はがき通信ホームページへもどる No.105 2007.5.25.
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<特集!「尿路管理」>


 今号の特集は「尿路管理」です。合併症にもつながることですが、頸損にとって基本中の基本とも言える健康管理のひとつです。
 「尿路管理」について情報交換のために皆さんの体験談(留意している点、工夫している点、困っていることなど)のご投稿をご紹介させていただきます。
 なお、「尿路管理」や今までの特集(頸損と合併症・パソコン入力の工夫・暑さ対策)および連載特集の「介護する側、される側」は、次号で引き続きご投稿をお待ちしております。どうぞよろしくお願いいたします。



 <特集> 尿路感染防止方法 

C6不全、頸損(病気)歴23年、手動車イス使用

 昨年まで会員でもないのに、今まで3回ほど懇親会にお邪魔していましたが、このたび会員となりました。そのご挨拶として、投稿させていただきます。
 今回は、尿路感染について、私なりに対応していることについてお話しします。
 その前に、私は病気で四肢麻痺となりました。幸運にも、手術後1ヶ月過ぎてから、部分的にですが感覚が少し戻ってきました。ですので、6ヶ月間は導尿していましたが、その後は自排尿となりました。
 しかし、緊張によって、膀胱容量が小さくなり、また、全てを出し切ることができないため、どうしても膀胱内で菌が増殖しやすくなりました。そのため、食事や水分摂取や排尿量について、入院時に細かく記録しました。
 そこで、どのような飲み物や食べ物を取った後に、どれくらいの量がいつ出てくるかがわかってきました。わかってくると、その量やタイミングで、自分の体調がわかってきます。
 例えば、いつもなら、もう出てもよいはずなのに出ない時や出る量が少ない時は、腸からの吸収が十分にできず、下痢をおこす可能性があるのかもしれません。ホテルや空調の効いた場所にいて、息から水分が出ているだけかもしれません。人それぞれだと思いますが、私の身体で試した結果は、次のとおりです。
[珈琲や紅茶、緑茶、ジュース]
 約30分後に出始めます。体調不良の場合は、早めに出てきて、回数が多くなります。この他の飲み物と組み合わせて、2時間に1回程度出るように調整します。あまり出ない時に飲むと効きます。効きすぎると、必要以上に出るようで、その後4時間くらい出ない時があります。
[コカコーラ]
 珈琲とは別にしていますが、これも30分後には出ます。しかし、風邪気味な時に飲みます。受傷前から、風邪のひきはじめに飲むとけっこう効きました。数時間で、症状が緩和する場合もあり重宝しています。しかし、飲みすぎると、数分おきに出てくるので注意が必要です。
[ウーロン茶やスポーツドリンク]
 2時間以内に出てきますが、あまり気にせず飲めます。
[ただの水]
 思ったほど出ません。体の中にたまっていくような感じです。
[ビール]
 がぶ飲みすると一気に出ますが、私の場合は、あまり利尿作用はないようです。
 どのタイミングで水分摂取をすればよいかは、皆さんいろいろあると思います。私は、はじめ、出した後に出した量に見合った水分を取るようにしていましたが、抜けられない会議などがあるので、1日の中で飲む量を決めて、メリハリをつけるようにしています。おかげで、毎年検査入院して調べていますが、全く問題なく過ごしています。
 こんなことをしていても尿路感染はおきる場合がありますので、クラビットという比較的軽めの抗生剤をいただいており、1日1回3錠飲んで血中濃度を上げ、徹底的に菌をやっつけるようにしています。薬の飲み方も、かかりつけの医者や薬剤師の方に相談して工夫されると楽になると思います。
 皆さんも、いろいろなものを食べたり飲んだりした後、チェックしてみてはいかがでしょうか。

北九州市:I.M.


 <特集> 妻への感謝 そしてイレウス(腸閉塞)と尿路感染 

C5、頸損歴18年、47歳

 初めまして福岡県在住のK.M.と申します。前から友人の勧めもあり、「はがき通信」を読ませていただきました。正直、「はがき通信」の情報の多さには驚きました。私もこの18年間を振り返ってみると、妻の献身的な介護に支えられて来たことが一番で、あと比較的近くに救急病院があったことです。もう16年、お世話になっています。何時でも受け付けしてもらえるので、自宅で生活できたのだと思います。
 私の問題は、主にイレウス(腸閉塞)と尿路感染です。私は受傷時、将来を考え過ぎたのか(?)ストレスから短期間で十二指腸潰瘍になり、大きな穴が開きました。下血が止まらず輸血と点滴の毎日でした。何日か経って下血の原因(十二指腸潰瘍)が解り、救急車で別の病院に行き、十二指腸と胃の半分を切除しました。その時はずっと救急外来のICUに入っていて、毎日が凄い現場で眠れなかったことを覚えています。あとにお腹を開けたこともあり、今でも年に1〜2度イレウスで入院する始末です。  
 とにかくイレウスになると、入院は早くて1週間〜10日、長くて2週間ぐらいベッドに張り付いています。きついけど暇で仕方がありません。なかなか気を付けていてもなる時はなります。私なりの原因で思い付くことはちょっとした食べ過ぎや気温の変化、体の冷え等いくつかの悪条件が重なるとなるみたいです。なぜか春先と12〜1月が多いですね。
 また、イレウスになりかけると時間が経つにつれ、胸やけがして次に嘔吐が始まります。腸の動きも弱々しく、ここまで来たらもうだめで病院に行きます。その時の詰まり具合にもよりますが、胃までの短いチューブで改善すればまだ楽な方です。腸まで挿入するイレウス管チューブはきついです。レントゲンで撮りながら鼻から管を出し入れし、小腸まで2〜3㍍ぐらい挿入して行きます。それはもう、鼻がちぎれそうに痛くて涙も止まりません。その後、しばらくは絶飲食。あと座薬や浣腸でお腹の中の物を出します。
 初めて入れた9年前は、イレウス管チューブも太くて堅く、あまりの苦痛でイレウス管チューブがトラウマになるほど。退院しても食べて詰まることの恐怖から67㎏あった体重が45㎏にまで減りました。そのようなことを毎年、繰り返しながらも1年半前、癒着の場所が特定したので手術に踏み切りました。医者には手術前の話で、「麻痺がある体なので腸の動きも弱く、またなるかもよ?」と言われていましたが、私はこの手術に賭けました。手術はお腹を20㌢ぐらい開けて癒着していた腸を全部はがし、癒着防止シートを敷く手術でした。しかし、その願いも虚しく昨年暮れにまたなりました。やはり難しいですね。
 あと予防としては、ツムラ大建中湯(100)とガスコンや整腸剤を飲んでいます。冷え対策では貼るカイロや蒸しタオルも使っています。温めると腸の動きも良いみたいです。余りにもお腹が張っている時は、管で直腸からガス抜きをします。ガスを抜く管も1本350円ぐらいですので、以前に比べると少しは対応できるようになりました。
 もう一つの問題は膀胱です。昨年の10月には尿路感染で入院しました。2〜3日は様子を見ていましたが、だるさと発熱で我慢できず、病院に行ったら即入院です。検査の結果、緑膿菌が悪さしていました。抗生剤を短期集中で投与。すぐには菌と薬が合致しませんでしたが、何とか(運良く)熱、白血球やCRPの数値も下がり10日で退院できました。今までに抗生剤を多用しているので効きにくく、菌と合致する抗生剤を見つけるのが大変みたいです。
 受傷して18年、膀胱瘻(ぼうこうろう)で20fカテーテルを入れています。自宅ではウロガード(2500㏄)を使い、外出は500㏄の収尿袋をすねあたりにバンドで取り付けています。受傷して13〜4年、熱が出ることもなく順調でした。この何年かは菌の悪さも多いです。原因は膀胱の変形や縮小で溜められる量が少なくなったからなるのか? 食欲がなくなった時、免疫も下がるのでなるのか? はっきりは分かりません。ただ昔に比べると、膀胱に溜まる量が60㏄から今では25㏄です。
 また、失禁や入院が多くなってから泌尿器の薬「バップフォー」を飲むようになりました。「バップフォー」は失禁の予防薬(膀胱に溜める効果。その代わり、のどの渇きや過緊張症状あり)ですが、腸の動きには良くないらしく、12月に今度は「イレウス」で入院しました。悪条件が重なったのでしょう。感染でやっと退院したと思えば今度はイレウスで入院。正直、嫌になります。
 その時は夕方からお腹の張りも凄く、むかむかしてガス抜きや排便もやってみましたがまったくだめで24時から嘔吐しました。結局、夜中(3時)でしたが病院に駆け込みました。レントゲンを診ると腸に液とガスが溜まりに溜まり、そのまま入院です。あとでほっといたら捻転を起こし腸が壊死(えし)してしまい、最悪は開腹手術の危険があったことを医者に聞かされ、びっくりしました。
 今回のイレウスが「バップフォー」を飲み始めて一番ひどかったので、なんとなく「バップフォー」薬をネットで調べてみました。そのウェブサイトには(見ただけで詳しくは解りません)「イレウス」になる危険性が高い人は、「禁薬」と載っていたこと。すごく納得できました。ただ私の場合、難しいところでイレウスと失禁や感染、どっちのリスクが低いか? を考えています。その反面、必須薬で仕方がないことだとも思っています。「はがき通信」を読んでいても、いかに膀胱と腸が密接な関係にあるかが良く解りますね。
 私は結婚して20年になりますが、妻には感謝してもし過ぎない思いで一杯です。移動も妻が運転しますし、乗り移りも車イスから自動車へ意外とスムーズです。いろいろと人様の状況を聞いても、自分は恵まれた環境で生活していると思っています。
 いろいろ書きましたが皆様も、日々の生活では大変なことばかりでしょう。人生、明日には何が待っているのか誰にも分かりません。私としてはこれからも穏やかな暮らしが続くことを願うばかりです。

福岡県:K.M.



 <特集> なにがあっても当たり前(?)の私の尿路管理 
脱線だらけでごめんなさい!
 


 私は頸損歴まもなく26年目に突入という、C4・C5の不全麻痺、自慢できるほどの痛みと苦しみと神経の大暴れ、内臓も含めての大暴動(自律神経過反射)、数年前に脊髄空洞症併発、無知なので、日々悪化する苦痛と筋萎縮、関節拘縮にもへこたれそうになりながら、頑張れがんばれ愛しい身体、頑張れがんばれ愛しい心、精一杯わが身にエールをおくりながら、この一瞬一瞬を大切に生きようとしているマヌケな田舎者です。
 4年前、支援費制度施行を機にこの地元で自立への第一歩を踏み出しました。が、未だに自立ならずで毎日四苦八苦、壁にぶつかってばかり、たんこぶだらけの泣き笑いの中で、ただ、人間でありたい、最後まで人間であり続けたい、自分の人生を自分らしく、そんな今を必死に生きております。
 本題の私の尿路管理……現状において可能な限り奮闘いたしておりますが、情けなくも管理しきれずで内心大きな不安の一つです。
 私は全て頸損の達人たちに教えていただきながら、追いかけながら、自立の道を選択しました。もちろん自分の意志で。長年、膀胱瘻(ぼうこうろう)という言葉さえ知りませんでした。多忙な母に導尿してもらっておりました。
 「ピアスのようなもんだよ。」の言葉に勇気をもらって、一人暮らしスタート翌年に、膀胱瘻(ぼうこうろう)造設は初めて(?)という地元の病院で、……先生、予定があるので土曜日に退院させて下さいね……などと。尿のたまる苦しさもわかり、全ての刺激が過反射となってくる私には、膀胱瘻(ぼうこうろう)造設による別の苦痛とも遭遇しましたが、人手を煩(わずら)わせることが少なくなったということのなんと気楽なこと、この時から二つのへそを持ち、二つの膀胱を持つ新たな自分の身体も自慢になりました。「膿みが出ても出血しても当たり前(傷口のところ)」の言葉にまたまた勇気百倍、お風呂あがりのテープ交換で心配する介助スタッフにも安心してお願いすることができました。
 制度変わりまでは月1の通院と往診で、ほぼ2〜3週間置きにカテーテル交換していたのを、状況が厳しくなったので、昨年9月から往診のみでお願いいたしております。4週間置きでもいいのかも、などと最近は思ったりします。
 当初から、それ以前からですけど、よく熱は出ます。消化器機能も低下している私のお腹が苦痛を訴えるのでできるだけ抗生物質を控え、できるだけ水分摂取で、カテーテルが詰まったりの恐怖もあるので、人がいる時はできるだけ水分摂取、水分調整、それでも計算通りにはいかず、このごろは特に苦しくなる場面が多いので、いよいよ脳血管切れるかなぁ、の不安の中、精一杯わが身体と相談しつつ、試行錯誤いたしております。
 水分摂取もまた刺激の一つ、過反射につながります。それだけでもなく、どんどん薬(主にポラキス)が増えてしまっております。現状の中で、自分が自分でいられるために、自分の一日を自分らしく生きたいがために……。
 昨年暮れごろ、「もうダメだ、死にたいじゃなくて、死ぬような気がする」そんな時に『痛みと麻痺を生きる−脊髄損傷と痛み−』の御本が届きました。「まだまだ頑張れそうだわ、がんばろう!」とても単純なS山です。まだ読ませていただいてはおりませんが、いつも目の前にお守りとして……。
 人は心で生きられてしまう、頑張れるんだなぁ、有り難いなぁ、勿体ないなぁ、なんて思いながら、頑張れがんばれ自分の身体、頑張れがんばれ自分の心、今日も一瞬一瞬を自分らしく生きられますように!
 尿路管理からかなり脱線してしまいました。ごめんなさい。実は、今、人間はどこまで人手がかからない身体になれるんだろう。人工肛門にしたら楽かなぁ……それで私の身体(体力も含めて)はどうなるのだろう。そんなことを真剣に考えつつ……皆さん、どうかご相談にのって下さい。
 2007年4月11日
 

福島県:T.S.



 <特集> 膀胱瘻(ぼうこうろう)、目下の悩み 

C5受傷20年、58歳♂

 膀胱瘻(ぼうこうろう)を造設したのは88年8月8日だから、もう19年バルーンカテーテルを留置している。おそらく死ぬまで留置するのだろう。
◇症状
 テルモ社製の16フレンチを3週間に1回交換していたのだが、このところ調子が悪くてひどく詰まりやすく、なか4日で交換したこともある。そのため膀胱洗浄も以前は週に1回だったのがいまは3回。太くすれば少しはましだろうと18フレンチを試したが、瘻(ろう)にはいらなかった。
 詰まると苦しい。膀胱が一杯になると本来の尿道から失禁するのだが、過反射が来る。鳥肌の立つ感覚が頭・顔・頸にゾワゾワッと広がり冷や汗が出る。血圧が上がって目の前の風景が点滅する。詰まったとわかったときから水分は摂らないようにするが、なにせ膀胱容量は30ccしかないから過反射は15分おきに来る。ドクターが来てバルーンを交換するまでそれはつづく。つらい。交換が終わったら着替えをしなければならない。汗びっしょりだ。

◇対策
 いくらカテーテルをミルキングをしたって腹の中にはいっている部分はしごけない。抜いて調べると先端ちかくにジャリッとした固いものが詰まっている。分析したところ「リン酸系のもの」だという。尿をアルカリ性にすると固まりやすく、酸性にすると固まりにくくなるそうだ。酸性にするには肉を多く摂るといいらしいのだが、糖尿病なのでカロリーの多いものはなるべく避けている。でも肉がいいと医師が言うのだから、これからは大手を振って、ちょっとヤケクソ気味ではあるが、肉を食うことにした。おとついなんか揚げたてのトンカツを食った。中濃ソースとカラシをたっぷりつけて。うまいのなんのって。
 糖尿にはグアバ茶がいいというので数年前からグアバ茶を毎食飲みはじめた。飲んだ翌日から尿がスッキリきれいになった。白濁が取れて透明になる。思わぬ副次効果におどろきよろこんだ。バルーンの詰まりがひどくなったとき、1日3回でなくもっとたくさん飲めばいいかと思って一日中ガブガブ飲んだら、もっと詰まりやすくなり、詰まる原因は何なのかわからないのだが、試しにグアバ茶をやめたところ、すこし良くなった。グアバ茶には尿中の浮遊物をかためて凝縮する働きがあるのではなかろうか。健常者には良くても障害者には悪いものがあるので用心が必要だ(ちなみに寒天が血糖値を下げるというので毎日せっせと食ったが、これも便を固くする。やめたら元に戻った)。
 何にどういう作用・副作用があるのかわからない。膀胱洗浄の液を生理食塩水から精製水に変えた。塩が含まれているならそれがカテーテルに付着することもあるのではないかと考えたのだ。ドクターは「関係ない」というのだが。
 「尿路感染を防ぐ」というふれこみのクランベリージュース100%も飲みはじめた。アルカリ尿を正常なpHにし、結石をできにくくするのだとか。500ccで1050円もするが、詰まりを防げるなら安いものだ。 
 どうすれば詰まらなくなるのか、誰か教えてほしい。毎日薄氷を踏む思いだ。
 

東京都:F川



 <特集> カテーテルが真っ赤に 


 膀胱瘻(ぼうこうろう)にして3年経ち、朝起きてすぐ水を飲んでいることもあり、尿もよほど疲れない限り濁らずに順調にいっていたところ、今年3月の土曜日の入浴時に、出血していてカテーテルが真っ赤になっていました。たまに少し薄く赤っぽい尿が出ることがあっても、しばらくすればいつものように出血も止まるだろうと楽観視していると翌朝も真っ赤でした。
 それでも別に熱もなく、体調も悪くないので、今日一日様子を見て悪かったら月曜日に病院に行こうと様子を見ることにして、車イスに移乗すると出血は和らいだように薄くなりました。一安心して夜にベッドで仰向けの体勢になると、また出血して真っ赤な尿が出ます。
 いつもは出血しても翌日にはわからないぐらいに薄くなっていくところ、2日間も真っ赤になり最悪即入院も頭をよぎりましたが、幸い3日目から出血もおさまったように血の色が薄くなった尿が出るようになり快復にむかいました。どうも2日間も出血が続いたのは、仰向けの体勢ではバルーンが傷つけていたのかと思いました。
 後日、F川さんより「バルーンを深く入れすぎると尿道を傷つけて出血することがある。私は、挿入してふくらましたのち、風船が引っかかるまで引っ張る(1㌢くらい)。 しかるのちに管をテープで腹に止めています」とアドバイスをいただきました。それからは管の遊びを引っ張ってから固定するようにしています。
 

編集委員:藤田 忠



 <特集> ずっと「膀胱瘻(ぼうこうろう)」の私です 

C8レベルくらい

 平成元年8月に受傷。搬送された病院では留置カテーテルだったが、Kリハビリテーション病院に転院後すぐに膀胱瘻(ぼうこうろう)施術。当時は良いも悪いもなく、損傷レベルからの判断だと思うが「そんなもの」という認識程度で、「将来的に塞ぐことは可能」という説明のもと、ベッドサイドでポンと開けられてしまったという記憶がおぼろげながらに残っている。その後身体機能レベルが良くなり自己導尿を勧められたが、介護やトイレの大変さ等から断り、現在に至る。今のところ大きなトラブルは起きていないが、膀胱容量が小さくなり管の折れ曲がりや詰まり等注意していないと過反射がほとんどないため、気がついた時にはグッショリ。瘻(ろう)周辺がジュクジュクすることもほとんどなく、ヘソ下約8cm。第2のヘソのようになっている。
 以下、簡単に箇条書き的に書いていってみようと思う。
◇バルーンカテーテルの素材・サイズ:オールシリコン製(透明)・20フレンチ
◇カテーテルの交換頻度:3週間毎(母が交換)
◇カテーテル挿入時の潤滑剤:グリセリン
◇バルーンの液剤:生理食塩水5cc
◇膀胱洗浄:週2回排便時とカテーテル交換時(膀胱洗浄は基本的にしなくても良いと思う)
◇膀胱洗浄の液剤:煮沸(しゃふつ)して冷ました温湯
◇水分摂取:基本的に麦茶中心(午前中に集中して摂取)
◇尿量:1日2000cc以上が目安
◇瘻(ろう)の保護:1日1回ヒビテンで瘻(ろう)周辺を消毒しガーゼ保護・ニチバンサージカルテープ使用
◇薬の服用:なし(フルマーク[抗菌剤]常備…入院中は毎日服用)
◇蓄尿袋:ウリナール袋(生ゴム製)日中500cc・夜間1000cc
◇蓄尿袋交換頻度:約1ヶ月に1度
◇検査:年に1度の腎臓と膀胱検査(エコーとレントゲン)・約3ヶ月に1度の尿検査・年に2度の血液検査
◇その他:
 ・感染予防のためクランベリーのサプリメントを毎日摂取
 ・アルカリ性のものは極力摂らない(結石ができやすくなるため)
 ・尿の流れを良くするため車いす乗車時、自宅ではウリナール袋を巾着袋に入れて膝の上に置いている(外出時は右股関節の上あたり)
 ・衛生上、瘻(ろう)周辺の陰毛を剃毛している
 ・カテーテルの外に出す長さを約34cmと決めている
 ・カテーテルの跡が皮膚に付かないようにガーゼのハンカチを下着にはさんでいる
 ・尿もれ対策としてパット・ナプキン等を使用
 ・入浴時は“バルーン栓”を使用
・ 連結管チューブ(カテーテルとウリナール袋を連結するチューブ)の汚れ落としにストロー用のブラシを使用     
 ・自分で尿捨てができるようにウリナール袋の先端にゴム管を約50cmくらいの長さに付け、はさむ部分が丸い洗濯ばさみにゴム管が通るくらいの穴を開け、金属のリングとタコ糸を引っ張って止めることができるように工夫(これはKリハ病院のOTの先生が考案されたもの)
[下記の写真参照]



 

編集委員:瀬出井 弘美



 <特集> 私の尿路管理変遷—留置カテーテルのケース 

脊髄腫瘍C6〜T3、損傷歴18年、64歳、女性

 現在の慢性期脊損医療における尿路管理では、まず間歇(かんけつ)導尿が勧められ、ついで膀胱瘻(ぼうこうろう)、やむを得ない場合に経尿道カテーテル膀胱留置の方法が取られるようである。長期間継続的にバルーンカテーテルを留置することは、尿路感染を引き起こし、また尿道や膀胱の粘膜を傷つけたり変性させる危険があるためだ。バルーンが留められる膀胱内やカテーテルが接触する尿道粘膜、カテーテル内部では、細菌が住みつきやすく、住みついた細菌の放出物がバイオフィルムと呼ばれる粘液層を形成して細菌増殖の足場になるといわれる。膀胱結石も生じやすい。難治性の尿路感染症となるのは避けられない。体力や免疫力が弱った時に発熱や腎盂腎炎がおきる。極端な場合は敗血症、尿毒症といった命にかかわる潜在的リスクを抱えることにもなる。そのような理由から、脊損医療専門病院やリハビリ病院では、慢性期における永続的バルーンカテーテル留置方式は避けるのが基本方針のようだ。もちろんやむをえないケースでは留置カテーテルとなる。急性期の留置カテーテルのまま在宅に移行してしまった脊損者も多いと思う。私の場合は急性期から今日に至る18年間留置カテーテルである。このような場合、尿路感染症をいかに管理するかが日常的課題だ。
 ちなみに、尿路感染症とは、培養した尿サンプル1ml中に10万以上の細菌コロニーが数えられる場合とされているようである。健常者の尿は通常は無菌である。主な菌は、大腸菌、腸球菌、緑膿菌、クレブシェラ、エンテロバクター、シトロバクター、ブドウ球菌などで、多くは腸内や消化器に存在する菌である。尿路感染の細菌の約80%はこれらの腸内細菌で占められるといわれる。留置カテーテルは常にこれらの菌に曝(さら)されていることになるので無菌にしようとするのは無意味ということになろうか。ひどい症状をもたらすほどに感染を増幅させず、体の抵抗力をつけるという考え方が必要かもしれない。
 これまでの尿路管理の試行錯誤をご紹介したい。

1.在宅初期——イソジン液の閉鎖潅流(かんりゅう)方式
 私は失禁型ではなく尿閉型の麻痺である。家庭で1日に複数回間歇(かんけつ)導尿をおこなえる人手がなかったため、急性期以来の膀胱留置カテーテルの継続となった。膀胱瘻(ぼうこうろう)の提案はなかった。
 在宅初期の膀胱洗浄は、退院時の指導により、閉鎖式イソジン液持続潅流(かんりゅう)方式で週2回実施した。おおよそ以下のような手順である。
 膀胱留置カテーテルセットは3Way閉鎖式を使う。まずカテーテルを、イソジンで尿道口を消毒してから尿道に挿入し、膀胱に到達したら10ccの蒸留水をバルーンに注入して固定する。採尿袋(ウロバッグ)を尿が逆流しない位置で配置する。点滴用1㍑滅菌蒸留水ボトルに滅菌注射器でイソジン原液10ccを注入し1%イソジン液を作る。それを点滴台につるして、点滴用チューブをカテーテルに接続する。点滴の要領で速度を調節しながら膀胱にイソジン液が流れていくようにする。この液は膀胱を満たして消毒した後、尿と一緒に採尿袋に排出されてくる。ベッド上横たわったまま1時間弱かかる。このような膀胱洗浄を、週2回の排便日にあわせ、排便後におこなった。排便による大腸菌汚染も抑制できるだろうと考えた。カテーテルは天然ゴム製で採尿袋とセットになっている。2週間に1度交換した。サイズは16フレンチである。
 この方式の考え方は、閉鎖式潅流(かんりゅう)方式でカテーテル開口部からの感染機会を減らしつつ、消毒力の強いイソジンで膀胱内、カテーテル内の消毒をねらったものと思う。

2.イソジン液潅流(かんりゅう)方式を止め、滅菌蒸留水による膀胱洗浄へ
 以上のような一見十分に思える清潔対策をおこなっても、尿中細菌量は1ml中1000万以上あり、浮遊物は多く、カテーテルは詰まりがちであり、時々熱を出した。泌尿器科医によれば、この細菌量自体はカテーテル常時留置者の場合驚くほどのものではないとのこと。尿の濁りや浮遊物は、細菌の死骸、細菌の放出物、膀胱壁がはがれたもの、飲食物の関与も含めた尿成分の化学的反応物、骨が溶けた場合の灰質、尿成分とカテーテルや連結管の素材が化学的反応を起こして生じたもの等々で、留置カテーテルの場合やむをえないとのことである。それにしても浮遊物が多く、詰まりの頻度が高く、しばしば発熱していたので、泌尿器科で各種の検査をおこなった。その結果大量に膀胱結石が生じていることが判明。結石は上記の浮遊物や結晶が沈殿して凝固物となり、膀胱壁に張り付いたものらしい。結石も細菌の巣となる。そこで結石を取り出す手術を受けた。尿道から内視鏡を入れ、レーザーで結石を砕いてはがし、尿道から洗い出すという手術である。2度に分けておこなったが、2度ともシャーレ一杯に石が取り出された。まさに黒っぽい固い石と砂状のものであった。
 この結果を踏まえて膀胱洗浄方式を以下のように変更した。イソジン液潅流(かんりゅう)は一時的に表面の菌量は減らすが、深い菌叢(きんそう)には働かず、すぐ効果は失われる。むしろイソジンは粘膜に害をなすのでこれはやめる。浮遊物が多いようなので、週2回、カテーテルチップシリンジによる膀胱洗浄によって浮遊物を排出して沈殿させないようにする。イソジン液をただ潅流(かんりゅう)させただけでは排出できない。医師によれば、膀胱の細菌感染はやむをえないので当面は浮遊物を少なくするゴミ掃除がポイント、膀胱洗浄用水は水道水の煮沸(しゃふつ)湯冷ましでよいとのことであった。酸性水も生理食塩水も感染予防という点では差がなく、漫然と抗生剤などの薬剤を使うのは意味がないばかりでなく、耐性菌を作るので避けるべきとのことであった。
 そこで、カテーテルを完全閉鎖式の「バードI.C.シルバーフォーリートレイ(2Way、天然ゴム製、採尿袋とセット)」(メディコン社製)に変更し、週2回、滅菌シリンジを使っての、滅菌蒸留水(ワッサーフリー)200ccによる膀胱洗浄となった。浮遊物が少ないときは、感染の機会を減らすため、膀胱洗浄回数を週1回に減らした。カテーテル内にバイオフィルムができやすく尿も汚れてくるので2週に1度カテーテルを交換した。
 そのほか感染症対策として、毎日陰部洗浄をおこない、尿道口を清潔に保つようにした。
 浮遊物を「洗い流す」よう1日2㍑以上の尿量確保を目的に、ミネラルウオーター2㍑のペットボトルを1本は飲むようにした。「上からの膀胱洗浄」である。尿廃棄は1日に4回、こまめに棄てるようにし、棄てるときは尿棄て口のパイプをアルコール綿で消毒するようにした。ウロバッグセットからの感染を抑制するためである。

3.膀胱洗浄を止め、カテーテル交換も月1回に減らす
 近年では膀胱洗浄は感染の機会を増やすので、カテーテルが詰まるようなことがない限りルーティン作業としての膀胱洗浄は不用との意見が多くなった。主治医の病院でも独自の疫学的統計調査の結果、定期的に膀胱洗浄をした場合としない場合とで差はないという結論が出た。膀胱洗浄を廃止し、汚れ具合をみてカテーテルを交換する(2〜3週間におきくらい)だけになったようである。もちろん浮遊物が多く、ザラザラした沈殿物が多い患者には適宜膀胱洗浄をおこなうそうである。私もこれに準じることにした。さらに、頻繁なカテーテル交換も尿道への刺激となるので、感染し難いオールシリコン素材(富士システムズ社製)にカテーテルを替え、月1回の交換で済むようにした。
 現在では、月1回のカテーテル交換、膀胱洗浄なし、1日1回の丁寧な陰洗(ビオレで洗い、リードで十分に湿気をとる)、1日2㍑以上の排尿量確保であまりトラブルはなく納得している。
 体調によって年に1度くらいは38度台の発熱をする膀胱炎症状はでる。その時は4日間しっかり抗生剤(主にクラビット)を飲み、熱を呼び込んだ菌を退治する。耐性菌を作らないよう、だらだらと薬は飲み続けないようにしている。抗生剤を飲んだ直後の菌量は1ml中10000程度に激減する。やがて100万〜1000万に増えていく。慢性膀胱炎との共存は続きそうである。
 今後、膀胱瘻(ぼうこうろう)に切り替えたほうがよいのか、またどのようなときに膀胱瘻(ぼうこうろう)造設を迫られるのか、よく考えていきたい。                            

A.Y.

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