○「国連・障害者権利条約特別委員会」傍聴団報告書/U.傍聴団メンバーからの感想

国連・障害者権利条約特別委員会を傍聴して

財団法人全国精神障害者家族会連合会専務理事 江上 義盛

 7月29日(月)から8月9日(金)までの12日間、国連本部(ニューヨーク)において開催されていた「障害者権利条約特別委員会」の傍聴団が派遣されました。この事業は、「アジア太平洋障害者の十年」最終年記念フォーラム事業として、主唱団体と関係団体の代表メンバー18名が参加しました。私もこの傍聴団に参加する機会を得て、IDA関係者を始め、各国の障害者NGO関係者や米国の精神障害者などとの連携・情報交換を行うことができました。

 期間中は、「チェスターフィールド」という長期滞在型マンションに投宿しました。私は、黒崎信幸氏(全日本聾唖連盟副理事長)と同室となり、多くの貴重な体験をすることができました。黒崎氏との会話は「ノート」を介したメモによりました。朝起きて朝食を共につくることから夜寝るまで、すべての体験が何物にも変えられないことであり、私がこれから障害者運動を進める上で、大きなプラスとなったことは間違いありません。

 今回の傍聴団で、私は河端静子氏や藤井克徳氏らと共に、前半部10名の一員として、7月29日(月)から8月5日(月)までの期間活動をしてきました。この間、障害者権利条約に関する本村国連日本政府代表部大使の演説や、障害者権利条約の草案提出国であるメキシコや欧州連合、米国などの考え方を直接伺うことができました。

 その上、ロビー活動の中で、直接「本村大使」との30分程度のミーティングや、水上正史公使、友重雅裕二等書記官らとの意見交換を90分にも渡って、国連会議室で行うことができました。これも、貴重な体験でした。

 メキシコでは、働く権利や教育を受ける権利、リハビリテーションを受ける権利等を盛り込んだ草案を、国内の専門家会議にて討議・修正し、国連特別委員会に提出をしていました。この内容は、ラテンアメリカ諸国からの支持を得ているようでした。

 また、EUでは、メキシコ案に基本合意をしつつも、独自性のある積極的な意見を含め、イニシアティブを取ろうとしていました。これらの動きは、相乗効果を生みよい方向に進んでいるように感じました。

 しかし、日本政府の基本的な考えは、国連特別委員会での発言によると、米国案支持を表明していました。米国案とは、作業プログラムについて時間をかけて検討すべきであり、「他の権利」については触れるべきではない、作業プログラム・NGO参加に関する決議は、非公式協議に移行すべき、ということでした。この動きに対して、NGOグループは名指しで日本政府を批判していました。また、条約草案の実質的内容の議論に入る準備がない国として、カナダ、デンマーク、米国と並んで日本を批判したものでした。

 そんな中で、NGOの参加をどう扱うかが特別委員会の開催前から議論の的となっておりましたが、歓迎をしない米国などと、積極的に歓迎をするメキシコ、EUなどと態度が分かれる中、日本が積極的歓迎サイドの共同提案国となった点は、評価できました。

 残念ながら、ロビー活動や分科会、本会議に参加して、日本政府は障害者権利条約に関する態度については、正直なところ決めかねていると感じました。日本の責任ある省庁(厚生労働省等)では、障害者権利条約に関する方針が決まっていないのではないでしょうか。外務省は、この条約に関する決定権を有していないようでした。

 特別委員会の場において、日本政府が反対したのは、おそらく「発展の権利」についてでしょう。発展の権利とは、発展途上国が発展する権利を有し、先進国がその援助をする法的義務を負うというものです。

 このようなことを総合的に判断すると、条約づくりに日本の意見を反映するためにも、国連の日本代表部には専門的知識をもった人を配置することが必要であると痛感しました。

 最後に、河端静子氏、藤井克徳氏、黒崎信幸氏、松友了氏、丸山一郎氏など多くの方々に、ニューヨークではいろいろとお世話になりました。この紙面をお借りして、お礼申しあげます。そして、貴重な体験の場を本当にありがとうございました。


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