はがき通信ホームページへもどる No.65 2000.9.25.
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僕の電動車いすへのこだわり

 皆さんは、現在使用している電動車いすに満足していますか? 僕は電動車いすに乗り始めて不満が出ていました。そこで自分なりに工夫しましたが、個人では改造するにも限界があった箇所を挙げてみます。
 1、座位保持の作り(バケットシートがほしかった)
 路面傾斜で横に倒れかけて、自力で戻せず通りがかりの人に戻してもらいました。シートベルトもその時は、胸に巻き付ける一般的な物でした。
 ◎対策:バックレストに少しでも背中を包み込めるように、テント店でバケット風シートを製作してもらい張り付けた。「あまりフィットしなかった」
 2、座位状態の高さを少しでも低くしたかった。
 ワンボックスカー(自家用電動リフト付き車)の乗り降りで頭があたるため、そのたびにリクライニングするのが面倒だった。
 ◎対策:座面シート(高3㎝)を外して弾力性素材の座面シートに替えて3㎝弱低くした。「効果なし」
 細かく挙げればきりがありませんが、上の2つが重要でした。
 そこに6年ほど前にパシフィックサプライ社が「Karf」の販売を始めたことを聞きました。「Karf」は、メディカルシート(ドイツのレカロ社製)をスズキのシャーシに載せていました。バケットシートです。バックレストにリクライニングモーターが装備されているため高さも低くなり、リクライニングせずにワンボックスカーの乗り降りができるようになりました。
 ◎バケットシートにシートベルトの改善をしました。
 胸ベルトだけでは、勾配のきつい下り坂とか、段をいきおいよく乗り越えようとする時など、前に倒れそうになることがあったので、パラシュートベルトみたいにショルダーベルトを追加しました。これは成功でした。車で移動中急ブレーキ時に安全です。一度胸ベルトだけの時に前に倒れました。
 以上が「Karf」に乗り替えての利点です。欲を言うとフットレストが単独電動可動ですと良いですね。全車高も外食時にレストランなどのテーブルに入っていけるような低さになれば良いですね。
 今後、アウトドア行動に最良な製品が出回るように願います。

宮崎県 : KF ecosakohata@do2.ne.jp



 バンクーバーにて

 8月21日から28日、松井先生に同行させていただいてバンクーバーに行ってきました。

 1998年5月、弟は交通事故で頸髄損傷(C2)となり3ヶ月後に松井先生の『頸髄損傷』を知り、すぐに先生に名古屋まできていただき呼吸器離脱の訓練を始めて2年、今はほぼ半日自立呼吸ができるようになり、鼻マスクのBiPAPへと移行訓練中です。
 先生から人工呼吸器使用者の家族に紹介していただいたこともあってか、呼吸療法士のアイリーンさん始めバンクーバーのベンチレータ・ユーザーの皆さんにほんとに親切にいろいろ教えていただきました。
 アイリーンさんは、長年ベンチレータ・ユーザーに関わっていらっしゃるのでその経験に裏付けられた確信と、何が当事者にとって大切で快適なのか、かつ安全を確保しながら最良の方法を処方するという姿勢が、私にはとても心強く信頼のおけるものと感じました。

 私がお会いした4人のベンチレータ・ユーザーはどなたも普通の大きさの声で話され、気管切開をしている人と話していることを忘れるくらい自然な発声でした。もちろん松井先生からバンクーバーの人たちのカフなしカニューレによる発声のことはお聞きしていましたが、実際にお会いするまでこれほどとは思いませんでいた。普段弟のワンウェイバルブを使用した発声を聞き慣れているせいでしょうか、とぎれなく話しが続くこと、大きな息継ぎをしなくてもいいことなどほんとに自然でした。お二人は夜間のみ人工呼吸器を使用ですのでお会いした時は自立呼吸だったのですが、特別肩を上下させるなどの動きは見られませんでした。
ウオルトさん
スウェーデン製電動車イスで拳上中のウオルトさん。受傷答辞は誰かに自分の人生を代わって欲しいと思っていたが、今は自分の人生が最高と思っている。中国系の養女を奥さんと育てている。

 そのうちのお一人ウォルトさんからは、身体を前後させて呼吸する方法も教えていただきました(頭を後ろに反らして息を吸い、前にうなだれて吐く)が、実際ウォルトさんにはそれと明らかに分かるような動きは見うけられませんでした。気管切開をして30年の経験からより自然な呼吸方法を身に付けられたのかもしれませんが、初めは意識的にすると良いとのことです。アイリーンさんからも在宅になったら15分毎にスケジュールを作ってそれを守っているとそのうち癖になって自然にするようになる、と言われました。溜息やあくびを意識的にすることも良いそうです。「あくび休憩」「溜息休憩」「体位を少し動かす」「水を飲む」等です。水分補給で痰が出やすくなり、水分は排尿・排便にも効果があるとのことでした。ウォルトさんは痰はほとんど出ないのですが、吸引ではなくアテンダントの介助による胸部圧迫による口からの排痰です。右の肺に痰があれば顔は左横を向く、痰が溜まっている方と反対側を向くと痰が真直ぐ上がってきて出やすいそうです。アテンダントの介助もそれほど強く押してはいませんでした。カフなしなので口からの排痰も可能なのかと思いますが、カニューレのサイズも「4」(弟は13)と小さいのに不思議です。
 また、ウォルトさんは腰にコルセットを付けると呼吸補助にもなると言われ(コルセットは腰痛予防用のものを使用)、メアリーさんもパソコンでマウススティックを使用しているときには同じくコルセットをするとアイリーンさんからお聞きしました。
 私はウォルトさんが使用しているChairman(デンマーク製)の車イスがすっかり気に入ってしまい、弟にもこの車イスを処方していただけたらと思っています。ティルト、リクライニング、前輪駆動による小回りの良さ、加えてイスが上下することにより立っている人と同じ目線の高さになれいつも上を向いて話すための首の痛さから解放されるということです(これは乙武君の発想と同じですね)。

24時間ベンチレータ使用のジャネットさんには、吸引の様子も見せていただきました。ジャネットさんが使用している吸引用カテーテルは1回ごとの使い捨てではなく材質も柔らかく痛くないそうです。「BARD−Davol 吸引カテーテル」日本の代理店はメディコン(TEL:06-6203-6541)、さっそくアイリーンさんが調べてくださいました。

 そして、今回の訪問の最大の目的、24時間呼吸器なしで生活できるようになったワンさんにもお会いできました。ワンさんの第一印象は「やせた!」ということです。以前先生からいただいた理学療法を受けている「ビデオのワンさん」とは別人のようとワンさんに言ったら「あれは兄弟」と冗談を返されました。彼はとてもフレンドリーでその穏やかな瞳には24時間自立呼吸ができるようになった安心感と自信のようなものを感じたのは私の思い込みでしょうか。何度も彼は「もう外せて1年4ヶ月」と言いました。その嬉しさはワンさんのお母さんの「でも9年かかった」という言葉によく表れていると思いました。昼も夜も少しも苦しいことなく、まったく自然に呼吸できるそうです。大きく息を吸い込むでもなくあまりに自然なので私は何度も「呼吸器を使っていたなんて信じられない」と言葉に出してしまい、以前のワンさんをご存じの松井先生と通訳の上村さんに苦笑されてしまいました。呼吸器は必要なくなった今も気管切開は閉じていないままです。せきを出すより吸引のほうが楽ですっきりとれるからで、今、歌を歌ったり大声を出したりとせき出しの訓練中だそうです。吸引は2〜3週間に1回。風邪をひくと1日に2〜3回とのことです。

 このワンさんの驚きの治療は、7年前に中国からバンクーバーに移住なさった周先生から施されたもので、しかも、2〜3週間にわたって合計8回のセラピーだったそうです。周先生の治療については私には良く分からない療法がいろいろあったので松井先生のご説明を読んでいただきたいのですが、周先生は西洋医学の脳と神経がご専門でもちろん漢方薬も針もなさいます。人間の身体をトータルにとらえ、治すのではなく「目覚めさせる」のだとおっしゃいました。先生に日本に来ていただけるかどうかお尋ねしましたら、OKのお返事をいただきましたので、弟が在宅生活に移ったら日本にお越しいただき治
ワンさんと智恵さん
新電動車イスでゴキゲンなワンさんと智恵さん。(帰りぎわ、智恵さんにキスされたワンさん。残念ながら、その写真はありません。)
療を受けたいと思っています。周先生は呼吸器を外せた症例は3例あるそうですが、誰もが呼吸器から完全離脱できる保証はありません。ワンさんのルームメイトはダメだったそうです。
でも、今回のバンクーバー訪問で私が得た最大の収穫は、呼吸器を使用すること、気管切開をしていることを特別のこととして恐れないということです。そのためには「普通の声が出せる」ことが安全性の面からも大前提になります。また、呼吸器を使用していても毎日車イスにすわってどこにでもでかけるという当たり前の生活も不可欠です。
バンクーバーでは呼吸器使用の子どもたちがキャンプに行くそうです。24時間呼吸器使用のジャネットさんは35年来のボーイフレンド、ジミーの付添いにより日本食レストランで楽しく食事をとられました。ジミーは刺身も天ぷらも嫌いと言っていたのに一度食べ始めるとムシャムシャ、パクパク! その食べっぷりの良さに私たちも楽しくなりました。カナダに日本食ファンを増やした国際交流でした。
アイリーンさんや何人かのベンチレータ・ユーザーにお会いして、ほんとに暖かいものを感じました。バンクーバーと日本、遠く離れていてもいつでも相談にのってもらえ、経験と確信を持ったアドバイスをいただけます。私にとってアイリーンさんが、そして何十年も呼吸器とともに生活してきた彼らの存在そのものが希望の光です。どこにでも行けるし何でもできます。もちろん家庭を持つことも、一人で生活することも。近い将来きっと日本もバンクーバーのように人工呼吸器使用者にも住み良い国となると思います。

 最後に、充実したバンクーバー旅行をアレンジしてくださった松井先生とバンクーバーの皆さんに心から感謝し、同時にこの情報を一人でも多くの方と共有できればと思っています。
愛知県名古屋市 : TK



ワンさんの完全離脱と周先生

 昨年5月、ワンさんからメールが送信されてきました。「何が効いたか分からないけど、ベンチレータが外せた。もう2ヶ月近く自力呼吸で快適な生活を過ごしている」と書かれていました。ワンさんの損傷部位はC2です。車イスで30分、ベッド上で2時間近く自立呼吸が可能でしたが、ベンチレータを完全に外すことはワンさんの生活目標に入っていませんでした。ワンさんに「いったい何がきっかけでウィーニングの訓練を始めたのか」と返信で質問しました。ワンさんの説明によりますと、中国系のドクター・周先生に外出先で話しかけられ、以前、ベンチレータ使用者に自分の治療法で離脱させた経験がある、良かったら治療を受けてみないかと勧められました。ワンさんはお母さんと相談し、信じられないことだが、周先生の治療を受けても失うものは何もない、やってみようと決心されたそうです。合計8回の治療を受けた後、ベンチレータを外し、24時間自力呼吸で過ごせるようになったと、信じられないような報告でした。その後、上野さんから周先生の名刺を郵送していただきました。名刺に書かれた周先生の専門は「Neuro-Psychiatry」、神経筋関節が専門の神経精神医学とあります。ワンさんは周先生から東洋医学のいろいろな療法を受けたので、何が効いたか分からないそうですが、上野さんの手紙では催眠療法とあり、また昨年7月バンクーバを訪問した向坊さんの報告では気功でした。どちらにしても催眠療法や気功で離脱がなぜ可能なのか理解できません。

 ワンさんは周先生のセラピーを受け、その間15分ずつ自立呼吸時間を延長し、2、3週間後、夜ベンチレータを完全に外せると周先生から言われ、外したが、さすがにその晩は眠れなかったそうです。今まで聞き慣れていたベンチレータの音がしないのも変な感じだったそうです。周先生のセラピーは針治療も含み、自立呼吸中でも針を入れたまま、さらにできるだけ長く針は入れておくようにと周先生の帰宅後も2、3時間入れっぱなしでお母さんが習って針を抜いていたそうです。気になる治療費ですが、周先生はワンさんから1回35ドル、8回で280ドル(約2万3千円)しか請求しませんでした。リラクゼーション、催眠療法、気功、針、それに大声を出す練習もあり、その治療法の根拠はワンさんには説明できないので、周先生に直接聞いてほしいと言われました。

 2日後、智恵さん、上村さんと3人で周先生の診療所を訪問しました。診療所は郊外の住宅地、それもかなり奥まった静かな場所にありました。周先生は小柄で気さくな老紳士、ワンさんが言うように話し始めたら止まらないタイプでした。7年前にカナダに移民、その前は中国、上海の病院で神経学、精神医学の専門医として働いていました。大学で西洋医学を修得後、1年間針治療の訓練を受け、西洋医学と東洋医学を統合させた独自の治療法を開発中だそうです。中国ではそうした実験的な治療は許されず、針治療も教本に従うのみだったが、バンクーバでは実験的治療も可能と張り切っている反面、宣伝が不十分で肝腎の患者を確保できずに、バンクーバ市内の漢方薬局で働いているときに偶然、ワンさんを見かけ、話しかけたそうです。周先生はワンさんの治療前に2例の成功例を経験していたので、「ワンさんが希望するなら、ヘルプしよう」と提案しました。
 「気功、チャンティング(唱和)、体操、催眠療法を組み合わせ、患者の意識下のレベルにある自然治癒力に働きかける治療法は、快復を促進しても、患者の状態を悪化させることはない。私は教師であって、患者の意識下にある治癒力を呼び覚ます促進剤である。したがって私の治療法で重要なのは私を信頼できるかどうかだ」と周先生は説明されます。先生は治療開始前、ワンさんのX線写真は診られたが、MRIは診ていません。ただワンさんは右手小指と足先がわずかに動き、下肢の触覚があることも彼の離脱を予測する根拠になったかもしれません。8回目の治療終了後、「カナダで医師免許のない自分が本来言ってはいけないのだが、ベンチレータを外すようワンさんに指示した」そうです。
周先生
周先生(診療所兼ご自宅の前で)

 周先生は一方的に説明し続けるので、途中質問をはさむのはとても困難でした。わずか2、3週間の治療でベンチレータを完全に外せると判断した根拠、たいへん重要な点ですが、今回質問し損ないました。これから手紙で問い合わせる予定ですが、明瞭な回答は得られないかもしれません。なぜなら、智恵さんの報告にもありますように、ワンさんの完全離脱に刺激され、グループホームのルームメイトが周先生の治療を受けたけど、ワンさんのように成功しなかったそうです。周先生も、ご自身が開発した治療法の有効性を実証できる根拠がほしいが、現在の収入ではその器具を購入する余裕がないと残念そうに言われていました。バンクーバではすでに東洋医学など代替医療が病院に正式に導入されていますが、心と身体を統合的にとらえる“New Age Medicine”と称する周先生の実験的治療法はバンクーバでもまだ理解されがたいようです。

 いずれにしても10年近くほぼ24時間ベンチレータに依存していたワンさんが完全に自力呼吸となり、すでに1年半近く快適に生活できている事実があります。それを実現させたのは周先生の治療です。それがどのようにして可能になったか、そのメカニズムは是非とも解明し、治療適用となる条件を明らかにしてほしいと思いますし、周先生もご自身の最後の課題にしたいそうです。 長いこと共産主義の国で医療に従事していた先生は、自由に治療をしながら金儲けができるのは最高と言いながら、資本主義的金儲けにはついていけないようです。せっかく漢方薬局で働き口を見つけながら、儲けの多い薬をお客に勧められず、むしろ自分の治療を受ければ薬などいらないと営業妨害をして、2ヶ所も解雇されています。金儲けよりも患者さんの病気を治し、健康を快復し、患者さんに喜んでもらえれば最高と楽しそうに話してくれました。
 
 松井和子



 玉葱オヤジ50代、まだまだ?or これから?

 7月号で人生色々の御仁の投稿にちなみ、玉葱も色々様々の巡る思いを書く。

 過日、尊敬する赤ひげ的ヤブさんが嘘発見器(?)なるBOXを持ち来て、胸のトキメキを測定。誤診断の結果は動脈効果・親近拘束・芯不善との御託宣である。ときどきハートがうずくような感じがしていたので納得。ヤブさんは胸が痛いときは?と聞くので、心当たりの顔を何人か思い浮かべた。なにしろ優しい美人ヘルパーさんやヤングな女性ボランティアさんにウシシーの玉葱。不遜にも楽居に背信の念も浮かぶ不純の輩。アワビ的な「哀 love you」を自覚する玉葱だが……。
 糖尿マンとして、衿を正し自制・摂生の清貧を旨とした立派な暮らし振りに、夜霧のごとく合併症は忍び寄る。不整脈のハートが描く波形は、日々の思いを過熱させた甘味な血潮が災いと反省する。寄る年波に追討ちの猛妻欠陥、甘い血に「コレ捨てろール」を濃縮させ、血流が悪くなり血管も朽ちてもろくなっているらしい。そのためか玉葱の集積回路も部分欠落のメモリーが回りを混乱させる。忘却ならまだ良いが、記憶のできない状況である。パソコン技量の遅々とした習得が物語る事実に愕然玉葱。
 玉葱は地域社会に活着(根付く)しかけた矢先の誤診断で、健康誌の玉葱効果に?符を抱きつつますます胡散臭くなってゆく。腐臭じゃないぞ!といきがる玉葱に「保険金が掛けてないのだから……」と失意の楽居。彼女の心情に曖昧 me!の玉葱オヤジ。白内障手術の目に300年は大丈夫と太鼓判の美白女医さんを思い出します。尊敬する赤ひげヤブさん「まだまだ行ける50代」と励まされ、玉葱は「これから始まる50代」と余命半世紀をにらんでいる。その理由は玉葱の夢である自分の墓「前方後円墳」建造の資金が少しだけ不足しており、ただいま年金の微蓄中だから……。さー、新世紀へ障害者も熱い夢を描こうよ。
          
広島県 :(「トドのおっさん」改め)玉葱オヤジ k-komine@nifty.ne.jp

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