Duskin Leadership Training in Japan

最終レポート

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イー・チャン・ローのファイナルレポート

Hands Tune Hearts~盲ろう者が教えてくれたこと~

私の名前はイー・チャン・ローです。シンガポールから来ました。ニックネームはリサです。耳が聴こえず、網膜色素変性症で、夜盲症、視野狭窄もあり、後に完全に失明すると言われています。治療法はありません。シンガポールには、盲ろう者のコミュニティに対するしっかりした福祉支援策がないので、憂慮しています。

三ヶ月間の日本語研修

日本語と日本手話の勉強は非常に役立つと思いました。日本語を勉強すれば日本の人たちとのつながりが強まります。また、日本語能力試験を受けることも、結果の如何に関わらず意味のあることです。日本で会った人たちに、簡単な日本語でではありましたが、御礼のメッセージを書くことができたのを嬉しく思っています。それに、日本の人たちが言わんとしていることも、少しですがわかるようになりました。

日本手話を習わなければ、パソコンの使えない盲ろう者の人たちとのコミュニケーションも叶わず、なんのつながりも持てなかったでしょう。日本手話を学んだことで、出会った多くの人たちから、個人的な体験や問題の解決法、新しいアイディアからアドバイスに至るまで、たくさんの役に立つ情報をもらうことができました。

わたしは英語が流暢ですが、日本語、なかでも文法は正直言って難しかったです。しかし努力の甲斐がありました。いっぽう日本手話は習うのは簡単でしたが、正確な意味を読み取るのが場合によっては難しかったです。

ホームステイ

生まれて初めてホームステイをし、香川でろうのホストファミリー二家族のお宅に滞在するという特別な体験をしました。意志疎通が楽だったため、聴者の家族とご一緒するより退屈せずに過ごすことができました。薦田さんは非常にエネルギッシュでよくおしゃべりをするご一家で、私が自然愛好家なのを知って、いろいろな美しいスポットに連れていってくださいました。息子さんからは、竹製のおもちゃをもらいました。とても優しい子です。

ろうの近藤さんは、穏やかなご夫婦で、ご一家の歴史について教えてくださいました。お話を聞いているうちに、日本文化のルーツがよくわかってきました。近藤さんはとても親切でした。奥さんは、私にわらび餅の作り方を教えてくださいました。とても簡単でした。また、近藤さんのご紹介で、徳島県出身の女性盲ろう者と出会いました。彼女はそれまで一度も外国人に会ったことがなかったので、私のような外国人に会ってとても驚いていました。でも彼女が嬉しそうだったので、私も嬉しかったです。

薦田さんそして近藤さんに、私を受け入れてくださったことを感謝します。日本での最高の思い出のひとつになりました。

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個人研修

東京盲ろう者友の会と全国盲ろう者協会

会った瞬間から、福田暁子さんのいくつもの障害に驚きました。盲ろう、可動域が制限されていること、そして酸素吸入器が必要なこと。福田さんが常にハッピーなことにも感銘を受けました。そしてユーモアのセンスがすごいのです!福田さんはしゃべるのがとても好きでした。彼女から学んだ大切なことのひとつは、「盲ろう者の通訳介助者の担う役割は、ソーシャルワーカーのそれに似ている」ということです。

福田さんは、盲ろう者のコミュニティにおける福祉に関して私が研修を進められるように尽力してくれました。また、盲ろう者のコミュニティについて私がよりよく理解できるように、日本語の情報を英訳してくれたりもしました。本当に感謝です!彼女がシンガポールに来たら、最高のおもてなしをしたいと思います。

また、東京盲ろう者友の会および全国盲ろう者協会で多くの方に会えたことも、とても嬉しいことでした。この方たちに会うことがなければ、盲ろう者の世界がどんなものか、まったくわからなかったと思います。ろう者のコミュニティと、盲ろう者のコミュニティはまったく同じものではないのです。

視聴覚二重障害者福祉センター すまいる

大阪のすまいるでは、ほぼ二カ月の研修に参加しました。門川さんは驚くべき人物です。強い意志をもって、盲ろう者の問題解決について考え、盲ろう者のニーズの改善に当たっています。すまいるの研修中は感銘を受けることばかりでした。わたしの最初の仕事は、台所仕事や、盲ろう者の人たちへの配膳、掃除などのお手伝いでした。シンガポールでは盲ろう者の人たちに出会うことは殆どなかったので、盲ろう者の人たちについてよく理解していませんでした。しかしこの仕事を通して、盲ろう者の人たちとより密接に関わることができました。盲ろう者であっても自分で食材を刻んだり、ダンスをしたり、ドラムを演奏したりできることなど、多くのことを学びました。

また、情報アクセスが限られているために私の国シンガポールについてほとんど知らない盲ろう者の人たちに、シンガポールの話ができたのも大変嬉しかったです。いちばん良い思い出のひとつとなりました。

目で聴くテレビ

大阪の「目で聴くテレビ」は二週間、訪問しました。この研修で学んだことは主に三つありました。(1)ビデオ会談の方法、(2)ビデオを編集の方法、そして(3)良いコンディションで録画するための環境整備、です。研修を受けた後は、盲ろう者の活動を紹介するビデオを録画し編集する自信がつきました。このスキルがあれば、一般の人に対して、また将来私が一緒に働くことになるだろうチームメイトたちに対して、盲ろう者のコミュニティについて伝えられます。

日本ASL協会

プレゼンを人前で行なうことには自信がなかったのですが、久美子さんはプレゼンに関していろいろなことを教えてくれました。私は学生時代を除いて、プレゼンを行なったことがなかったのですが、自信をつけるには場数を踏むことが大切だと知りました。また、この勉強によって前よりも自分のことがよくわかるようになりました。いくつかプレゼンをしましたが、自分の意志を明確に伝えられたことは嬉しかったです。日本ASL協会のスタッフの皆さんに感謝したいと思います。

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すべての人にとって有益なお祭りやイベントの数々

日本に滞在した10カ月のあいだ、三田の耳の日記念祭、大阪の中之島まつり、秋葉原UDXの情報アクセシビリティーフォーラム、浅草橋の『「見えやすさ」と「聞こえやすさ」の情報展』に参加しました。いずれも目を見張る、驚きの体験でした。

耳の日の記念祭は毎年3月3日に開催されます。ろう者のコミュニティを交えてお祭りを行なうとともに、ろう者の情報交換・アクセスの場ともなっています。UDXの情報アクセシビリティーフォーラムでもそうでしたが、企業のブースに置いてある製品やいろいろなサービスを見て歩いたり、学んだりできます。新しいものがこれほどあるとは驚きでした。聴導犬なんていうサービスがあるのもまったく知りませんでした!シンガポールではろう者のコミュニティを対象にしたフォーラムはおろか、似たようなイベントもありません。このため、ろう学校に入学してこのかた、ろう者のための製品やサービスなどについての知識がないまま過ごしてきました。驚くことに、盲ろう者のコミュニティもテナントとしてイベントに参加していました。一般の人たちに、盲ろう者のコミュニティについての情報をいろいろ知ってもらうことが目的のようでした。

中之島まつりは、非営利団体が参加して毎年ゴールデンウィークに大阪の中之島で行なわれるお祭りです。最初は普通のお祭りかと思いましたが、お手伝いをしてみて、そうではないことに気が付きました。NPOが参加しているのは収入を得るためだけでなくて、一般の人たちに障害を持つ人たちと触れ合ってもらう機会を作るためでした。

帰国後の計画

将来は、シンガポールでも盲ろう者のコミュニティを対象にしっかりした福祉支援が行なわれるようになってほしいです。盲ろう者の生活改善のための計画を立てているところなので、まず帰国後はプロジェクトを一緒に実施できる良いチーム作りを手掛けたいと思います。

第一段階:将来の通訳介助者のための研修を企画・実施する。また、それぞれの地域の盲ろう者の状況を調査する。

第二段階:盲ろう者のための新しい活動を創生する。

最終段階:盲ろう者の社会参画を安定化させる。

日本から帰ったら、身につけた経験や知識は盲ろう者だけでなくろう者のコミュニティとも分かち合い、ともに歩いていきたいと思っています。そしてシンガポールでも、中之島まつりのような障害者のためのフェスティバルを毎年開催して、インクルーシブな社会を目指していきたいと思います。

感謝の言葉

このすばらしい機会をくださったダスキン愛の輪基金、そして日本障害者リハビリテーション協会皆さんに感謝の言葉を述べたいと思います。この研修で日本に来ることがなければ、障害者の人たちの世界について知ることもありませんでした。この研修は、私の人生の分岐点となりました。私の個人的な成長にも、そして職業上の成長にとっても、大きな糧になりました。以前は、ほかの障害のある人に会うことを恐れていた自分がいました。しかし今は、彼らのことをもっと理解できるようになりました。

また、戸山サンライズの清掃担当の皆さん、私の散らかった部屋を掃除してくださってありがとうございました。忙しくしていたため、ちゃんと片付けていないことがずいぶんあったと思います。清掃担当のどなたかは、わたしが寝ている間に布団をかけてくださいましたね。ほんとうに親切にしていただきました。

研修以外で会った多くの皆さんからも、それぞれの豊かな体験やパーソナルストーリーを聞かせてもらったり、いろんな問題の対処法を教えてもらったりして、新しい情報や良いアドバイスを手に入れることができました。日本で出会った皆さんに、感謝します。

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