は が き 通 信 Number.5
POST CARD CORRESPONDENCE 1990.9.27
《ごあいさつ》

食欲の秋です。夏の間に疲れた体を手入れしてがんばって下さい。皆様からも良いアイデアをお待ちしています

向坊


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向坊氏の通信


自立のあゆみ C簡単なECS

環境制御装置(ECS)は呼吸機能を使うもので数十万円もしますので、図のようなスナップスイッチを位い、それをマウスティックの先端にとりつけたループで操作すれば、わずか数千円ですみます。

部品は無線やラジオの店にあります。

収納ボックスは、普通5個のスナップスイッチが固定できます。スイッチレバーのトノレクを軽くするたぬにプラスチックアダプターも販売されています。


プラグは電源側、コンセントは電気器具側としますと、スナップスイッチを図のように2本の電線の片方につなげば、スイッチの開閉ができる原理です。


ボックスの5個の電線を1本のプラグにまとめ、コンセントを5本並べると電気器具の取り替えに便利ですが、その電気回路については詳しい人に尋ぬて下さい。

向坊



Uさん訪問記 そのB


第4号では、日中の6〜8時間を一人で過ごす生活の中で、UさんがECSにどのようなケアを任せているのかを,ご紹介しました。今回は、ECSのメリットやデメリットについて,Uさんからお話しを伺いました。
 先ず,一人で過ごすことに不安はないのか,もしECSが故障したらどうするのか,をお尋ねしました。自宅生活ほ5年目になりますが,この問に,こわれたことはないそうです。機械自体の故障ということはまず考えられず,こわいものがあるとすれば,カミナリ・電波・ノイズだろうということです。
こわれたら,家族が帰宅するのを待って,電話して修理に来てもらうことになりますが,それだけのことだろうと考えているそうです。故障の問題よりも,一人で過ごすことでもっと考えたのは,介助者とのコミュニケーションやスキンシップが少なくなるのではないか,ということだったそうです。
 けれども,このことはデメリットであると同時に,メリットともなります。介助者との接触機会は確かに少なくなるけれども,介助者にあれこれと頼むのに神経を費やきなくてもいいし,プライバシーが確保できると考えたそうです。
また,今までにやってもらっていた一次的欲求以外のこと,社会的欲求や自己実現に関わるケアを,代わりに頼めるようになりました。また,機械にケアしてもらうのは冷たいかんじがするとよくいわれたそうですが,「愛車」や「愛機」などという言い方もあるように,今では,ECSに愛着が感じられるようになったそうです。


今回で,<Uさん訪問記>は終わります。Uさんは紙面で紹介しなかった工夫も、いろもいろとしています。ECSやその他の福祉機器のことについてもっと詳しく聞きたい方は,電話をおかけくだきい(電話は午後1時から午後10時頃まで)。

神経研社会学研究室 W


本の紹介


ホワイトネック他編『高位頸損の管理』(1989年)−そのC−

前回は、アメリカの3人の高位頸髄損傷者の事例を紹介しました。 この3人は本の中で、人生上のシリアスな問いに対して、自分の考えを述べています。今回はキャスリーン・デシルバさん(頸髄1/2番損傷,36才女牲)の語っている部分を、半分ほどに縮めて紹介することにしました。

『受傷後の人生を、価値あるものにしているのは何か』

16才で受傷して以来、私の人生を価値ある生活にしてくれるものが、たくさんありました。私の将来を心配してくれ、支持し励ましてくれる、すばらしい、愛せる両親がいました。
私たちは、いつも親密な絆で結ばれた家族でした。両親の死後私は、毎日の生活を価値あるものにしてくれる、親切で愛すべき人と結婚しました。 私は良き仕事を持ち、そこで病院の人のために働くことに喜びを感じています。私はとても幸福だと思いますし、周囲の人々が私の人生を価値ある生活にしてくれていることを知っています。
人生が価値あるものかどうかについて、私の場合には、決して凝問視したことはありませんでした。なぜなら、いつも楽しみに待つ新しい冒険が存在したからです。それは、病院から由宅へ帰ったこと、高校を卒業したこと、自分の初めてのアパートに引っ越したこと、大学を卒業したこと、自分自身の共同住宅を設計・建設したこと、大学院を卒業したこと、女性用贈答品店を開いたこと、最初の職業を始めたこと、結婚したこと、旅行をしたこと、などでした。

『死にたいと思ったことがあるか』

うつ状態のときに死にたいと思ったことがありました。こんな気持ちをスタッフに話したくはありませんでした。これは、スタッフによって回答される問題ではありません。私や家族に関わる個人的な問題でした。わたしは今でも、患者が援助を求めた時にのみ、スタッフがこのような問題に答えるべきだと、信じています。そうでない場合には、患者が自分なりにこのような感情を処理することが、認ぬられるべきです。
多くの場合私の障害は、両親にとって一層困難でした。被ら毒には、できることが何もなかったのです。私は自分の世界の中で、男の子たちのことや、パーティのこと、だれがだれとデートをしただの、期末試験のことを、考えていました。私は今日、新たに受傷した人の両親に会うとき、彼らを励まし、これがこの世の終わりではないことを話します。重度の障害を持つ人でも、必ずや多くのことができ、満足で達成できるものを見いだします。あるときカから、私の両親は決して、私が進み到達する目標や、恋愛、結婚を疑問に思わなくなりました。家族にとって真に重要なのほ、障害者の目標や夢がすべて実現不可能なもめではないことを、認識することなのです。

『自分の生活をコントロールしていると感じているか。また、どのようなやり方でか』

自己の生活をコントロールすることは、人間の尊厳、独立、生活の質を維持するために、本質的なことです。私は肉体労働をしてもらうことでは他人に依存していますが、被らに私のニードを遂行するよう指示します。きわめて基本的な個人的二一ドを身体的に他人に頼っているときに、自分はコントロールしているのだと感じることは、ときには難しいでしょう。けれども、私短艮は利用可能な選択肢にもとづき、自身で決定や選択を行うことにより、自分の生活をコントロールし続けるのです
私の介助は、1976年に私たちが設計・建設した20戸の共同住宅で、他のさまざまな人と共有された状況で、行わめています。私たちをは、『自立した生活様式』という非常利団体を組織し、介助サービスを運営しています。このようにしてサービスを共有しているため、コストダウンさせることが可能になっています。夫のピーターは、この団体の総裁をしています。
私の職場(リハビリテーションと調査研究所)での仕事は、法人の相談、保険金管理、契約、保険、債務などです。この顧問弁護士の仕事ほ挑戦的で、毎日さまざまな問題がありまず。決して、定型的になることはありません。これまで6年間やってきました。仕事では、コンピュータを使っており、マウススティックで操作しています。

『もっとも満足しているものは何か』

私の最大の満足ほ、夫と人生を共有し、互いのあるがままをなすがままを、愛していることです。自分自身めで自立した生活をし、毎日を楽しんでいます。私は現在の宗教組織には凝問を持っていますが、私たちを越えたもっと大きなカの存在を、精神的に強く感じています。過去には、自分の状況に対して「なぜ私に」こんなことが起きたのか考えましたが、もうそんな形而上的な疑問は感じていません。
(神経の)再生の研究については、それほど考えません。なんらかの成功があったならば、病浣で人から情報を得らめます。けれど、年を取って身体上の制限が大きくなる20年後に何かが起こったしても、私になんの意味があるでしょう。
私は常に、野心的な人間でした。高い目標を設定し、それを達成すべく努力しました。受傷前の私は、職業と家庭の両方を欲していました。私の願いは、その後も決して変わりませんでした。良い仕事をしたことから得る個人的な満足は、金銭的な報酬よりもはるかに重要です。また、家や、仕事、介助などの点で安心感が得られることも、必要です。

『最も恐れているものは何か』

私が最も恐れているのは、夫を失うことです。人生め最後に一入ぼっちになることです。また、自立性や生活をコントロールする能力を失うことを、恐れています。いかなる理由にせよ、毎日の生活に必要な介助が受けられなくなることを、心配しています。
痴呆や精神障害になったり、あるいは他人とコミュニケーションする能力を失うなど、年を取ってもっと障害が重くなることが問題です。私がもっとも恐れている多くのことは、他の人のそれと本質的に違いはないのです。

神経研社会学研究室 W



IAさんの紹介


9月13日、西大宮病院に入院中のAさんとお母さんにお会いし、お話しを伺ってきました。Aさんは高校3年、1986年5月、二輪運転中め事故で頸髄2番損傷となり、自力呼吸ができなくなり、人工呼吸器をつけたままま大学病院から現在の病院に転院しました。
病室は大部屋ですが、高齢の患者さんが多く、頸髄損傷者はまAさん一人です。Aさんは気管切開のため音声が出ないので、慣れないとコミュニケーションもとれず、専ら話し相手はお母さんのみのようです。
お母さんは息子がこのままでは親として死にきれないと、情報収集に奔走されてきました。今年になって、フレニックナーブペーサー(体内に埋め込み式の人工呼吸器)を付ければ、会話や車椅子生活もできるという情報を得ました(渡辺さんが紹介されたキャスリーン・デシルバさんもそのペーサーをつけて社会生活を可能としています)。数年前、日本で初めての手術例と新開報道された方の家族に伺っても、期待したような効果はなく、また手術の費用がどのくらいかも分からず、親子で思案中だそうです。

東京都補装具研究所の協力で、Aさんは一時マウステックを使ってワープロに夢中になったこともありましたが、今の楽しみは専らテレビのようです。21歳の青年ですから、言いたいことやしたいことは沢山あるでしょうに、病室のヘルパーさんにも一度にまとめて瀬んでしまい、なにごとにつけても遠慮してしまうようです。
Aさんは最初に訪問した時に比べて多弁でしたが、長く話されると、私が不慣れのため唇の動きを読み取れず、Aさんが伝えたいことをどの程度汲みとれたか、たいへん心許ない状態で書きました。
Aさんのお母さんに刺激されて、自力呼吸が網難な高位頸損者にかんする文献を読んでいますが、米国やカナダでは最近、人工呼吸器を必要とするような頸損者は早期にフレニックナープペーザーの手術を受け、専門のリハビリ施敏で約3カ月間、学生は復学、社会人は就業を目標としたリハビリテーションの訓練対象となる例が報告されています。それらの文献もこの通信で紹介していく予定です

松井



KMさんの通信


拝啓、残暑お見舞い申し上げます。30度以上の日が50日以上も続いた宮崎の夏も朝夕は幾分しのぎやすくなりました。今年の夏は、猛暑つづきで冷房がないと生活できないくらいきつい日がつづいて、毎年のことながら夏は体温調節ができないから汗がでず熱が体内にこもって体力を消耗してしまいます。その結果なにをする気も起こらず毎日ケジメのない日々がつづいています。署きのせいだけではないですけれども。反省の毎日です。

みなさんはどのような夏を過ごされたでしょうか。私はほとんど家で好きな小説を読み、ビデオをみて、排尿の改良を少し手掛けてみました。後は友人達とどライブにいったり、ピアガーデンに行きました。久々の友人とのげドライブは楽しい時間を過ごしました。有馬さん宅にも行ってきました。これから過ごしやすい季節になりますのでこの夏の分まで動き回りたいと考えています。

はがき通信4号に発汗について書いてありましたが、同じ頸損者で私みたいに汗がでない人もいれば多汗症の人もいることを知り汗が出ることが羨ましく思ったりもしますがお亙い大変みたいですね。頸損者と汗というとどのような閑孫なのでしょうか。よい調節方法があると助かります。はがき通信5号を楽しみにしています。

発汗のこと、私たちも文献で調べてみますが、皆さんの経験などもお寄せ下さい。

KM



TFさんの通信


友人・上村数洋さん著『明日を創る-頸髄損傷者の生活の記録-』(三輪書店)が出版されました。
上村さんは私と同じC4レベルの高位頸損傷者で、ECSを使って自宅でコンピュータグラフィックスの仕事をされています。その生活の記録を本にされたということで、早速その本を注文したところです。みなさんもぜひ読んでみて下い。
1990年9月17日


Fさんの紹介で岐阜の上村さんにお電話したところ、本は同じ様な障害を持つ入に少しでも役に立てればという思いでまとめたそうです。私も一刻も早く読んでみたくなり、帰宅途中で三輪書店により購入してきました。

本はB5で132頁、定価1700円に送料310円です。

三輪書店(文京区白山2−30−3 伊膝ビル TEL:03−816−7796)さんの話では、割引も可能だそうです。本を読まれた方は、次号の通信までに読後感想、あるいは書評をお寄せ下さい。




ニュース


総合せき損センター医用工学研究室で開発された「SIC座薬挿入器」が製品化されました。

上肢の麻挿などで座薬を肛門に挿入できない人のために考案され、特徴は、肛門周囲の皮膚に傷を作らないように先端部をやわらかいシリコンで形成し、かつ手指の機能に合わせてホルダーを付けられる点だそうです。

4タイプあり、それぞれ5千円から6千円の定価です。

(財)労働福祉協会(千代田区神田小川町2−5 TEL:03−292−0282)から発売されています。




あとがき


5号のワープロ原稿を作成中、向坊さんのお体が急変して大学病院に入院されたが、病状は安定したという電話連絡が清家さんからあり、動転すると同時にほっとしました。一回り以上年下の人から、向坊さんの精神年齢は僕よりもずっと若いと言われていますが、向坊さん、無理をなさらず、十分静養してください。

向坊さんの友人で台湾からの留学生羅さんに、3号で皆さんにお配りした名簿をお貸ししました。なお羅さんも電動車椅子を使用する障害をもつ方ですが、九大大学院の研究論文に活用することが目的です.事後承諾になりたいへん恐縮ですが、皆さんの協力をお願いします。

神奈川の金子さんは、米国調査を終えて無事帰国きれたこととおもいます。金子さんの都合がつけば、次号でそのお話を掲載したいと思います。

日本ではC4レベルの損傷でも職業リハの対象から外されがちですが、米国やカナダの頸損者は、文献によれば、C2やClレベルの損傷者でも復学から就業までを目標とした総合的なリハビリテーションの対象とされています。 その違いはどこからくるのか、そな背景や要因の解明について、来年、米国へ再調査予定の清家さんにも、期待しています。

前考の通信は、マウステックの使用者には読みずらいというご指摘がありました。今回はA4で作成してみました.如何でしょうか.

なお、この通信の印刷や発送は第1号から、社会学研究室のS氏が協力して下さっています。

はがき通信は、みなさんの情報交換を目的としています。情報が一方通行にならないように、良いアイデアのみでなく、悩んでいること、困っていること、あるいは今、考えていることや通信の感想など、みなさんの便りをお待ちしています。

編集部



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