はがき通信ホームページへもどる No.83 2003.9.25.
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 優しい国 


 日本の皆様お元気ですか。勝手なメールをさせていただきます。
 さてさて9ヶ月ぶりのカナダはバンクーバーのリッチモンド。空の青さは変わっていません。何が日本と違うといっても空の突き抜けるような青さと広さです。光線の強さに涙がぼろぼろ出ます。白人のサングラスは決して伊達ではないのです。去年と同じコンドミニアムに滞在することになった私たち夫婦は着くなり仰天。去年もやっていた雨漏りの修理がまだ続いています。きっと来年も続くことでしょう。冬場は毎日雨のこの地方にカリフォルニアスタイルのコンドミニアムを作って、あっちこっちのコンドミニアムは大修理を迫られています。私たちのコンドミニアムはプール、サウナ、ジャグジー、ビリヤード場、図書室、サロン、等々が完備しています。2ベッドルームの部屋は120−30平方メートルぐらいの大きさです。ここは40歳以上の人しか買えません。子供不可の決まりがあるのです。私たちは知り合いに借りているだけです、念のため。
 9ヶ月の日本の生活は私を日本の色に染め替えたようです。さっそくガツン!です。ダウンタウン行きのバスに乗ろうとしたら誰も乗らないのでみんな違うバスを待っているんだと都合よく解釈して乗り込もうとしたら、女性ドライバーに怒鳴られてしまいました。なんでだろう〜〜と見回すとバスストップの端に車イスの人が待っています。
 そうなんです、ここは車イスの人は何があっても優先で乗降口のステップを下に下ろして車イスのままで乗り込めるんです。乗り込んだら金具に固定するところまで運転手がやってあげて安全を確かめてから残りの乗客を乗せます。普通の乗り合いバスなんですよこれが。とっても障害のある人に優しいというか、この国では当たり前のことが日本では遅れているので私は忘れてしまったのです。恥ずかしかったです。ではまた、お元気で。
 
(バンクーバー: I )


 今年の夏に寄せて 


 「通信」の皆様お元気でお過ごしでしょうか。お陰様で主人も私も元気でおります。今年の夏は、10年ぶりの冷夏とも云われお米や野菜の不作が伝えられております。また、ヨーロッパでは猛暑の夏となり、イギリス、フランス、ドイツ、オーストリアなどでは40〜42度と信じられない気温に見舞われフランスなどでは5000人もの人たちが亡くなったとか、本当に世界的な異常気象となった夏でした。主人の健康状態には常に気を付け、朝夕の体温、血圧の測定、水分量にも注意をし一日一日を大切に過ごしております。一日の流れは、AM9:30起床→トイレ(おむつの取り替え)→介助しながら衣類の着替え→検温→リハビリ体操→洗面→新聞など開いて読む→朝食→薬を飲む(6種類ほど)→血圧の測定→トイレ(介助)→テレビを見る→昼食→PM3:30おやつを食べる→トイレ(介助)→PM8:30夕食→夜の薬を飲む→寝る前の血圧測定→歯を磨く→身体を拭く(お風呂へ入らない時)→トイレ(おむつの取り替え)→PM11:00頃やっと寝る。一日中流れ作業のような介護をしています。夜は、2時間おきぐらいにトイレに起こされ、おむつの取り替え、慢性的な寝不足になり、眠い眠い毎日です。
 そのような日々の中で何が楽しいことかと云いますと、甲子園で行われる高校野球全国大会です。亡き建二と一緒に応援した日々が思い出されます。建二は大好きな常総学院を応援していました(常総学院は体操の練習で行ったことのある学校です)。なんと今年は、木内監督の下で初優勝を遂げることができました。きっと建二も天国で大喜びをしていることと思います。笑顔が目に見えるようです。
 それから今年は、体操の世界大会がカリフォルニアで行われ日本の鹿島選手が鞍馬と鉄棒で金メダルを取ることができました。25年ぶりの出来栄えでした。団体総合も3位となり銅メダルとなりました。やっとたくさんのメダルが取れた素晴らしい大会でした。夜はテレビでスポーツ観戦をしています。また、今年は8月27日に6万年ぶりに火星が地球に大接近するという天体ショーを楽しみました。私は、PM2:00に外へ出て双眼鏡(100倍)で東南の空にひときわ大きく見える赤い星、火星を見ることができました(望遠鏡でもあればもっともっと楽しいのに……)。夜空は雲が多く雲の切れ目でやっと見ることができました。本当に貴重な体験をしました。新聞、テレビで大きく映し出された火星を見ました。私は切り抜いてファイルしたり、テレビに映し出された美しい火星を写真に撮ったりしてこの記念すべき日を楽しみました。
 次にフランスでは世界陸上が行われました。日本の陸上選手も大きな期待のもてる選手がたくさん参加しています。その一人に男子200メートル出場の宮崎選手は予選で1位となり決勝は3位銅メダルを取ることができました。外国の大きな選手に並びメダルが取れたのです。素晴らしい日本の選手でした。来年はいよいよアテネでオリンピックが開催されます。体操も陸上も、みんな全力で頑張ってほしいと願っています。
 毎日忙しくしている生活の中でホッとできる時間、心を和ませてくれたいろいろな出来事に喜びを感じることができました。これからもいろいろなことに関心を持ち、心を動かすことで忙しさの中でも楽しみを見付けていきたいと思っています。来年のアテネオリンピックを今から楽しみにしています。
 では、「通信」の皆様、時節柄お身体を大切にお過ごし下さいますように。
  ( S )


 読書メモ(4) 

C5、15年、54歳男性

 2001年5月5日、網野善彦著『歴史を考えるヒント』(新潮社)を読む。以前べつの本を読んだらつまらなかったので躊躇した。紀伊國屋のブックウェブで検索すると月に1点ぐらい本を出している。これじゃろくなものは書けないと思ったが、日本・切手・支配など言葉の由来が書いてあるというふれこみに抗しきれず購入。できはまずまず。講演のテープおこし。新潮社の編集者がだいぶ働いたとあとがきにある。
 まず目を引いたのは環日本海諸国地図。大陸から見ると日本海は湖のごとし。西洋人が日本を中国の一部と見るはずだ。オーストラリア製の地図は自国を上にしているという。別の世界が見えてくる。
 市場はもと市庭と書き、山と平野の境など何かの境、聖なる場所に開かれた。物々交換では物にこもる魂がわずらわしく、市に出すことにより世俗と縁を切った無縁の物にしたというのがおもしろい。そこでは男女の関係も無縁のものになる、すなわち後腐れがなくなるので、好きな相手と性交渉をしたとある。行きずりの恋を楽しむなら、新宿渋谷などの繁華街がいい。
 市が都会の始まり。ならば、最近の都会は人情が薄くなったとか、都会の男女関係が乱れていると眉をひそめるのは当たらない。もともとそれを求めてひとは都会を作りそれを求めて都会に出てくるのだ。ヘルパーのTさんが「都会は金を稼いで悪さをするとこだ」というのも当たっている。年老いてその欲求がなくなれば自然、田舎に帰りたくなる。
 自然という言葉も、いまわれわれが使っている概念はnatureの訳語だが、もとは「万が一」という意味だったとか、自由も「勝手気まま」と悪い言葉であったとか、支配も単に「配分」のことであり、それをわきまえずに古文書を読むと誤読するという興味深いことが書いてある。
 そういえば森鴎外の『ヰタ・セクスアリス』では、「硬派」という言葉が、女色の「軟派」に対する男色の意味で使われていた。
 著者が一番力を入れているのは「百姓」。農民の意味になったのは江戸時代のことで、それまでは百の姓、すなわちさまざまな職業のことで、漁民や職人なども含んでいたという。差別用語ではなかった。

 「編集会議」(宣伝会議発行)第3号を読む。表紙は椎名さんと担当編集者。特集「編集者が読むべき100冊!」にひかれた。
 サイエンス、ノンフィクション、エッセイ、近現代史、ジャーナリズム、文章術
写真、漫画、インターネット、トンデモ本を対談やインタビューで構成。人選がいい。『私の岩波物語』がはいっていたのはさすが。雑誌全体がインタビュー記事。おちつかない。嵐山光三郎は座談の名手。
 ネットで何冊か注文してみたが、半分は絶版だった。

 中央法規から送られてきた「ケアマネジャー」を読む。特集は燃え尽き症候群。なかに感情労働の語あり。肉体労働、精神労働に対比する語だろう。新鮮。評価されていない面に光を当てる言葉。理解されざる悲しみやいらだちが、報酬の少なさにまさる挫折の原因。ひとは無報酬でもやりがいがあれば働く。
 なぜ電車内の化粧や携帯電話が腹立たしいのか。おのれが他人として認められていないからだという対談もなるほどと思う。みんな他人に認められたくてしかたがないのだ。
 そういえば今朝聴いたラジオに便利屋某氏が出ていて、人妻が話し相手をするだけで何十万もくれるという話をしていた。どぶさらいでも話し相手でも1件1万2000円。話のほかに何かするのではないかという司会者の疑問を100%否定するふうでもなかったが、「さびしさには代えられない」ということを強調していた。海外旅行のお供で世界中を回ったという。到着してからは別行動だしホテルの部屋も別。
 人間金ができ、余裕ができると孤独に耐えられなくなるようだ。
編集委員:藤川 景
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