っているところが、さすが文芸家協会の出版物。
 共にもし自分が企画編集をするとしたら、どの出版社に、あるいはどの著者に話を持ち込むかということを調べるための資料になるだろう。
 *
 夢想中の「月刊マンウォッチング」の資料として日高敏隆・竹内久美子の『もっとウソを!』『浮気人類進化論』(ともに文春文庫)を買い、図書館でデズモンド・モリスの『セックスウォッチング』(小学館)『裸の眼』『赤ん坊はなぜかわいい?』を借りる。
 『裸の眼』(The Naked eye、別宮貞徳訳、東洋書林)は、モリスが著作やテレビ取材のために訪れた世界各地での見聞エッセー。イギリス文学の伝統を汲む大人むけ読み物。手がたくおちついてはいるが、いささか退屈。翻訳はこなれていて読みやすい。さすがに『誤訳・名訳・欠陥翻訳』を書いたひとの手になるものだけある。それでも全部読む気にはなれないのは、編集に問題があるのかもしれない。
 『赤ん坊はなぜかわいい?』(Babywatching、幸田敦子訳、河出書房新社)翻訳書を読むときは原題をチェックしないといけない。翻訳タイトルは商売優先になっている。本書の内容もまさに「ベビーウォッチング」のほうがふさわしい。赤ん坊に関する親の疑問に答える形式。
 静かな薄暗い部屋で母親もリラックスした状態で出産すれば、新生児はさほど泣かないという話には驚いた。オレは泣かないので逆さにして尻をパシパシ叩かれた。へその緒がクビに巻きついて仮死状態で生まれてきたからだと聞かされていたが、はたしてそうだろうか。疑わしい。またへその緒も出産後しばらくは胎盤から血液を送っているのであまり早々と切らないほうがいいとか。生まれたら母親の腹にのせたり胸にのせたりすると親子の絆が強まるとのこと。胎児は出産前から目も見えれば耳も聞こえているそうだ。それを前提につきあわなければいけない。
 本造りも全体に優しい。ページの開きがいいところを見るとだいぶ読まれているようだ。
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 『17歳のバタフライナイフ』(宮崎学・別役実対談集、三一書房労働組合発行、青林工藝社発売)やくざの息子と元労働組合書記長が、ロックアウトを食らって困窮している組合員の資金稼ぎに協力。朝日新聞の「論座」に4年間にわたって掲載した犯罪時評。宮崎がリード。神戸の酒鬼薔薇事件、和歌山の毒入りカレー事件、東京のオウム事件など。若者の鬱屈を吸収する装置としての学生運動は80年代に消え、労働運動は90年代に消えた。それがわけのわからない犯罪をふやしたという意見には一理ある。いまは中産階級が犯罪の生産層。
 日本は戦後、ぬくぬくとした平和な世の中づくりに励みそれを実現した。理想郷にも人間は耐えられないのだ。

 『もっとウソを!』(日高敏隆・竹内久美子対談、文春文庫)やっぱり動物行動学はおもしろい。社会生物学を学んだおかげで竹内は救われたという。この世に生まれてきたからには何事かをなしとげなければならぬという強迫観念にさいなまれていたのが、ただ遺伝子がコピーをふやしたがっているだけなのだという論理に救われた。
 科学はもののひとつの見方であり、けして真理ではない。その時代に到達した説得力だ。あとになってもっと説得力のある理論が出てくれば前説は覆される、ウソになる、という日高の自説がタイトルの由来。ノーベル賞受賞理論がのちに誤りだったとわかることも。
 ひとは遺伝子のプログラムによって成長する。子供が二十歳くらいになるとこちらの繁殖能力は落ちてくるから《若くてきれいな娘が、四十、五十のおじさんを好きになったりすることが起きないように、こちらのほうは老けさせる。》という見方はオレと同じ思想。日高先生もつらく悲しい思いをしたのだろうと察する。

編集部員:藤川 景



 とろうのおの集 


サーカスとパンを与えられ滅ぶのはごめんこうむる蟷螂(とうろう)の斧(おの)
 わからないことがあるから生きてゆくさるすべりの花こぼれる下を
 ふがいなく精霊トンボも腹はへり稲田すれすれぎらついている
 涼やかの浴衣姿をキャミソール席巻してしまいそうな夏まつり
 さりながら解消すべきストレスがあるとも思えないあなたたち
 二尺玉向きを変えれば大砲となるすれすれの夏祭りころ
 戦争に賛成という人間は一人もいないのに起こりつづける
 ヒロシマの徒労のような祈念のためここまで使われずにすんでいる
 カーテンの襞に閉じ込められているおはぐろトンボほどの雄叫び
 医院まで薬もらいに炎天へ電動車いすから発火しそう
 どの家にも表に出せぬごたごたの一つや二つドクダミの花
 となり家の娘もブラジャーを干すようになって郵政民営化案
 NНKラジオ子ども電話科学相談くらいでちょうどいい
 合唱コンクールにときめかないのはタモリと私だけだろうか
 心臓を腑分け(ふわけ)したならずたずたにナイフの痕(あと)が認められよう
 猫でさえ家出してゆく朝焼けに電動車いすパンクする
 選挙って見世物じゃないだがしかしそうなのかもしれぬありさま
 新しい歴史教科書採択は〇・四パーセントが物語るもの
 内観などことさららしく言わずともあなたに映し出されている私
 朝起きてきょうは一日何をして過ごそうか途方に暮れていた
 台風の目に入りこみ裏山のツクツクホウシも鳴きだしている

佐賀県:中島 虎彦 E-mail: henomohe@po.ktknet.ne.jp
 「障害者の文学」 http://www.ktknet.ne.jp/henomohe/ 



 ひとくちインフォメーション 


 【教えたいことコーナー】

 ★ スカイプ(skype)へ再びチャレンジ
身障者は、情報のソースを外部に向けて常に開けておく必要があります。
 ①インターネットでスカイプと入力してダウンロードしますが、ダウンロード中はウイルスバスターやノートンなどをオフにしておくのがコツです。
 ②マイクを千円くらいで買ってきてパソコンに取り付ければOKです。
 ③何時間でも無料で、しかも5人同時に話せます。
 ④英語の練習に外国人と話しましょう。
 そのうちに「はがき通信」スカイプクラブを作りましょう。
 
 ★ 迷惑メール排除のチャンピオン「Mozilla Thunderbird(フリーソフト)」
 朝、メールを受信すると34通のダウンロード。ところが、33通は迷惑メールでがっかり。こんな時、33通を自動的に削除してくれる強い味方がこれだ。
 
 ★ インターネット・バンキングのすすめ
 銀行に電話でインターネット・バンキングの申込用紙を送ってもらい、必要事項を書き込んで郵便にて返送。パソコンでお金の出し入れの始まりだ。身障者はヘルパーに金銭のことまで頼みにくい。今夏のように暑ければなおさらだ。郵便局のバンキングも同様。入金、出金や現在の残高照合など、自分でやろう。

 ★ 肩こりの解消法
 仰向けに寝て、肩の下に子ども用枕や硬く丸めたタオル等を入れて頭を後ろに反らすような状態で20分。同様に腰にも20分間くらいやると腰痛解消にもなります。健常者はビール瓶等でもOKです。

 (以上、情報提供:編集顧問・向坊さん)



 ★ 便利な相談先「中毒情報相談室」
 TEL: 045−262−4199(神奈川県医師会)
24時間対応、年中無休。とても親切にその場で有効な情報をいただけます。

 ★ 足のむくみに
 ふくらはぎのモミモミマッサージが効果的だと鍼灸師から聞いて実践中です。

★ 膀胱瘻(ぼうこうろう)にしている方へ…「ストマ用装具」の助成制度を受けていますか?
ご存じだと思いますが、膀胱瘻(ぼうこうろう)にしていると補装具の「ストマ用装具」の助成制度が利用でき、蓄尿袋などが支給されます。そのためには、障害者手帳に「膀胱障害(膀胱瘻による)」の記述がないとダメですので、手帳の再交付の申請をすることになります。

 (以上、情報提供:編集委員・瀬出井 弘美)



 ★ 災害用伝言ダイヤル「171」
 「災害用伝言ダイヤル」は、地震や火山の噴火、豪雨等による災害が発生し、被災地等への安否確認等の電話が殺到して電話がかかりにくい状態(ふくそう状態)になった場合でも、自宅の電話番号等をキーにして安否確認等の伝言を録音時間内(30秒)で蓄積装置に預かり、伝言の録音および再生により被災地内の家族や親類、知人等と連絡を可能にするNTTの無料ボイスメールサービスです。なお、通話料金はかかります。
 「忘れてイナイ“171”? 災害伝言171」などと覚えて下さい。
1.災害用伝言ダイヤルの基本的操作方法
 「171」をダイヤルし、利用ガイダンスに従って伝言の録音、再生を行って下さい。
2.利用にあたっての留意点
 ① あらかじめ家族や知人等との間で、登録の際の「キーとする電話番号(自宅電話番号等)」を決めておく。
 ② 録音された伝言は、登録した電話番号(「キーとする電話番号」)に自動的にお知らせするものではなく、伝言の受信側が“再生”することにより情報を取り出すことが可能です。

 [問い合わせ先]局番なしの「116」
  http://www.ntt-east.co.jp/voiceml/


 ★ 携帯電話「ボーダフォン」、「ツーカー」無料番号案内サービス開始
 障害を持つユーザー向けに104番号案内サービス「スマイルコール」が6月30日より開始されました。案内料、通話料ともに無料です。
 携帯電話から、「104」(番号非通知不可)にかけ、ユーザー確認の後、無料番号案内をしてくれる。
 事前に申込が必要で、申込方法は日本マルチメディアサービスに申込資料を請求、記入した申込書と障害者手帳のコピーを添えて申請して、認定後に利用可能。
 
[問い合わせ・申込先]
  日本マルチメディアサービス
  スマイルコール総合案内
  TEL: 047−390−7029(平日9時〜17時)
  http://www.jmscom.co.jp/


 ★ 循環式無排水ポータブル水洗トイレ『リソレット』400,000円
 上下水道配管設備が不要で、どこでも設置できる介護・障害者用水洗トイレ。排泄物を、簡単な方法で分離(特許取得済)し、分離された大便は微生物+ミネラル活性水により炭酸ガスと水に分解。小便は微生物+ミネラル活性水+ろ過剤により浄化し循環再利用する。そのため、ほとんど給水の必要がなく、また、介護者の汚物処理が不要。ただし繊維質等の分解できない物質を2〜3ヶ月に1度の処理(臭いはない)は必要。処理能力は、一人/1日。重量19㎏

 [問い合わせ先](株)リソレット
  〒816-0097 福岡市博多区半道橋1−14−34
  TEL: 092−415−3322
  http://www.risolet.com/index.html


 ★ 障害者自立支援法案を可決:衆院厚労委
 障害者施策を抜本的に見直す障害者自立支援法案が28日、衆院厚生労働委員会で与党の賛成多数で可決され、今国会で成立する見通しとなった。同法案は身体、知的、精神の各障害者施策を一元化して、一般就労への移行を支援し、障害者が自立した生活ができることを目指す。現行の支援費制度が事実上、財政破たんしたため、来年4月からサービス料の原則1割の負担を利用者本人に求める代わりに、国の負担を裁量的経費から義務的経費に切り替え、財源を安定化させる。
 自己負担は障害者の収入が少ないことに配慮し、上限を3段階で設定するほか、社会福祉法人が行うサービスの場合、さらにその上限を半減するなど減免措置を導入する。
 現在は全国共通のサービス提供基準がなく、自治体によってサービス実施に大きな格差がある。法案は透明で公平な支給を実現するため、サービスの必要性の目安となる「障害程度区分」(6段階の予定)を、障害者の特性を配慮した上で決定。市町村に必要なサービス量を盛り込んだ障害福祉計画の策定を義務付け、地域格差を是正する。

 [解説] ≪サービス抑制を警戒する障害者≫
 障害者自立支援法案が施行されれば、収入の少ない障害者にとって負担増となるのは間違いない。負担を求めた厚生労働省は、サービスの利便性を高め、地域格差の是正や利用者のすそ野の広がりを実現させる責任がある。
 現行の支援費制度は、市町村が身体、知的の障害者を対象にした形で03年4月にスタート。収入に応じた負担のため、9割以上の人が無料だった。その結果、予想以上にサービス利用量が多く、2分の1を負担する国の補助金は、初年度から大幅な財源不足に陥った。
 このままでは、新規のサービスが抑制されるのは明らかで、財源の安定化は急務だった。法案は、国と都道府県について不安定な裁量的経費から、負担責任を持つ義務的経費に変更。今後は予算不足に悩む事態は避けられそうだ。しかし、当初のサービス利用量の急増を予測できなかったことへの真摯(しんし)な反省は、厚労省側から国会審議を通じて聞くことはできなかった。
 委員会の傍聴席や国会周辺には連日、「法案反対」を訴える障害者や支援者が大勢訪れた。サービス支給の目安となる「障害程度区分」の導入をサービス抑制に使われるのではと、警戒する障害者も多い。厚労省幹部の中にさえ、「実際にサービスを実施する市町村に対し、適切な指導や監督をしなければ、障害者にとってマイナスの法律になる危険性はある」という声もある。
 「必要なサービスは必ず行う」と言い続けてきた厚労省。負担増だけを強い、サービスが後退するという事態は許されない。法施行後の国の姿勢が厳しく問われている。
 (情報提供:毎日新聞 2005年10月29日)








【編集後記】

 10月26日現在、購読者数487名、資金残高189,102円です。
 9月の小倉懇親会にも、何とか無事に行って帰って来ることができた。向坊さんの大病後とは思えないお元気な姿に「我らが御大はやっぱり“大化け物”や!」と、内心、ホッとするやら驚嘆するやら……。白内障の手術をされてメガネが不必要になったお顔は、とってもカワイイ。(笑)まぁ、懇親会の参加者の特に常連組は、多かれ少なかれ“大化け・小化け”ぞろいである。(私はどっちに入るかというと!?)
 今回は50代、60代といった頸損の先輩方の(特に同性の)前向きな生き方に、たくさんのパワーをいただいた。ヨッシャ! まだまだ40代! ガンバラナクッチャ! 
 次号は、藤田忠さんの編集担当です。

編集委員:瀬出井 弘美


………………《編集委員》………………
◇ 藤田 忠  福岡県 E-mail:fujitata@aioros.ocn.ne.jp
◇ 瀬出井弘美  神奈川県 E-mail:h-sedei@js7.so-net.ne.jp

………………《広報委員》………………
◇ 麸澤 孝 東京都 E-mail:fzw@nifty.com

………………《編集顧問》………………
◇ 松井和子 東京都清瀬市国立看護大学校
◇ 向坊弘道 福岡県

(2005.7.25.時点での連絡先です)

発行:九州障害者定期刊行物協会
〒812-0069 福岡県福岡市東区郷口町7−7
TEL&FAX: 092-629-3387
E-mail: qsk@plum.ocn.ne.jp

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