はがき通信ホームページへもどる No.88 2004.7.25.
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 資格問題考 

47歳、C4、頸損歴12年目、施設8年目、人工呼吸器、電動車椅子使用

 昨年2月に「吸引問題考」(「はがき通信」80号)を書いた直後の3月下旬、吸引問題関係のメーリングリストに『先日私が送ったメールに対し、看護協会政策企画室から返事を戴きました。「御指摘戴いた意見はALS分科会に活かしていきたい」と(吸引問題の)現実的な解決の必要を認めつつも、吸引を医療資格のないヘルパーに認める事は、医療資格制度のみならず理美容師等他の資格制度全体が成り立たなくなってしまう問題である事を理解して欲しいと言っていました。だから反対の立場を取らざるを得ないというニュアンスでした。』との御報告があり、それ以来「資格」ということがずっと気になっていました。今年2月に書いた「膀胱ろう大丈夫?(医療行為について)」(「はがき通信」86号)の中味も、膀胱ろうと尿道留置と気管おのおののカニューレ交換に対する「資格」についてのものでした。今回は資格問題について、改めて考えてみたいと思います。

 辞書を引くと「資格」とは、ある事を行なうのに必要な身分、地位、立場、権利、必要な条件、証明、免許と書いてあります。

 理美容師資格は、理美容サービスを業として行なうのに必要な条件でありまた安全の証明です。理美容サービスを受ける人に対して、その理美容師があるレベル以上の技術と安全を有することを宣言しています。あるレベル以上の技術と安全を確保するために、教育を課し、資格試験を課し、合格者には免許を与え、資格=免許のない者による理美容師サービスの業を排除しています。

 資格制度の目的は、サービスを提供する側から見れば業務の独占という報奨であり、サービスを受ける側から見れば技術と安全の一定レベルの確保ということになります。
 理美容サービスを、理美容師資格のない人に許したら、業務の独占は崩れ、技術と安全の一定レベルを確保することはできなくなります。しかし、資格を持っているからといって、その理美容師の収入が保障されるものでもありません。理美容師の世界には完全な競争原理が働いており、技術のない人は淘汰(お客が寄り付かない)され、あるいは価格競争(規制料金の範囲内?で他店より安く)に走らざるを得なくなります。また、資格を持っているからといって、それだけで技術のレベルが保障されるものでもありません。時には失敗もあり、その時は業務上過失を問われ、損害賠償の対象にもなります。

 資格を持っていても、能力のない人はいます。つまり、現実は技術も安全も完全には確保できていません。それ故に、例えば運転免許については、更新制度によってある程度の安全を担保しているのでしょう。

 医療資格とは、医師免許や看護師免許等医療従事者が持つ資格のことと思います。そのうち看護師免許は、看護サービスを業として行なうのに必要な条件でありまた安全の証明です。看護サービスを受ける人に対して、その看護師があるレベル以上の技術と安全を有することを宣言しています。あるレベル以上の技術と安全を確保するために、教育を課し、資格試験を課し、合格者には看護師免許を与え、看護師免許のない者が看護サービスを業とすることを排除しています。

 無資格の人にある行為を業として許したら、「その行為についての」資格制度は成立しなくなります。かつて「静脈注射」について昭和26年以前から一昨年平成14年まで50年以上も、同様の議論がなされたようです。静脈注射を看護師に許したら、静脈注射について医師が業務を独占することによっての安全の確保はできなくなります。医師という資格を得るのに費やした努力に対する報奨の意味も、静脈注射についてはなくなります。しかし静脈注射は、教育や医療技術の進歩等によって、医行為ではなく、診療の補助としての行為(=看護行為)と判断できるほどになったので、看護師が行なっても静脈注射を受ける側の安全のレベルを落とすことはなくなりました。医師の静脈注射業務の独占による医師資格を得るのに費やした努力に対する報奨の意味はなくなりますが、医師には医師にしかできない、その知識、技能を発揮してもらわなければならないことがその他にたくさんあります。

 吸引も同様に、吸引をしてもらう側の安全のレベルを落とすことがなければ、医療資格のない家族以外の者の吸引を認めることができるのではないでしょうか? 看護師の吸引業務の独占による看護師資格を得るのに費やした努力に対する報奨の意味はなくなりますが、看護師には看護師にしかできない、その知識、技能を発揮してもらわなければならないことがその他にたくさんあります。

 確かに「蟻の一穴」?になる懸念はあるのでしょう。しかし安全が「ある程度」確保できれば、ワークシェアリング(業務委譲)したほうが全体の利益になります。ここで「ある程度」の意味は、資格を持っていても失敗もある(業務上過失)のだから、資格のない人でも実施方法(研修、連絡体制等)を工夫することによって実質的には「同じ程度」に安全を確保できるようになるという意味です。

 能力のある人にずっと固定化された業務を行なってもらっていては、技術の進歩という観点からも困ったことになってしまいます。そのような組織は、他のより効率的な、より技術革新的な、よりコストミニマムな組織によって淘汰されなければなりません。

 世の中は能力主義に移行しており、資格給から能力給に変わっています。大学で学士(4年)をとってもあるいは修士(6年)をとっても、実社会においては基礎学力程度の意味しかありません。発揮される成果によって評価されるのみです。

 看護師の世界に、競争(理美容師)や更新(運転免許)の仕組があればいいのですが、そのような仕組がなければ資格制度の弊害(業務の囲い込みと固定化による技術の停滞と全体効率の低下さらにはモチベーションの低下)のみが残ってしまいます。あるいは冒頭の返信メールの内容を見れば、一枚岩の職能団体=看護協会こそが、この弊害を残す温床になっている懸念をすら抱いてしまいます。 

 サービスを提供する側のシーズ論理から、サービスを受ける側のニーズに目を向けるようにならないとすれば、組織自体が改革されなければなりません。郵便局の小包事業に対するクロネコヤマトのような「黒船」や、国鉄における分割民営化に匹敵する看護協会の分割(競争原理の導入)のような「大波」が来なくてはおかしい。

 一方、資格を絶対条件とするか否かについても、サービスを受ける人(=顧客)それぞれの判断が入ってもいいと思うのです。要求する技術レベルも顧客によって異なるでしょう。コストを優先して考える人がいても不思議ではない。例えば、安価なことを理由に外国人の看護師を雇っている人がいるかもしれません。

 看護師の時間給が高いのは事実です。だからこそ、その知識、技能を新たなことに発揮してもらわなければなりません。そのためには、今ある業務を可能な限りワークシェアリングすべきなのです。現実には、爪切りについてまで「資格問題」の議論があるそうです。しかし、実際に、看護師と施設介護員とでどちらのほうが、私についての吸引がうまいと思いますか? 人によります。経験によります。だからこそ、私の吸引については、資格とは無関係なエキスパート(ある分野で経験を積み、高度の技術、技能を持った人=熟練者)に期待していいと思うのです。それが、すなわち私たちをよく知る施設介護員でありヘルパーさんであるということです。

 前にも書きましたが、行政あるいは機関(病院や施設)の解釈で医療行為の実施者を選ぶのではなく、それに要する労力と費用と時間を節約するために、私=当事者に実施者を選ばせてもらえないでしょうか? こう言うと、選択のできない人もいるのだからと言われます。だからそこには、本人と周囲の環境を知る現場医師の判断が必要と思います。医師の同意と指導、さらに必要ならば当事者あるいはその家族の同意書があればいいのではないでしょうか? 

 またも不明点が多いまま記しました。いろいろなご意見をいただいて検証していきたいと思っていますのでよろしくお願いします。
(2004年6月30日記) 
新潟県:T・H E-mail: th36th@hotmail.com
 3A+Aのページ: http://www.h4.dion.ne.jp/~the-36th/


 高校生に車椅子ダンスを指導して 


 私は、約11年前に発足した「西日本車椅子ダンスの会・アミーゴス」という、車椅子ダンスをする会の副会長をしています。

 「西日本車椅子ダンスの会・アミーゴス」(以後「アミーゴス」と記載)は、最初の頃は自分たちが楽しみ、友達の輪を広げることを目的に活動していましたが、4、5年経ったころから小学校や中学校からの講演依頼があり、それをきっかけに現在は学校の総合授業に積極的に参加して、今ではこれが「アミーゴス」の目的に変わっています。

 福岡県立M高等学校の福祉教養コースから、車椅子ダンスの講習依頼がはじめてあったのは平成12年の暮れのことです。

 M高校の福祉教養コースと体育スポーツ健康コースは、毎年2月に学年度の総合発表として「コース発表会」を小郡文化会館で行っていますが、この年度から新しく「車椅子ダンス」を発表することになりました。きっかけは、PTAの家族から「車椅子ダンスを見たが素晴らしかった、子どもたちにも経験をさせたらどうだろうか」と意見が打診されて、さっそく「アミーゴス」に指導の依頼があったわけです。

 「アミーゴス」の会長・新原かおる氏は、「目的が子どもたちに車椅子ダンスを経験させるということ、障害者の体験をすると同時に理解もしてもらえるという、願ってもないチャンス」と、喜んで指導させていただくことになりました。

 しかし初めての人に車椅子ダンスを教えるということは容易ではありません。1クラス約40人全員に何らかのダンスに参加してもらうのです。しかも社交ダンスが基本ですので、社交ダンスがどんなものか知らない人に教えるのですから大変でした。最初は車椅子使用者4人とスタンディング者6人の合計10人で教えに行きました。季節は冬、広い体育館に2台のストーブを準備していただきましたがなかなか温まりません。ひとつのチームに指導している間は、他の残りは待っている、というように「これが2ヶ月間で仕上がるのだろうか?」と、心配のスタートでした。

 しかし、子どもたちがとても真面目で積極的に練習して、見本にと渡した「デモテープ」を見ながら次の機会までに練習していたおかげで、見る見る上達し、2ヶ月間で発表できるまでになりました。

 そのようなわけで1回めの発表会が平成13年2月17日(土)小郡文化会館で「マンボ、ジルバ、ワルツ フォーメーションでルンバ・サンバ・チャチャチャ」を踊りました。

 その後も、毎年、新1年生が発表会に車椅子ダンスを発表するようになり、翌年の平成13年度からは、「アミーゴス」では手話ダンスをする人もいますので、手話ダンスと車椅子ダンスを発表会に指導しています。2年めからは前年に踊った2年生が後輩の指導をしてくれますのでずいぶんと楽に教えることができるようになりました。

 今年、2月21日(土)小郡文化会館で車椅子ダンスは4回め、手話ダンスは3回めを無事発表することができました。高校1、2年生というと、照れ屋で反発的で素直でない年頃のはずですが、私たちの指導するM高校の福祉教育コースの高校生は、素直で真面目で積極的に指導を受けてくれました。この子たちが将来の私たちの社会を担ってくれると思うと、頼もしく将来を明るく希望できます。

 この子たちのために、また私たちのためにも今後もM高校から要請があればいつでも車椅子ダンス等の指導を続けさせていただきます。


      ●車椅子ダンスを発表する1年生とアミーゴスの皆さん。


               ●車椅子ダンスの練習風景。


  ●舞台裏で発表会を無事に終えて生徒から花束をいただき記念撮影。
    前列一番左側のかたが正岡さんです。
福岡県:M・I E-mail: masaisa@beige.plala.or.jp
西日本車椅子ダンスの会「アミーゴス」  http://www9.ocn.ne.jp/~amigos/index.html


 「はがき通信」HP掲示板から褥瘡関連情報 


 私は、某県某病院の褥瘡委員をしている看護師です。褥瘡の治療法があんまりあんまりなので、どうしても通りすがれなく書きこみさせていただいています。気に障ったらすみません。

 ページ内で褥瘡の治療は苦手で興味なしと謙遜されてますが、そんなことありません。また、このページはかなり先鋭的ですが、一般的にも褥瘡に消毒は使用しません。また、局所抗生剤の使用は耐性菌の問題で禁忌です(ごく一部異論もあるようですが、今は禁忌が一般的です)。また、ソフラ○ュールは肉芽を破壊します。

 当院では現在、褥瘡も普通の傷も消毒ガーゼ不使用で傷の治りが早くなり、痛みの軽減、きれいな治癒ができるようになりました。

 水洗い(以前は生食を使用していましたが、最近は微温湯です。水道から出てくるあれですね)し、グラ○ュゲルなどを使ってますが、安い白色ワセリンに切り替えつつあります。上からオプサイトフレキシフィックスという糊のついたラップのようなものを貼りますが、本当のラップを使用することもあります。デュオアクティブ等も使いますが。傷は、乾かしてはいけないのです。

 ちなみに、発赤部へのマッサージは絶対的禁忌です。弱った血管がぼろぼろになってますます褥瘡は進みます。円座の使用も絶対的禁忌事項です。
(匿名希望)


「はがき通信」HP編集担当の平山です。お世話になります。HPの掲示板について検討した結果、使用状況などから5月25日より一時閉鎖することにしましたのでよろしくお願いいたします。


 立った! そして今ついに歩いた(その5) 


 (「はがき通信」に)発信されたその日から衝撃と波紋は瞬く間に広がり、それがますます大きくなってきたのです。これらのかたたちから連日来るメールと電話、FAXの内容は当然ですが訓練内容を教えてくれということでした。「今すぐ行くから日程を組んで!」と言われたかたも大勢いました。

 そこで私はさっそく100の設問項目を作り、その回答を見て「これは訓練次第では動きを取り戻す」と思われた5人のかたがたを選んだのです。その5人のかたはいずれも完全四肢マヒと宣告されて終日ベッド上か、電動車イスで胸ベルト固定のかたばかりでした。森さんとよく似た症状でしたが、それでも私から言わせるとはるかに軽度でした。

 しかし決定的に違うところがあったのです。それは受傷年月の長さでした。短くて4年。長くて7年を経過し、その間、在宅では関節と筋肉の屈伸屈曲と揉みだけであり、とても訓練とは言えるものではなく、失意の内に一日の大半はベッドで横たわっていた人たちでした。

 さっそく小樽に来てもらい、一人一人違う訓練項目を組み立てました。彼らが言われた残存機能活用などは問題外です。ではその訓練とは。まず、いますぐ為さねばならない最大の目標を絞りこまなければ訓練の意味を為しません。単なる可動域拡大とは全く異なり、運動の全てが複合と協調されていなければならない複雑多岐にわたるものであり、優に100種は超えるものです。それは言うまでもなくベッドと車イス生活からの離脱です。これは森さんの訓練を通して痛切に感じたことであり、ベッドから離れて普通の椅子で生活させることでした。

 それには何をさておいても腹式呼吸を基とした極端に減衰した横隔筋強化訓練であり、前屈・後屈によって失落した体幹を取り戻すことに全力を挙げました。いわゆる体幹機能マヒの克服です。

 また、徹底的に立たせました。立つことにより躯体荷重という負荷全てが腰に掛かり、下肢の安定度が増し、当然の結果として消化器官と排泄器官への蠕動刺激に加え、腹筋強化訓練で腹圧が増し、括約筋が機能して排泄機能は劇的に改善されてきたのです。当然基礎体力がグン!とついてきたのは言うまでもありません。

 3年後、これらのかたがたはどうなったか。一人は車イスを使用して超一流大学に復学して大学院に進み、弁護士への道が目の前です。二人は在宅のまま職を得、他の二人は年に2〜3回必ず体調を崩して入院する生活から決別して毎日、立ち訓練に励んでいます。これらはいずれも体幹機能を取り戻して、訓練に耐えうるだけの基礎体力がついてきた何よりの証なのです。

(次号へ続く)
北海道:右近 清 E-mail: Ukon@aioros.ocn.ne.jp

 〜脊髄損傷〜立った!そして今、ついに歩いた。
 【完全四肢麻痺からの生還・その全記録】
http://www15.ocn.ne.jp/~ukon/
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