○「国連・障害者権利条約特別委員会」傍聴団報告書/V.関係資料

障害者権利条約に関するアドホック委員会における本村大使国際連合日本政府代表部大使演説(仮訳)

二〇〇二年七月三十一日

議長、

 まず最初に、議長がこの重要な委員会において議長に選出されたことについて祝意を述べたいと思います。議長の指導の下、アドホック委員会が重要な活動を成功裏に終えることを確信します。

 日本代表団は、メキシコ代表団に対し、そのイニシアティブとアドホック委員会の会合の準備における多大な努力に謝意を表したいと思います。

 日本政府は、障害者の権利の促進と保護に大きな重要性を置いています。したがって、日本代表団は、障害者の権利と尊厳の促進と保護のための包括的・統一的な国際条約に関する提案を検討するために設立されたアドホック委員会の成功裏の開始を歓迎します。

 日本は、七月二十三目に国連総会によって採択されたアドホック委員会におけるNGOの参加資格及び参加に関する根近の決議についても歓迎します。この決議によって、NGOがこの重要な機会において、我々の議論に参加することが可能となりました。日本政府は、市民社会の声は加盟国によって検討されるべき本質的な要素の一つとして尊重されるべきであると信じたことから、この重要な決議の共同提案国となりました。

議長、

 日本政府は、この機会に、特にアジア・太平洋地域における障害者の権利と尊厳の保護と促進のための日本の努力について簡単に言及したいと思います。国連障害者の十年(一九八三年〜一九九二年)に続いて、日本政府は、一九九二年五月二十三日に国連アジア・太平洋経済社会委員会(ESCAP)の第四十八回総会により採択された決議に応え、アジア太平洋障害者の十年(一九九三年〜二〇〇二年)の開始においてイニシアティブを取りました。この画期的なイニシアティブに基づき、日本政府は、国内外において、障害者の権利と尊厳の促進保護に、より積極的に関与して参りました。

 二〇〇二年五月、ESCAPの第五十八回会期において、日本政府は、この分野におけるコミットメントを更新し、期待された進展が達成できなかった分野における努力を継続するため、新たな障害者の十年(二〇〇三年〜二〇十二年)を宣言する決議案を提案しました。二十九カ国の共同提案国を得て、この決議はコンセンサスで採択されました。

 進行中の十年の終了に区切りを付け、新しい十年を祝うため、日本政府は、十月に滋賀県大津において、ESCAP「アジア太平洋障害者の十年最終年ハイレベル政府間会合」を主催します。このハイレベル会合の前に、三つのNGO開催の会議、すなわち、第六回DPI世界会議札幌大会、「アジア太平洋障害者の十年」推進キャンペーン大阪会議及び第十二回リハビリテーション・インターナショナルアジア太平洋地域会議も十月、日本において開催されます。NGOによって開催されるこれらの会議に対し、日本政府は、国連障害者任意基金に対するDPI会議のためのイヤーマーク拠出を含め、財政その他の支援を行います。このイヤーマーク拠出は、開発途上国からの参加を支援するために使われる予定と承知しています。

議長、

 障害者の権利と尊厳の促進・保護の国内施策に関する簡単な要約を紹介したいと思います。

 国連障害者の十年に伴い、日本政府は、一九八二年から一九九二年までの間、障害者対策に関する長期計画を策定し、実施しました。一九九三年のアジア太平洋障害者の十年の開始後、同年三月、この長期計画は改訂され、新長期計画(一九九三年四月から二〇〇三年三月)が策定されました。これら二つの連続した計画は、国際障害者十年に沿った国内行動計画として特徴付けられます。

 現在の新長期計画は二〇〇三年三月に終了し、新しいESCAP/アジア太平洋障害者の十年(二〇〇三年から二〇一二年)が二〇〇三年に開始予定であることから、日本政府は、現在、障害者の権利と尊厳の促進保護へのコミットメントを更新するため、次の十年間の新しい基本計画の策定作業を行っています。このプロセスをより効果的なものとするため、二〇〇二年六月、内閣官房長官が主宰する懇談会が、新計画策定に当たって、障害者、関連福祉団体及び学識者を含め市民社会の見解・意見が適切に考慮されるよう、これらの見解・意見の聴取する活動を開始しました。

 同時に、二〇〇一年一月六日の中央省庁再編を機に、関係行政機関相互のより緊密な連絡及びより良い調整を確保し、関連施策の総合的かつ効果的な推進を図る目的で、内閣に内閣総理大臣を本部長とする障害者推進本部が新たに設置されました。

 日本政府の障害者政策は、障害者基本法と長期計画に基づき、「完全参加と平等」の目標に向けて推進されてきました。我が国の政策は、ライフステージの全ての段階において全人間的復権を目指す「リハビリテーション」の理念と、障害者が障害を持たない者と同等に生活し、活動する社会を目指す「ノーマライゼーション」の理念に基づいています。

 新長期計画の下、体制の強化を図った日本政府は、行動計画、すなわち、達成すべき具体的な目的と複数の目的と持つ「ノーマライゼーション七か年戦略」を実施してきました。行動計画は現在次の七つの分野に焦点を当てています。

 一 地域で共に生活するために
 二 社会的自立を促進するために
 三 バリアフリー化を促進するために
 四 生活の質の向上を目指して
 五 安全な幕らしを確保するために
 六 心のバリアを取り除くために
 七 我が国ふさわしい国際協力・国際交流

議長、

 最後に、障害者の権利と尊厳を促進、保護するための条約に関連した問題についての日本政府の基本的な考え方を説明することをお許し下さい。日本代表団は、人権にかかる国際な法的文書が普遍的な価値を有し効果的に機能するためには、国際社会の可能な限り広い支持を得るべきであり、障害者の人権を真に促進し、保護することに向けてもまたそうあるべきであると考えます。従って、日本代表団は、我々は障害者の権利と尊厳の促進・保護のための条約に関連する提案についてコンセンサスに達するために、あらゆる可能な努方を行うべきであると信じます。そうするに当たって、我々は、まず第一に、市民社会の意見も含め、アドホック委員会において表明された幅広い意見を十分に考慮に入れて、この問題について何が論点であるのかを包括的な形で具体化すべきです。その上で、我々は、認識された論点を建設的かつ十分に議論すべきです。結論になりますが、議長、日本政府は、しっかりとした更なるコンセンサスが形成されるよう、このアドホック委員会が本問題の検討を深める主要な媒体として役立つことへの希望を表明したいと思います。

 ありがとうございました。

(日本政府代表部との意見交換(2002年8月1日)での代表部からの配布資料より)


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