は が き 通 信 Number.2
POST CARD CORRESPONDENCE 1990.4.20

《ごあいさつ》

若葉の美しい季節になりました。如何お過ごしですか。通信の発行が予定より半月以上も遅れたことをお詫びします。私たちのはがき通信を清家さんがせき損ニュースに紹介して下さり、そのお陰で通信のお仲間が新たに8人も増えました。向坊さんも3月上旬帰国され、ご自身の生活の工夫をイラスト入りで2回分の原稿を送って下さいました。皆さんの中には知らせたいことはあるけれど、ニュースを送れない方、または知りたいことがあるけれど、手紙を書きずらい方もいらしゃるかと思います。その方々は神経研の研究室にご連絡下さい。可能なかぎり私たちが直接お話を伺いに行きたいと思います。最初からあまり気張らず、しかしできるだけ役に立つ通信を定期的にお送りしたいと思いますので、皆様のご協力をお願いします。

付記:向坊氏は帰国後、JR黒埼駅の車椅子用のスロープを利用されて、列車で鹿児島へ行かれたそうです。そのスロープは以前、向坊氏が自費(10万円くらい)でもいいからつくらせて欲しいと黒崎駅に交渉していましたが、JRの費用で設置してくれたそうです。

松井


向坊氏の通信


自立の歩み @シビン

夜の間に大量の排尿をしておくと昼が楽なので、ポットにチューブを突っ込んでいて、どんどん水を飲み、特殊なシビンに出す工夫をしてみました。失禁が防げます。


絵

これだと、タンクの大きさで、一日中シビンを取り替えることなく、安心してシッコができます。加工が難しいので、私は歯科の技巧士に頼みました。
女性の頚損の場合、どうしたらいいか、「夕涼み、よくぞ男に生まれけり」という川柳がありますが、「シビンして、よくぞ男に生まれけり」といつも思っています。

加工してくれる人が見当たらない場合は、当方へTELしてください。実費(シビン、ホース、ジョイント、郵送料など)\1500は使用後に郵便切手で送ってもらえば結構です。タンクは別ですから、適当に見つけてください。

(情報)時には酢と水を半々に混ぜて浣腸すれば、便もよく出るし、蟯虫も排泄され、あとがスカッとします。

向坊

TF氏の自己紹介


今から8年程前に交通事故にあって首の骨を折ってしまいました。C4・5です。現在、重度障害者を専門に収容している施設で安逸なる生活に甘んじています。覇気のある生活にどっぷり浸りたいと熱望しているのですが、なかなか私の肉体と私をとりまいている外部環境が許容してくれません。現在、32歳になってしまいました。
向坊様のフィリピンでの体験記を読みまして感激しているしだいです。この計画を実行に移すまでには多くの障害があったでしょう。目標を自己実現していった行動力に感服しております。S様のアメリカのバークレーでの生活や向坊様のフィリピンでの生活に非常にあこがれております。
私もできるならばそのような行動を実践したいと思っております。しかしながら私の容態はあまりかんばしくありません。腹部に新たな尿路をつくってマリコットカテーテルという特殊なカテーテルを24時間挿入していなけれはならないのです。おそらく私には実践は不可能でしょうけれども多くの素晴らしい情報を入手したいと切望しています。「はがき通信」には大賛成です。ではよろしくお願いいたします。

TF

付記:この手紙は□述筆記で書かれたものです。4月の半ば、Fさんにお会いしてきました。F氏は□述筆記の方法で受傷後の生活を克明に記録されています。今は本を自動的にめくる装置と、頚から上の汗がひどいので、良い方法があったら教えて欲しいそうです。

松井

本の紹介


ホワイトネック他編『高位頚損の管理』(1989年) −その@−


前号でお知らせした、この高位頚損者に関する初めてのリハビリテーション医学書では、本文364ページ中の64ページ、約18%を、退院後の社会生活に関わる問題(第4章 現実の世界)にわりあてています。この扱いは、受傷後に高位頚損者が送る人生の長さや問題の重要性から考えると、必ずしも十分とはいえませんけれども、どんなことが書いてあるのかを、何回かに分けて紹介していきたいと思います。

概要をお話ししましょう。この章は、5つのトピックスと1つの統計調査との、6つの節から成っています。最初の節は、シリアスなテーマです。人工呼吸器を必要とする高位頚損者の生命存続についての決定権を持つのはだれか、どのような点から当事者の決定を妥当と判断してもよいか、といった倫理上の問題をとりあげています。つづく4つの節では全体としては高位頚損者のクオリティ・オブ・ライフ追求のために重要と考えられる論点を検討していますが、各節ごとに、異なる視点からアプローチしています。

それらは
  1. 自らのクオリティ・オブ・ライフを追求する積極的な「消費者」としての高位頚損者
  2. 保険業界(これはちょっときき馴れない話ですね)
  3. 高位頚損者やその家族に提供するサポートシステムを検討する人=ケース・マネージャー
  4. 政府援助(メディケイド)
です。そして最後の節では、リハビリテーション施設入所者の追跡調査結果が紹介されています。
アメリカの高位頚損者の今日の問題を理解するには、彼らの生活実態を把握することが、その助けとなるのではないかと思います。彼らは障害の重度さにもかかわらず、とても活動的で生き生きとした生活を送っているようです。そんな生活の様子を、次回は最後の節の調査データから示すことにしましょう。
東京都神経科学総合研究所社会学研究室 W

<ニュース1> 朝日新聞より

あとがき


向坊さんの通信にもありましたように、女性の頚損の方はどうしたらいいのかな、と思うことがよくあります。
神経研の調査などでも脊損・頚損の女性の回答者は1割程度しかいませんし、女性の場合は仲間どうしのコミュニケーションの機会が少なく、情報を交換することがむずかしいと思います。

このはがき通信にも『女エジソン』が早く登場してくれて、「−−−よくぞ女にうまれけり」と一句川柳なぞを作ってくれるといいですね。

東京都神経科学総合研究所 社会学研究室 W

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