はがき通信ホームページへもどる No.106 2007.7.25.
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 連載「BOOK ENDLESS」最終回
  佐賀県支部 中島虎彦


 「第12回 NHKハート展」
 (NHK・NHK厚生文化事業団など主催、障害者施策推進本部後援、王子製紙・日本放送出版協会など協力、2007年)

 今回はNHKハート展を取り上げさせてもらおう。以前は入選作品集が本になっていたが、最近はどうなのだろうか。

「本心」石川清重(2007年)

 「甘えてなんかいるか!」
 顔を真っ赤にして叫ぶ
 悔しくなって叫ぶ
 涙ぐんで叫ぶ
 叫びながら
 甘える自分がみえる

 「NHKハート展」は、ホームページによると、障害のある人が日常生活の中で感じたことを一編の詩につづり、各界で活躍中の人たち(健常者)が、その詩に託された思いを「ハート」をモチーフに表現した展覧会である。平成6年より「障害のある人もない人も、誰もがともに暮らせる社会」の実現をめざして始まった。今回で12回目を迎える。
 五千編弱の応募があるという。応募作は数回にわたる選考会で丹念に読みこまれ、50編の詩が選ばれる。飾らない言葉で表現されたものが多く、力強いもの、切ないもの、静かに微笑みかけてくるものなど、読む者の心に語りかけてくる。その詩を受け止めて描かれた絵が、新たな輝きを加え、50組の詩と絵のコラボレーションが生まれてくる。福祉キャンペーン「NHKハート・プロジェクト」の中核となるイベントとして、全国各地で「心のバリアフリー」が進むことを願って巡回されている。選考委員は、佐々木幹郎(詩人)、牧口一二(障害者文化情報研究所所長)、森山明子(武蔵野美術大学教授)、吉増剛造(詩人)、船越雄一(NHK番組制作局文化・福祉番組部長)の各氏からなる。
 入選作のうち、先の石川氏は1952年、山口県生まれ、熊本県在住。コンピューターのハードウェア保守の仕事をしていた1991年、高速道路で自損事故を起こし頚椎4番損傷。退職後はパソコンのプログラミングの仕事をしている。1996年の第2回NHKハート展を見にいき、感動して自分でも詩を書き始め応募するようになり、第3回、第4回、第8回、第11回、第12回に入選。五回の入選とは実力者である。詩は個人的な趣味で書いていて、月一回のホームページの更新に合わせて詩を載せ、障害者の気持ちを表わしているという。著書などはない。氏の過去の作品を見てみよう。

 「停留所」 (1998年)

 いつもの散歩道の
 いつもの竹薮の前が
 電動車椅子の停留所
 空を見上げて雲を眺めていると
 元気な子供の頃
 同じ雲を見ていたような気がして
 涙があふれてきた
 自分で拭けないのに
 人に見られると恥ずかしいから
 急いで発車した

 「雑踏」 (2003年)

 久しぶりの繁華街
 華やかな人の波
 二度と戻れないと思っていた街
 いつか戻ると夢見てた
 懐かしい入ごみの中にいる
 しかし
 車椅子からの景色は
 お尻、お尻、お尻
 雑踏の中では異邦人

 「うたた寝」 (2006年)

 テレビの音の間から
 かすかな寝息が
 ベッドの足下で聞こえてきた。
 仕事をして、家事をして
 その後も
 私の手となり、足になる。
 そんな妻の寝息が
 枕を涙で濡らします。
 風邪を引くといけないから
 早く起こしたいけど
 涙が乾くまで少しだけ待ってもらおう。

 いずれも中途障害者の心情を切々と訴えている。やや感傷に流れがちなところはあるが、「本心」では自らの深奥にさらに目を向けている。詩を書き続けてゆく以上、避けては通れない道筋だろう。書くことによって自分を客観的に見つめ直すことができる。カウンセリングの役割も果たしている。

 ※(社)全国脊髄損傷者連合会(http://www.zensekiren.jp/)の会報誌「脊損ニュース」に中島虎彦さんが好評連載されていました「BOOK ENDLESS」最終回(2007年4月号)を転載させていただきました。



 はがき通信「広島頸損ネット10周年」 


 広島頸損ネットワーク(以下、NW)が発起10周年を迎える。思い起こせば十数年前、「はがき通信」を頸損仲間から聞き興味を持ったのがNW発起の始まりであった。向坊さんの来広に刺激されたことや、何回目かの浜松懇親会に参加した時、同席した広島県人が頸損者の情報交換の必要性を痛感して帰路についた思い出が蘇える。当時、自分的には単独浜松行きは大冒険の旅路であった。
 有志数人が集い浜松懇親会の雰囲気に乗じてNW発起となった。当時の記憶も覚束ない昨今だが、集いしメンバーは平均10歳も若く……意気盛んな重頸損者集団が産声をあげたのである。
 施設に暮らしていた玉葱オヤジも当時はトドのおっさんと呼称され、垢抜けしない頸損おじさん風体であった(注釈:今は薄皮剥けば透き通るような美肌玉葱になり損ね)。年々、「はがき通信」の仲間に会うのを楽しみに懇親会参加となった。横浜、博多、京都、小倉、地元広島でも2回開催。
 「はがき通信」に参加することで、広島の頸損者が重頸損から軽損気分に変貌したように思う。気軽に気楽に気さくに起動性が増した。電話回線から光ファイバーへと転換したような雰囲気。そして、10年の歳月は軽損者の活動に質の向上を求められ始めている。ハイビジョンのデジタル化のように鮮明な意思表示と発言が障害者福祉の現場に届けられる必要がある。
 NWも自立支援法の行方を見守るだけでは意味が薄れるし、「はがき通信」の変貌を地方から支えるという心意気も必要だろう。NWにはこの春、ハイパワー軽損頭脳細胞が誕生した。新会長の手腕に期待するNWの古玉葱の独り言です。継続とは脱皮と変質で行く先を模索することでしょうね。(2007年5月末日)

広島市:Y.S.



 今年はウイーン少年合唱団コンサートへ行きました(前編) 


 「通信」の皆様しばらくお便りが書けずに大変ご無沙汰いたしておりました。いかがお過ごしでしょうか。毎日梅雨時とは思えないような猛暑が続いておりましたが、やっと何ともなく梅雨に入ったかのような今の頃です。私は、2年前にギックリ腰のようになり検査(MRI、CT、レントゲン)の結果2カ所の椎間板ヘルニアがあると云われ、湿布薬を貼ったり、痛みの強い時には、飲み薬を使ったりはしています。左足は、腰からの神経の痛みがありあまり無理はできません。特に重い物を持ったり、長時間は歩くことも辛くなってきています。毎日の生活もゆっくり時間をかけての生活をしています。
 主人は、毎日どうにか元気にはしていますが、脳梗塞で倒れて以来8年目を迎えたえず良い方向へと努力はしてきていますが、だんだん衰えが見え始め、尿や便もすべて教えることもなくなり、体力的にも弱くなりすぐ風邪を引き熱を出したり(月に2〜3回鼻水・くしゃみ・痰の絡んだ咳、次は熱が出るといった同じようなパターンで繰り返す)ということで、何回も病院通いをしている現在です。3〜4年前に一度肺炎を発病していることから、熱を出すということには特に注意に注意を払い初期対処に力を入れています。毎日の体温測定、血圧測定など何かと忙しく、だんだん私・主人ともに毎日の生活が大変になってきています。とにかく一日をゆっくり家の中のことや介護をしたりしている現状です。
 そのような日常生活の中で今年もウイーンより、ウイーン少年合唱団が来日し、5月3日埼玉芸術劇場コンサート会場へタクシーに乗り出かけることができました。お天気も晴れ、最高の一日でした。主人は、朝からニコニコ顔で、朝食も食べずに早く行くなどといいPM2時から始まるコンサートに朝から大張り切りでした。朝の血圧・検温・食事・薬を飲むなど、出かけるまでには大変です。正午近くに家を出て約40分初めて行くさいたま市の芸術劇場です。昨年は埼玉県の公演はなく、今年は2回の公演があります。今回は第1回の公演です。主人は本当にうれしそうです。いよいよPM1時30分開場です。車イス使用者用のチケットを手に入れ大勢の観客と一緒に入場することができました。いよいよPM2時開演です。舞台に並び純白なセーラー服姿の25人の少年たちに可愛い可愛いと大喜びでした。第1部Aプログラムの曲目は、宗教曲ハイドン作曲、アレルヤです。次はサンサーンス作曲、アヴェ・マリア他6曲です。世界の歌の部では、オーストリアの歌、日本の歌では、昔懐かしい「ふる里」を上手な日本語で歌い上げました。主人は「ふる里」を舞台の子どもたちと一緒に歌い出したりと、ちょっとしたハプニングもあり、私をビックリさせました。思わず「シー」と合図をし「歌ってはダメ!」と注意をしたりしました。第2部は、ヨハンシトラウス作曲ポルカ「雷鳴と稲妻」など楽しく弾むような曲を楽しみました。もう一度日本の歌「浜辺の歌」など親しみ深い曲目を歌いました。最後にあの有名なヨハンシトラウス作曲「観光列車」「美しきドナウ」を立派に歌い終了しました。
 今日一日、素晴らしく美しい歌声を聴き何かほのぼのとした気持ちになることができました。主人も心から喜び、少年たちから大きなパワーをもらったように輝いた顔をしていました。アンコールアンコールで大盛況でした。(後編へ続く)
 

埼玉県:Y.S.



 ひとくちインフォメーション 


 ◆シャツごと冷やす瞬間冷却スプレー
 「ケイタイエアコンJETα」 冷却液(瞬間冷却温度マイナス40度)を服の上から吹きかけることにより、冷却液が繊維に染み込み、その液体が蒸発するまでの約10分間は冷却効果や吸汗効果、抗菌&除菌効果が持続するケミカル冷却スプレー。強冷用、オフィス用、安眠用の3種類と徳用サイズ(420ml・1575円)あり。840円、220ml、日本製、成分(エタノール、シリコン系界面活性剤、香料、無機系抗菌剤、LPG)。
[問い合わせ先]㈱ 日新メディコ
 TEL: 03-6418-0883
 http://www.keitaiaircon.com/


 ◆別府の重度障害者焼死:入居知っていれば…早期救助の可能性指摘/大分
 ◇別府市が防災説明会
 別府市千代町のユニバーサルマンションで、重度障害者の五十嵐えりさん(25)が焼死した火事で、同市は10日、障害者や介護事業所などを対象に防災説明会を開いた。市消防本部は火事の反省点を指摘した。【渡部正隆】
 市福祉保健部の宮津健一部長は「建物は最新のバリアフリー構造だが、不幸な事実が重なった。障害者自立支援法で地域に出て暮らす障害者が多くなるが、二度と被災者を出さないようにしたい」と述べた。
 五十嵐さんは7年前、交通事故で頸椎を損傷し車椅子の生活に。先月21日の出火当時は電動ベッドに寝ていて火事に気付き、119番し、ヘルパーにも連絡した。
 築2年のマンションは7階建て。12世帯(うち10世帯は障害者)とNPO法人・自立支援センターおおいたの事務所が入居。五十嵐さんは6階で一人暮らしをしていて、階下の同センターの職員だった。
 出火当時、五十嵐さんのヘルパーは買い物に出かけ、NPOの職員も研修会で留守。消防隊は最初の通報から3分後に現場に着いたが、玄関や屋外階段の施錠で救助に手間取った。
 市消防本部の伊勢戸国弘予防課長は「10世帯も障害者が入居していることは今回の火災で初めて知った。これらを知っていれば、事前に消火・救助の方法を検討していた」と、より早い救助の可能性を指摘した。
 会場には、自立支援センターおおいたの米倉仁理事長も参加。今回の火災について「6月に開く福祉フォーラムで討論し、(見解などを)明らかにしたい」と述べた。
(情報提供:毎日新聞 平成19年5月11日)


 ◆本の紹介
 『それでも僕はあきらめない—元F3レーサー、車いすからの新たな挑戦』
 クラッシュ事故による死の淵からの生還。そして今、障害者のためのファッション革命、F1チャンピオンに挑む! 夢を追い続けることの大切さを伝える魂のノンフィクション。絶望を乗り越えたからこそわかること、できること。
[著者紹介]1979年東京生まれ。2002年鈴鹿サーキットで行われたF1世界選手権の前座レースで大クラッシュ、頸椎損傷四肢麻痺の重度障害者になる。リハビリを続け、2004年にレースに復帰。




目次/1章 クラッシュ
   2章 レース馬鹿
   3章 折れない心
   4章 アメリカへ希望を探しに
   5章 復活!
   6章 ジーンズを履きたい
   7章 前だけを見つめて
 長屋宏和 著 大和出版 出版
 1575円(税込)







【編集後記】


 懇親会実行委員について、今年の京都懇親会2007は、伊藤さん・大竹さん・瀬出井さん・星野さん・藤田の5人の実行委員のチームで鋭意準備させていただいており、是非ご参加いただけますようによろしくお願いいたします。なかなか全国の仲間が会う機会は少なく1年に1度の懇親会での交流は大切だと思います。
 そして毎年懇親会の実行委員に手を挙げていただける方が現れて、全国各地で開催できればいいのですが、なかなか難しいところです。京都市の聞法会館ですと、一から条件に合うホテルや会場探しなどの準備を始めなくても今まで2回開催したノウハウがあり、数名で役割分担すれば一人一人の負担がかなり少なくなり懇親会を続けられるのではということになりました。これから実行委員を1〜2人ずつ交替しながら懇親会を続けられるのではないかと試行の意味合いもあります。また、京都駅から徒歩約15分で、宿泊場所と同じ館内に安く会場を借りられ、観光場所はたくさんあり、アクセスもおおよそ日本の真ん中と条件が整っています。
 来年も京都で懇親会の計画があります。まだ先のことですが、2008年の懇親会で役割分担した一つの役割をどなたか担っていただけますようにどうぞお願いいたします。
 次号の編集担当は、瀬出井 弘美さんです。
 

編集委員:藤田 忠



………………《編集委員》………………
◇ 藤田 忠  福岡県 E-mail:fujitata@aioros.ocn.ne.jp
◇ 瀬出井弘美  神奈川県 E-mail:h-sedei@js7.so-net.ne.jp

………………《広報委員》………………
◇ 麸澤 孝 東京都 E-mail:fzw@nifty.com

………………《編集顧問》………………
◇ 松井和子 東京都清瀬市国立看護大学校
◇ 向坊弘道  (永久名誉顧問)

(2006.11.25.時点での連絡先です)

発行:九州障害者定期刊行物協会
〒812-0069 福岡県福岡市東区郷口町7−7
TEL&FAX: 092-629-3387
E-mail: qsk@plum.ocn.ne.jp

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