は が き 通 信 No.59 - Page. 1 . 2 . 3 . 4 . 5
POST CARD CORRESPONDENCE 1999. 9. 25

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寝台特急「カシオペア」デビュー

7/26〜28まで札幌・旭川に行って来ました。噂の豪華寝台特急「カシオペア」で行き、帰りはJASのレインボーシートというちょっと贅沢な旅を楽しんできました。
車いす対応室には車いすトイレが部屋の中にあり、ドアもボタン式の自動ドアです。T・ウエルカムドリンク・モーニングコーヒー・朝刊のサービスがあり、約16時間半の旅ですが、ご夫婦・カップル・気のあった友達でないと飽きるかもしれません。
電動車いすをベッドサイドに付けられ、狭いビジネスホテルより広いカモ! 同行の介護者が女性でしたので、車掌さんがトランスファーを手伝ってくれました。
初めての北海道は「暑い!」という印象でした。ふざわたかし・ホームページで車内の様子が見られます。
編集委員 麸澤孝



アメリカのホット・ニュース

(C4ー5、完全マヒ、61歳、独居、冬はフィリピンで越冬、リクライニング式電動車イス、コンドーム式排尿、頸損歴41年)

7月から8月にかけて、アメリカ全土を旅行する機会に恵まれました。
今年は日本人がアメリカに入植して浄土真宗という仏教を持ち込み、100周年にあたるので、各地で盛大に記念行事が行われています。私も仏教の講演を10数カ所で依頼されて、47日間の旅を続け、多くの人との出会いを楽しみました。
洋の東西を問わず、新しい科学に人々の関心が集まり、変化のない宗教から人心が離れて行く傾向は強くなる一方です。しかし、アメリカでは東洋思想に対する関心が高まってきています。チベットのダライ・ラマがノーベル平和賞をもらったり、仏教が戦争をしたことがないという実績も買われて、私の講演の時には100人以上の人が来てくれました。すべて英語で話すのは骨の折れる仕事でしたが、言いたい内容は伝わったのではないかと思います。
講演の後のパーティでも熱心な議論に集まってきたのは白人、黒人の30歳前後の人たちでした。彼らのひたむきな態度に教えられることの多かった旅行でした。

次に「はがき通信」の話題らしく、交通のアクセスについて報告します。サンフランシスコ、バークレーはCIL(自立運動本部)が始まった関係で、最も先進的な地域でしたが、今日では路線によってはリフトバスが走っていないし、リフトつきバスも3台に2台は故障のまま走っており、今やアメリカでは遅れた地域になっているのには驚きました。
アメリカ全体がこの10年間バブルのような好景気に沸き、しかもADA (Americans with Disabilities Act)の実施とあいまって、後発のニューヨーク、ロスアンジェルス、ハワイなどの大都市では全バスに新型のリフトがつき、歩道もすべて段差が解消され、すばらしい発展ぶりです。

写真
向坊弘道氏(左前)と上野氏(右前)
ホテル、モーテル、スーパーにも必ず身障者優先の駐車場が義務づけられ、段差はありません。どの都市にもリフト付きタクシーはありますが、料金が普通のタクシーと同じですから利用しやすいようです。カナダのバンクーバーだけはいつもリフト・タクシーが時間通りに来ませんでした。
普通列車も利用しやすく、一般席を2つ外して車イス1台分のスペースを取っています。マイアミからロスアンジェルスまで4日間かかる大陸横断鉄道“夕焼けの超特急”に乗ってみましたが、ゆったりした身障者用の個室が2カ所も設けられています。個室には2段ベッド、トイレ、シャワー、化粧台が完備され、豪華な3食をボーイが運んできます。料金は飛行機並ですから、ぜひお試しを!

飛行機などは乗り込む直前まで自分の車イスを使うのが常識になっているようで、これも助かりました。ただし、前もってリクエストしていた広いシートについては、4回乗った国内線のすべてで、旅行社からの要請が現場に届いておらず、狭いシートでの窮屈な介助をうけることになりました。
レンタ・カーは車イス相手専門の会社に申し込み、1週間電動スロープつきのワゴン車を借りましたが、普通の車の倍額くらい払いましたので、身障者用でも公共のもの以外は高いようです。
多くの出会いに感謝しながら、長旅を終えて帰宅すると、2つの腰部の褥瘡のうち、1つは治り、5年来の古いほうの褥瘡もほぼ完治していました。私は一人暮らしなので、家では寝ている時間が長いから、褥瘡が治りにくかったんだろうと思いました。
        
(編集委員 向坊弘道)



山ちゃんの「地球のさぼり方」 Part 6

早いもんで、これが出る頃は9月か。夏も終わりですね。「恐怖の大王」も降ってこなかったし、皆さんの夏はいかがでしたか。私の旅もいよいよ終盤にさしかかり、これからチベットに向かうため、中国・四川省の成都という街に入りました。チベット・ラサまでは飛行機です。チベットでは高山病が気になるところですが、体調を整え、無理せず行動しようと考えています。次号、チベットの報告を楽しみにしていてください。

【カンボジア】


この国は何と言っても、アンコールワット抜きには語れないでしょう。日本では「アンコールワット遺跡」というと主にアンコールワット寺院のみが有名ですが、9世紀から13世紀にかけて繁栄したクメール人(カンボジア人)のアンコール王朝は、この間に実に多くの寺院や宮殿を建設しました。遺跡は広い範囲に点在しているので、これらをくまなく見て回ろうとすると、とても1週間くらいの時間では無理です。おまけに、日中はとても日差しが強く、ましてや車椅子だと本人も介助者も体力が要ります。というわけで、私は他の旅行者や宿の主人の意見をもとにいくつかのポイントを絞って、休み休み、無理のないように見て回りました。そこで、私の「お薦め遺跡」を紹介します。
「アンコールワット寺院」 この寺院を写真やテレビで見た人は多いでしょうが、やはり本物が一番! スケールのでかさとスタイルの美しさは圧倒的です。夕日に染まる時間がベスト。
「バイヨン寺院」 アンコール・トムという都城の中心に建てられた仏教寺院。積み上げた大きな石の4面に彫られた観音菩薩の優しく微笑んでいるような表情がとてもいい。
「バンテアイ・スレイ」 ヒンドゥー寺院。ここの赤い砂岩に彫られた繊細な彫刻、浮き彫りには絶句。木ならともかく、石ですから。ずっと見ていても飽きません。
「タ・プローム」 この寺院遺跡は修復せず、そのままの状態で放っておくという方針らしく、巨大なガジュマルの木が遺跡にからみつき、押しつぶす様が生々しい。ここも別の意味で凄いですよ。
「プノン・バケン」 アンコールワット近くの小高い丘の頂上にある遺跡。ここには象タクシーがいて、車椅子で丘の頂上まで行くにはこの「象の道」を行くといいでしょう。上からジャングルの平原が一望できます。
さて、私のアンコールワット遺跡群見学攻略法ですが、もちろん介助者1人ではどうにもならないので、宿で他の日本人旅行者に声をかけ後は移動のためタクシーを1日貸し切り(15ドルくらい)ついでに運転手さんにも手伝ってもらい、3人体勢で挑みました。遺跡は概して保存状態が悪いので、ほとんど「担ぎ」です。介助者の皆様は足元にご注意下さい。ただ、メインのアンコールワット寺院、ここの中央最上部に向かう階段がE難度です。階段のステップの幅が狭く勾配も急です(健常者でもちょっと恐いと思う)。車椅子ごと担いで上がるのは無理だと判断し、私のネパール人のパートナーが私を背負って登り、無事上までたどり着きました。他の寺院でも同じように背負ってもらって登り・降り、というケースがありましたが、例えば上位の頸損者だと背負うのは難しいだろうし、また、よほどのパワーの持ち主でないと背負って遺跡の階段を行くのは難しいと思います。それに危険も伴います。まあここの遺跡の見学は何も上に登らないと良さがわからないと言うものではなく、むしろ全体的な美しさや壁の彫刻が面白いので、無理せず、安全第一で見学しましょう。もし、アンコールワットに 想い入れがあり、何が何でもと言う人がいたら、以上の私の体験談を参考にアンコールワットに登って下さい。
カンボジアという国はアンコールワットに代表される栄光の歴史だけでなく、独立後は苦難の道を歩んで来ました。首都のプノンペンでは、その現代史の傷跡を今でも生々しく見ることができます。ポルポト時代の刑務所跡やキリングフィールド(処刑した遺体を捨てた場所)。もしこの国を訪れるのなら、是非、こっちも合わせて見てほしい気がします。

【ヴェトナム】


ベトナムは元気です。南部のホーチミン市なんか特に。モーターバイクが怒涛のように流れ、物もいっぱいあります。社会主義なんてどこ吹く風ってな感じです。私は今回この国ではなぜか名所・旧跡を回る気が起きずに南部のホーチミン(サイゴン)と北のハノイとこの2大都市でぼんやりと遊んでしまいました。それには理由があって当地で働いている友人夫妻の快適なお住まいに長居したせいもあるのですが、何というかこの2つの都市、これといってすることがなくても、ブラブラと街を散策し、市場をのぞき、腹がへったらベトナム風うどんの「フォー」をすすり、のどが渇いたらアイスコーヒー(ベトナムのコーヒーはいけます)を屋台で一杯と、これだけでもけっこう楽しめます。ベトナム人は人なつっこくて面白いし、ベトナム料理も中華やタイとまた違っておいしい。
極め付け、特に男性諸氏に嬉しいのが、女性がキレイ!「アオザイ」という民族衣装を知っていますか? 色鮮やかな「アオザイ」をスラッと着こなし、街をさっそうと歩く女性を目にすると熱き青春が再び燃え上がりますぞ(注、生アオザイを見たかったら、ハノイよりもサイゴンのほうが圧倒的に多い)。
ということでベトナムの情報はこんなところです。そう、ベトナムの鉄道ですが、インド、中国と大差なく、私は1等に乗りましたがあんなものでしょう。車椅子でももちろん大丈夫です。親切な人が多いからきっと誰か手伝ってくれます。それと近年特にサイゴンではスリやひったくり、ぼったくり、と外国人旅行者をねらった犯罪が増えているとのこと。行かれる方は注意しましょう。

【中国】


私はこの国とは縁あって今回が3回めになるのですが、最初が10年前健常者の時で香港から桂林、雲南省、四川省、シルクロードと5ヶ月かけて旅をしました。2回めが北京のみ。針治療を行いながら民間のアパートに2ヶ月ほど。そして今回はベトナム国境から10年前と同じコースをたどって、四川省の成都に来ました。この国もインド同様でかいですから、どこを旅するかでぜんぜん印象も違ってくるのですが、鉄道も頑張れば2等で行けるし国内線も発達しているから、それをうまく利用して地域を限定して旅するといいと思います。英語が苦手でも「漢字筆談」ができるし、中華も食べられます。
ただホテルですが都会だとバス・トイレ付きで1泊2000円以上はするので、ちょっと費用がかさむかしら。まあ10年前の記憶をたどっても、よっぽどの田舎以外は車椅子でも問題なく旅行できるし、中国のパワーにさえ負けなければ、後は大丈夫! なんと言ってもお隣の国ですから、気軽に来れるでしょう。さあ、あなたも悠久の大陸を満喫してください。それでは今回はこの辺で。再見!

山ちゃん、中国にて (日本での連絡先は姉MRへ)



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