第1回 | 言語聴覚士とは(1) | 『ことばの大切さ』 | 平成16年7月29日掲載 |
第2回 | 言語聴覚士とは(2) | 『話せない以外にも問題』 | 平成16年8月5日掲載 |
第3回 | 失語症(1) | 『突然外国人状態に』 | 平成16年8月12日掲載 |
第4回 | 失語症(2) | 『すべてに影響する』 | 平成16年8月19日掲載 |
第5回 | 高次脳機能障害 | 『周囲の理解が必要』 | 平成16年9月2日掲載 |
第6回 | 認知症(痴呆) | 『早期発見・治療を』 | 平成16年9月16日掲載 |
第7回 | 運動障害性構音障害(1) | 『発声や発音に問題』 | 平成16年9月23日掲載 |
第8回 | 運動障害性構音障害(2) | 『安心できる場所必要』 | 平成16年9月30日掲載 |
第9回 | 嚥下障害(1) | 『生命の危険はらむ』 | 平成16年10月7日掲載 |
第10回 | 嚥下障害(2) | 『食事の工夫が必要』 | 平成16年10月14日掲載 |
第11回 | 言語の遅れ(1) | 『脳機能の働きに原因』 | 平成16年10月21日掲載 |
第12回 | 言語の遅れ(2) | 『発達に合った訓練を』 | 平成16年10月28日掲載 |
第13回 | 言語の遅れ(3) | 『1人で悩まず相談を』 | 平成16年11月4日掲載 |
第14回 | 器質性構音障害(1) | 『口唇口蓋裂が影響』 | 平成16年11月11日掲載 |
第15回 | 器質性構音障害(2) | 『周囲の理解が肝心』 | 平成16年11月18日掲載 |
第16回 | 機能性構音障害(1) | 『子供の個人差に理解を』 | 平成16年11月25日掲載 |
第17回 | 機能性構音障害(2) | 『話し方より内容を理解』 | 平成16年12月2日掲載 |
第18回 | 吃音(1) | 『幼児期に治る率高い』 | 平成16年12月9日掲載 |
第19回 | 吃音(2) | 『内容聴き取り共感を』 | 平成16年12月16日掲載 |
第20回 | 難聴(1) | 『早期治療が大切』 | 平成16年12月23日掲載 |
第21回 | 難聴(2) | 『補聴器選ぶポイント』 | 平成16年12月30日掲載 |
第22回 | 人工内耳 | 『装用で生活の向上を』 | 平成17年1月13日掲載 |
第23回 | 障害が疑われたら | 『まずは言語聴覚士へ』 | 平成17年1月20日掲載 |
第24回 | 言語聴覚士の活動 | 『近年は教育領域も』 | 平成17年1月27日掲載 |
言語聴覚障害と呼ばれる人達はまさにそのような状態の中でさまざまな困難を抱えながら毎日を送っています。このシリーズでは言語聴覚障害とそのリハビリに携わる言語聴覚士についてお話していきます。
脳出血で急に倒れたり、交通事故で頭部をけがした後に手足のまひがあることは想像がつくと思います。そのような場合、損傷された脳の場所によっては手足のまひだけではなく、口の周辺やのどにもまひがみられ、声がでなくなったり、ろれつがまわらない、時には飲んだり食べたりすることすらできなくなることがあります。同じく脳の損傷場所によっては失語症ということばの理解や表出ができなくなる場合もあります。
突然の病気や事故での言語聴覚障害の一方、先天的な場合もあります。口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)という唇や口の中の形成異常のために二次的に発音異常となったり、耳の聴こえが悪いためにことばの習得が困難となることもあります。先天的な障害の中では比較的多くみられるものとして、精神発達遅滞、自閉症やダウン症などのいわゆる知的発達障害があります。知的発達障害児の多くはことばの習得が困難だったり、社会生活上の能力に問題があったりします。
このような言語聴覚障害児・者は多くの場合、直接命に別状はないためか従来の医療の中では積極的にリハビリテーションの対象となることは少なかったのです。しかし近年は医療・教育の中で早期から「ことばのリハビリ」が行われるようになってきました。
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私たちは「ことば」を用いて会話をし、新聞やテレビなどから情報を得ています。さらに人と話すことは単なる意思疎通に留まらず、喜びや悲しみを分かち合ったり、ストレスを発散したりするための大切な手段でもあります。コミュニケーションをとることで精神的にも安定し、生活に必要な意思・情報をやりとりして家庭生活や学校、職場などでの社会生活を営んでいるのです。
また、ことばはコミュニケーションのための道具であると同時に、私たちがものを考える時の道具としても役立っています。「今度の週末は○○さんとハイキングに行こう、何時にでかけると××高原にはお昼までにつけるだろうか・・」というように頭の中で時間や場所など具体的に考えをめぐらすことができるのもことばの力といえます。
さらに私たちの周辺のものには必ず「名前」がついています。人や物の名前はもちろん、動作や状況を表すことばもあります。昨日、来年といった時間や色や大きさといった相対的な概念もことばで表すことができます。つまり人間は世の中の物事や概念をことばという道具を用いることで具体的に認識しているといえます。
ことばが不自由な場合、単に話せないだけではなく、抽象的思考や情報のやりとりの制限、さらには社会での強い孤立感、就学や就業の困難など人間社会の中で生きてゆくうえで多くの問題があるのです。
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人間の言語中枢は、一般に左の脳にあります。そのため多くの場合、左の脳が傷つくことで失語症になります(脳は反対側の手足を支配しているので、この場合右半身にまひが起きます)。
それでは、失語症とはどんな状態なのでしょうか?それはことばの分からない異国の地に、一人で放り出された状態によく似ています。普段、私たちは「赤くて丸くて、青森名産の果物」というイメージ(これがことばの意味です)から、「リンゴ」ということばを思い浮かべることができます。では、自分が突然外国人になったとしたら、それを日本語で言うことができるでしょうか…?できませんね。これが、失語症の方が話せない状態です。また、日本語で「リンゴ」と言われても、何を意味するか分からないし、イメージも思い浮かびませんね。これが、失語症の方がことばを理解できない状態です。失語症の方はりんごの実物や絵を見ればどんなものかは分かります。ただ、それを見て「リンゴ」ということばを思い浮かべることができなかったり(間違って「ミカン」と言ってしまうような言い間違いもあります)、「リンゴ」と言われてもそのイメージ(ことばの意味)と結びつけることができない状態なのです。
失語症の方はことばの意味を忘れたわけでも、ことば以外の知能に問題があるわけでもありません。ことばを聞いてもその意味を思い浮かべることができなかったり、意味からそのことばを思い浮かべることができなくなったりするのが、失語症なのです。
想像してみて下さい、もし自分が突然外国人になったとしたら…!?家族や友人とうまく話をすることができませんし、仕事の上でも困るでしょう。失語症になるとは、そういうことなのです。
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では、失語症の方にはどのように関わるとよいのでしょうか?失語症が軽い場合は、せかさずゆっくり話を聞き、聞き手が話の要点を汲み取る姿勢が大切です。また、聞き間違いをしていないか表現を変えて質問し、確かめるのも効果的です。
失語症が重く自分から話せない場合は、「はい?いいえ」で答えられる質問をし、それに返答してもらうことになります。この場合も、聞き間違いをしていないか、表現を変えて繰り返し質問してみるとよいでしょう。また、易しい漢字単語で会話のキーワードを示したり、絵やジェスチャーを交えると理解されやすくなります。
失語症の方は一般にことば以外に問題はないので、子供扱いすることは大変失礼に当たります。また、会話をすることが難しい場合でも、むしろ話し相手を求めていることが多く、失語症の方でも積極的に外に出て行ける地域社会作りが求められています。
失語症になった場合には言語聴覚士による専門的な訓練が必要になりますが、失語症で障害されることばの機能は複雑で未知の部分があり、手足のまひと比較して長期にわたり改善する可能性があります。病院で行うだけがリハビリではありません。退院してからの家庭でのやりとりも立派なリハビリになります。失語症に苦しんでいる方、そしてその家族の方は、あきらめることなくリハビリを続けてほしいと思います。
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例えば、まひがないにもかかわらず手をうまく動かすことができなかったり(失行)、目が見えているにもかかわらず物を見てもそれが何だか分からないこと(失認)があります。また、右の脳が損傷されると、左側に注意が向きにくくなって左側のものに気づかないことがあります。
記憶障害では新しい情報を覚えられず、日々の生活や仕事、勉学に支障をきたします。 遂行機能障害と呼ばれる障害では、やる気がなくわがままで怠けているような行動をとったり、筋道立った思考・行動ができなくなったり、注意が散漫になったり、病前と性格が変わったりといった症状が現れます。このような症状は単に本人の性格の問題にされてしまうことがありますが、そうではありません。
高次脳機能障害ではこのように色々と不思議な症状が現れるため、本人も自覚していないことが多く、家族や周囲からも理解されにくい状態にあります。また、社会的認知も立ち遅れているため、誤解を受けやすい状況にあります。高次脳機能障害の方には、周囲の理解と支えが必要です。
高次脳機能障害は脳卒中などが原因で起きますが、最近では交通事故などによる脳外傷が原因で、一命をとりとめたものの若くして障害を持つ方が増えています。これはその後の社会復帰・職場復帰という大きな課題をはらんでいます。
また、高次脳機能障害では言語聴覚士を含めたリハビリチームによる総合的な訓練が必要となりますが、そのような訓練を受けられる施設は限られているうえ、障害を補償する医療・福祉制度も十分ではなく、行政を挙げた対応が必要とされています。
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認知症の原因には脳卒中による脳の損傷や、アルツハイマー病のように脳細胞が徐々に死んでいく病気などがあります。この場合は、医学的な対応やリハビリが必要になります。また、脱水や一時的な脳の異常によって認知症に似た症状が現れることがあります。この場合は診察やCTなどの画像診断により原因を調べ、適切な処置をすることで治ることが多いので、まずは病院を受診することをお薦めします。いずれの場合も早期発見・早期治療が大事です。
認知症の原因は脳病変だけではありません。認知症を発生・悪化させる原因として生活環境が重要で、これが認知症のケアの鍵を握っています。例えば寝たきりや社会的孤立による周囲からの刺激の減少が認知症のきっかけとなり、それがそのまま放置されることでさらに認知症がひどくなることがあります。
日常生活のなかで会話を多くする、何か役割をもってもらうなど、できるだけ頭を使うようにしなければなりません。また、環境、生活習慣、人間関係の変化がストレスとなり認知症を招くことがあります。そのため、認知症のケア・予防には、安定した環境と人間関係が大切です。
このことは、介護をする家族にも言えることです。頑張り過ぎずに福祉サービス等をうまく利用することで、互いによい関係を保つことができます。家族が認知症かなと思ったり、介護で困った時などは、一人で悩まずに近くの病院や保健センターなどに相談して下さい。
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例えば舌にまひがあると、ろれつが回らず、はっきり発音することができません。また、口の奥にある軟口蓋(なんこうがい)という部分のまひでは、声が鼻に抜けてしまいフガフガした話し方になります。声を作る声帯がまひすると、声がかすれたりガラガラ声になったりします。
息を肺から十分に送ることができなければ、声の大きさが小さくなり、一息で言える長さが短くなります。声の大きさ、高さや発音のリズムが一本調子になったり、乱れたりすることもあります。障害が重い場合は「嚥下(えんげ)障害」といって、飲んだり食べたりすることにも問題が起きます。
唇や顔面にまひがあると、よだれが垂れてしまったり表情が乏しくなったりすることがあります。そのため、知能に問題があると誤解を受けてしまうことがありますが、基本的には発声、発音以外に問題はありません。
話せないという点では似ていますが、以前に取り上げた失語症とは大きく異なります。失語症は言語機能の障害のために音声、文字の理解、表現に問題がありましたが、運動障害性構音障害は発声や発音に必要な器官の動きが障害されたことにより、しゃべることだけがうまくできない状態です。そのため筆談ができますし、手にまひがあって字が書けない場合でも五十音表(文字盤)を指差すことで意思を伝えることができます。
また、ことばの理解には問題がないので、「はい、いいえ」で答えられる質問を繰り返すことで、言いたい内容を推測することができます。この違いを理解していると、コミュニケーションが取りやすくなります。
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運動障害性構音障害では話し方の症状は障害の重さにより千差万別で、コミュニケーションのコツも変わってきます。障害が軽度の方の場合は、発音が少しはっきりしなかったり声がしゃがれていたりしますが、時々聞き取れないことばがあるくらいの状態です。そのため普段の会話にはあまり困りませんが、つい病前と同じように話してしまうと聞き取りにくくなります。このような場合は、短く、ゆっくり話してもらうと聞き取りやすくなります。こちらは普通の速さで話しかけてかまいませんが、あまり早口だと相手もつられて早口になってしまうので気をつけましょう。
中くらいの障害になると聞き取れないことばが多くなり、こちらが話の内容を知っていないと分かりにくくなります。重度の場合では聞き取れることばがほとんどなかったり、全く声も出せない状態になります。このような時には、筆談や文字盤の使用が有効です。
大事なことは、聞き取れないのに適当に相づちを打ったり、分かったふりをしないということです。思わぬ誤解を招いたり、気持ちを傷つけてしまう恐れがあります。うまく聞き取れたかどうかはっきりしない時は、聞こえた通りに言い返して確認するとよいでしょう。窓を閉める、テレビを消すなどして、落ちついて話せる静かな環境を作ることも必要です。そして何よりも大切なことは、安心して入れるコミュニケーションの輪を作ることです。
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食事中・後にむせる、痰がからんだような声になる、咳払いをする、飲み込みにくい、食べ物が口の中に残るなどの症状がみられる場合は、嚥下障害が疑われます。嚥下障害は主に脳卒中などが原因で口やのどがまひしたり、がんの手術で舌を切除したりすることで生じますが、正常な老化でも嚥下の機能は衰えてきます。
嚥下障害で怖いのが誤嚥(ごえん)です。人間ののどは奥で二またに分かれており、おなか側は気管−肺、背中側は食道−胃につながっています。通常私たちが飲み込んだ食物は食道を通り胃に入ります。のど仏に手を当てて、つばを飲んでみて下さい。ごっくんとのど仏が上がった時に食道の入口が開きます。この一瞬しか食物は、通過しません。
のど仏が下がると食道の入口は閉じ気管が開きます。食物が誤って気管に入ってしまうことを誤嚥といいます。普通は気管に食物が入ればむせて排出しようとしますが、嚥下障害の方では誤嚥してもむせないことがあるので注意が必要です。誤嚥を繰り返しているとそれが原因で肺炎を起こし、最悪の場合は死に至ることがあります。
嚥下障害のリハビリには言語聴覚士をはじめ様々な職種が関わり、嚥下機能を改善させるための訓練や、食べやすい食事、姿勢の調整などを行います。しかし、場合によっては経管栄養に頼らざるを得ないこともあります。嚥下障害は誤嚥や窒息、食事を十分にとれないことによる低栄養、脱水など、生命の危険の問題をはらんでいます。そして何よりも食べる楽しみは生きる喜びでもあり、それを奪われることはとてもつらいことなのです。
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嚥下障害の人にとって、一般に最も飲み込みにくいものが水やお茶などのサラサラした液体です。一見飲み込みやすいように思われがちですが、通過するスピードが速いため、誤って気管に入りやすいのです。ですから、むせたからといって水を飲ませるのは逆効果です。むせてしまった場合はせき払いをしてもらい、収まるのを待ちましょう。また、食事を細かくきざんだいわゆる「きざみ食」も、嚥下障害の人には大変食べにくいものです。きざみ食は口の中でまとまりにくく、のどに残りやすいという大きな問題があります。嚥下障害の方には、なめらかで柔らかい食べ物が適しています。
食べやすい食事の工夫は他にもあります。水分でむせる方のために、増粘剤という商品が市販されています。これは混ぜるだけでトロミを付けることができるもので、そうすることで飲み込みやすくなります。また、ゼリー状のものも食べやすい食べ物です。食べ物に気をつけても、一口の量が多いと誤嚥しやすくなります。多過ぎず少な過ぎず、飲み込みやすい量でゆっくり一口ずつ飲み込むことが大切です。食事中の姿勢も飲み込みやすさに関係してきます。むせてしまう場合には、軽くあごを引き、首を少し前につき出して飲み込むとむせにくくなります。
このように食べやすい食事の工夫には様々ありますが、その人の状態に合った方法を選ぶことが重要であり、そのためには専門的な検査が必要です。もし、「嚥下障害かな?」と思われた場合には、お近くの言語聴覚士のいる病院にご相談下さい。
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もちろん個人差があります。何事も平均的で育児書通りに育つ子の方がむしろ少ないのかもしれません。「うちの子は歩くのが遅い、好き嫌いが激しい」などとご両親を悩ませていることでしょう。そうした悩みも多くの場合は取り越し苦労であり、いざ歩き始めると今度は「目が離せない」とため息をつくことになるようです。
言葉も同じです。なかなか話さないと心配していても、二歳の誕生日を迎えるころには言葉も増え、三歳を過ぎると「どこで覚えてきたのだろう」と驚くようなことも話せるようになります。子供はごく普通の暮らしの中で言葉を習得していける力を生まれつき備えています。早期教育など特別な育て方をしなくても、言葉を理解し話すことができるように生まれてくるのです。
言葉を習得する力は、人という種が生まれながらにして持つ脳のすばらしいメカニズムの一つなのです。言葉を習得するころの子供たちは、まだまだ幼く頼りなげにみえますが、その脳は大人がかなわないほどの学習能力を備えているのです。
ところが、脳のこうしたメカニズムがうまく働かず、言葉を習得していきにくい子供たちがいます。ダウン症や自閉症の子供たちがそうです。また、こうした明らかな原因が見当たらなくても、脳の機能がうまく働かず言葉を習得していきにくい子供も少なくありません。
「子供の言葉が遅いのは、声がけや抱っこが足りない、テレビばかり見せているから」など、ご両親の育て方に何か問題があるかのような心ない言われ方をされることも少なくないようです。しかし、言葉の遅れの原因は、よほど極端な場合を除き、ご両親の育て方ではなく、子供の脳のメカニズムにあることが多いのです。
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言葉の遅れのある子供に限らず、親の働きかけや保育所などでの生活は大きな意味がありとても大切なものです。しかし、たとえ適切な環境があったとしても、脳の機能が正常に働かなければ、言葉を理解し話せるようになっていく過程をうまく進んでいくことが難しくなります。
話せるようになるまでの過程には多くの段階があり、大切なことは、子供の発達段階に合った働きかけです。発達に遅れのある子供たちは、人や環境からの刺激を受け取ることがとても苦手です。従って、やみくもに言葉掛けや人とのかかわりを増やしても、力を伸ばすことにはつながりにくいのです。
ようやく物の名前を覚え始めたころの子供に「コレハ、クルマダヨ。アカイクルマハヤイネ…」とたくさんの言葉をシャワーのように浴びせても、この段階では伝わりません。子供の興味が向いた瞬間に同じ目の高さでたった一言「車だね」と声を掛ける方が伝わるのです。
子供が言葉の習得に至る過程のどこでつまずき、どのような手助けを必要としているのかを知ること、それが働きかけの第一歩です。その上で、人や物には名前があるといった言葉の知識を増やしていくことや、言葉で周囲の人々に自分の気持ちを伝えられることに気付かせてあげることが大切なのです。
そのためには、一人ひとりの力に合わせた個別の言語訓練が必要になります。訓練で基礎的な力を培い、そこで培った力を、親との家庭生活や保育所などでの集団生活の中で、時間をかけ繰り返し実践するのです。日常生活と個別の訓練が並行して進む中で、子供たちは一歩一歩ゆっくりと発達の階段を上り始めるのです。
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しかし、何らかの原因によってことばの発達に遅れを示す子供がいるのもまた事実です。原因としては、聞こえに関すること、ことばを話す器官(唇・舌・のど等)に関すること、知的な発達に関すること、人との関係に関すること、その他にもいろいろ考えられます。一歳半になっても二歳になっても、子供からことばが聞かれず、親としては「気にはなっているんですが、どこに行って相談すればいいのですか?」という悩みを持っている方も多いようです。ことばの発達について相談をしてくれる所は、どこにあるのでしょう。
教育機関では、盲・聾・養護学校、小学校や幼稚園(弘前市のみ)の「ことばの教室」、教育センター等の教育相談があります。医療・保健機関では、小児科や耳鼻咽喉(いんこう)科、その他幼児の発達に関係のある科や言語聴覚士がいる病院、保健所、市町村の保健センター等があります。また、児童相談所や幼児の通園施設等においても、ことばの相談をしている所があります。
もしも子供のことばの発達が気になるようでしたら、一人で悩んでいるよりも、このような機関に連絡を取って相談してみてはいかがでしょう。ことばの発達はとても個人差が大きいものです。障害なのか個性なのかを判断するのは難しいことですが、その子にとって今一番望ましい言語の環境をつくることが、大人の大きな役目ではないでしょうか。
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口唇口蓋裂は先天性疾患です。遺伝とは限らずいろいろな要因が絡み合って、いつ誰に生まれるかはっきり分かっていません。裂け方の幅も長さもさまざまで、口唇だけのものや歯茎からノドヒコの奥までに達するものなど、日本では六百人に一人程度の割合で生まれています。「裂」という字が示すように、口唇や口蓋が裂けた状態で生まれますが、後で裂けたのではありません。初期の胎児は鼻むろと口の境目がなく、普通四週から十二週ごろまでに唇から奥の口蓋に向かって形が整っていきます。左右から突き出てきた顎骨(がくこつ)などの組織が真ん中でくっついて口と鼻の全体が完成しますが、この時期に何か異変があって組織が完全に着かないまま出産期を迎えたのが原因とされています。
特別な哺乳(ほにゅう)瓶でまめに授乳することから始め、まず唇の手術を形成外科や、口腔(こうくう)外科の専門医が生後二−四月(体重六キロ)をめどに行います。唇だけの場合は発音に影響がなく、高度で立派な手術が地元の大学病院などでも行われていますから安心ですが、口蓋裂を持った場合は問題が別です。将来発音障害を残さずに話せるようになるかどうかは、本人に特別な発達の遅れがなければ、手術の結果次第だといってもいいほどです。逆に医師がせっかく立派な手術をしても、術後に本人を取り巻く適切な環境や指導がなければ手術の良さが生かされないこともあり、言語障害を完全に克服することを目指すこの疾患では、言語聴覚士の力量が問われることにもなります。
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声を出しながら閉じた口を開けるだけで「ママ」と言えます。しかし「パパ」は息を鼻に回さずに口の中にため込み、その力で唇を破って言わなければなりません。日本語発音の80%はこの閉鎖機能が働いて上下の唇や口の中のどこかを舌で閉じたり狭めたりして息の力で出す音です。
口蓋(こうがい)手術は口腔(こうくう)外科か形成外科が専門です。二回に分けて行う方式もありますが、普通は一歳半から二歳ごろまでに一回で行います。術式は、基本的には欠けている口蓋の部分を周辺の組織を寄せてふさぎ、奥まで伸ばした筋肉で閉鎖機能をよみがえらせる高度な手術です。 しかしどんなに立派な手術でもすぐに正しく発音ができるとは限りません。私が今日まで数多くの口蓋裂の子供に接してことばの改善に努めることができたのは、術者である医者と懸命な親たちに支えられていたからにほかなりません。
手術の結果を生かすためには、成長や発達の段階に従った配慮や手立てが必要です。ことばに関して言えば、三、四歳ごろまでは話の内容を育てる環境作りを第一に考えます。家庭、保育園・幼稚園では本人が元気で話せるように、その都度「もっとはっきり言いなさい」式の発音の注意は禁物です。周りの人がはっきり言って正しく聞く耳を育てます。四、五歳からは本人に合わせた練習もできますから、言語障害相談室や言語聴覚士などの協力を得て、本人が興味を持って努力すれば言語障害は克服できるはずです。
医療費申請など保健所との関係も欠かせません。学齢期前後の歯とあごの発育問題や再修正術の是非などを専門医と相談して行うことも大事です。
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多くは、正常な発音発達の過程で、正しい音が完成されるべき年齢になっても完成されず、誤りが習慣化している状態をいいます。例えば、就学を控えた六歳の子どもが「カラス」を「タラス」と発音した場合、「カ」の音はすでに発音できる年齢にありますので発音の誤りといえます。一方、二、三歳の子供が「サカナ」を「チャカナ」と発音しても発音の発達からみて発音に誤りがあるとは言えません。それは、音の種類によって発音できるようになる時期(年齢)がある程度決まっているからです。
私たちは、普段意識せずことばを発音していますが、誰もが初めから正しく発音できるものではありません。そのため、子供はさまざまな言い誤りをしながら徐々に正しい音を発音できるようになっていきます。未熟な発音はどのような経過を経て完成された発音にたどり着くのでしょうか。生後二、三ヵ月の赤ちゃんは、はじめ「アー」「ウー」などの音が中心ですが、一歳位になると「マ」「バ」「ブ」などの音が出せるようになり、年齢とともに発音できる音が増え、徐々に正確に発音できるようになります。ただ、発音する音の種類によって早い遅いがあり、「サ、ザ行音」「ラ行音」「ツ」などは遅くだいたい五、六歳ごろ、その他の音は四歳ごろまでに正確に発音できるようになり、すべての音が正しく発音できるようになるのは六歳前後になるといわれています。このように、発音の発達には一定の順序がありますが、音を出せるようになっても使いこなせるまでの過程には個人差があることを理解して子供の様子を観察する必要があります。
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一つ目は、発音されるべき音の代わりに他の音に変えて発音する場合。例えば、「カラス」が「タラス」のようにカ行とタ行の置き換えがみられる。二つ目は、発音されるべき音を省略して発音する場合。例えば、「カサ」が「アサ」のように子音部分が抜け落ちる。三つ目は、正しい音とは言い難くひずんで発音する場合。例えば、「シ」が「シ」と「ヒ」の中間で日本語の音としては判断し難い音などが挙げられます。三つ目に挙げたひずんで発音する場合は、自然に改善することが難しいといわれ、成人まで持ち越すこともあります。
発音の誤りがあるとことばの明瞭(めいりょう)度が低下し、会話の内容が相手に正しく伝わらなかったり、聞き手が話し手の発音に「何を言ってるのかしら?」と不自然さを感じてしまいます。それだけでは収まらず、大人から「はっきり聞こえない」「何って言ったの?」と、聞き返されたり言い直しをさせられたりすることが多くなります。このことは、人間関係にひずみが生じ自信喪失や心理的負担を増やすことになりかねません。
そういった場合に周囲の大人はどのようなかかわりをしたらよいのでしょう。まず、ことばの注意や言い直しはせず、子供と顔を合わせゆっくり、はっきり、聞き取りやすい発音で話すことを薦めます。また、間違って発音しても笑ったり無視したりしないで、さりげなく正しい見本を示し、話し方より話の内容に耳を傾け共感し、よい聞き手になりましょう。
ただ、子供自身が発音を意識したり、お母さん自身の不安が強く親子関係がぎくしゃくしそうな場合には、早めに専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
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「どうして、吃音が起こるのでしょう?」という質問はよくあります。遺伝研究においては、家系に吃音者がいると吃音者が出やすいといわれていますが、吃音の遺伝子が存在するかどうかははっきりしていません。また、吃音の子供の脳とそうでない子供の脳に違いがあるのかもまだ分かっていません。
そして、親の愛情が足りないとか、育て方が悪いことが吃音の直接的な原因ではありません。現在のところは、吃音の話し方になりやすい何らかの特性があり、それらが環境というさまざまな要因と結びつくことによって発生するのではないかと考えられています。
吃音の原因は、はっきりしていませんが、いくつかの共通した事実もあります。それは、吃音が始まるのが幼児期に集中してみられることや男女差がありだいたい3対1で男性に多くみられることです。また、吃音の出現率は、人種や民族を超えて世界に共通して人口の1%に存在すること、特別な治療を受けずに自然に治る率が40−45%ぐらいみられ、幼児期にこの率が高いことなどが挙げられます。
しかし、いつどんな場合でも吃音が起こるのではありません。動物に話しかけたり、独り言を言うときは、吃音が出ないことが多いのです。吃音には、波があり、うまく話せるときとそうでないときが見え隠れし、どっちが本当の自分なのか不安にさせます。
このように、吃音は滑らかに話せないだけにとどまらず、コミュニケーションの障害となり、心理面や身体面に二次性のさまざまな問題を引き起こす可能性があります。
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正常な範囲内での非流暢な子供の話し方は、「ぼくは、ぼくは」と語句を繰り返したり、「えーと、えーと」と不要な語が繰り返されます。それに対し吃音児や吃音のリスクが高い子供の場合は、自分の名前を言う時に「ぼ・ぼ・ぼくの」と音を繰り返す割合が多く、「ぼ――くの」のように語の一部分の引き伸ばしと共に声の高さや大きさに急激な変化が生じたり、「・・・ぼくの」とことばがつまり体に力が入るなどの症状が継続するなど量的質的な違いが見られます。そして、年齢が進むにつれ吃音を隠そうとし、吃音になりそうなことばを避け、他のことばを使う工夫を始めるのです。
吃音は、音を繰り返したり、引き伸ばしたり、つまることでことばを滑らかに言えないことが問題になりますが、それ以上に吃音児自身が吃音を悪いものと否定的にとらえることの方がもっと大きな問題になるのです。
吃音は、悪いことでも人間として劣ることでもないことを伝えていく必要があります。そのためには、子供がことばを繰り返したり、ひきのばしたり、つまって話したとしても、話す内容より話し方に注目したり、吃音を指摘したり、見て見ぬ振りをすることはせず、子供の話をしっかり受け止めて聴き、共感することが大切です。
このように、心理面や身体面に変化が起こる前の幼児期のかかわりが特に重要です。ことばの流暢性の正常な発達を促す上で、吃音の早期発見と早期指導は最も効果を発揮し、その後の経過も良好であることが多く、幼児期からその年齢にふさわしい経験を増やし、その年齢における発達の課題を達成していくことが重要になります。
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そもそも私たちは、どのようにして音を聴いているのでしょうか? 音は外耳道(耳穴)を通り、鼓膜を振動させます。鼓膜から、耳小骨と呼ばれる人間の骨の中で最小の骨を経由し、かたつむりの殻のような形をした蝸牛(かぎゅう)に伝わります。蝸牛の中にある有毛細胞が刺激を電気信号に変換し、聴神経から脳へと到達します。難聴の種類の違いは、この伝達経路のどこに障害があるかで決まります。
耳小骨までの部分の障害は「伝音難聴」といいます。代表的なものに中耳炎、また鼓膜や耳小骨の病気などがあります。蝸牛から音を感知する部分の障害は「感音難聴」といいます。メニエール病や騒音性の難聴、加齢による難聴(老人性難聴)などがあります。また、これらの障害を併せ持った障害を「混合難聴」といいます。
ところで、難聴の発症の時期も重要です。生まれながらにして聴こえに障害を持つ先天性の難聴は、言語を獲得する以前の障害ですので、専門家によるできるだけ早期の適切な療育が必要となります。
また、種々の疾病や事故などによる後天性の難聴は、誰でもなりうる身近な疾患なのです。例えば「突発性難聴」は、ある日突然聴こえが悪くなってしまう病気です。そのうち治るだろうとほっといてはいけません。すぐに耳鼻咽喉科を受診してください。できるだけ早く治療することで回復の可能性がぐんと上がります。発症から一週間以内に治療を開始しましょう。
残念ながら原因は特定されていませんが、ストレスや疲労が複雑に関係しているようです。また、前述の聴こえだけでなくめまいや耳鳴りを伴うメニエール病も同様です。とかく、面倒になりがちな耳鼻科へ気軽に足を向けることをお勧めします。
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相手の声などを聞く時、特に邪魔になるのは周りの雑音です。結婚式や会議を録画(録音)して後で再生してみると、周りの雑音が妙に大きく感じたことはありませんか。私たちが何かを聞こうとする時、聞こうとするものに集中します。すると聞こえを認識する脳までの経路では、余分な音を排除する力があり、聞こうとしている音だけがしっかり聞こえてきます。ビデオも補聴器もマイクから音が入ってきます。マイクには今自分が聞きたい音が何なのかを認識する力はないので、そこに存在する音をすべて平等に拾ってくれます。実はその忠実さが聞きたい音の邪魔になってしまうことが多いのです。
最近ではこのような邪魔な雑音を押さえてくれるような機能のついた補聴器も出ています。また、離れた所にいる話し手に、直接マイクを使って話してもらい、その音声を電波(FM周波数帯使用)で送り、補聴器に内蔵された受信機で受けるタイプのFM補聴器もあります。
補聴器を選ぶ時には、自分の聴力の特徴を十分に踏まえたうえで、(1)「どんな時に」(2)「どんな場所で」(3)「どんな目的で主に使用したいのか」をはっきりさせておくと、より自分が必要としているタイプの補聴器と早く出会うことができるのではないでしょうか。
しかし、難聴の方が補聴器を付けさえすれば、これまでと変わらない聞こえが確保できるかというと、残念ながら全く元通りとはいきません。補聴器で難聴が治るのではなく、文字通り聞こえを補うということを理解して、上手に使いましょう。
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人工内耳(じんこうないじ)は、そのような高度難聴に有効な医療機器です。日本では三千人以上、世界では七万人以上の装用者がいます。補聴器では効果が少ない高度難聴でも、人工内耳を使用することで多くの場合改善が期待できます。また生まれつき耳が聞こえない子供でも、早期に人工内耳を装用し訓練をすることで、よりスムーズな音声言語の習得が期待できます。
人工内耳は体外装置と体内装置の二つの部分からなり、手術によって体内装置を頭部に埋め込む必要があります。県内では弘前大学医学部附属病院で手術を行なっています。人工内耳が適応可能かどうかを判断するため、術前にはいくつかの検査が必要です。手術は全身麻酔で行ない、二、三時間程度です。入院から二、三週間で退院できます。一度手術をすれば、基本的には再手術の必要はありません。手術による副作用も稀です。手術は二歳ごろから可能で、八十歳代で手術を受けた方もいます。手術費用には健康保険や医療費の助成制度が適用され、最終的な自己負担額は数千円程度で済んでいる場合が多いようです。
体外装置は補聴器のような形をしており、箱型と耳掛け型の二種類があります。装用後も日常生活はほとんど以前と変わりなく行なうことができ、入浴も体外装置を外せば問題ありません。
人工内耳装用後の聞き取り能力には個人差がありますし、定期的な機器の調整が必要となります。しかしながら人工内耳をつけることによって、ほとんどの方が聞き取り能力が増し、生活の質が向上したと感じています。もし人工内耳装用をお考えの方がいらっしゃいましたら、かかりつけの耳鼻科医に相談の上、弘大病院の耳鼻科を受診してください。
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聴こえやことばの障害が疑われたらどのようにしたらよいのでしょうか。成人や高齢者の場合、老人性難聴を除いてはそれほど難しくありません。多くの場合、脳血管障害や事故などの原因疾患によってことばの問題が突然出現しますので誰でも気づくことができます。
医療機関においては言語聴覚士がことばや聴こえの相談・訓練をしていますので、まずは言語聴覚士のいる病院を受診して他の障害との鑑別や評価を受けられることをお薦めします。老人性難聴の場合には耳鼻科の医師と相談のうえ、補聴器適合士のいる販売店や言語聴覚士のいる病院を紹介してもらうとよいでしょう。
一方小児の場合には大別すると教育、福祉、医療の各領域において相談、療育が行われています。歴史的にみますと小児の聴こえやことばの問題はいわゆる特殊教育の中で対応されてきました。現在も養護学校や聾(ろう)学校、きこえの教室やことばの教室あるいは県の総合学校教育センターなどで相談を受けつけています。福祉の領域では各地域の保健センターで健診時や、あるいは何か心配があれば随時相談にのってくれますので気軽に相談されるとよいでしょう。
最も歴史の浅いのが医療の領域といえます。難聴の診断や口蓋裂(こうがいれつ)などの医療的手術や治療は従来から医師によって行われてきましたが、ことばの獲得自体の治療・訓練が医療機関において行われるようになってきたのは最近のことです。県内では小児の発達障害や難聴、構音障害などの治療・訓練をしてくれる医療機関はまだまだ少ないのですが、心配な場合には言語聴覚士のいる病院や施設に問い合わせてみてください。
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わが国ではそれよりだいぶ遅れて一九九七年に医療職の国家資格として「言語聴覚士」が誕生しました。日本では医療、教育といった領域は医療職、教育職と厳密に区分されています。そのため米国などのように言語聴覚士の免許ですべての領域で働くことはできません。医療機関では働くことができますが、教育機関では勤務できないのです。
しかしきこえやことばの障害は今まで述べてきた通りすべての年代で、あるいはすべての領域での対応が必要となります。このような現実的な要請に応えるため、言語聴覚士の養成は大学卒業生を受験対象とする養成校を設定するなど複数のコースがあります。
現在県内には八十人余りの言語聴覚士が病院や小児の施設、あるいは教育の領域で働いています。最も多いのは医療機関である病院や高齢者の施設、あるいはデイケアセンターなどです。病院といってもまだ数は少ないのですが、主としてリハビリテーション科のある病院などに問い合わせてみてください。
そのほか県内三ヵ所の肢体不自由児施設や、青森市にある「やまぶき園」などの施設で相談、訓練に応じています。各施設で全ての言語聴覚障害に対応できるわけではありませんが相談・情報の提供は可能です。また教育機関では、以前から特殊教育の分野で対応していますが、近年は教員と言語聴覚士の二つの免許をもって教育領域で働く人も出てきています。
きこえやことばのことでご心配がある時には、ぜひ各機関の言語聴覚士または青森県言語聴覚士会にお問い合わせ下さい。
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