はがき通信ホームページへもどる No.73 2002.1.25.
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大きな感動をもって

 森さんの事実が「はがき通信」№67に紹介されてから早いもので10ヶ月が過ぎました。その間、今日までに北海道から沖縄まで86件の悲痛な問い合わせがドッと押し寄せ、覚悟していたとはいえ資料送付・その返信・ビデオ撮影・来訪などでじつに目まぐるしい日々があっという間に過ぎていきました。
 そして今回西村さん、Sさんたちの献身的な努力により、「第1回在宅リハビリ研修会」が行なわれました。これは画期的なことと思います。なぜなら不可能と言われ続けてきた重度脊損に対し敢然と挑戦する攻めの発想だからです。しかも在宅とことさら強調している通り、ほとんどの方々が『動くことはありません』と宣告されされながらも決して諦めず自宅で思いつく限りの訓練を行なってきた人たちばかりでした。しかしそれも行き詰まり諦めと挫折のギリギのせめぎ合いの葛藤だったことも分かりました。最初この企画が持ち上がった時、西村さんたちは10人も来れば、と言っていたのが、インターネット、口コミで広がりSさんに聞くと何と70人近くということでした。その他に介護するご家族とヘルパーさん、メディカル関係、通訳、各ボランティアの方々までをも含めるとどのくらいの人数になったかご想像いただけると思います。
 会場に入ったとたん、その熱気にまず圧倒されました。今年の6月から9月にかけ、多くの方々が森さんを訪ねてきました。その懐かしい顔が見えます。メールを交換してきたじつに多くに方々。一番最初に思ったこと。それは『あぁ精神的に見事に立ち上がった!』ということでした。一番良ないくこと。それは終日ベッドで我が身の不運を嘆きながらも来たるべき再生医療に望みをかけ、知識を詰め込み過ぎることと私は前から思っていました。スイッチをカチッ!と切り替え発想の転換です。当日ほとんどの方がベルトを外し見事な椅座位をし、中には端座位からさらに前屈からの起き上がりを成し遂げたこの事実は皆様はどのように思ったことでしょう。森さんはこうなるまでに1日6時間の言葉ではとうてい表すことのできない凄まじい特訓でさえ546日もかかったのです。私はこれらの方々には「機能が残されていたから当然」と思い不思議でも何でもありませんでした。それをより活性化させ機能の改善に結びつけるのが肉親というマンツーマンの「心と手」であると思っています。ワシントン大学から駆けつけたP先生とB先生も言っておられる通り、いかにリハを行なう者と本人の一体感、それに気合という掛け声と励まし。そして瞬発の気の一致。そのときの本人の指令という強いパルスの刺激が大切かということがまざまざと知らされたと思います。
 山口から来た青年は今年の6月に森さんのところに来ました。2ヶ月間完璧な椅子座位訓練を成し遂げての来樽です。森さんの動きをそれこそまったくの無言でジッと見続けていたのです。帰ってから2ヶ月間、ただただ腹筋と背筋強化一本に絞り、ついに2ヶ月後立ち上がりました。さらに3ヶ月後、今回の研修会で皆さんの前で自力で立ち、みごとな松葉歩行を見せ付けられ私は泪がにじみ、言葉が続きませんでした。C5〜6骨折でしかも受傷7年。全身麻痺を宣告された青年の頑張りに対して、ついに歩く足を与えてくれた感動にです。このとき私はついに『第2の森さんが現れた』と確信したのです。
 森さんの場合もそうですが、この青年、そして椅子にすわることさえできなかった方がつぎつぎと椅座位を行い、端座を成し遂げているのに対し『たまたま』とか『受傷程度が軽かっただけ』と必ず言われます。それではこの人たちが言われ続けた『動くことはありません』との宣告は何なのか。その障害が重篤だからこその臨床的見地からの宣告ではなかったのか。科学で説明のつかない劇的回復例を見るとき、必ず言われるのはこのたまたまであり、受傷程度が軽かった、この2つです。受傷程度が軽いのは、何もせず自然治癒した例しかないと私は思っているのです。そしてたまたまはこれほど非科学的な論法はないし、この一言で全て片付けられてしまいます。これから「はがき通信」には実体験による喜びと希望、そして機能回復の声がつぎつぎと投稿されると思います。何故なら「確実」に立てる方が何人もいたからでした。そのとき、これらの人たちの立つための頑張りに対し、受傷程度が軽く、たまたまだった、とその説をまだ貫き通すかどうか。ある意味で私は楽しみにしています。
 最後に今までの常識を根底から覆す企画、と多くの方たちから言われたこの研修会を寝食を忘れ、心身共に極限の状態にまで自らをも追い詰め、ついに大きな感動と計り知れない希望を与えてくれた西村さん・Sさん・多くのボランティアの方々。そしてP先生とB先生に言葉に尽くせぬ感謝の念をもって。 
右近清


 21・頸損者群像 愚臭玉葱 

 20世紀に受胎・成長・熟成し、無事に21世紀の処除幕をくぐり抜けられた頸損者諸姉兄に新春のお慶びを申し上げます。
 昨年、友人がメールで朝日新聞の天声人語にも掲載されたとかの記事を配信してくれた。それによると、地球の人類を100人で表して自分の置かれている状況を項目に入れていくと、順位がどの辺かがわかるというものです。
 障害を持つ者にも、介護保険の適用が射程圏でチョロチョロしていますが、「はがき通信」の諸姉兄の泰然自若ぶりに玉葱は安堵しています。日頃の奮闘で、日常の生活を磐石にしているのだろうと推察しているのですが……どうやら諸姉兄を含む玉葱も、上位幸福10位に入る類いのようですね。日本国に住める幸いを感じつつ。
 とは言え、玉葱の場合は毒妻者の楽居と暮らしが維持できているからで、諸姉兄を羨ましくも日頃の奮闘されている実績を想像します。玉葱の不甲斐無さと日頃の手抜き生活を悔いているところです。
 さて、新春にあたり愚考を書くのもはばかられますが、21世紀の頸損者群像を思い描きます。埒もないと苦笑の輩を想像しつつ、頸損者の「能力」を発揮する機会と場があるのだろうかと。すでに「はがき通信」には、先駆的な頭脳集団が暗躍・奮闘しておられますように、世が頸損者を求め望んでいます。
 講演活動・執筆活動・情報機器駆使・資格習得等々で、ライフワークを21世紀にシフトされています。先駆者に追随し、多数の頸損者が世に輩出されるでしょう。知的就労を銭に結び付ける時代が見え隠れしていますので、気力と果敢な挑戦が「能力」を活かす場に勇躍できるチャンスをくれるでしょう。頸損者にとって不自由とは、やりたいことができないからではなく、やってもらうのに待ちの時間が必要なことです。
 介護保険で、頸損者の不自由の強いられ方が2極化していく可能性を感じます。玉葱の愚考が埒もないと笑える人が多いことを念じつつ、排便日和の続く日本の未来に排尿ヨーシ!
 広島県:玉葱 ecosakohata@do2.enjoy.ne.jpメール



子供の虐待は、やめてほしい

受傷歴恥ずかしくて書けない

 「はがき通信」の皆さん、明けましておめでとうございます。今年は、精神的にも楽しく過ごしたいものです。
 昨年は懇親会も、開催されたのに参加できなくて残念でした。やはり地方からの参加は時間的にも、交通手段的にも無理だったかと考えております。さて、この投稿は、私の誕生日に書いておりますが、すぐにお正月で1つ歳を取り数え歳64歳です。

 私たちが小さい頃は正月で歳を取っておりました。皆さんも良くご存じの一休が『門松は冥途の旅の一里塚目出度くもあり目出度くもなし』と詠んでいるように、12月生まれでも、1月1日には2歳になったのです。昔は、子供が産まれ育って成人になるのが大変だったのでしょう。そこで、母親の胎内に宿る子にも歳を与え、生まれてもそのまま1歳で、0歳児はいなかった。胎児にも、一人の人間として人格を与え、歳をかぞえて出産を待つ、何か昔の人のほうが子供を、ひいては命を大事に考えたように思えてなりません。
 最近、子供が命を落とす事件が多すぎます。私たちは子供に、そうして人に優しく生きたいですネ。
 

皆無事に過ごすことができた1年

 「通信」の皆様、毎日寒い日が続いておりますが、お元気でお過ごしでしょうか。いよいよ2002年を、新しい年を迎えようとしております。今年1年、何かと暗いニュースの多かったあまり良い年とは言えない年ではありましたが、どうにか皆無事に過ごすことができました。
 日々、主人の介護に追われ、月日だけが過ぎていきます。おかげさまで主人は肺炎にもならず、なんとか1年を過ごすことができました。今年5月に愛犬ポールを亡くし一時期淋しい思いをしておりましたが、6月末には可愛い子猫2匹が飼い猫となり、可愛い鳴き声、可愛い姿に家の中に明るさが戻ってきました。その子猫たちも今は6ヶ月を迎え、体重も2キロを越えました。毛並みも美しく、首には2匹お揃いの赤い首輪を付け、元気に過ごしています。主人は可愛い可愛いと言い、本当に家族の一員となりました。
 また今年は、主人も一緒に隣町の大井中央公民館で主催された、2台のピアノによるピアノコンサートへ行くことができました。ウイーンより来日した男性ピアニスト2人による、2台のピアノによる迫力ある演奏は素晴らしいものでした。車いすの席もあり、2時間あまりゆっくり楽しむことができました。さすが音楽の都ウイーンのピアニストでした。主人もあまりの迫力に驚き、しっかり聴いていたようです。外出することの少ない主人ですが、何か近くで楽しい時間を過ごせればと思っております。
 12月26日には、何十年ぶりに映画を観に行くことができました。最近できたばかりの立派な映画館です。車で10分ほどで行ける近い場所です。今話題の「ハリーポッター」です。テレビで観る映画とは異なり、大きな画面とすごい迫力ある音声により観る映画は、それはそれは美しく、楽しいものでした。3時間もの長時間映画でしたが、主人もあきることなく最後まで楽しむことができました。本当に近くでこのように楽しむことができ、思い切って行ってよかったハリーポッターの映画でした。来年もいろいろな楽しいことに、主人と一緒に挑戦してみたいと思っております。
 「通信」の皆様、どうかお身体に気をつけ良いお年をお迎え下さいますように、また来年もよろしくお願いいたします。
埼玉県:HS


 フィリピンにて 

フィリピンは12月記録的な寒さが続いていましたが、割合に暖かい正月を迎えています。ここ、ルセナ市にある「日本人身障者の家」は満20年を迎え、4室とも満員の状態になったので、まずまずいい歳を迎えたと思います。いろいろお世話になりました。
 マニラ・ゲストハウスのほうは頸損のKさんがずっと守ってくれていて、お客さんは思いのままに両方を移動できるようになっています。ここの4室とゲストハウス2室、全室に天井走行型リフター(手動型)が付いているので、重度身障者の滞在でもトランスファーの不自由はなくなりました。
 今、両方で7人のお嬢さんヘルパーと一人の男性臨時ヘルパーを雇っていて、みんな、18歳〜23歳ですから賑やかです。しかし、神経も使います。意地の悪いヘルパーがいないので、たいへん助かります。
 今年は薩摩藩の隠れ念仏弾圧で15万人が死罪になった史実を非暴力の原点と捉えて、「平等、自由そして平和へ」という本を出すつもりですが、何せ本が売れない時代ですから、またよろしくお願いします。ではまた、お元気で。フィリピンにて
編集顧問:向坊弘道



 たいへん有意義な在宅リハビリ研修会を持つことができました

 明けましておめでとうございます。
 昨年は、右近さんの衝撃的なレポートに始まり、第1回在宅リハビリ研修会を通じて、せきそんという巨大な壁に挑戦するたくさんの仲間の輪が大きく広がった1年でした。リハビリのことなど、大きな声では言えない感じだった去年の今ごろが夢のようです。
 第1回研修会は、おかげさまで、脊損当事者約30名、そのご家族、医師、OT、PT、その他多数のボランティアの皆さんのご協力で、たいへん有意義な研修会を持つことができました。「はがき通信」を見て参加された方も多くありました。
 シアトル市ワシントン大学病院のPT2名が、一人一人にあったメニューを作成、家族にも懇切丁寧に、介助付可動範囲拡大運動のやり方を指導してくれました。その気合の凄さ、明快な説明と、具体的でわかりやすい指導には、ただ圧倒されるばかりでした。
 彼らが特に驚いていたのは、集中的なリハビリによって、まだまだ伸ばせる機能があるのに、何もなされてない方があまりにも多いということでした。機能回復の可能性を求めて、刺激を与えつづけ、動かそうとしつづけるアメリカのリハビリの姿勢と、完全麻痺・回復不能という告知をして、早く受け入れさせることを親切と考える日本のリハビリの根本的な姿勢の違いが浮き彫りになった1週間でした。また、麻痺している部分も含めて、身体全体を自分の身体として、ケアしていくことの大切さも強調されました。
 右近清氏の個人セッション、排尿排便問題のワークショップも非常に関心が高く、退院後のリハビリやケアの指導・情報交換のニーズが高いことがわかりました。
 何よりも良かったのは、1週間の合宿を通じて、リハビリにチャレンジする同志的なつながりができたことでした。これからも、継続的に励ましあって、努力をつづけていくために、このつながりを大切に育てていきたいと考えています。
 今年は、この途方もなく苦しい、孤独な戦いに取り組む当事者や家族が少しでも支えあい、励ましあうこと、特に受傷間もない方、入院中の方に、なんと言われてもあきらめないように、できることがいろいろあることを伝えること、そして、病院側、とりわけ厚生省に、快復の可能性を摘み取ってしまう現在のシステムの改善を強く求めていくことが課題だと思います。

【お知らせ】
1.第1回リハビリ研修会の参加者の中から、scirehabというメーリングリスト(ML)グループ(URL:www.egroups.co.jp/group/scirehab/)が生まれ、リハビリに関する情報や意見の交換が行われていますが、さらに、「せきそんリハビリ連絡会」という形で、パソコンを使われない方にも輪をひろげて、最大限の機能回復をめざす積極的なリハビリを支援・推進していくことになりました。
 当面は、受傷間もない方に、リハビリに関する情報や具体的なやり方が速やかに伝わるように、ホームページを作ること、地区ごとに定期的に集まって、勉強会を持つこと、リハビリ情報を定期的に発信すること、を目指しています。積極的なリハビリに関心のある方はぜひご連絡ください。

2.第2回リハビリ研修会については、すでに多くの方からお問い合わせがありますが、ワシントン大学病院から、2人の女性PTを招いて、東京(4月26日〜29日)と大阪(5月3日〜6日)の2回に分けて行う予定で準備をすすめています。
[連絡・問い合わせ先]
〔関東地区研修会〕武田美奈子 E-Mail:k-takeda@ja2.so-net.ne.jp
〔関西地区研修会〕辻 一(大阪脊髄損傷者協会) E-Mail:makoto.tsuji@dream.com

3.1月から、下記のように横浜と大阪で、リハビリの勉強会をもつことになりました。
〔関東地区勉強会〕場所:横浜ラポール  日時:第1回1月25日 第2回2月10日(日)
〔大阪地区勉強会〕場所:ファインプラザ  日時:第1回1月20日(日) 第2回未定

4.①第1回在宅リハビリ研修会記録ビデオができました。
   2本組/3000円
  ②アメリカのリハビリ体験記録ビデオ(ワシントン大学病院でのリハビリ記録)
   1本/2000円 
  ③基本ストレッチ法CD−ROM版(研修会での基本ストレッチの詳しい説明を部位別に取り出して見ることができます。)もあります。
   1枚/1000円
※メールグループ/リハビリ連絡会・地区別勉強会/ビデオ・CDについてのお問い合わせ・お申し込みは下記までご連絡ください。
西村みどり midori@hk.sun-ip.or.jp

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