障害のある子供については、その能力や可能性を最大限に伸ばし、自立や社会参加に必要な力を培うため、一人一人の教育的ニーズに応じ、多様な学びの場において適切な指導を行うとともに、必要な支援を行う必要がある。現在、特別支援学校や小・中学校の特別支援学級、障害に応じた特別の指導(いわゆる「通級による指導」(※1))においては、特別の教育課程や少人数の学級編制の下、特別な配慮により作成された教科書、専門的な知識・経験のある教職員、障害に配慮した施設・設備等を活用して指導が行われている。近年、特別支援学校に在籍する幼児児童生徒の障害の重度・重複化が進んでおり、一層きめ細かな支援体制の整備が求められている。特別支援教育は、発達障害も含めて、特別な支援を必要とする子供が在籍する全ての学校において実施されるものであり、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒に対しても、合理的配慮の提供を行いながら、必要な支援を行う必要がある。
平成19(2007)年に特別支援教育が本格的に実施されてから10年が経過し、平成29(2017)年5月1日現在、特別支援学校及び小・中学校の特別支援学級の在籍者並びに通級による指導を受けている幼児児童生徒の総数は約49万人となっており、増加傾向にある。このうち義務教育段階の児童生徒については、全体の約4.2%に当たる約41万7千人である。
平成30(2018)年度から開始した障害者基本計画(第4次)においては、基本的考え方として、共生社会の実現に向け、障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に教育を受けることのできる仕組みの整備を進めるとともに、障害に対する理解を深めるための取組を推進すること等を掲げた。具体的には、個別の指導計画や個別の教育支援計画の活用を通じた、全ての学校における特別支援教育の充実、障害に対する理解や交流及び共同学習の推進、学校における外部人材の活用、医療的ケアや長期入院に係る教育機会確保、障害者の生涯を通じた多様な学習活動の充実について、記載を充実させている。また、小・中・高等学校等において通級による指導を受けている児童生徒数を毎年増加させていくことや、現状の体制整備状況を踏まえ、校内委員会の設置率や特別支援教育コーディネーターの指名率等の特別支援教育を行うための体制の整備及び必要な取組を全て行っている幼・小・中・高等学校等の割合をおおむね100%にすることなどを数値目標として盛り込んでいる。
特別支援教育の対象の概念図(義務教育段階)
障害のある子供には、特別支援学校や小・中学校の特別支援学級、通級による指導といった多様な学びの場が提供されている。
幼稚園、小・中・高等学校における特別支援教育については、学習指導要領等において、個別の指導計画や個別の教育支援計画を作成するなど個々の児童生徒等の障害の状態等に応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的・組織的に行うこととしている。平成29(2017)年4月に新特別支援学校小学部・中学部学習指導要領を公示し、 ①重複障害者である子供や知的障害者である子供の学びの連続性、 ②障害の特性等に応じた指導上の配慮の充実、 ③キャリア教育の充実や生涯学習への意欲向上など自立と社会参加に向けた教育等を充実させた。また、新特別支援学校学習指導要領等の円滑な実施のため、学習指導要領の趣旨を踏まえた教育課程の編成や、一人一人の障害の状態等に応じた指導方法の改善・充実について、先導的な実施研究を実施した。
通級による指導については、高等学校段階において、小・中学校等のような通級による指導が制度化されていなかったことから、高等学校における特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議において高等学校における通級による指導の制度化に向けた検討を行い、平成28(2016)年に関係する省令改正等を行った上で、平成30(2018)年度から開始することとした。
障害のため通学して教育を受けることが困難な幼児児童生徒に対しては、教師を家庭、児童福祉施設や医療機関等に派遣して教育(訪問教育)を行っている。平成29年5月1日現在、小学部1,240人、中学部782人、高等部806人の児童生徒が、この訪問教育を受けている。
特別支援学校の児童生徒にとっては、その障害の状態等によっては、一般に使用されている検定教科書が必ずしも適切ではない場合があり、特別な配慮の下に作成された教科書が必要となる。このため、文部科学省では、従来から、文部科学省著作の教科書として、視覚障害者用の点字版の教科書、聴覚障害者用の国語(小学部は言語指導、中学部は言語)及び音楽の教科書、知的障害者用の国語、算数(数学)及び音楽の教科書を作成している。
なお、特別支援学校及び特別支援学級においては、検定教科書又は文部科学省著作の教科書以外の図書(いわゆる「一般図書」)を教科書として使用することができる。
また、文部科学省においては、拡大教科書など、障害のある児童生徒が使用する教科用特定図書等(※2)の普及を図っている。
具体的には、できるだけ多くの弱視の児童生徒に対応できるよう標準的な規格を定めるなど、教科書発行者による拡大教科書の発行を促しており、平成29(2017)年度に使用された、小・中学校の学習指導要領に基づく検定教科書に対応した標準規格の拡大教科書は、ほぼ全点発行されている。また、教科書発行者が発行する拡大教科書では学習が困難な児童生徒のために、一人一人のニーズに応じた拡大教科書などを製作するボランティア団体などに対して、教科書デジタルデータの提供を行っている。このほか、通常の検定教科書において一般的に使用される文字や図形等を認識することが困難な発達障害等のある児童生徒に対しては、教科書の文字を音声で読み上げるとともに、読み上げ箇所がハイライトで表示されるマルチメディアデイジー教材等の音声教材がボランティア団体等により製作されており、文部科学省においても必要な調査研究等を行うなど、その普及推進に努めている。
さらに、障害のある児童生徒の情報活用能力を育成するとともに、障害を補完し、学習を支援する補助手段として、情報通信技術(ICT)などの活用を進めることが重要であることから、企業・大学等が学校・教育委員会等と連携して行う、ICTを活用した教材など、児童生徒の障害の状態等に応じた使いやすい支援機器等教材の開発の支援を実施した。
公立の特別支援学校及び小・中学校の特別支援学級においては、障害の状態や能力・適性等が多様な児童生徒が在籍し、一人一人に応じた指導や配慮が特に必要であるため、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(昭和33年法律第116号)(以下「義務標準法」という。)及び公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律(昭和36年法律第188号)(以下「高校標準法」という。)に基づき、学級編制や教職員定数について特別の配慮がなされている。
平成23(2011)年4月の義務標準法の一部改正では、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒を対象とした通級による指導の充実など特別支援教育に関する加配事由が拡大された。
また、平成29(2017)年3月の義務標準法の一部改正により、平成29年度から公立小・中学校における通級による指導など特別な指導への対応のため、10年間で対象児童生徒数に応じた定数措置(基礎定数化)を行うこととしている。この他、特別支援学校のセンター的機能強化のための教員配置など、特別支援教育の充実に対応するための加配定数の措置を講じており、高等学校における通級による指導の制度化に伴い、平成30(2018)年3月に高校標準法施行令を改正し、公立高等学校における通級による指導のための加配定数措置を可能とした。
特別支援教育担当教師の養成は、現在、主として大学の特別支援教育関係の課程等において行われている。また、幼稚園、小・中学校及び高等学校の教員養成においても、教職に関する科目において、「障害のある幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」について取り扱うこととしているほか、特別支援教育について学ぶ科目を開設している大学もある。また、平成29(2017)年11月に教育職員免許法施行規則の改正を行い、教職課程において「特別の支援を必要とする幼児、児童及び生徒に対する理解」を新たに独立した事項として設け、平成31(2019)年4月以降に入学する者については1単位以上修得することを定めた。
また、教職員の資質向上を図るため、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所においては、特別支援教育関係の教職員等に対する研修や講義配信を行っているほか、独立行政法人教職員支援機構(平成29年4月に「独立行政法人教員研修センター」から名称変更)においても、各地域の中心的な役割を担う教職員を育成する学校経営研修において、特別支援教育に関する内容を盛り込んでいる。さらに、都道府県等教育委員会においては、小学校等の教師等の初任者研修や中堅教諭等資質向上研修においても、特別支援教育に関する内容を盛り込んでいる。この他、放送大学において、現職教師を主な対象とした特別支援学校教諭免許状取得のための科目が開講されている。
また、教員免許更新制における免許状更新講習においても、必修領域の事項の一つである「子どもの発達に関する脳科学、心理学等における最新の知見(特別支援教育に関するものを含む。)」の中で特別支援教育に関する内容を扱うことが規定されている。
平成19(2007)年度より、従来、盲学校・聾学校・養護学校ごとに分けられていた教諭の免許状が、特別支援学校の教諭の免許状に一本化されている。同時に、特別支援学校教諭免許状の取得のためには、様々な障害についての基礎的な知識・理解と同時に、特定の障害についての専門性を確保することとなっている。また、大学などにおける特別支援教育に関する科目の修得状況などに応じ、教授可能な障害の種別(例えば「視覚障害者に関する教育」の領域など)を定めて授与することとしている。
ただし、特別支援学校教諭免許状については、教育職員免許法(昭和24年法律第147号)上、当分の間、幼・小・中・高等学校の免許状のみで特別支援学校の教師となることが可能とされているが、専門性確保の観点から保有率を向上させることが必要である。
特別支援学校の教師の特別支援学校教諭等免許状の保有率は、全体で77.7%(平成29(2017)年5月1日現在)であり、全体として前年度と比べ1.9ポイント増加しているが、特別支援教育に関する教師の専門性の向上が一層求められている中で、専門の免許状等の保有率の向上は喫緊の課題となっている。このため、各都道府県教育委員会等において教師の採用、配置、現職教師の特別支援学校教諭等免許状取得等の措置を総合的に講じていくことが必要であることから、文部科学省において、特別支援学校教諭等免許状の取得に資する取組や特別支援学校教員等に対する専門的な研究を実施した。
文部科学省では、学校施設の整備について、障害のある幼児児童生徒が支障なく学校生活を送るために障害の種類や程度に応じたきめ細かな配慮を行うよう、学校種ごとの学校施設整備指針において、施設の計画・設計上の留意点を示している。このほか、学校施設のバリアフリー化に関する基本的な考え方や計画・設計上の留意点を示した「学校施設バリアフリー化推進指針」を策定するとともに、具体的な取組を事例集として取りまとめている。また、報告書「災害に強い学校施設の在り方について~津波対策及び避難所としての防災機能の強化~」では、災害時に避難所となる学校施設におけるバリアフリー化の必要性について示している。これらの指針や事例集等は、地方公共団体等に配布するとともに、研修会等を通じて普及啓発に努めている。
さらに、学校施設におけるバリアフリー化の取組に対する支援の一つとして、エレベーターやスロープなどのバリアフリー化に関する施設整備について国庫補助を行っている。
また、私立の特別支援学校並びに小・中学校の特別支援学級において、障害に適応した教育を実施する上で必要とする設備の整備を学校法人が行う場合に、国がその一部を補助している。補助対象となる設備には、立体コピー設備、FM等補聴設備、VOCA(音声表出コミュニケーション支援装置)、携帯用防犯ベル、スクールバスなどがある。
文部科学省では、障害者の権利に関する条約等を踏まえ、障害のある子供と障害のない子供が可能な限り同じ場で共に学ぶことができるようにしつつ、一人一人の教育的ニーズに応じた指導を提供できる、多様で柔軟な学びの場の整備を進めてきた。
こうした学びの場の一つに、「通級による指導」という指導形態がある。
「通級による指導」とは、学校教育法施行規則第140条に基づき、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒に対して、ほとんどの授業を通常の学級で行いながら、一部の授業について、障害に基づく種々の困難の改善・克服に必要な指導を特別の教育課程を編成して特別の場で行う教育形態であり、対象とする障害の種類は言語障害、自閉症、情緒障害、弱視、難聴、LD、ADHD、肢体不自由及び病弱・身体虚弱である。
通級による指導の内容は、障害による学習上又は生活上の困難を改善し、又は克服することを目的とする、特別支援学校の自立活動(※)に相当する活動であり、特に必要があるときは、障害の状態に応じて各教科の内容を取り扱いながら行えることとなっている。具体的には、弱視の児童生徒に対しては、主として視覚認知、目と手の協応、視覚補助具の活用等の指導が、ADHDの児童生徒に対しては、刺激を調整し、注意力を高める指導や、ソーシャルスキルトレーニング等が考えられる。
※個々の児童生徒が自立を目指し、障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識、技能、態度及び習慣を養い、もって心身の調和的発達の基盤を培う指導。
小・中学校においては、平成5(1993)年に通級による指導が制度化されて以来、平成29(2017)年5月1日現在、全国で約11万人が通級による指導を受けているが、通級による指導を受ける児童生徒数は年々増加しており、平成19(2007)年比で2.4倍となっている。
一方、高等学校では、障害のある生徒に対する指導や支援は、通常の授業の範囲内での配慮や学校設定教科・科目等により実施されており、特別の教育課程を編成して、通級による指導を実施することは可能となっていなかった。
平成21(2009)年8月には、特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議に置かれた高等学校ワーキング・グループが取りまとめた「高等学校における特別支援教育の推進について(報告)」において、高等学校における通級による指導についての将来の制度化を視野に入れた種々の実践を進める必要性などが示された。その後も、平成24(2012)年7月に中央教育審議会初等中等教育分科会が取りまとめた「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」等において、高等学校で自立活動等の指導を可能とするための検討の必要性が指摘された。
また、文部科学省では、平成26(2014)年度以降、教育課程の編成・実施や指導方法の工夫・改善について研究開発を行う「高等学校における個々の能力・才能を伸ばす特別支援教育充実事業」を実施し、その研究成果として、高等学校における通級による指導を実施するためには、教育委員会においては特別支援教育課と高校教育課との連携、高等学校においては特別支援教育に対する全職員の理解と指導力向上が重要であることがわかった。
こうした調査研究を実施するとともに、文部科学省において引き続き制度の検討を重ね、平成28(2016)年3月には、高等学校における特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議が取りまとめた「高等学校における通級による指導の制度化及び充実方策について(報告)」において、高等学校における通級による指導の制度化が提言された。
このような状況を踏まえ、平成28年12月に学校教育法施行規則等の改正を行い、平成30(2018)年度より、高等学校において通級による指導が導入されることとなった。
平成29年度は、翌年度からの制度化に向け、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所において、通級による指導に関わる指導的立場にある教職員を対象とした行政説明や講義、研究協議等を行う研修会など、各都道府県等における準備を促す取組を実施した。
また、各都道府県等の高等学校における通級による指導の実施予定に関する調査を文部科学省において実施したところ、平成30年度には45都道府県と5指定都市の高等学校等において開始されることが明らかとなった。
引き続き、必要な生徒が通級による指導を受けられるよう、文部科学省において、
などの取組を行っていく。
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所は、我が国における特別支援教育のナショナルセンターとして、国の政策課題や教育現場等の喫緊の課題等に対応した研究活動を核として、各都道府県等において指導的立場に立つ教職員等を対象に、「特別支援教育専門研修」や「インクルーシブ教育システムの充実に関わる指導者研究協議会」を実施しているほか、インターネットを通じて、通常の学級の教師を含め障害のある児童生徒等の教育に携わる幅広い教師の資質向上の取組を支援するための研修講義の配信や特別支援学校の教師の免許状保有率の向上に資する免許法認定通信教育を実施している。また、全ての学校を始めとする関係者に必要かつ有益な情報を提供するため、インターネットを活用し、発達障害に関する情報提供等を行う「発達障害教育推進センター」、合理的配慮の実践事例の掲載等を行う「インクルーシブ教育システム構築支援データベース」及び支援機器等教材活用に関する様々な情報を集約した「特別支援教育教材ポータルサイト」などにより情報発信を行っている。さらに、「研究所セミナー」(東京都)を開催しているほか、「教材・支援機器等展示会」、「発達障害地域理解啓発事業」(全国4地域)を実施するなど理解啓発活動も行っている。
このほか、平成28(2016)年度に「インクルーシブ教育システム推進センター」を設置し、地域や学校が直面する課題を研究テーマとし、その解決を目指す「地域実践研究」、諸外国の最新情報の発信やインクルーシブ教育システムの構築に関する相談支援等を通して、地域や学校における取組を強力にバックアップしている。(参照:http://www.nise.go.jp)
都道府県の特別支援教育センターにおいて、当該都道府県における特別支援教育関係職員の研修、障害のある子供に係る教育相談、特別支援教育に係る研究・調査等が行われている。
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所では、平成26(2014)、27(2015)年度において「障害のある児童生徒のためのICT活用に関する総合的な研究―学習上の支援機器等教材の活用事例の収集と整理―」を実施し、実践事例の整理・検討を行った。
特別支援学校や通常の学級における活用事例(一部抜粋)
通常の学級での学習に集中して参加することが難しい子供や、衝動性のある子供、姿勢が崩れやすい子供、問題を読み取ることが難しい子供に対して、大型ディスプレイを活用して視覚的な情報を提示することで、子供の興味関心を引きつけたり、理解の促進を行ったりする(図1)。
難聴のために正確な文言を聞き取ることが難しい子供に対して、タブレットPCの筆談アプリを使用して、学習に必要な正しい文言を確認する。また、子供の発言が聞き取りにくい場合には、教師が筆談アプリを使用して確認することもできる(図2)。
距離の離れた二つの教室間での内線電話を利用して、電話での丁寧な受け答えの学習を行ったり、教師からの指示に従い正しく実行したりする学習を行う際、テレビ会議システムを遠隔モニターとして用いることによってその様子を観察し評価し合った。遠隔モニターでどのような行動をとっているかの情報が共有でき、話合い活動にも生かすことができた(図3)。
◯特別支援教育でICTを活用しよう(パンフレット) http://www.nise.go.jp/cms/resources/content/12589/20161205-143141.pdf ◯障害のある児童生徒のためのICT活用に関する総合的な研究(研究成果報告書) http://www.nise.go.jp/cms/7,12446,32,142.html
文部科学省では、障害のある子供に対する特別支援教育を充実するため、学校における支援体制の整備や留意事項などを示し、学校や教育委員会などの取組を促進しており、障害のある子供への支援体制の整備、巡回相談や専門家チームによる支援、研修体制の整備・実施、関係機関との連携など、支援体制整備の推進に係る経費の一部を補助している。
平成29(2017)年度特別支援教育体制整備状況調査によると、小・中学校においては、「校内委員会」の設置、「特別支援教育コーディネーター」の指名といった基礎的な支援体制はほぼ整備されており、「個別の指導計画」の作成、「個別の教育支援計画」の作成についても着実な取組が進んでいる。また、幼稚園・高等学校における体制整備は進みつつあるものの、小・中学校に比べると課題が見られる(図表3-2)。このため、文部科学省では、幼稚園段階からの支援の強化に向け、障害のある子供に対する早期からの教育相談及び支援体制の構築を推進するため、教育と保育、福祉、保健、医療等の連携推進、情報提供等の取組に対する支援を実施している。
また、発達障害を始め障害のある子供への支援における教育と福祉の連携については、学校と障害福祉サービス事業者との相互理解の促進や、保護者も含めた情報共有の必要性が指摘されていることから、各自治体の教育委員会や福祉部局が主導し、支援が必要な子供やその保護者が、乳幼児期から学齢期、社会参加に至るまで、地域で切れ目なく支援が受けられるよう、文部科学省と厚生労働省の両省による「トライアングル」プロジェクトを平成29年12月に設置し、家庭と教育と福祉のより一層の連携を推進するための方策について検討を行った。
さらに、公立幼稚園、小・中学校及び高等学校に在籍する障害のある子供をサポートする「特別支援教育支援員」の配置に係る経費が各市町村に対して地方財政措置されている。
事業の趣旨・内容
(30地域→60地域)
| ◇福祉・保健部局の申請可◇最長3カ年補助 |
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発達障害を始め障害のある子供たちへの支援に当たっては、行政分野を超えた切れ目ない連携が不可欠であり、一層の推進が求められているところである。
特に、教育と福祉の連携については、学校と児童発達支援事業所、放課後等デイサービス事業所等との相互理解の促進や、保護者も含めた情報共有の必要性が指摘されている。このような課題を踏まえ、支援が必要な子供やその保護者が、乳幼児期から学齢期、社会参加に至るまで、地域で切れ目なく支援が受けられるよう、家庭と教育と福祉のより一層の連携を推進するための方策を検討するため、平成29(2017)年12月、文部科学省、厚生労働省の両省により家庭と教育と福祉の連携「トライアングル」プロジェクトを発足させた。
本プロジェクトでは、教育と福祉の連携を推進している地方自治体や障害のある子供への支援を行う関係団体から、現状の課題や取組についてヒアリングを実施した。
その中で、学校と放課後等デイサービス事業所において、お互いの活動内容や課題、担当者の連絡先などが共有されていないため、円滑なコミュニケーションが図れていないことや、乳幼児期、学齢期から社会参加に至るまでの各段階で、必要となる相談窓口が分散しており、保護者にとって、どこに、どのような相談機関があるかがわかりにくく、必要な支援を受けられていないことがわかった。
このような議論を踏まえ、平成30(2018)年3月、本プロジェクトの報告書を取りまとめ、今後、教育と福祉の連携の促進に向け、文部科学省、厚生労働省が連携して取り組む事項を掲げた。
具体的には、教育と福祉との連携を推進するための方策として、以下の事項等を盛り込んだ。
また、保護者支援を推進するための方策として、以下の事項等を盛り込んだ。
これらについて、各地方自治体の教育委員会、福祉部局、さらには学校と福祉の現場まで共有を図り、支援方策を実現していく。
学校教育法(昭和22年法律第26号)の一部改正(平成18(2006)年)により、幼稚園、小・中・高等学校等のいずれの学校においても、発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する特別支援教育を推進することが法律上明確に規定された。
平成28(2016)年6月には発達障害者支援法(平成16年法律第167号)の一部改正が公布され(同年8月施行)、発達障害児がその年齢・能力に応じ、かつその特性を踏まえた十分な教育を受けられるよう、可能な限り発達障害児が発達障害児でない児童と共に教育を受けられるよう配慮することや、支援体制の整備として個別の教育支援計画・個別の指導計画の作成推進、いじめの防止等のための対策の推進等が規定された。文部科学省では、小・中学校、高等学校等における発達障害の可能性のある児童生徒等に対する支援に当たって、 ①特別支援教育の視点を踏まえた学校経営構築の方法、 ②学習上のつまずきなどに対する教科指導の方向性の在り方、 ③通級による指導の担当教師等に対する研修体制の在り方や必要な指導方法、 ④学校における児童生徒の多様な特性に応じた合理的配慮の在り方、 ⑤学校と福祉機関との連携支援、支援内容の共有方法に関する研究を実施した。
また、文部科学省と厚生労働省の両省主催で「発達障害支援の地域連携に係る全国合同会議」を開催した。
特別支援学校等には、日常的に医療的ケアを必要とする幼児児童生徒が在籍しており、学習や生活を行う上で適切に対応することが必要である。
平成23(2011)年6月に公布された介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律(平成23年法律第72号)による社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正により、平成24(2012)年4月から一定の研修を受けた介護職員等は一定の条件の下にたんの吸引等の医療的ケアができるようになったことを受け、特別支援学校等の教師等についても、制度上実施することが可能となった。
これに関して、文部科学省としては、特別支援学校等において安全かつ適切な医療的ケアを提供するために必要な検討を行うため、平成23年10月より「特別支援学校等における医療的ケアの実施に関する検討会議」を開催し、特別支援学校等において医療的ケアを必要とする児童生徒等の健康と安全を確保するに当たり留意すべき点等について整理を行い、都道府県・指定都市教育委員会等に通知した (参照:http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1314510.htm)。
また、制度の開始から5年を経て、人工呼吸器の管理を始めとした高度な医療的ケアへの対応や訪問看護師の活用など、新たな課題も見られるようになってきていることから、平成29(2017)年10月に「学校における医療的ケア実施に関する検討会議」を設置し、医療的ケアをより安全かつ適切に実施できるよう、更なる検討を行っている。
平成29年5月1日現在、医療的ケアを必要とする幼児児童生徒が特別支援学校に8,218人、小・中学校に858人在籍しており、文部科学省では、特別支援学校や小・中学校における医療的ケアを必要とする児童生徒の教育の充実を図るため、看護師の配置に必要な経費の一部を補助している。また、学校において高度な医療的ケアに対応するため、医師と連携した校内支援体制の構築や、医療的ケア実施マニュアル等の作成など、医療的ケアの実施体制の充実を図るモデル事業を実施した。
私立の特別支援学校、特別支援学級を置く小・中学校及び障害のある幼児が就園している幼稚園の果たす役割の重要性から、これらの学校の教育条件の維持向上及び保護者の経済的負担の軽減を図るため、私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)に基づき、国は経常的経費の一部の補助等を行っている。
教育の機会均等の趣旨及び特別支援学校等への就学の特殊事情に鑑み、保護者の経済的負担を軽減し、その就学を奨励するため、就学のために必要な諸経費のうち、教科用図書購入費、交通費、寄宿舎居住に伴う経費、修学旅行費等について、保護者の経済的負担能力に応じて、その全部又は一部を助成する特別支援教育就学奨励費が保護者に支給されている。
厚生労働省においては、障害のある児童の保育所での受入れを促進するため、昭和49(1974)年度より障害児保育事業において保育所に保育士を加配する事業を実施してきた。
当該事業については、事業開始より相当の年数が経過し、保育所における障害のある児童の受入れが全国的に広く実施されるようになったため、平成15(2003)年度より一般財源化し、平成19(2007)年度より地方交付税の算定対象を特別児童扶養手当の対象児童から軽度の障害のある児童に広げる等の拡充をしている。
また、平成27(2015)年度より施行した子ども・子育て支援新制度においては、 ①障害のある児童等の特別な支援が必要な子供を受け入れ、地域関係機関との連携や、相談対応等を行う場合に、地域の療育支援を補助する者を保育所、幼稚園、認定こども園に配置、 ②新設された地域型保育事業について、障害のある児童を受け入れた場合に特別な支援が必要な児童2人に対し保育士1人の配置を行っている。
さらに、保育現場におけるリーダー的職員を育成するため、平成29(2017)年度より開始した「保育士等キャリアアップ研修」の研修分野に「障害児保育」を盛り込み、障害児保育を担当する職員の専門性の向上を図っている。
なお、障害児保育の研修分野を含めた保育士等キャリアアップ研修を修了し、リーダー的職員となった者に対して、その取組に応じた人件費の加算を実施している。
加えて、障害児保育に係る地方交付税について、平成30(2018)年度からは、措置額を約400億円から約800億円に拡充するとともに、障害児保育に係る市町村の財政需要を的確に反映するため、各市町村の保育所等における「実際の受入障害児数」に応じて地方交付税を算定することとした。
このほか、障害のある児童を受け入れるに当たりバリアフリーのための改修等を行う事業を実施している。
共働き家庭など留守家庭の小学生に対して、放課後等に適切な遊びや生活の場を与える放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)においては、療育手帳や身体障害者手帳を所持する児童に限らず、これらの児童と同等の障害を有していると認められる児童も含めて可能な限り障害のある児童の受入れに努めているところである。
障害のある児童の受入れを行っている放課後児童クラブは、年々、着実に増加しており、平成29(2017)年5月現在で、全24,573クラブのうち約56%に当たる13,648クラブにおいて、36,493人を受け入れている状況である。障害のある児童を受け入れるに当たっては、個々の障害の程度等に応じた適切な対応が必要なことから、障害のある児童を1人以上受け入れている放課後児童クラブに専門的知識等を有する職員を配置するために必要な経費を補助しているところである。
加えて、平成29年度からは、消費税財源を活用して、障害のある児童3人以上の受入れを行う場合について、更に1名の専門的知識等を有する職員を配置するために必要な経費の上乗せ補助や医療的ケア児の受入れを行う場合について、看護師等を配置するために必要な経費の補助を行っており、放課後児童クラブの利用を希望する障害のある児童が放課後児童クラブを適切に利用できるよう支援している。
障害のある児童に対しては、できるだけ早期に必要な治療と指導訓練を行うことによって、障害の軽減や基本的な生活能力の向上を図り、将来の社会参加へとつなげていく必要がある。このため、健康診査等により障害の早期発見を図るとともに、適切な療育を実施する体制の整備を図っている。
また、障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律(平成22年法律第71号)の公布に伴う児童福祉法(昭和22年法律第164号)の一部改正等により、障害児支援については、身近な地域で支援を受けられるようにする等のため、平成24(2012)年4月から知的障害児施設等の障害種別に分かれていた施設体系について、通所による支援を「障害児通所支援」に、入所による支援を「障害児入所支援」にそれぞれ一元化し、障害児支援の強化を図っている。
さらに、学齢期における支援の充実を図るために「放課後等デイサービス」を、保育所等に通う障害のある児童に対して集団生活への適応を支援するために「保育所等訪問支援」を創設した。
また、在宅で生活する重症心身障害児(者)に対し、適切なリハビリテーションや療育を提供し、日中の活動の場を確保するため、「重症心身障害児(者)通園事業」を実施してきたが、児童福祉法の一部改正により、従来、予算事業で実施していた重症心身障害児(者)通園事業については、平成24年度から法定化され、安定的な財源措置が講じられることとなった。
平成28(2016)年6月に改正された児童福祉法により、障害児支援のニーズの多様性にきめ細かく対応して支援の拡充を図るため、重度の障害等により外出が著しく困難な障害のある児童に対し、居宅を訪問して発達支援を提供する「居宅訪問型児童発達支援」を創設した。加えて、保育所等の障害のある児童に発達支援を提供する「保育所等訪問支援」について、訪問先を乳児院及び児童養護施設にも拡大した。
支援 | 支援の内容 | |
---|---|---|
障害児通所支援 | 児童発達支援 | 日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練、その他の必要な支援を行うもの |
医療型児童発達支援 | 日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練、その他の必要な支援及び治療を行うもの | |
放課後等デイサービス | 授業の終了後又は学校の休業日に、生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進その他の必要な支援を行うもの | |
居宅訪問型児童発達支援 | 重度の障害等により外出が著しく困難な障害のある児童の居宅を訪問して発達支援を行うもの | |
保育所等訪問支援 | 保育所、乳児院・児童養護施設等を訪問し、障害のある児童に対して、集団生活への適応のための専門的な支援その他の必要な支援を行うもの | |
障害児入所支援 | 福祉型障害児入所施設 | 施設に入所する障害のある児童に対して、保護、日常生活の指導及び独立自活に必要な知識技能の付与を行うもの |
医療型障害児入所施設 | 施設に入所する障害のある児童に対して、保護、日常生活の指導、独立自活に必要な知識技能の付与及び治療を行うもの |
地域で生活する障害のある児童の療育として、児童福祉法に基づく障害児通所支援事業所において指導訓練等が行われている。
また、児童相談所等における相談支援等の施策により、障害のある児童とその家族への支援を行っている。
平成18(2006)年4月からは、障害のある児童に対する居宅介護や短期入所などの在宅施策が障害者自立支援法(平成17年法律第123号) (平成25(2013)年4月から障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下「障害者総合支援法」という。))の障害福祉サービスに位置づけられ、財政的な基盤強化が図られている。
平成26(2014)年7月には、「障害児支援の在り方に関する検討会」により報告書が取りまとめられ、 ①地域における「縦横連携」を進めるための体制づくり、 ②「縦横連携」によるライフステージごとの個別の支援の充実、 ③特別に配慮された支援が必要な障害のある児童のための医療・福祉の連携、 ④家族支援の充実、 ⑤個々のサービスの質のさらなる確保が提言された。これらを踏まえ、地域の中核となる児童発達支援センターの地域支援機能を強化するとともに、平成27(2015)年度障害福祉サービス等報酬改定において関係機関連携加算の創設等の対応を行っている。平成27年4月には、放課後等デイサービスについて、支援の提供や事業運営に当たっての基本的事項を定めた「放課後等デイサービスガイドライン」を発出し、放課後等デイサービスの支援の質の向上を図っている。
平成28(2016)年6月に改正された児童福祉法により、医療的ケアが必要な障害のある児童が適切な支援を受けられるよう、地方公共団体において、保健、医療、福祉等の連携促進を図ることが努力義務とされた。併せて、障害児支援の提供体制の計画的な構築を図るため、地方公共団体において、「障害児福祉計画」を策定することが義務付けられた。
平成29(2017)年7月には「児童発達支援ガイドライン」を発出し、提供すべき支援の内容や運営に関する基本事項を示すことにより、支援の質の向上を図っている。関係機関と連携を図り、円滑な児童発達支援の利用と適切な移行を図ることとしている。
これらにより、障害のある児童が、できるだけ身近な場所で適切な療育を受けられる体制の整備を図っている。
さらに平成30(2018)年度からは、外部の看護職員が事業所を訪問し、障害のある児童に対して長時間の支援を行った場合等について新たに報酬上評価するなど、医療的ケア児に対する支援を拡充している。
近年、医学の進歩を背景として、人工呼吸器や胃ろう等を使用し、在宅で日常的に医療的ケアを必要とする障害のある児童が増えている。平成28(2016)年に児童福祉法が改正され、地方自治体は、医療的ケア児の支援に関する保健、医療、障害福祉、保育、教育等の連携の一層の推進を図るよう努めることとされた。現在、国においても、関係者や地方自治体が意見交換を行うことを促すため、地方自治体の関係部局を一堂に集めた全国会議を開催している。
平成29(2017)年度は、67自治体、約280名の関係者の参加のもと、全国会議が開催された。まず、厚生労働省と文部科学省の関連部局より、障害福祉、小児在宅医療、保育・子育て支援、小児慢性特定疾病対策、学校における医療的ケアの対応等の観点から、国の医療的ケア児関連の支援施策について説明を行った。
また、日本医師会、日本看護協会、日本重症心身障害福祉協会等の関係団体から、医療的ケア児が在宅で生活するための課題、入所施設に求められている地域支援、特別支援学校に在籍する児童の現状等の説明が行われ、医療的ケア児の取り巻く現状や国等が推進している施策について、地方自治体担当者の理解が促された。
さらに、各地方自治体が施策を推進する上での参考となるよう、先進的な取組として、千葉県市川市、三重県、東京都町田市から国のモデル事業等を活用した保育、教育、障害福祉の各分野における取組について報告があった。このうち町田市からは、厚生労働省の「医療的ケア児支援促進モデル事業」の補助金を活用し、市営の障害児通所施設で医療的ケア児を受け入れる体制の整備を行い、保護者や医療機関との連絡調整を密にすることにより、きめ細かな支援を行っていることや、保育所への医療的ケア児の受入れ促進のための協議の場を設置し、関係者同士で個別のケースを検討していることなどについて、発表があった。
最後に、医療的ケア児への支援についてグループディスカッションを行った。このグループディスカッションは、近隣の資源を認識し、今後の支援の参考にするほか、各地方自治体内や近隣の地方自治体間で顔の見える関係を構築していくことを目的として行われた。会場では、近隣の地方自治体ごとのグループに分かれ、地方自治体を横断した支援が必要なケースが生じた場合の支援方法等について、活発な議論が交わされた。
このように、厚生労働省では、各地方自治体における医療的ケア児に対する支援が今後より円滑に進むよう、単なる情報提供にとどまらず、地方自治体間で情報共有を図ることができるような全国会議の場を今後も提供していく予定である。
◯参考URL http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000117218.html
障害のある人が、生涯にわたって自立し社会参加していくためには、企業等への就労を支援し、職業的な自立を果たすことが重要である。しかしながら、平成29年5月1日現在、特別支援学校高等部卒業者の進路を見ると、福祉施設等入所者の割合が約62%に達する一方で、就職者の割合は約30%となっており、職業自立を図る上で厳しい状況が続いている。
障害のある人の就労を促進するためには、教育、福祉、医療、労働などの関係機関が一体となった施策を講じる必要がある。
このため、文部科学省では、厚生労働省と連携し、各都道府県教育委員会等に対し、就労支援セミナーや障害者職場実習推進事業等の労働関係機関等における種々の施策を積極的に活用することや、福祉関係機関と連携の下で就労への円滑な移行を図ることなど障害のある生徒の就労を支援するための取組の充実を促している。
また、特別支援学校高等部や高等学校等において、労働等の関係機関と連携し障害のある生徒の就労支援を行う就労支援コーディネーターの配置など福祉や労働等の関係機関と連携しながらキャリア教育・就労支援を充実するための研究に取り組んでいる。
障害のある人が障害を理由に高等教育への進学を断念することがないよう、修学機会を確保することが重要である。このため、文部科学省では、出願資格について、必要に応じて改善することや、合理的配慮を行い、障害のない学生と公平に試験を受けられるように配慮することなど、適切な対応を求めている。
平成28(2016)年度には「障害のある学生の修学支援に関する検討会」を開催し、障害者差別解消法の施行を踏まえた高等教育段階における障害のある学生の修学支援の在り方について検討を行い、その結果を平成29(2017)年3月に「第二次まとめ」として取りまとめ、関係者の理解促進や取組の充実を促している。
大学入試センター試験や各大学の個別試験において、点字・拡大文字(大学入試センター試験においては、障害のある入学志願者によりきめ細やかに配慮する観点から、拡大文字問題冊子について、14ポイント版に加え、22ポイント版も作成)による出題、筆跡を触って確認できるレーズライター(ビニール製の作図用紙の表面にボールペンで描いた図形や文字がそのままの形で浮き上がるため、描きながら解答者が筆跡を触って確認できる器具)による解答、文字解答・チェック解答(専用の解答用紙に選択肢の数字等を記入・チェックする解答方式)、試験時間の延長、代筆解答等の受験上の配慮を実施している。
学校施設については、障害のある人の円滑な利用に配慮するため、従来よりスロープ、エレベーター、手すり、障害者用トイレ等の整備を進めるとともに、支障なく学生生活を送れるよう、各大学等において授業支援等の教育上の配慮が行われている。
聴覚障害のある人及び視覚障害のある人のための高等教育機関である筑波技術大学は、障害を補償した教育を通じて、 ①幅広い教養と専門的な職業能力を合わせもつ専門職業人、率先して社会に貢献できる人材の育成、 ②障害教育カリキュラム及び障害補償システムの開発研究等を行っている。
テレビ・ラジオ放送等のメディアを効果的に活用して、遠隔教育を行っている放送大学では、自宅で授業を受けることができ、障害のある人を含め広く大学教育を受ける機会を国民に提供しており、障害のある学生に対しては、放送授業の字幕放送化の推進や単位認定試験における点字出題や音声出題、試験時間の延長等を行っている。
〈富山大学における取組事例〉
富山大学では平成19(2007)年度から発達障害学生の修学支援を開始し、現在では様々な障害のある学生の支援を包括的に行う部署として、教育・学生支援機構学生支援センター・アクセシビリティ・コミュニケーション支援室(以下「支援室」という。)が設置され、専任支援員が配属された。社会的障壁を除去するために合理的配慮を行うという「社会モデル」を採用し、支援の開始は学生の修学上の困りごとを出発点としている。問題解決のために、関係する教職員や学生本人と共に支援会議を行い、困りごとを解消するための方策を検討している。障害のある学生の支援とは、(1)修学を支える支援、(2)障害に関する自己理解及び心理的成熟に基づく自立支援の二つが中心となる。支援の必要性及び支援内容に関する根拠は学生本人の語りから得られるという考えに基づき、支援者は学生との対話を中心にした支援プロセスを重視し、週一回の定期面談を基本としている。
例えば、自閉症スペクトラム障害のある学生Aさんは、必修科目の授業で板書が写せないとの困りごとを面談で語った。支援室で状況の整理をすると、「言葉の定義に引っかかってしまい、講義に集中できず、そのうちに板書が消されてしまい、このままでは単位を落としてしまいそう」とのことだった。支援室では、授業担当教員を含めての支援会議を開き、有効な支援について意見交換を行った結果、ICレコーダーで講義を録音し、それを聞きながら復習をするという案が暫定的に出された。支援方法が当該学生にとって有益であるかの検証を経て、合理的配慮は、「ICレコーダーでの録音」となった。支援室では許可された配慮が適切に実行されるための本人への個別支援を行い、最終的に授業の理解度が増え、Aさんは無事に単位を修得した。
障害のある子供の学校外活動や学校教育終了後における活動等を支援するためには、地域における学習機会の確保・充実を図るとともに、障害のある人が地域の人々と共に、地域における学習活動に参加しやすいように配慮を行う必要がある。
文部科学省では、公民館や図書館、博物館といった社会教育施設について、それぞれの施設に関する望ましい基準を定めるなど、障害の有無にかかわらず、全ての人々にとって利用しやすい施設となるよう促している。
障害のある人が、生涯にわたり自らの可能性を追求できる環境を整え、地域の一員として豊かな人生を送ることができるようにすることが重要であるとの認識のもと、文部科学省内に「特別支援総合プロジェクト特命チーム」を設置するとともに、平成29(2017)年度から生涯学習政策局に「障害者学習支援推進室」を新設した。平成29年4月には「特別支援教育の生涯学習化に向けて」と題する大臣メッセージを公表した。また、公益社団法人日本青年会議所とタイアップして「みんなのNIPPON共生社会プロジェクト」を全国で展開するとともに、著名な障害のある人や支援者8名を「スペシャルサポート大使」に任命し、障害のある人の生涯学習の推進に関する広報に協力いただいている。さらに、平成29年度より初めて、障害のある人の生涯を通じた多様な学習を支える活動を行う個人又は団体への文部科学大臣表彰を行うこととして、61件の対象者を決定し、平成29年12月には表彰式と事例発表会を開催した。これらの取組により、各方面への周知・機運醸成を進めている。
また、平成30(2018)年度より新規で「学校卒業後における障害者の学びの支援に関する実践研究事業」として、学校から社会への移行期や人生の各ステージにおける効果的な学習プログラムや実施体制、関係機関・団体等との連携等に関する実証的な研究等に取り組むこととしている。実施体制の例としては、公民館等の社会教育施設における障害のある人向けの青年学級等、特別支援学校の同窓会組織等が行う学習支援、大学のオープンカレッジ等、企業・社会福祉法人・特定非営利活動法人等による学習支援などを想定している。
その他、障害のある人が一般の生涯学習活動に参加する際の阻害要因や促進要因を把握・分析する調査研究の実施や、人材育成のための研修会や障害のある人が参加するフォーラムの開催等を予定している。本事業と並行して、「学校卒業後における障害者の学びの推進に関する有識者会議」を設置し、学校卒業後の障害のある人の学びに係る現状と課題を分析し、その推進方策について検討を行っていく。
今後も、教育、スポーツ、文化の施策全体にわたり、障害のある人の生涯を通じた多様な学びを支援するため、横断的・総合的に取組を推進していく。
障害のある人の就労意欲が高まっている中で、障害のある人が、希望や能力、適性を十分に活かし、障害の特性等に応じて活躍できることが普通の社会、障害のある人と共に働くことが当たり前の社会の実現に向けて、障害者雇用対策の一層の充実を図っていく必要がある。
身体障害者又は知的障害者を1人以上雇用する義務がある民間企業(常用雇用労働者数50人以上)については、毎年6月1日時点の障害者雇用の状況を報告することになっている。平成29年の報告結果は次のとおりである。
なお、障害者雇用状況報告では、重度身体障害者又は重度知的障害者については、その1人の雇用をもって、2人の身体障害者又は知的障害者を雇用しているものとしてカウントされる。
また、重度身体障害者又は重度知的障害者である短時間労働者(1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者)については、1人分として、重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者については、0.5人分としてカウントされる。
平成29(2017)年6月1日現在の障害者雇用状況は、雇用障害者数が14年連続で過去最高を更新し、495,795.0人(前年同日474,374.0人)となるなど、一層進展している。また、障害者である労働者の実数は406,981人(前年同日386,606人)となった。雇用者のうち身体障害者は333,454.0人(前年同日327,600.0人)、知的障害者は112,293.5人(前年同日104,746.0人)、精神障害者は50,047.5人(前年同日42,028.0人)と、いずれも前年より増加し、特に精神障害者の伸び率が大きかった。
また、民間企業が雇用している障害者の割合は1.97%(前年同日1.92%)であった。
企業規模別に割合をみると、50~100人未満規模で1.60%、100~300人未満規模で1.81%、300~500人未満規模で1.82%、500~1,000人未満規模で1.97%、1,000人以上規模で2.16%となった。
一方、法定雇用率を達成した企業の割合は、50.0%を超えた。なお、雇用されている障害者数については、全ての企業規模で前年の報告より増加した。
平成17年度まで | 身体障害者(重度身体障害者はダブルカウント)
知的障害者(重度知的障害者はダブルカウント)
重度身体障害者である短時間労働者
重度知的障害者である短時間労働者
|
平成18年度以降平成22年まで | 身体障害者(重度身体障害者はダブルカウント)
知的障害者(重度知的障害者はダブルカウント)
重度身体障害者である短時間労働者
重度知的障害者である短時間労働者
精神障害者
精神障害者である短時間労働者
(精神障害者である短時間労働者は0.5人でカウント)
|
平成23年度以降 | 身体障害者(重度身体障害者はダブルカウント)
知的障害者(重度知的障害者はダブルカウント)
重度身体障害者である短時間労働者
重度知的障害者である短時間労働者
精神障害者
身体障害者である短時間労働者
(身体障害者である短時間労働者は0.5人でカウント)
知的障害者である短時間労働者
(知的障害者である短時間労働者は0.5人でカウント)
精神障害者である短時間労働者
(精神障害者である短時間労働者は0.5人でカウント)
|
区分 | ①企業数 | ② 法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数 | ③ 障害者の数 | ④実雇用率E÷ ②×100 | ⑤法定雇用率達成企業の数 | ⑥法定雇用率達成企業の割合 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
A.重度身体障害者及び重度知的障害者 | B.重度身体障害者及び重度知的障害者である短時間労働者 | C.重度以外の身体障害者、知的障害者及び精神障害者 | D.重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者 | E.計A×2+B+C+D×0.5 | |||||||
F.うち新規雇用分 | |||||||||||
規模計 | 企業 91,024 (89,359)
| 人 25,204,720.0 (24,650,200.5)
| 人 112,860 (109,765)
| 人 14,842 (14,283)
| 人 231,187 (218,564)
| 人 48,092 (43,994)
| 人 495,795.0 (474,374.0)
| 人 50,940.0 (49,330.5)
| % 1.97 (1.92)
| 企業 45,553 (43,569)
| % 50.0 (48.8)
|
50~100人未満 | 企業 40,842 (40,149)
| 人 2,850,910.0 (2,805,530.0)
| 人 8,717 (8,652)
| 人 2,466 (2,170)
| 人 21,274 (20,382)
| 人 9,031 (7,294)
| 人 45,689.5 (43,503.0)
| 人 5,306.5 (4,930.5)
| % 1.60 (1.55)
| 企業 18,983 (18,347)
| % 46.5 (45.7)
|
100~300人未満 | 35,359
(34,681)
| 5,463,540.5
(5,363,032.0)
| 20,523
(19,743)
| 4,202
(3,803)
| 47,247
(44,633)
| 13,066
(11,116)
| 99,028.0
(93,480.0)
| 12,183.5
(11,584.5)
| 1.81
(1.74)
| 19,112
(18,105)
| 54.1
(52.2)
|
300~500人未満 | 6,881
(6,712)
| 2,437,935.5
(2,377,566.0)
| 9,867
(9,703)
| 1,499
(1,537)
| 21,096
(20,166)
| 4,306
(4,538)
| 44,482.0
(43,378.0)
| 4,504.0
(4,672.5)
| 1.82
(1.82)
| 3,154
(3,007)
| 45.8
(44.8)
|
500~1,000人未満 | 4,639
(4,585)
| 2,988,052.5
(2,951,625.0)
| 13,615
(13,391)
| 1,676
(1,565)
| 27,385
(26,495)
| 5,242
(4,455)
| 58,912.0
(57,069.5)
| 6,166.0
(6,056.0)
| 1.97
(1.93)
| 2,256
(2,207)
| 48.6
(48.1)
|
1,000人以上 | 3,303
(3,232)
| 11,464,281.5
(11,152,447.5)
| 60,138
(58,276)
| 4,999
(5,208)
| 114,185
(106,888)
| 16,447
(16,591)
| 247,683.5
(236,943.5)
| 22,780.0
(22,087.0)
| 2.16
(2.12)
| 2,048
(1,903)
| 62.0
(58.9)
|
国の機関(法定雇用率2.3%)に在職している障害者の割合、勤務している障害者数はそれぞれ2.50%、7,593.0人であった。
また、都道府県の機関(法定雇用率2.3%)は2.65%、8,633.0人であり、市町村の機関(法定雇用率2.3%)は2.44%、26,412.0人であった。
さらに、都道府県等の教育委員会(法定雇用率2.2%)は2.22%、14,644.0人であった。国、地方公共団体等ともに、勤務している障害者数は前年同日の報告より増加した。
① 法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数 | ② 障害者の数 | ③ 実雇用率 | ④ 法定雇用率達成機関の数/機関数 | ⑤ 達成割合 | |
---|---|---|---|---|---|
国の機関 | 303,844.5人
(303,672.0人)
| 7,593.0人
(7,436.0人)
| 2.50%
(2.45%)
| 41/42
(41/42)
| 97.6%
(97.6%)
|
都道府県の機関 | 325,174.0人
(324,593.5人)
| 8,633.0人
(8,474.0人)
| 2.65%
(2.61%)
| 152/156
(150/155)
| 97.4%
(96.8%)
|
市町村の機関 | 1,084,190.0人
(1,077,738.5人)
| 26,412.0人
(26,139.5人)
| 2.44%
(2.43%)
| 2,046/2,319
(2,054/2,333)
| 88.2%
(88.0%)
|
① 法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数 | ② 障害者の数 | ③ 実雇用率 | ④ 法定雇用率達成機関の数/機関数 | ⑤ 達成割合 | |
---|---|---|---|---|---|
都道府県等教育委員会 | 659,739.0人
(661,899.0人)
| 14,644.0人
(14,448.5人)
| 2.22%
(2.18%)
| 103/122
(100/125)
| 84.4%
(80.0%)
|
① 法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数 | ②障害者の数 | ③ 実雇用率 | ④ 不足数 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|
国の機関合計 | 303,844.5 | 7,593.0 | 2.50 | 2.0 | |
行政機関合計 | 275,449.0 | 6,867.5 | 2.49 | 2.0 | |
内閣官房 | 1,070.5 | 25.5 | 2.38 | 0.0 | |
内閣法制局 | 77.0 | 2.0 | 2.60 | 0.0 | |
内閣府 | 2,366.0 | 56.0 | 2.37 | 0.0 | |
宮内庁 | 925.5 | 22.5 | 2.43 | 0.0 | |
公正取引委員会 | 806.5 | 18.0 | 2.23 | 0.0 | |
警察庁 | 2,115.0 | 51.0 | 2.41 | 0.0 | |
金融庁 | 1,613.0 | 39.0 | 2.42 | 0.0 | |
消費者庁 | 394.0 | 10.0 | 2.54 | 0.0 | |
個人情報保護委員会 | 106.5 | 0.0 | 0.00 | 2.0 | |
復興庁 | - | - | - | - | (注4) |
総務省 | 4,789.0 | 110.0 | 2.30 | 0.0 | 特例承認あり(注5) |
法務省 | 32,807.0 | 802.0 | 2.44 | 0.0 | |
公安調査庁 | 1,569.0 | 37.0 | 2.36 | 0.0 | |
外務省 | 6,065.0 | 150.0 | 2.47 | 0.0 | |
財務省 | 11,221.0 | 264.5 | 2.36 | 0.0 | |
国税庁 | 57,205.5 | 1,411.5 | 2.47 | 0.0 | |
文部科学省 | 2,116.0 | 51.0 | 2.41 | 0.0 | 特例承認あり(注5) |
厚生労働省 | 52,163.5 | 1,442.0 | 2.76 | 0.0 | |
農林水産省 | 15,244.0 | 364.0 | 2.39 | 0.0 | |
林野庁 | 3,979.0 | 93.0 | 2.34 | 0.0 | |
水産庁 | 606.0 | 14.0 | 2.31 | 0.0 | |
経済産業省 | 6,504.5 | 153.5 | 2.36 | 0.0 | 特例承認あり(注5) |
特許庁 | 2,781.0 | 65.5 | 2.36 | 0.0 | |
国土交通省 | 37,437.5 | 890.0 | 2.38 | 0.0 | |
観光庁 | 115.5 | 2.0 | 1.73 | 0.0 | |
気象庁 | 4,775.0 | 112.0 | 2.35 | 0.0 | |
海上保安庁 | 166.0 | 4.0 | 2.41 | 0.0 | |
運輸安全委員会 | 183.5 | 5.0 | 2.72 | 0.0 | |
環境省 | 1,974.0 | 46.0 | 2.33 | 0.0 | |
原子力規制委員会 | 1,135.5 | 27.0 | 2.38 | 0.0 | |
防衛省 | 19,867.0 | 516.0 | 2.60 | 0.0 | |
防衛装備庁 | 1,368.0 | 36.0 | 2.63 | 0.0 | |
人事院 | 625.0 | 15.0 | 2.40 | 0.0 | |
会計検査院 | 1,277.5 | 32.5 | 2.54 | 0.0 | |
立法機関合計 | 3,580.5 | 84.5 | 2.36 | 0.0 | |
衆議院事務局 | 1,450.0 | 33.0 | 2.28 | 0.0 | |
衆議院法制局 | 80.5 | 2.0 | 2.48 | 0.0 | |
参議院事務局 | 1,097.0 | 25.5 | 2.32 | 0.0 | |
参議院法制局 | 65.0 | 2.0 | 3.08 | 0.0 | |
国立国会図書館 | 888.0 | 22.0 | 2.48 | 0.0 | |
司法機関合計 | 24,815.0 | 641.0 | 2.58 | 0.0 | |
最高裁判所 | 1,006.0 | 23.0 | 2.29 | 0.0 | |
高等裁判所 | 1,719.0 | 40.0 | 2.33 | 0.0 | |
地方裁判所 | 16,036.5 | 405.0 | 2.53 | 0.0 | |
家庭裁判所 | 6,053.5 | 173.0 | 2.86 | 0.0 |
省庁 | 外局等 | ||
---|---|---|---|
総務省 | 消防庁 | ||
文部科学省 | 文化庁 | スポーツ庁 | |
経済産業省 | 中小企業庁 | 資源エネルギー庁 |
平成28(2016)年度のハローワークを通じた就職件数は、平成27(2015)年度を上回る93,229件(前年度比3.4%増)であった。このうち、身体に障害のある人は26,940件(前年度比3.8%減)、知的障害のある人は20,342件(前年度比1.9%増)、精神障害のある人は41,367件(前年度比7.7%増)、その他の障害のある人 (発達障害、難病、高次脳機能障害などのある人)は4,580件(前年度比19.5%増)となり、精神障害のある人の就職件数が大幅に増加した。
また、新規求職申込件数は191,853件(前年度比2.5%増)となり、このうち、身体に障害のある人は60,663件(前年度比4.3%減)、知的障害のある人は34,225件(前年度比2.4%増)、精神障害のある人は85,926件(前年度比6.6%増)、その他の障害のある人は11,039件(前年度比12.6%増)であり、前年度同様に精神障害のある人やその他の障害のある人の申込件数が大きく増加していることがわかる。
① 新規求職申込件数 | ② 有効求職者数 | ③ 就職件数 | ④ 就職率( ③/ ①) | |||||
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前年度比 | 前年度比 | 前年度比 | 前年度差 | |||||
平成19年度 | 107,906 | 4.1 | 140,791 | △7.3 | 45,565 | 3.6 | 42.2 | △0.2 |
20年度 | 119,765 | 11.0 | 143,533 | 1.9 | 44,463 | △2.4 | 37.1 | △5.1 |
21年度 | 125,888 | 5.1 | 157,892 | 10.0 | 45,257 | 1.8 | 36.0 | △1.1 |
22年度 | 132,734 | 5.4 | 169,116 | 7.1 | 52,931 | 17.0 | 39.9 | 3.9 |
23年度 | 148,358 | 11.8 | 182,535 | 7.9 | 59,367 | 12.2 | 40.0 | 0.1 |
24年度 | 161,941 | 9.2 | 198,755 | 8.9 | 68,321 | 15.1 | 42.2 | 2.2 |
25年度 | 169,522 | 4.7 | 207,956 | 4.6 | 77,883 | 14.0 | 45.9 | 3.7 |
26年度 | 179,222 | 5.7 | 218,913 | 5.3 | 84,602 | 8.6 | 47.2 | 1.3 |
27年度 | 187,198 | 4.5 | 231,066 | 5.6 | 90,191 | 6.6 | 48.2 | 1.0 |
28年度 | 191,853 | 2.5 | 240,744 | 4.2 | 93,229 | 3.4 | 48.6 | 0.4 |
新規求職申込件数 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
障害者計 | 身体障害者 | 知的障害者 | 精神障害者 | その他 | |||
うち重度 | うち重度 | ||||||
平成28年度 | 191,853 | 60,663 | 25,773 | 34,225 | 4,963 | 85,926 | 11,039 |
就職件数 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
障害者計 | 身体障害者 | 知的障害者 | 精神障害者 | その他 | |||
うち重度 | うち重度 | ||||||
平成28年度 | 93,229 | 26,940 | 11,017 | 20,342 | 4,442 | 41,367 | 4,580 |
障害者施策の基本理念である、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現のためには、職業を通じた社会参加が重要である。この考え方の下に障害のある人の雇用対策の各施策を推進している。
具体的には、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号) (以下「障害者雇用促進法」という。)や同法に基づく障害者雇用対策基本方針(平成30年厚生労働省告示第178号)等を踏まえ、障害のある人、一人一人がその能力を最大限発揮して働くことができるよう、障害の種類及び程度に応じたきめ細かな対策を講じている。
障害者雇用促進法では、民間企業等に対し、一定の割合(障害者雇用率)以上の障害のある人の雇用を義務づけている。障害者雇用率は、企業の社会連帯の理念に基づき、身体障害者、知的障害者又は精神障害者に一般労働者と同じ水準の雇用の場を、各事業者の平等な負担の下に確保することを目的として設定している。昭和35(1960)年の制度創設時、民間企業の障害者雇用率は努力義務として事務的事業所1.3%、現場的事業所1.1%であった。その後、昭和51(1976)年に障害者雇用率制度を義務化し、昭和63(1988)年、平成10(1998)年、平成25(2013)年及び平成30(2018)年に障害者雇用率を改正している。平成30年4月からは、新たに精神障害者が雇用義務の対象となり、これを踏まえて、障害者雇用率が算定されることに伴い、民間企業の障害者雇用率は2.2%となった (平成33(2021)年4月までに、さらに0.1%引き上げが行われる)。なお、国等の公的機関については、率先垂範すべき立場にあることから、民間企業を上回る2.5%(都道府県等の教育委員会は2.4%)としている (民間企業と同様に、平成33年4月までに、さらに0.1%引き上げが行われる)。
事業主が障害のある人の雇用に特別の配慮をした子会社(特例子会社)を設立した場合には、一定の要件の下でこの特例子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されている者とみなして、雇用している障害者の割合 (以下「実雇用率」という。)を算定できる特例措置(特例子会社制度)を設けている。特例子会社制度は、障害のある人の特性に配慮した仕事の確保・職場環境の整備が容易となり、これにより障害のある人の能力を十分に引き出すことができるなど、事業主及び障害のある人双方にメリットがあると考えられる。平成29(2017)年6月1日現在で464社を特例子会社として認定している。
また、特例子会社を持つ親会社については、関係する他の子会社も含め、企業グループ全体での実雇用率の算定を可能としている。
さらに、特例子会社がない場合も、一定の要件を満たす企業グループとして認定を受けたものについては、企業グループ全体で実雇用率を通算できる「企業グループ算定特例」を設けている。
加えて、中小企業の場合、単独で障害のある人を雇用するために十分な仕事量を確保することが困難な場合も少なくないため、複数の中小企業が事業協同組合等を活用して共同で障害のある人の雇用機会を確保し、一定の要件を満たすものとして認定を受けたものについては、事業協同組合等とその組合員である中小企業で実雇用率を通算できる「事業協同組合等算定特例」を設けている。
障害者雇用率制度の履行を確保するため、ハローワークにおいて、法定雇用率未達成企業に対する指導を行っている。
実雇用率の著しく低い民間企業に対しては、ハローワークが障害のある人の雇入れに関する2年間(平成24(2012)年以降。それ以前は3年間)の計画の作成を命じ、当該計画に基づいて障害のある人の雇用を進めるよう継続的な指導を実施している。また、雇入れ計画を作成したものの、障害のある人の雇用が進んでいない企業に対しては、雇入れ計画の適正な実施に関する勧告を行い、一連の指導にもかかわらず改善がみられない企業については、企業名を公表している。
雇入れ計画を作成していた企業のうち、計画終期で一定の改善が見られなかった企業に対し企業名公表を前提とした特別指導を行ったところ、平成29(2017)年度については、公表対象企業はなかった。
国及び地方公共団体の機関については、民間企業に率先垂範して障害のある人の雇入れを行うべき立場にあることを踏まえ、厚生労働省は国及び地方公共団体の各機関の任命権者に対し、計画的な採用を図るよう要請を行っている。全ての公的機関は、毎年6月1日現在の雇用状況を発表するとともに、未達成である機関については、障害のある人の採用に関する計画を作成しなければならない。また、その計画が適正に実施されていない場合には、厚生労働省は国及び地方公共団体の各機関の任命権者に対し、計画が適正に実施されるよう勧告を行っている。
平成29(2017)年6月1日現在の障害者雇用状況では、国・地方公共団体で勤務している障害者は前年よりも増加しているものの、特に都道府県等の教育委員会では、未達成である機関が多くみられることから (法定雇用率未達成である都道府県教育委員会は47機関中10機関)、厚生労働省は未達成機関に対し、指導を行っている。
また、国の機関における障害のある人の雇用を促進する観点から、内閣人事局は平成29年度に「公務部門における障害者雇用推進に関する地方別人事担当課長会議」を地方8ブロックにおいて開催した。
障害者雇用促進法は、障害者雇用率制度に加え、障害のある人の雇用に伴う事業主の経済的負担を調整するとともに、障害のある人の雇用を容易にし、社会全体として障害のある人の雇用水準を引き上げるため、障害者雇用納付金制度を設けている。この制度では、障害者雇用率未達成の民間企業(常用雇用労働者数100人超)から納付金を徴収するとともに、一定水準を超えて障害のある人を雇用している民間企業に対して、障害者雇用調整金、報奨金を支給している。
このほか、障害のある人を雇い入れるために施設、設備の改善等を行う事業主等に対する助成金の支給や在宅就業障害者に仕事を発注する事業主に対する在宅就業障害者特例調整金等の支給を行っている。
各府省・各地方公共団体で知的障害のある人等を非常勤職員として雇用し、1~3年の業務の経験を積んだ後、ハローワーク等を通じて一般企業等への就職の実現を図る「チャレンジ雇用」を推進している。
障害者雇用促進法において、職業リハビリテーションとは、「障害者に対して職業指導、職業訓練、職業紹介その他この法律に定める措置を講じ、その職業生活における自立を図ること」(同法第2条第7号)としている。これに基づき、障害のある人が職業を通じて社会参加できるよう、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどの機関を中心に障害のある人が希望や能力、適性に応じた職場に就き、それを継続し、それにおいて向上することができるようにするための就労に関するサービスを実施している。
国では、民間企業が無理なく、かつ積極的に障害のある人を雇用できるよう、障害のある人を雇用した場合などに助成金を支給している。
例えば、身体に障害のある人や知的障害のある人、精神障害のある人を継続して雇用する労働者として雇い入れる民間企業に対して助成する「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」や、障害特性に応じた雇用管理や雇用形態の見直し等の措置を実施する企業に対して助成する「障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース)」、障害のある人を雇い入れたり、継続して雇用するために必要な職場の環境整備等を行った場合に費用の一部を助成する障害者雇用納付金制度に基づく助成金等を支給している。
助成金のほか、民間企業等が積極的に障害のある人の雇用を進めるためには、障害のある人の雇用管理に関する先進的な事例等を普及啓発する必要がある。そのため、各種マニュアル等を発行し、民間企業等への配布等を通じて障害のある人の雇用の啓発を行っている。平成29(2017)年度からは、一般労働者を対象とした「精神・発達障害者しごとサポーター養成講座」を開催し、職場における精神・発達障害のある人を支援する環境づくりに取り組んでいる。
また、厚生労働省では、毎年9月の「障害者雇用支援月間」に障害のある人を積極的に多数雇用している事業所、障害のある人の雇用の促進と職業の安定に著しく貢献した団体又は個人、職業人として模範的な業績をあげている勤労障害者に対し、厚生労働大臣表彰を行い、障害のある人の職業的自立の意欲を喚起するとともに、障害のある人の雇用に対する国民の関心と理解を一層深めることを目指している。平成29年度には22の障害者雇用優良事業所、1名の障害者の雇用の促進と職業の安定等に貢献した個人、17名の優秀勤労障害者の表彰を行った。
障害のある人を雇用する民間企業に対し、税制上の各種の特例措置を講じている。障害のある人の一層の雇用促進につながるよう、平成30(2018)年度税制改正では、障害のある人を多数雇用する場合の機械等の割増償却制度 (所得税、法人税)について、基準雇用障害者数が20人以上であって、重度障害者割合が50%以上であることとの要件における重度障害者割合を55%以上に引き上げた上、その適用期限の2年延長を行った。
雇用分野において障害があることを理由とした差別を禁止し、過重な負担とならない限り、合理的配慮の提供を事業主に義務付けている。
このため、リーフレットや合理的配慮に係る事例集等を作成・配布して周知・啓発に努めるとともに、全国の都道府県労働局・ハローワークにおいて事業主・障害のある人からの相談に応じ、必要な場合は事業主に助言・指導等を行っているほか、都道府県労働局長や障害者雇用調停会議による紛争解決の援助を行っている。
事項 | 内容 |
---|---|
機械等の割増償却措置 (法人税、所得税) | 障害者を雇用し、次のいずれかの要件を満たす場合、その事業年度(その年)又はその前5年以内に開始した各事業年度(各年)において取得、製作、建設した機械装置等のうち、障害者が労働に従事する事業所にあるものについては、普通償却限度額の24%(工場用建物等については32%)の割増償却ができる。
|
助成金に係る課税の特例措置 (法人税、所得税) | 国や地方公共団体の補助金、納付金及び障害者雇用納付金制度に基づく助成金については、助成金のうち固定資産の取得又は改良に充てた部分の金額に相当する金額の範囲内で、圧縮記帳による損金算入(法人税)又は総収入金額不算入(所得税)とすることができる。 |
事業所税の軽減措置 | 事業所税の従業者割については、課税標準としての従業者給与総額から障害者の給与分を控除し、また、障害者を10人以上雇用し、かつ、その雇用割合が50%以上である事業所であって、重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金等の支給に係る施設又は設備に係るものについては、事業所税の資産割に係る課税標準の算定につき、当該事業所床面積の2分の1を控除するものとする。 |
不動産取得税の軽減措置 | 障害者を20人以上雇用し、かつ、その雇用割合が50%以上の事業所の事業主が、重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金等を受けて事業用施設(作業の用に供するものに限る)を取得した場合において、その者が当該施設の取得の日から引き続き3年以上当該施設を当該事業所の事業の用に供したときは、当該施設の取得に対して課する不動産取得税については当該税額から価格の10分の1に相当する額に税率を乗じて得た額を減額するものとする。 |
固定資産税の軽減措置 | 障害者を20人以上雇用し、かつ、その雇用割合が50%以上の事業所の事業主が、重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金等を受けて取得した事業用の家屋(作業の用に供するもののうち、障害者の雇用割合に応じた部分に限る)に対して課する固定資産税の課税標準は、取得後5年間に限り、当該家屋の課税標準となるべき価格の6分の1を減額した額とする。 |
障害のある人の就労支援の充実と活性化を図るため、雇用・福祉・教育・医療の一層の連携強化を図ることとし、ハローワークを中心とした関係機関とのチーム支援や、一般雇用や雇用支援策に関する理解の促進、障害者就業・生活支援センター事業、トライアル雇用、ジョブコーチ等による支援などを実施している。
就職を希望する障害のある人に対しては、ハローワークの専門窓口で、求職の登録の後にその技能、職業適性、知識、希望職種、身体能力等に基づき、ケースワーク方式による個々の障害特性に応じたきめ細かな職業相談を実施し、安定した職場への就職・就職後の職場定着を支援している。
就職を希望する障害のある人の一般雇用への移行を図るため、ハローワークが中心となって、障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センター、就労移行支援事業所、特別支援学校、医療機関等の関係機関からなる「障害者就労支援チーム」を作り、就職に向けた準備から職場定着までの一貫した支援を行う「チーム支援」を実施している。
事業所が障害のある人を短期の試行雇用の形で受け入れることにより、障害のある人の適性や業務遂行可能性を見極め、障害のある人と事業主の相互理解を促進すること等を通じて、常用雇用への移行を促進する障害者トライアル雇用事業を実施している。
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構により各都道府県に1か所(そのほか支所5か所)設置・運営されている地域障害者職業センターでは、ハローワークや地域の就労支援機関との連携の下に、身体に障害のある人、知的障害のある人はもとより、精神障害のある人、発達障害のある人、高次脳機能障害のある人など、他の機関では支援が困難な障害のある人を中心に、専門職の「障害者職業カウンセラー」により、職業評価、職業指導から就職後のアフターケアに至る職業リハビリテーションを専門的かつ総合的に実施している。
障害のある人個々の就職の希望等を把握した上で、職業評価・職業相談を行い、これらを基に就職及び就職後の職場適応に必要な支援内容等を含む職業リハビリテーション計画の策定を行っている。
障害のある人に対して、就職又は職場適応に必要な障害特性や職業上の課題の把握とその改善を図るための支援、職業に関する知識の習得のための支援及び社会生活技能等の向上のための支援を行っている。
就職又は職場適応に課題を有する知的障害、精神障害のある人等が円滑に職場適応することができるよう、就職時のみならず雇用後においても事業所にジョブコーチを派遣し、障害のある人に障害特性を踏まえた直接的かつ専門的な支援を行うほか、事業主に対して、雇用管理に必要な助言や職場環境の改善の提案等の援助を行っている。
また、安定した雇用継続を図るためのフォローアップも行っている。
なお、地域障害者職業センターのジョブコーチ以外に、社会福祉法人等に所属し事業所に出向いて支援を行う訪問型ジョブコーチ、企業に在籍し同じ企業に雇用されている障害のある労働者を支援する企業在籍型ジョブコーチがいる。
精神障害のある人及び事業主に対して、主治医との連携の下、新規雇入れ、職場復帰、雇用継続のそれぞれの雇用の段階に応じた専門的な支援を総合的に行っている。
特に、休職中の精神障害のある人及びその人を雇用する事業主に対しては、円滑な職場復帰に向けた支援(リワーク支援)を進めており、精神障害のある人に対しては、生活リズムの立直しや集中力・持続力の向上等の支援を行うとともに、事業主に対しては、職場の受け入れ体制の整備等についての支援を行っている。
各地域における障害者就業・生活支援センターや就労移行支援事業所等の関係機関において、より効果的な職業リハビリテーションが実施されるよう、職業リハビリテーションに関する技術的事項についての助言や支援方法に係る助言や援助を行っている。
また、ジョブコーチの養成研修や関係機関の職員等の知識の習得、技術等の向上のための実務的研修を行っている。
障害者就業・生活支援センターでは、障害のある人の職業生活における自立を図るために、福祉や教育等の地域の関係機関との連携の下、障害のある人の身近な地域(平成30(2018)年4月現在334か所)で就業面及び生活面の両面における一体的な支援を行っている。
例えば、就業やそれに伴う日常生活上の支援を必要とする障害のある人に対し、就職に向けた準備支援 (職業準備訓練、職場実習のあっせん)や求職活動等の就業に関する相談と、健康管理や住居、年金等の生活に関する相談などを行っている。また、必要に応じ、ハローワークや地域障害者職業センターなどの専門的支援機関と連絡を取り合い、支援を引き継ぐなど適切な支援機関への案内窓口としての機能も担っている。
近年、雇用される障害のある人の数が増加する中で、定着支援の取組の重要性が高まっており、センターの業務実績を見ると、就職件数、雇用者数の伸びにしたがって、企業からの相談の半数を定着支援が占めており、また、就業時点で就労支援機関の支援を受けていない障害者に対する定着支援を求められるなど、定着支援の比重が増している。センターでは、事業主に対し、本人の障害特性や症状・能力等についての助言や関係機関と連携した支援を行うほか、就職後に生じる課題の予測と実際に生じた際の事前準備、センター職員による定期的な職場訪問及び電話連絡等を通じ、本人が現在抱えている悩み、課題及び事業主や上司・同僚等の意見等を把握し、問題が発生しないよう未然に対応をしている。
平成29(2017)年度には、職場定着支援の強化を図るため、ジョブコーチとして多くの障害のある人の支援に携わり、障害のある人の職場定着支援に関する豊富な知識と経験を有する「主任職場定着支援担当者」を増員するとともに、精神障害のある人に対する支援経験を有するなど精神障害のある人の支援に特化した担当者及び企業における人事管理や障害者雇用の経験を有するなど事業主からの雇用相談や雇用管理支援に対応する担当者をモデル配置するなど、センターの定着支援機能の強化を図った。
障害のある人が地域で自立した日常生活又は社会生活を送るための基盤として就労支援は重要であり、障害のある人の就労支援として以下の取組を行っている。
一般就労を希望する障害のある人が、できる限り一般就労が可能となるように、就労移行支援事業所では、在宅就労も含めて生産活動、職場体験等の活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、求職活動に関する支援、その適性に応じた職場の開拓、就職後における職場への定着のために必要な相談、その他の必要な支援を行っている。
雇用契約に基づき、継続的に就労することが可能な障害のある人に対し、生産活動等の活動の機会の提供及びその他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行うとともに、一般就労に向けた支援や職場への定着のための支援等を行っている。また、就労継続支援A型事業所における就労の質を向上させるため、平成29(2017)年4月に改正した指定障害福祉サービス等基準に基づき、事業所の生産活動の収支を利用者に支払う賃金の総額以上とすることなどとした取扱いを徹底し、安易な事業参入の抑制を図るとともに、基準を満たさない事業所に経営改善計画の提出を求めることにより、事業所の経営状況を把握した上で地方公共団体が必要な指導・支援を行うことを通じ、障害のある人の賃金の向上を図ることとした。
通常の事業所に雇用されていた障害のある人であって、その年齢、心身の状態その他の事情により、引き続き当該事業所に雇用されることが困難となった者、就労移行支援によっても通常の事業所に雇用されるに至らなかった者、その他の通常の事業所に雇用されることが困難な者につき、生産活動その他の活動の機会の提供、その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行うとともに、一般就労に向けた支援や職場への定着のための支援等を行っている。また、事業所の経営力強化に向けた支援、共同受注化の推進等、就労継続支援B型事業所等における工賃の向上に向け、官民一体となった取組を推進している。
平成28(2016)年度の障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)の一部改正により、就労移行支援事業所等を利用し、一般就労に移行した障害のある人に対して、一般就労に伴い生じる生活リズムの乱れや給料の浪費などの生活面の課題に対応できるよう、家族や関係機関との連絡調整等の支援を一定期間にわたって行う新たなサービスを創設した。
障害のある人がその能力を十分に発揮し、地域で自立した生活を実現することができるよう、報酬改定において、一般就労への定着実績や工賃実績等に応じた報酬体系を構築し、就労系障害福祉サービスにおける工賃・賃金の向上や一般就労への移行の更なる促進が図られるよう見直しを行った。
精神障害のある人については、近年、ハローワークにおける新規求職者数が急激に伸びてきており、その専門窓口では「精神障害者雇用トータルサポーター」などの専門職員による個々の障害特性に応じたきめ細かな相談支援を行うとともに、精神障害のある人に関する事業主の意識啓発から就職後のフォローアップ等の働きかけを行っている。
また、民間企業に対しては継続雇用する労働者へ移行することを目的に、週の所定労働時間10時間以上20時間未満から一定程度の期間をかけて、週の所定労働時間を20時間以上とすることを目指す「トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース)」の支給などを行っている。
なお、精神障害のある人については、これら各般の取組を通して、その雇用促進を一層図ることとしており、障害者基本計画(第3次)では、50人以上の規模の事業主で雇用される精神障害のある人を、平成29(2017)年の障害者雇用状況報告で3.0万人にすることを目指していたが、平成29年6月1日現在で5.0万人となっており、達成した。
発達障害のある人についても、近年ハローワークにおける新規求職者数が増加しており、その雇用の促進を図ることが必要となっている。そのため、ハローワークでは、発達障害のある求職者に対する職業紹介を行うに当たっては、地域障害者職業センターや発達障害者支援センターと十分な連携を図って、対応している。なかでも、発達障害などの要因によりコミュニケーション能力に困難を抱えている求職者について、専門の支援員(就職支援ナビゲーター(発達障害者等支援分))によるきめ細かな就職支援を実施する「若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」を実施している。
平成29(2017)年度は全国10か所のハローワークにおいて、発達障害などの要因により、コミュニケーション能力に困難を抱えている求職者について、小集団方式によるセミナーやグループワークなどを通じた職場でのコミュニケーションスキルなどの付与や、個別の職業相談などを実施した。
また、平成30(2018)年度よりハローワークに発達障害者雇用トータルサポーターを新たに配置し、カウンセリング等の求職者支援や事業主が抱える発達障害のある人等の雇用に係る課題解決のための個別相談等を実施している。
さらに、発達障害のある人をハローワーク等の職業紹介により新たに雇い入れ、雇用管理に関する事項を把握・報告する事業主に対して、「特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)」を支給することにより、その雇用促進を図っている。
そのほか、「発達障害者就労支援者育成事業」として、支援関係者等の発達障害者支援のための基盤作りのために、平成29年度は全国8ブロックで発達障害のある人の就労支援者及び当事者等を対象としたセミナーや交流会を開催し、発達障害のある人の雇用のきっかけづくりを行う啓発事業を実施した。
ハローワークでは、障害者手帳の有無にかかわらず、就労支援の必要な難病のある人に対して、難病相談支援センターとの連携による就労支援も行っている。平成25(2013)年度からは、ハローワークに「難病患者就職サポーター」を配置し、難病相談支援センターと連携しながら、就職を希望する難病患者に対する症状の特性を踏まえたきめ細かな就労支援や在職中に難病を発症した患者の雇用継続等の総合的な就労支援を行っている。
また、難病のある人をハローワーク等の職業紹介により新たに雇い入れ、雇用管理に関する事項を把握・報告する事業主に対して、「特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)」を支給することにより、その雇用促進を図っている。
さらに、難病患者の雇用管理に資するマニュアル「難病のある人の就労支援のために」(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が平成28(2016)年に改訂)を活用し、ハローワーク等において、難病のある人の就労支援を行っている。
自宅等で就業する障害のある人(在宅就業障害者)の就業機会の確保等を支援するため、これらの障害のある人に直接又は在宅就業障害者に対する支援を行う団体として厚生労働大臣の登録を受けた法人(在宅就業支援団体(平成29(2017)年6月現在で22団体))を介して業務を発注した事業主に対して、障害のある人に対して業務の対価として支払われた金額に応じて、障害者雇用納付金制度で、在宅就業障害者特例調整金(常用雇用労働者数100人以下の事業主については在宅就業障害者特例報奨金)を支給する制度を運用している。
従来、障害のある人が就労困難と考えられていた職業であっても、IT機器を利用することにより、就労の可能性が高まってきている。このため、障害のある人の職域拡大に資することを目的として、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構において、障害のある人や事業主のニーズに対応した就労支援機器に関する情報提供、貸出事業等を通じて、その普及・啓発に努めている。
〈事例1〉運輸業における聴覚障害のあるドライバーの活躍事例
スマートフォン等の活用により、聴覚障害のある人も大型トラックのドライバーとして活躍することができる。
手話のできる社員がいない中、聴覚障害のある社員の採用時は、手振りや筆談により対応していたが、業務の指示内容が本人に伝わっているか等、コミュニケーションが課題となっていた。そこで会社用のスマートフォンを整備した。SNSのグループをつくって、出勤状況の確認、点呼、体調管理、情報交換等のコミュニケーションを図っている。
さらに、管理職とスマートフォンで直接相談できるような体制とした。営業所内や配送先などでのコミュニケーション手段として、電子メモパッドも有効に活用している。
聴覚障害者標識を表示した名刺の作成や、聴覚障害のあるドライバーが初めて配送に行くときには幹部が同行して顧客に挨拶をするなど、顧客先にスムーズに理解してもらえるようにし、本人の精神的負担の軽減を図っている。
〈事例2〉就労支援機器を活用した中途視覚障害者の職場復帰事例
病気により視覚に障害が残った職員の雇用継続に当たり、これまでの業務の継続が難しかったため、就労支援機器の貸出制度やジョブコーチ支援を活用し、業務の切り出しを行うことで新たな担当業務での職場復帰を実現した。
視覚障害があってもパソコンを活用すれば可能な業務が数多くあり、スキルは支援機関で学ぶことができる。事業所では、中央障害者雇用情報センターの就労支援機器の貸出制度を活用し、拡大読書器、画面読み上げソフト、画面拡大ソフトなどを整備した。
職場復帰後は、職場内の各部署から提案された事務について、ジョブコーチから効率的な作業方法の提案などを受け、業務内容を整え、本人への支援も同様に進めた。仕事上の悩みや困っていることをジョブコーチに聞いてもらい、事業所の担当者と連携しながら具体的な解決案へとつなげた。
〈事例3〉重度身体障害者の在宅雇用事例
通勤が困難であるため働くことができなかった重度身体障害のある人がICTを活用し在宅にてイラストデザイン等の業務を担当している。
在宅で業務を行う環境を整備するため、作業療法士・家族と連携し、身体負担を軽減できる姿勢へ改善した。さらに、在宅社員のスキルアップのために、WEB会議システムを活用したOJTを実施している。また、フレックスタイム制を導入することで、通院の日程確保への配慮や、職員ごとの体調に合わせた働き方が可能になっている。
国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局においては、一般就労を希望する65歳未満の障害のある人に対して、就労に必要な知識や技能を獲得させるため、障害福祉サービス(就労移行支援)を実施している。身体障害又は発達障害のある人には、生産活動、職業体験等の必要な訓練を、視覚に障害のある人には、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家資格取得のための教育訓練を行い、就労に関する相談や支援を通じて、障害のある人の適性に見合った職場への就労とその定着を支援している。
生活福祉資金貸付制度は、低所得世帯、障害者世帯等に対し、資金の貸付けと必要な相談支援を行うことにより、その経済的自立及び生活意欲の助長促進並びに在宅福祉及び社会参加の促進を図り、安定した生活を送れるようにすることを目的に、都道府県社会福祉協議会を実施主体として運営されている。本制度の資金種類の1つとして、「福祉資金」が設けられており、障害者世帯が生業を営むために必要な経費や技能習得に必要な経費及びその期間中の生計を維持するために必要な経費等の貸付を行っている。
また、経済産業省では、地域経済を活性化させるため、産業競争力強化法(平成25年法律第98号)の認定市区町村(平成29(2017)年12月現在で1,379市区町村)において、新たに創業を行う者に対して、その創業等に要する経費の一部を助成し、新たな需要や雇用の創出等を促す取組を行っており、障害のある人も活用できる制度となっている。
障害者就労施設において、稲作や野菜、果樹、花き、畜産、農産加工や販売等、幅広い分野で農業活動等が取り組まれている。農業を通じて高い賃金・工賃を実現している事業所もあり、障害のある人の就労機会の確保や賃金・工賃の向上といった面のみならず、地域の農業における労働力不足への対応といった面でも意味のある取組であり、農業と福祉の連携の推進を図ることは重要な課題となっている。
このため、農林水産省では、障害のある人等のための福祉農園の開設・整備等の取組を支援しているほか、全国の地方農政局等に行政、福祉、農業等の関係者で構成する「農業分野における障害者就労の促進ネットワーク(協議会)」を設置し、シンポジウムを通じて優良事例や施策の紹介などを行っている。
一方、厚生労働省では、農福連携による障害のある人の就労支援を推進する取組として、農業分野に取り組もうとする就労継続支援B型事業所等に対して、農業分野の専門家を派遣し、農業に関する知識・技術の習得や6次産業化の推進に向けた助言・指導を行うとともに、都道府県において農業に取り組む就労継続支援B型事業所等が参加する農福連携マルシェ(市場)の開催を支援している。平成28(2016)年度は28府県、平成29(2017)年度は40道府県に対し支援を実施しており、平成30(2018)年度は全都道府県での実施を目指している。
また、農林水産省と厚生労働省とが連携して「『農』と福祉の連携プロジェクト」を推進し、農業関係者と福祉関係者との相互理解を深めるため、農福連携推進フォーラムを開催(平成29年度は平成30年3月23日)している。
これらの取組を通じて、両省が連携しつつ、優良事例や支援策の周知を含め積極的に情報発信を行い、農業と福祉の連携や、それを通じた障害のある人の賃金・工賃の向上の推進に取り組むこととしている。
障害のある人に対し、作業環境への適応を容易にし、訓練修了後も引き続き雇用されることを期待して、都道府県知事又は都道府県労働局長が民間事業主等に委託して実施する訓練で、訓練生には訓練手当が、事業主には職場適応訓練費(2万4千円/月)が支給される(訓練期間6か月以内(原則))。また、重度の障害のある人に対しては、訓練期間を長くし(1年以内)、職場適応訓練費も増額(2万5千円/月)している。
障害のある人に対し、実際に従事することとなる仕事を経験させることにより、就業への自信を持たせ、事業主に対しては対象者の技能程度、適応性の有無等を把握させるため、都道府県知事又は都道府県労働局長が民間事業主等に委託して実施する訓練で、訓練生には訓練手当が、事業主には、職場適応訓練費(960円/日)が支給される(訓練期間2週間以内(原則))。また、重度の障害のある人に対しては、訓練期間を長くし(4週間以内(原則))、職場適応訓練費も増額(1,000円/日)している。
司法試験においては、障害のある人がその有する知識及び能力を答案等に表すに当たり、その障害が障壁となり、事実上の受験制限とならないために、障害のない人との実質的公平を図り、そのハンディキャップを補うために必要な範囲で措置を講じている。具体的には、視覚障害者に対する措置として、パソコン用電子データ又は点字による出題、解答を作成するに当たってのパソコンの使用、拡大した問題集・答案用紙の配布、試験時間の延長等を、肢体障害者に対する措置として、解答を作成するに当たってのパソコンの使用、拡大した答案用紙の配布、試験時間の延長等を認めるなどの措置を講じている。
司法書士試験、土地家屋調査士試験及び簡裁訴訟代理等能力認定考査においては、その有する知識及び能力を答案等に表すことについて障害のない人と比較してハンディキャップを補うために必要な範囲で措置を講じている。具体的には、弱視者に対する拡大鏡の使用や記述式試験の解答を作成するに当たってのパソコン(ワープロ)の使用を、また、試験時間の延長を認める等の措置を講じている。
重点施策実施5か年計画(平成20(2008)年度~平成24(2012)年度)において、国は公共調達における競争性及び公正性の確保に留意しつつ、福祉施設等の受注機会の増大に努めるとともに、地方公共団体等に対し、国の取組を踏まえた福祉施設等の受注機会の増大の推進を要請することとされていた。これを踏まえ、官公需(官公庁の契約)を積極的に進めるため、各府省の福祉施設受注促進担当者会議を開催し、更なる官公需の促進を依頼するなどの取組を行うとともに、平成20年に地方自治法施行令を改正し、地方公共団体の契約について随意契約によることができる場合として、地方公共団体が障害者支援施設等から、クリーニングや発送作業などの役務の提供を受ける契約を追加する措置を講じた。
また、国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律(平成24年法律第50号) (以下「障害者優先調達推進法」という。)の施行(平成25(2013)年4月)にあわせて、「予算決算及び会計令」を改正し、随意契約によることができる場合として、「慈善のため設立した救済施設から役務の提供を受けるとき」を追加する措置を講じた。
障害のある人が自立した生活を送るためには、就労によって経済的な基盤を確立することが重要である。そのためには、障害者雇用を支援するための積極的な対策を図っていくことも重要であるが、加えて、障害のある人が就労する施設等の仕事を確保し、その経営基盤を強化する取組が求められている。
このような観点から、障害者就労施設等への仕事の発注に関し、民間企業を始め国や地方公共団体等において様々な配慮が行われてきた。
平成25(2013)年4月からは、障害者優先調達推進法が施行され、障害者就労施設等で就労する障害のある人や在宅で就業する障害のある人の自立の促進に資するため、国や地方公共団体などの公的機関が物品やサービスを調達する際、障害者就労施設等から優先的に購入することを進めるために、必要な措置を講じることとなった。当該法律に基づき、全ての省庁等で調達方針を策定し、障害者就労施設等が供給する物品等の調達に取り組んでいる。
障害者就労施設、在宅就業障害者及び在宅就業支援団体 (以下「障害者就労施設等」という。)の受注の機会を確保するために必要な事項等を定めることにより、障害者就労施設等が供給する物品等に対する需要の増進等を図り、もって障害者就労施設で就労する障害者、在宅就業障害者等の自立の促進に資する。
障害者就労施設等は、単独で又は相互に連携して若しくは共同して、購入者等に対し、その物品等に関する情報を提供するよう努めるとともに、当該物品等の質の向上及び供給の円滑化に努めるものとする。
一般の公共職業能力開発施設において職業訓練を受けることが困難な重度の障害のある人については、障害者職業能力開発校において、職業訓練を実施している。
平成30(2018)年4月1日現在、障害者職業能力開発校は国立が13校、都道府県立が5校で、全国に18校が設置されており、国立13校のうち2校は独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営し、96他の11校は都道府県に運営を委託している。
障害者職業能力開発校は、入校者の障害の重度化・多様化が進んでいることを踏まえ、個々の訓練生の障害の態様を十分に考慮し、きめ細かい支援を行うとともに、職業訓練内容の充実を図ることにより、障害のある人の雇用の促進に資する職業訓練の実施に努めている。
なお、障害者職業能力開発校の就職率については、障害者基本計画(第4次)において、平成34(2022)年度に70%となるよう目標設定されている。
都道府県立の一般の公共職業能力開発施設において、精神障害や発達障害のある人を対象とした訓練コースの設置を促進し、受講機会の拡充を図っている。
雇用・就業を希望する障害のある人の増大に対応し、居住する地域で職業訓練が受講できるよう、地域の企業、社会福祉法人、特定非営利活動法人、民間教育訓練機関等を活用した障害のある人の多様なニーズに対応した委託訓練(以下「障害者委託訓練」という。)を各都道府県において実施している。
障害者委託訓練は、主として座学により知識・技能の習得を図る「知識・技能習得訓練コース」、企業の現場を活用して実践的な職業能力の向上を図る「実践能力習得訓練コース」、通校が困難な人などを対象とした「e-ラーニングコース」、特別支援学校高等部等に在籍する生徒を対象とした「特別支援学校等早期訓練コース」及び在職障害者を対象とした「在職者訓練コース」の5種類があり、個々の障害特性や企業の人材ニーズに応じて多様な職業訓練を行うことが可能な制度である。なお、委託訓練修了者の就職率については、平成28(2016)年度は46.2%であり、障害者基本計画(第4次)において、平成34(2022)年度に55%となるよう目標設定されている。
ハローワークに求職を申し込む精神障害のある人や発達障害のある人の増加が近年著しいことを踏まえ、精神障害のある人や発達障害のある人の障害特性に配慮した訓練コースの設置を推進することとしている。このため、都道府県が運営する障害者職業能力開発校で精神障害のある人や発達障害のある人の障害特性に配慮した訓練コースの設置が円滑に行われるよう独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営する障害者職業能力開発校において、訓練計画の策定、指導技法、訓練コース設置後のフォローアップ支援を行っている。また、前述の障害のある人の多様なニーズに対応した委託訓練においても、精神障害のある人の増加や精神障害のある人向けの職業訓練の実施に係るノウハウの蓄積が乏しい現状を踏まえ、平成26(2014)年度から、地域の就労支援機関に委託して精神障害のある人向け職業訓練の受託先の開拓や職業訓練の設定、実施等の支援を行っている。
全国障害者技能競技大会は、障害のある人の職業能力の開発を促進し、技能労働者としての自信と誇りを持って社会に参加するとともに、広く障害のある人に対する社会の理解と認識を深め、障害のある人の雇用の促進を図ることを目的として、アビリンピックの愛称の下、昭和47(1972)年から実施している。
平成29(2017)年度には、栃木県で第37回大会が開催(11月17日~19日)された。
平成29(2017)年度は、11月17日から19日までの3日間にわたり、栃木県において、「とちぎから 未来へ翔(はばた)く技と夢」という大会スローガンのもと、第37回全国障害者技能競技大会が開催された。
大会には、技能競技22種目に全国から365名の選手が参加し、日頃培った技能を競い合うとともに、障害者雇用に関する新たな職域の一部として、「クリーニング」、「製パン加工」、「ベッドメイキング」の3職種による技能デモンストレーションが実施された。
また、第37回アビリンピックの開催に併せて、障害のある人の雇用に関わる展示、実演及び作業体験など総合的なイベントである「障害者ワークフェア2017」が同時開催され、盛大な大会となった。
国際アビリンピックは、昭和56(1981)年の「国際障害者年」を記念して、障害のある人の職業的自立意欲の増進と職業技能の向上を図るとともに、事業主及び社会一般の理解と認識を深め、更に国際親善を図ることを目的として、昭和56年10月に第1回大会が東京で開催され、以降おおむね4年に1度開催されている。第9回国際アビリンピックがフランス共和国ボルドー市において平成28(2016)年3月に開催され、日本から、第35回全国大会での成績優秀者31名の選手が参加した。
全国の法務局・地方法務局及びその支局では、人権相談等により雇用の場における、障害のある人に対する差別的取扱い等の人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には、事案に応じた適切な措置を講じるなどして、人権侵害による被害の救済及び予防を図っている。
ニッポン一億総活躍プラン(平成28年6月2日閣議決定)を踏まえて策定された働き方改革実行計画 (平成29年3月28日働き方改革実現会議決定。以下「本実行計画」という。)では、日本経済再生に向けた最大のチャレンジは働き方改革であるとし、働く人の視点に立って、労働制度の抜本改革を行うこととされた。
障害者関連施策については、本実行計画において、「障害者等の希望や能力を活かした就労支援の推進」として位置付けられており、今後の対応の方向性について 「障害者等が希望や能力、適性を十分に活かし、障害の特性等に応じて最大限活躍できることが普通になる社会を目指す。このため、長期的寄り添い型支援の重点化等により、障害者雇用ゼロ企業を減らしていくとともに、福祉的就労の場を障害者がやりがいをより感じられる環境に変えていく。また、特別な支援を必要とする子供について、98初等中等・高等教育機関と福祉・保健・医療・労働等の関係行政機関が連携して、就学前から卒業後にわたる切れ目ない支援体制を整備する。」こととされている。
本実行計画では、上記2項目を含む合計19項目からなる対応策について、10年先の未来を見据えたロードマップが策定されている。平成30(2018)年度においては、平成29(2017)年度に引き続き、本実行計画に盛り込まれた施策について、ロードマップに沿って進めていく。