障害のある子供の能力や可能性を最大限に伸ばし、自立し社会参加するために必要な力を養うため、一人一人のニーズに応じた、きめ細かな教育を行う必要がある。このため、特別支援学校や小・中学校の特別支援学級においては、特別の教育課程や少人数の学級編制の下、特別な配慮により作成された教科書、専門的な知識・経験のある教職員、障害に配慮した施設・設備等を活用して指導が行われている。また、通常の学級においては、通級による指導(※1)のほか、習熟度別指導や少人数指導などの障害に配慮した指導方法、支援員の活用など一人一人の教育的ニーズに応じた教育が行われている。
平成28年5月1日現在、特別支援学校及び小・中学校の特別支援学級の在籍者並びに通級による指導を受けている幼児児童生徒の総数は約45万人、このうち義務教育段階の児童生徒は約38万7千人であり、これは同じ年齢段階にある児童生徒全体の約3.9%に当たる。
平成22年には、障害者権利条約の理念を踏まえた特別の支援教育の在り方について検討を行うため、中央教育審議会に「特別支援教育の在り方に関する特別委員会」が設置された。本特別委員会において審議が行われ、平成24年7月には、「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システムの構築のための特別支援教育の推進(初等中等教育分科会報告)」が取りまとめられた。本報告においては、①共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システムの構築について、②就学相談・就学先決定の在り方について、③合理的配慮の充実とその基盤となる教育環境整備等について、④多様な学びの場の整備と学校間連携等の推進について、⑤教職員の専門性向上等について提言された。
さらに、同報告等を踏まえ、平成25年8月には、障害のある児童生徒等の就学手続について、特別支援学校への就学を原則とする従来の仕組みを改め、市町村教育委員会が、障害の状態、教育上必要な支援の内容、地域における教育の体制の整備の状況その他の事情を勘案して、総合的な観点から就学先を決定する仕組みとするなどの学校教育法施行令の改正を行った。
平成26年1月に我が国は障害者権利条約を批准したところであり、特別支援教育を一層推進することとしている。
このような流れのなか、高等学校においては、小・中学校等のような通級による指導が制度化されていないことから、協力者会議において高等学校における通級による指導の制度化に向けた検討を行い、平成28年に関係する省令改正等を行った上で、平成30年度から開始することとした。
これに加え、文部科学省においては、拡大教科書など、障害のある児童生徒が使用する教科用特定図書等(※2)の普及を図っている。
具体的には、できるだけ多くの弱視の児童生徒に対応できるよう標準的な規格を定めるなど、教科書発行者による拡大教科書の発行を促しており、平成28年度に使用された、小・中学校の学習指導要領に基づく検定教科書に対応した標準規格の拡大教科書は、ほぼ全点発行されている。また、教科書発行者が発行する拡大教科書では学習が困難な児童生徒のために、63一人一人のニーズに応じた拡大教科書などを製作するボランティア団体などに対して、教科書デジタルデータの提供を行っている。この他、通常の検定教科書において一般的に使用される文字や図形等を認識することが困難な発達障害等のある児童生徒に対しては、教科書の文字を音声で読み上げるとともに、読み上げ箇所がハイライトで表示されるマルチメディアデイジー教材等の音声教材がボランティア団体等により製作されており、文部科学省においても必要な調査研究等を行うなど、その普及推進に努めている。
さらに、障害のある児童生徒の情報活用能力を育成するとともに、障害を補完し、学習を支援する補助手段として、情報通信技術(ICT)などの活用を進めることが重要である。文部科学省においては、平成26年度より、「先導的な教育体制構築事業」において、クラウド等の最先端の情報通信技術を活用し、学校間、学校・家庭が連携した新しい学びを推進するための指導方法の開発等、先導的な教育体制を構築するための実証研究を、特別支援学校も含めて行っている。
また、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所において、障害のある子供の教育に関する実際的・総合的な研究活動を行うとともに、それを核として、研修事業や情報収集・発信、理解啓発活動等を一体的に実施するなど、幅広い事業や活動を展開している。
※1 通級による指導:小・中学校の通常の学級に在籍し、言語障害、自閉症、情緒障害、弱視、難聴、学習障害(LD)・注意欠陥多動性障害(ADHD)などのある児童生徒を対象として、主として各教科などの指導を通常の学級で行いながら、障害に基づく学習上又は生活上の困難の改善・克服に必要な特別の指導を特別の場で行う教育形態である。
※2 教科用特定図書等:視覚障害のある児童及び生徒の学習の用に供するため検定教科書の文字、図形等を拡大して複製した図書(いわゆる「拡大教科書」)、検定教科書を点字により複製した図書(いわゆる「点字教科書」)、その他障害のある児童生徒の学習の用に供するために作成した教材であって検定教科書に代えて使用し得るもの。
学校教育法(昭和22年法律第26号)の一部改正(平成18年)により、幼稚園、小・中・高等学校等のいずれの学校においても、発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する特別支援教育を推進することが法律上明確に規定された。
平成28年6月には発達障害者支援法の一部改正が公布され(同年8月施行)、発達障害児がその年齢・能力に応じ、かつその特性を踏まえた十分な教育を受けられるよう、可能な限り発達障害児が発達障害児でない児童と共に教育を受けられるよう配慮することや、支援体制の整備として個別の教育支援計画・個別の指導計画の作成推進、いじめの防止等のための対策の推進等が規定された。
また、発達障害のある子供への支援については、教育、医療、福祉、保健、労働関係機関等の連携が重要であることに鑑み、文部科学省と厚生労働省の両省主催で「発達障害者支援関係報告会」を毎年開催している。
文部科学省では、特別支援教育の体制整備を推進するため、関係機関との連携、学校への巡回相談や専門家チームによる支援、研修体制の整備・実施等の経費の一部を補助し、特別支援教育の充実を図っている。
さらに、公立幼稚園、小・中学校及び高等学校に在籍する障害のある子供をサポートする「特別支援教育支援員」の配置に係る経費が各市町村に対して地方財政措置されている。
また、障害者基本計画(第三次)においては、特別支援教育の更なる推進を図るため、64平成29年度までに個別の教育支援計画策定率を一人一人の教育的ニーズに応じた支援を推進する観点から80%にすることや、現状の体制整備状況を踏まえ、公立の幼稚園、高等学校における校内委員会の設置率や特別支援教育コーディネーターの指名率を90%にすることなどを数値目標として盛り込んでおり、着実な取組が進められているところである(図表3-2-1のとおり)。
文部科学省では、発達障害を含め、障害のある幼児児童生徒への特別支援教育を推進するため、キャリア教育・就労支援等の充実、発達障害の可能性のある児童生徒に対する支援、教職員の専門性向上、学習上の支援機器等教材の開発・普及等に関する事業を行っている。各取組の成果については、文部科学省のホームページで広く全国に情報提供している。
また、障害者の権利に関する条約等を踏まえ、障害のある子供への支援体制の整備を推進するために必要な経費の一部を補助している。
特別支援教育の対象の概念図[義務教育段階]
厚生労働省においては、障害のある児童の保育所での受入れを促進するため、昭和49年度より障害児保育事業において保育所に保育士を加配する事業を実施してきた。
当該事業については、事業開始より相当の年数が経過し、保育所における障害のある児童の受入れが全国的に広く実施されるようになったため、平成15年度より一般財源化し、平成19年度より地方交付税の算定対象を特別児童扶養手当の対象児童から軽度の障害児に広げる等の拡充をしている。
また、平成27年度より施行した子ども・子育て支援新制度においては、①障害のある児童等の特別な支援が必要な子供を受け入れ、地域関係機関との連携や、相談対応等を行う場合に、地域の療育支援を補助する者を保育所、幼稚園、認定こども園に配置、②新設された地域型保育事業について、障害のある児童を受け入れた場合に特別な支援が必要な児童2人に対し保育士1人の配置を行うこととしている。
さらに、保育現場におけるリーダー的職員を育成するため、平成29年度より開始する「保育士等キャリアアップ研修」の研修分野に「障害児保育」を盛り込み、障害児保育を担当する職員の専門性の向上を図ることとしている。
このほか、障害のある児童を受け入れるに当たりバリアフリーのための改修等を行う事業を実施している。
共働き家庭など留守家庭の小学生に対して、放課後等に適切な遊びや生活の場を与える放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)においては、療育手帳や身体障害者手帳を所持する児童に限らず、これらの児童と同等の障害を有していると認められる児童も含めて可能な限り障害児の受入れに努めているところである。
障害児の受入れを行っている放課後児童クラブは、年々、着実に増加しており、平成28年5月現在で、全23,619クラブのうち約55%に当たる12,926クラブにおいて、33,058人を受け入れている状況である。
障害児を受け入れるに当たっては、68個々の障害の程度等に応じた適切な対応が必要なことから、障害児を1人以上受け入れている放課後児童クラブに専門的知識等を有する職員を配置するために必要な経費を補助しているところである。
加えて、平成27年度からは、消費税財源を活用して、障害児5人以上の受入れを行う場合について、更に1名の専門的知識等を有する職員を配置するために必要な経費の上乗せ補助を行っており、放課後児童クラブの利用を希望する障害児が放課後児童クラブを適切に利用できるよう支援している。
教育の機会均等の趣旨及び特別支援学校等への就学の特殊事情に鑑み、保護者の経済的負担を軽減し、その就学を奨励するため、就学のために必要な諸経費のうち、教科用図書購入費、交通費、寄宿舎居住に伴う経費、修学旅行費等について、保護者の経済的負担能力に応じて、その全部又は一部を助成する特別支援教育就学奨励費が保護者に支給されている。
近年、特別支援学校に在籍する幼児児童生徒の障害の重度・重複化が進んでおり、一層きめ細かな対応が求められている。
特別支援学校の学習指導要領等においては、障害の重度・重複化等に応じた弾力的な教育課程が編成できるよう、障害の状態により特に必要がある場合には、各教科の目標及び内容の一部を取り扱わないこととしたり、自立活動を主として指導を行ったりすることができることなど、様々な配慮事項を規定している。また、一人一人の障害の実態に応じた指導を充実するため、個々の児童生徒の実態を的確に把握し、個別の指導計画や個別の教育支援計画を作成することとしている。
障害のため通学して教育を受けることが困難な幼児児童生徒に対しては、教員を家庭、児童福祉施設や医療機関等に派遣して教育(訪問教育)を行っている。平成28年5月1日現在、小学部1,294人、中学部742人、高等部841人の児童生徒が、この訪問教育を受けている。
さらに、医療技術の進歩等を背景に、日常的にたんの吸引等の医療的ケアを必要とする幼児児童生徒への対応が求められている。
平成23年6月に公布された「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」による社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正により、平成24年4月から一定の研修を受けた介護職員等は一定の条件の下にたんの吸引等の医療的ケアができるようになったことを受け、特別支援学校等の教員等についても、制度上実施することが可能となった。
これに関して、文部科学省としては、特別支援学校等において安全かつ適切な医療的ケアを提供するために必要な検討を行うため、平成23年10月より「特別支援学校等における医療的ケアの実施に関する検討会議」を開催し、特別支援学校等において医療的ケアを必要とする児童生徒等の健康と安全を確保するに当たり留意すべき点等について整理を行い、都道府県・指定都市教育委員会等に通知した(参照:http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1314510.htm)。
現在、医療的ケアを必要とする幼児児童生徒が特別支援学校に8,116人、小・中学校に766人在籍しており、文部科学省では、特別支援学校や小・中学校における医療的ケアを必要とする児童生徒の教育の充実を図るため、69看護師の配置に必要な経費の一部を補助している。
特別支援学校の児童生徒にとっては、その障害の状態等によっては、一般に使用されている検定教科書が必ずしも適切ではない場合があり、特別な配慮の下に作成された教科書が必要となる。このため、文部科学省では、従来から、文部科学省著作の教科書として、視覚障害者用の点字版の教科書、聴覚障害者用の国語(小学部は言語指導、中学部は言語)及び音楽の教科書、知的障害者用の国語、算数(数学)及び音楽の教科書を作成している。
なお、特別支援学校及び特別支援学級においては、検定教科書又は文部科学省著作の教科書以外の図書(いわゆる「一般図書」)を教科書として使用することができる。
私立の特別支援学校、特別支援学級を置く小・中学校及び障害のある幼児が就園している幼稚園の果たす役割の重要性から、これらの学校の教育条件の維持向上及び保護者の経済的負担の軽減を図るため、「私立学校振興助成法」(昭和50年法律第61号)に基づき、国は経常的経費の一部の補助等を行っている。
支援 | 支援の内容 | |
---|---|---|
障害児通所支援 | 児童発達支援 | 日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練、その他の必要な支援を行うもの |
医療型児童発達支援 | 日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練、その他の必要な支援及び治療を行うもの | |
放課後等デイサービス | 授業の終了後又は学校の休業日に、生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進その他の必要な支援を行うもの | |
保育所等訪問支援 | 保育所等を訪問し、障害のある児童に対して、集団生活への適応のための専門的な支援その他の必要な支援を行うもの | |
障害児入所支援 | 福祉型障害児入所施設 | 施設に入所する障害のある児童に対して、保護、日常生活の指導及び独立自活に必要な知識技能の付与を行うもの |
医療型障害児入所施設 | 施設に入所する障害のある児童に対して、保護、日常生活の指導、独立自活に必要な知識技能の付与及び治療を行うもの |
障害のある児童に対しては、できるだけ早期に必要な治療と指導訓練を行うことによって、障害の軽減や基本的な生活能力の向上を図り、将来の社会参加へとつなげていく必要がある。このため、健康診査等により障害の早期発見を図るとともに、適切な療育を実施する体制の整備を図っている。
また、「障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律」(平成22年法律第71号)の公布に伴う児童福祉法の一部改正等により、障害児支援については、身近な地域で支援を受けられるようにする等のため、70平成24年4月から知的障害児施設等の障害種別に分かれていた施設体系について、通所による支援を「障害児通所支援」に、入所による支援を「障害児入所支援」にそれぞれ一元化し、障害児支援の強化を図っている。
さらに、学齢期における支援の充実を図るために「放課後等デイサービス」を、保育所等に通う障害児に対して、集団生活への適応を支援するために「保育所等訪問支援」を創設した。
また、在宅で生活する重症心身障害児(者)に対し、適切なリハビリテーションや療育を提供し、日中の活動の場を確保するため、「重症心身障害児(者)通園事業」を実施してきたが、児童福祉法の一部改正により、従来、予算事業で実施していた重症心身障害児(者)通園事業については、平成24年度から法定化され、安定的な財源措置が講じられることとなった。
地域で生活する障害のある児童の療育として、児童福祉法に基づく障害児通所支援事業所において指導訓練等が行われている。
また、児童相談所等における相談支援等の施策により、障害のある児童とその家族への支援を行っている。
平成18年4月からは、障害のある児童に対する居宅介護や短期入所などの在宅施策が「障害者自立支援法」(平成25年4月から「障害者総合支援法」)の障害福祉サービスに位置づけられ、財政的な基盤強化が図られている。
平成26年7月には、「障害児支援の在り方に関する検討会」により報告書が取りまとめられ、①地域における「縦横連携」を進めるための体制づくり、②「縦横連携」によるライフステージごとの個別の支援の充実、③特別に配慮された支援が必要な障害児のための医療・福祉の連携、④家族支援の充実、⑤個々のサービスの質のさらなる確保が提言された。これらを踏まえ、地域の中核となる児童発達支援センターの地域支援機能を強化するとともに、平成27年度障害福祉サービス等報酬改定において関係機関連携加算の創設等の対応を行っている。
平成27年4月には、放課後等デイサービスについて、支援の提供や事業運営に当たっての基本的事項を定めた「放課後等デイサービスガイドライン」を発出し、放課後等デイサービスの支援の質の向上を図っている。これらにより、障害のある児童が、できるだけ身近な場所で適切な療育を受けられる体制の整備を図っている。
公立の特別支援学校及び小・中学校の特別支援学級においては、障害の状態や能力・適性等が多様な児童生徒が在籍し、一人一人に応じた指導や配慮が特に必要であるため、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(昭和33年法律第116号)(以下「義務標準法」という。)に基づき、学級編制や教職員定数について特別の配慮がなされている。
1学級の児童生徒数の標準については、数次の改善を経て、現在、公立特別支援学校では、小・中学部6人、高等部8人(いわゆる重複障害学級にあってはいずれも3人)、公立小・中学校の特別支援学級では8人となっている。
公立の特別支援学校における児童生徒数が増加していることや障害が重度・重複化していることに鑑み、71大規模校における教頭あるいは養護教諭等の複数配置や、教育相談担当・生徒指導担当・進路指導担当及び自立活動担当教員の配置が可能な定数措置を講じている。
平成23年4月の義務標準法の一部改正では、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒を対象とした通級による指導の充実など特別支援教育に関する加配事由が拡大された。
また、平成29年3月の義務標準法の一部改正により、平成29年度から公立小・中学校におけるいわゆる通級指導など特別な指導への対応のため、10年間で対象児童生徒数に応じた定数措置(基礎定数化)を行うこととしている。この他、特別支援学校のセンター的機能強化のための教員配置など、特別支援教育の充実に対応するための加配定数の措置を講じている。
特別支援教育担当教員の養成は、現在、主として大学の特別支援教育関係の課程等において行われている。また、幼稚園、小学校・中学校及び高等学校の教員養成においても、教職に関する科目において、「障害のある幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」について取り扱うこととしているほか、特別支援教育について学ぶ科目を開設している大学もある。
また、研修を通じた資質向上を図るため、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所においては、特別支援教育関係の教職員等に対する研修を行っているほか、独立行政法人教職員支援機構(平成29年4月に「独立行政法人教員研修センター」から名称変更)においても、各地域で中核となって活躍する管理職を育成する学校経営研修において、特別支援教育に関する内容を盛り込んでいる。さらに、都道府県等教育委員会においては、小学校等の教諭等の初任者研修や10年経験者研修においても、特別支援教育に関する内容を盛り込んでいる。この他、放送大学において、現職教員を主な対象とした特別支援学校教諭免許状取得のための科目が開講されている。
また、教員免許更新制における免許状更新講習においても、必修領域の事項の一つである「子どもの発達に関する脳科学、心理学等における最新の知見(特別支援教育に関するものを含む。)」の中で特別支援教育に関する内容を扱うことが規定されている。
平成19年度より、従来、盲学校・聾学校・養護学校ごとに分けられていた教諭の免許状が、特別支援学校の教諭の免許状に一本化されている。同時に、特別支援学校教諭免許状の取得のためには、様々な障害についての基礎的な知識・理解と同時に、特定の障害についての専門性を確保することとなっている。また、大学などにおける特別支援教育に関する科目の修得状況などに応じ、教授可能な障害の種別(例えば「視覚障害者に関する教育」の領域など)を定めて授与することとしている。
ただし、特別支援学校教諭免許状については、教育職員免許法(昭和24年法律第147号)上、当分の間、幼・小・中・高等学校の免許状のみで特別支援学校の教員となることが可能とされているが、専門性確保の観点から保有率を向上させることが必要である。
特別支援学校の教員の特別支援学校教諭等免許状の保有率は、全体で75.8%(平成28年5月1日現在)であり、全体として前年度と比べ1.5ポイント増加しているが、特別支援教育に関する教員の専門性の向上が一層求められている中で、専門の免許状等の保有率の向上は喫緊の課題となっている。このため、各都道府県教育委員会等において教員の採用、配置、72現職教員の特別支援学校教諭免許状取得等の措置を総合的に講じていくことが必要である。
国立特別支援教育総合研究所は、我が国における特別支援教育のナショナルセンターとして、国の政策課題や教育現場等の喫緊の課題等に対応した研究活動を核として、各都道府県等において指導的立場に立つ教職員等を対象に、「特別支援教育専門研修」や「インクルーシブ教育システムの充実に関わる指導者研究協議会」を実施しているほか、インターネットを通じて、通常の学級の教員を含め障害のある児童生徒等の教育に携わる幅広い教員の資質向上の取組を支援するための研修講義の配信や特別支援学校教員の免許状保有率の向上に資する免許法認定通信教育を実施している。また、全ての学校をはじめとする関係者に必要かつ有益な情報を提供するため、インターネットを活用し、発達障害に関する情報提供等を行う「発達障害教育情報センター」、合理的配慮の実践事例の掲載等を行う「インクルーシブ教育システム構築支援データベース」及び支援機器等教材活用に関する様々な情報を集約した「特別支援教育教材ポータルサイト」などにより情報発信を行っている。さらに、東京都内で「研究所セミナー」を開催しているほか、「教材・支援機器等展示会」を地域で開催するなど各地域で理解啓発活動も行っている。
このほか、平成28年度に「インクルーシブ教育システム推進センター」を設置し、地域や学校が直面する課題を研究テーマとし、その解決を目指す「地域実践研究」、諸外国の最新情報の発信やインクルーシブ教育システムの構築に関する相談支援等を通して、地域や学校における取組を強力にバックアップしている(参照:http://www.nise.go.jp)。
都道府県の特別支援教育センターにおいて、当該都道府県における特別支援教育関係職員の研修、障害のある子供に係る教育相談、特別支援教育に係る研究・調査等が行われている。
特別支援教育におけるICTの活用事例について
(「障害のある児童生徒のためのICT活用に関する総合的な研究-学習上の支援機器等教材の活用事例の収集と整理-」におけるICT活用に関するアンケート調査より)
独立行政法人国立特別支援教育総合研究所では、平成26、27年度において「障害のある児童生徒のためのICT活用に関する総合的な研究-学習上の支援機器等教材の活用事例の収集と整理-」を実施し、実践事例の整理・検討を行った。
弱視児童がタブレットPCの拡大機能と「筆順辞典」アプリを用いて漢字の書き取りを行った。弱視の児童生徒は、漢字の細部を見分けることが困難であるために、拡大機能を用いて線の突き抜けの有無、線のつながりの有無等を確かめながら、筆順に注目して漢字を書いている(図1)。
自分の考えや要求を言葉で伝えることが難しいという課題のある児童生徒に対して、携帯情報端末に直接、平仮名を入力して音声出力する学習を行うことにより、自分の食べたいものやしたいことを伝えられるようになった。家庭との連携により、さらに使える場面や語彙の数も増やしていくことに取り組んでいる(図2)。
初出の漢字や慣れない言い回しなど「読むこと」が苦手な子供に対して、読みの難しい箇所にペン型音声再生機で触れることで、文章の内容を音声で読み上げる。読み方を学習するとともに、内容の理解にもつながる(図3)
障害のある人が、生涯にわたって自立し社会参加していくためには、企業等への就労を支援し、職業的な自立を果たすことが重要である。しかしながら、近年、特別支援学校高等部卒業者の進路を見ると、福祉施設等入所者の割合が約63%に達する一方で、就職者の割合は約29%となっており、職業自立を図る上で厳しい状況が続いている。
障害者の就労を促進するためには、教育、福祉、医療、労働などの関係機関が一体となった施策を講じる必要がある。
このため、文部科学省では、厚生労働省と連携し、各都道府県教育委員会等に対し、就労支援セミナーや障害者職場実習推進事業等の労働関係機関等における種々の施策を積極的に活用することや、福祉関係機関と連携の下で就労への円滑な移行を図ることなど障害のある生徒の就労を支援するための取組の充実を促している。
また、特別支援学校高等部や高等学校等において、労働等の関係機関と連携し障害のある生徒の就労支援を行う就労支援コーディネーターの配置など福祉や労働等の関係機関と連携しながらキャリア教育・就労支援を充実するための研究に取り組んでいる。
障害のある人が障害を理由に高等教育への進学を断念することがないよう、修学機会を確保することが重要である。このため、文部科学省では、出願資格について、必要に応じて改善することや、合理的配慮を行い、障害のない学生と公平に試験を受けられるように配慮することなど、適切な対応を求めている。
平成28年度には「障害のある学生の修学支援に関する検討会」を開催し、障害者差別解消法の施行を踏まえた高等教育段階における障害のある学生の修学支援の在り方について検討を行い、その結果を「第二次まとめ」として取りまとめ、関係者の理解促進や取組の充実を促している。
大学入試センター試験や各大学の個別試験において、点字・拡大文字による出題、筆跡を触って確認できるレーズライター(ビニール製の作図用紙の表面にボールペンで描いた図形や文字がそのままの形で浮き上がるため、描きながら解答者が筆跡を触って確認できる器具)による解答、文字解答・チェック解答(専用の解答用紙に選択肢の数字等を記入・チェックする解答方式)、試験時間の延長、代筆解答の受験上の配慮を実施している。また、平成28年度大学入試センター試験(平成28年1月実施)から、障害のある入学志願者によりきめ細やかに配慮する観点から、拡大文字問題冊子について、14ポイント版に加え、22ポイント版も作成している。
学校施設については、障害のある人の円滑な利用に配慮するため、従来よりスロープ、エレベーター、手すり、障害者用トイレ等の整備を進めるとともに、支障なく学生生活を送れるよう、各大学等において授業支援等の教育上の配慮が行われている。
聴覚障害のある人及び視覚障害のある人のための高等教育機関である筑波技術大学は、障害を補償した教育を通じて、①幅広い教養と専門的な職業能力を合わせもつ専門職業人、率先して社会に貢献できる人材の育成、②障害教育カリキュラム及び障害補償システムの開発研究等を行っている。
テレビ・ラジオ放送等のメディアを効果的に活用して、遠隔教育を行っている放送大学では、自宅で授業を受けることができ、障害のある人を含め広く大学教育を受ける機会を国民に提供しており、75障害のある学生に対しては、放送授業の字幕放送化の推進や単位認定試験における点字出題や音声出題、試験時間の延長等を行っている。
「平成28年度(2016年度)大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査」結果の概要について
独立行政法人日本学生支援機構では、全国の大学、短期大学及び高等専門学校を対象に、障害のある学生(以下「障害学生」という)の修学支援に関する実態調査を実施している。
平成28年5月1日現在における障害学生数は27,257人(全学生数の0.86%)、障害学生在籍学校数は898校(全学校数1,171校の76.7%)で、障害学生数は5,536人増(前回在籍率から0.18ポイント増)、障害学生在籍学校数は18校増(前回構成比から2.2ポイント増)となった。
障害学生数は増加し続けている。「障害者差別解消法」施行(平成28年4月)後、各大学等において、障害学生支援体制の整備や取組が進み、さらに学内連携が整ったことにより、障害学生の把握が一層進んだことが推測される。
※障害学生……身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳及び療育手帳を有している学生又は健康診断等において障害があることが明らかになった学生。
調査概要及び回収状況
障害のある子供の学校外活動や学校教育終了後における活動等を支援するためには、地域における学習機会の確保・充実を図るとともに、障害のある人が地域の人々と共に、地域における学習活動に参加しやすいように配慮を行う必要がある。
文部科学省では、公民館や図書館、博物館といった社会教育施設について、それぞれの施設に関する望ましい基準を定めるなど、障害の有無にかかわらず、全ての人々にとって利用しやすい施設となるよう促している。
誰もが活躍できる全員参加型社会を実現するには、障害者がそのすべてのライフステージにおいて豊かで充実した生活を送れるようにすることが必要である。
文部科学省では、全省をあげて障害者施策の企画立案を進めていくため「特別支援総合プロジェクト特命チーム」を設置し、今後、障害者の生涯を通じた多様な学習活動の充実に向けて、関係部局と連携した進学・就職を含む切れ目ない支援体制の整備、障害のある子供の自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援する特別支援教育、障害者スポーツや障害者の文化芸術活動の振興等の施策を横断的かつ総合的に推進していくこととしている。
学校施設の整備については、障害のある幼児児童生徒が支障なく学校生活を送るために障害の種類や程度に応じたきめ細かな配慮を行うよう、文部科学省では、学校種ごとの学校施設整備指針において、施設の計画・設計上の留意点を示している。このほか、学校施設のバリアフリー化に関する基本的な考え方や計画・設計上の留意点を示した「学校施設バリアフリー化推進指針」を策定するとともに、具体的な取組を事例集として取りまとめている。また、報告書「災害に強い学校施設の在り方について~津波対策及び避難所としての防災機能の強化~」では、災害時に避難所となる学校施設におけるバリアフリー化の必要性について示している。これらの指針や事例集等は、地方公共団体等に配布するとともに、研修会等を通じて普及啓発に努めている。
さらに、公立学校施設におけるバリアフリー化の取組に対する支援の一つとして、エレベーターやスロープなどのバリアフリー化に関する施設整備について国庫補助を行っている。
また、私立の特別支援学校並びに小・中学校の特別支援学級において、障害に適応した教育を実施する上で必要とする設備の整備を学校法人が行う場合に、国がその一部を補助している。補助対象となる設備には、立体コピー設備、FM等補聴設備、VOCA(音声表出コミュニケーション支援装置)、携帯用防犯ベル、スクールバスなどがある。
障害のある人の就労意欲が高まっている中で、障害のある人の就労を通じた社会参加を実現し、障害のある人が地域社会で、自立していきいきと暮らせるよう、障害者雇用対策の一層の充実を図っていく必要がある。
現在、身体に障害のある人又は知的障害のある人を1人以上雇用する義務がある民間企業(常用雇用労働者数50人以上)については、毎年6月1日時点の障害者雇用の状況を報告することになっている。平成28年の報告結果は次のとおりである。
平成28年6月1日現在の障害のある人の雇用状況は、障害のある人の雇用者数が13年連続で過去最高を更新し、474,374.0人(前年同日453,133.5人)となるなど、一層進展している。また、障害者である労働者の実数は386,606人(前年同日366,353人)となった。このうち、身体に障害のある人の雇用者数は327,600.0人(前年同日320,752.5人)、知的障害のある人の雇用者数は104,746.0人(前年同日97,744.0人)、精神障害のある人の雇用者数は42,028.0人(前年同日34,637.0人)と、3障害とも前年より増加していた。
また、民間企業が雇用している障害のある人の割合は1.92%(前年同日1.88%)であった。
企業規模別に割合をみると、50~100人未満規模で1.55%、100~300人未満規模で1.74%、300~500人未満規模で1.82%、500~1,000人未満規模で1.93%、1,000人以上規模で2.12%となった。
一方、法定雇用率を達成した企業の割合は、48.8%と依然として半数に満たない状況であった。なお、雇用されている障害のある人の数については、すべての企業規模で前年の報告より増加した(図表3-2-6)。
平成17年度まで | 身体障害者(重度身体障害者はダブルカウント)
知的障害者(重度知的障害者はダブルカウント)
重度身体障害者である短時間労働者
重度知的障害者である短時間労働者
|
平成18年度以降 | 身体障害者(重度身体障害者はダブルカウント)
知的障害者(重度知的障害者はダブルカウント)
重度身体障害者である短時間労働者
重度知的障害者である短時間労働者
精神障害者
精神障害者である短時間労働者
(精神障害者である短時間労働者は0.5人でカウント)
|
平成23年度以降 | 身体障害者(重度身体障害者はダブルカウント)
知的障害者(重度知的障害者はダブルカウント)
重度身体障害者である短時間労働者
重度知的障害者である短時間労働者
精神障害者
身体障害者である短時間労働者
(身体障害者である短時間労働者は0.5人でカウント)
知的障害者である短時間労働者
(知的障害者である短時間労働者は0.5人でカウント)
精神障害者である短時間労働者
(精神障害者である短時間労働者は0.5人でカウント)
|
区分 | ① 企業数 | ② 法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数 | ③ 障害者の数 | ④ 実雇用率 E÷②×100 | ⑤ 法定雇用率達成企業の数 | ⑥ 法定雇用率達成企業の割合 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
A.重度身体障害者及び重度知的障害者 | B.重度身体障害者及び重度知的障害者である短時間労働者 | C.重度以外の身体障害者、知的障害者及び精神障害者 | D.重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者 | E.計A×2+B+C+D×0.5 | F.うち新規雇用分 | ||||||
規模計 | 企業
89,359
(87,935)
| 人
24,650,200.5
(24,122,923.0)
| 人
109,765
(106,362)
| 人
14,283
(13,534)
| 人
218,564
(207,294)
| 人
43,994
(39,163)
| 人
474,374.0
(453,133.5)
| 人
49,330.5
(48,377.0)
| %
1.92
(1.88)
| 企業
43,569
(41,485)
| %
48.8
(47.2)
|
50~100人未満 | 企業
40,149
(39,566)
| 人
2,805,530.0
(2,761,818.5)
| 人
8,652
(8,387)
| 人
2,170
(2,066)
| 人
20,382
(19,266)
| 人
7,294
(6,287)
| 人
43,503.0
(41,249.5)
| 人
4,930.5
(4,827.5)
| %
1.55
(1.49)
| 企業
18,347
(17,697)
| %
45.7
(44.7)
|
100~300人未満 | 34,681
(34,155)
| 5,363,032.0
(5,273,257.0)
| 19,743
(18,904)
| 3,803
(3,433)
| 44,633
(42,416)
| 11,116
(9,499)
| 93,480.0
(88,406.5)
| 11,584.5
(10,978.5)
| 1.74
(1.68)
| 18,105
(17,154)
| 52.2
(50.2)
|
300~500人未満 | 6,712
(6,556)
| 2,377,566.0
(2,321,444.0)
| 9,703
(9,356)
| 1,537
(1,465)
| 20,166
(19,215)
| 4,538
(4,317)
| 43,378.0
(41,550.5)
| 4,672.5
(4,653.5)
| 1.82
(1.79)
| 3,007
(2,886)
| 44.8
(44.0)
|
500~ 1,000人未満 | 4,585
(4,495)
| 2,951,625.0
(2,898,895.0)
| 13,391
(13,087)
| 1,565
(1,524)
| 26,495
(25,090)
| 4,455
(3,984)
| 57,069.5
(54,780.0)
| 6,056.0
(6,099.0)
| 1.93
(1.89)
| 2,207
(2,007)
| 48.1
(44.6)
|
1,000人以上 | 3,232
(3,163)
| 11,152,447.5
(10,867,508.5)
| 58,276
(56,628)
| 5,208
(5,046)
| 106,888
(101,307)
| 16,591
(15,076)
| 236,943.5
(227,147.0)
| 22,087.0
(21,818.5)
| 2.12
(2.095)
| 1,903
(1,741)
| 58.9
(55.0)
|
国の機関(法定雇用率2.3%)に在職している障害のある人の割合、勤務している障害のある人の数はそれぞれ2.45%、7,436.0人であった。
また、都道府県の機関(法定雇用率2.3%)は2.61%、8,474.0人であり、市町村の機関(法定雇用率2.3%)は2.43%、26,139.5人であった。
さらに、都道府県等の教育委員会(法定雇用率2.2%)は2.18%、14,448.5人であった。国、地方公共団体等ともに、勤務している障害のある人の数は前年同日の報告より増加した。
※ 障害者雇用状況報告では、重度身体障害者又は重度知的障害者については、その1人の雇用をもって、2人の身体障害者又は知的障害者を雇用しているものとしてカウントされる。
また、重度身体障害者又は重度知的障害者である短時間労働者(1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者)については、1人分として、重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者については、0.5人分としてカウントされる。
① 法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数 | ② 障害者の数 | ③ 実雇用率 | ④ 法定雇用率達成機関の数/機関数 | ⑤ 達成割合 | |
---|---|---|---|---|---|
国の機関 | 303,672.0人
(300,731.0人)
| 7,436.0人
(7,371.5人)
| 2.45%
(2.45%)
| 41/42
(40/40)
| 97.6%
(100.0%)
|
都道府県の機関 | 324,593.5人
(323,789.5人)
| 8,474.0人
(8,344.0人)
| 2.61%
(2.58%)
| 150/155
(146/156)
| 96.8%
(93.6%)
|
市町村の機関 | 1,077,738.5人
(1,075,882.5人)
| 26,139.5人
(25,913.5人)
| 2.43%
(2.41%)
| 2,054/2,333
(2,028/2,344)
| 88.0%
(86.5%)
|
① 法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数 | ② 障害者の数 | ③ 実雇用率 | ④ 法定雇用率達成機関の数/機関数 | ⑤ 達成割合 | |
---|---|---|---|---|---|
都道府県等 教育委員会 | 661,899.0人
(661,646.5人)
| 14,448.5人
(14,216.5人)
| 2.18%
(2.15%)
| 100/125
(88/119)
| 80.0%
(73.9%)
|
① 法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数 | ②障害者の数 | ③ 実雇用率 | ④ 不足数 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|
国の機関合計 | 303672.0 | 7436.0 | 2.45 | 1.0 | |
行政機関合計 | 275271.5 | 6682.5 | 2.43 | 1.0 | |
内閣官房 | 1021.0 | 24.0 | 2.35 | 0.0 | |
内閣法制局 | 78.0 | 2.0 | 2.56 | 0.0 | |
内閣府 | 2376.0 | 56.0 | 2.36 | 0.0 | |
宮内庁 | 867.0 | 21.0 | 2.42 | 0.0 | |
公正取引委員会 | 813.0 | 18.0 | 2.21 | 0.0 | |
警察庁 | 2142.0 | 55.0 | 2.57 | 0.0 | |
金融庁 | 1600.0 | 37.0 | 2.31 | 0.0 | |
消費者庁 | 380.0 | 9.0 | 2.37 | 0.0 | |
個人情報保護委員会 | 79.0 | 0.0 | 0.00 | 1.0 | |
復興庁 | - | - | - | - | (注4) |
総務省 | 4799.0 | 115.0 | 2.40 | 0.0 | 特例承認あり(注5) |
法務省 | 32344.0 | 747.0 | 2.31 | 0.0 | |
公安調査庁 | 1517.0 | 36.0 | 2.37 | 0.0 | |
外務省 | 5966.0 | 145.0 | 2.43 | 0.0 | |
財務省 | 11191.0 | 263.0 | 2.35 | 0.0 | |
国税庁 | 57299.5 | 1340.0 | 2.34 | 0.0 |
① 法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数 | ②障害者の数 | ③ 実雇用率 | ④ 不足数 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|
文部科学省 | 2120.0 | 51.0 | 2.41 | 0.0 | 特例承認あり(注5) |
厚生労働省 | 52169.0 | 1441.0 | 2.76 | 0.0 | |
農林水産省 | 15538.0 | 359.0 | 2.31 | 0.0 | |
林野庁 | 4078.0 | 94.0 | 2.31 | 0.0 | |
水産庁 | 607.0 | 15.0 | 2.47 | 0.0 | |
経済産業省 | 6417.5 | 149.5 | 2.33 | 0.0 | 特例承認あり(注5) |
特許庁 | 2739.0 | 63.5 | 2.32 | 0.0 | |
国土交通省 | 37535.0 | 870.0 | 2.32 | 0.0 | |
観光庁 | 114.5 | 2.0 | 1.75 | 0.0 | |
気象庁 | 4780.0 | 110.0 | 2.30 | 0.0 | |
海上保安庁 | 163.0 | 4.0 | 2.45 | 0.0 | |
運輸安全委員会 | 180.5 | 5.0 | 2.77 | 0.0 | |
環境省 | 1929.0 | 45.0 | 2.33 | 0.0 | |
原子力規制委員会 | 1101.0 | 26.0 | 2.36 | 0.0 | |
防衛省 | 20064.0 | 500.0 | 2.49 | 0.0 | |
防衛装備庁 | 1365.0 | 35.0 | 2.56 | 0.0 | |
人事院 | 626.0 | 15.0 | 2.40 | 0.0 | |
会計検査院 | 1272.5 | 29.5 | 2.32 | 0.0 | |
立法機関合計 | 3579.0 | 84.5 | 2.36 | 0.0 | |
衆議院事務局 | 1442.0 | 33.0 | 2.29 | 0.0 | |
衆議院法制局 | 82.5 | 2.0 | 2.42 | 0.0 | |
参議院事務局 | 1097.5 | 26.5 | 2.41 | 0.0 | |
参議院法制局 | 69.0 | 2.0 | 2.90 | 0.0 | |
国立国会図書館 | 888.0 | 21.0 | 2.36 | 0.0 | |
司法機関合計 | 24821.5 | 669.0 | 2.70 | 0.0 | |
最高裁判所 | 1001.0 | 23.0 | 2.30 | 0.0 | |
高等裁判所 | 1716.0 | 44.0 | 2.56 | 0.0 | |
地方裁判所 | 16152.0 | 423.0 | 2.62 | 0.0 | |
家庭裁判所 | 5952.5 | 179.0 | 3.01 | 0.0 |
省庁 | 外局等 | ||
---|---|---|---|
総務省 | 消防庁 | ||
文部科学省 | 文化庁 | スポーツ庁 | |
経済産業省 | 中小企業庁 | 資源エネルギー庁 |
平成27年度のハローワークを通じた就職件数は、平成26年度を上回る90,191件(前年度比6.6%増)であり、6年連続で過去最高を更新した。このうち、身体に障害のある人は28,003件(前年度比0.6%減)、知的障害のある人は19,958件(前年度比6.6%増)、精神障害のある人は38,396件(前年度比11.2%増)、その他の障害のある人(発達障害、難病、高次脳機能障害などのある人)は3,834件(前年度比21.1%増)となり、精神障害のある人の就職件数が大幅に増加し、身体に障害のある人の就職件数を大きく上回った。
また、新規求職申込件数は187,198件(前年度比4.5%増)となり、このうち、身体に障害のある人は63,403件(前年度比2.9%減)、知的障害のある人は33,410件(前年度比3.4%増)、精神障害のある人は80,579件(前年度比9.7%増)、その他の障害のある人は9,806件(前年度比20.1%増)であり、前年度同様に精神障害のある人やその他の障害のある人の申込件数が大きく増加していることが分かる。
障害者施策の基本理念である、すべての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現のためには、職業を通じた社会参加が重要である。この考え方の下に障害者雇用対策の各施策を推進している。
具体的には、「障害者雇用促進法」や同法に基づく「障害者の雇用の促進及びその職業の安定に関する施策の基本となるべき方針」等を踏まえ、障害のある人、一人一人がその能力を最大限発揮して働くことができるよう、障害の種類及び程度に応じたきめ細かな対策を講じている。
また、障害者権利条約に対する労働・雇用分野での対応については、労働政策審議会障害者雇用分科会において議論が行われ、平成25年に雇用分野における障害者の差別を禁止するための措置、合理的配慮の措置、精神障害者を法定雇用率の算定基礎に加えること等を内容とする「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律案」が国会に提出され、同年6月に成立した。
障害者雇用促進法では、民間企業等に対し、一定の割合(法定雇用率)以上の障害のある人の雇用を義務づけている。法定雇用率は、企業の社会連帯の理念に基づき、身体に障害のある人又は知的障害のある人に一般労働者と同じ水準の雇用の場を、各事業者の平等な負担の下に確保することを目的として設定している。昭和35年の制度創設時、民間企業の法定雇用率は努力義務として事務的事業所1.3%、現場的事業所1.1%であった。その後、昭和51年に障害者雇用率制度を義務化し、昭和63年、平成10年及び平成25年に率を改正し、平成25年4月1日以降は2.0%となっている。なお、国等の公的機関については、率先垂範すべき立場にあることから、民間企業を上回る2.3%(都道府県等の教育委員会は2.2%)としている。
事業主が障害のある人の雇用に特別の配慮をした子会社(特例子会社)を設立した場合には、一定の要件の下でこの特例子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されている者とみなして、雇用している障害者の割合(以下「実雇用率」という。)を算定できる特例措置(特例子会社制度)を設けている。83特例子会社制度は、障害のある人の特性に配慮した仕事の確保・職場環境の整備が容易となり、これにより障害のある人の能力を十分に引き出すことができるなど、事業主及び障害のある人双方にメリットがあると考えられる。平成28年6月1日現在で448社を特例子会社として認定している。
また、特例子会社を持つ親会社については、関係する他の子会社も含め、企業グループ全体での実雇用率の算定を可能としている。
さらに、特例子会社がない場合も、一定の要件を満たす企業グループとして厚生労働大臣の認定を受けたものについては、企業グループ全体で実雇用率を通算できる「企業グループ算定特例」を設けている。
加えて、中小企業の場合、単独で障害のある人を雇用するために十分な仕事量を確保することが困難な場合も少なくないため、複数の中小企業が事業協同組合等を活用して共同で障害のある人の雇用機会を確保し、一定の要件を満たすものとして厚生労働大臣の認定を受けたものについては、事業協同組合等とその組合員である中小企業で実雇用率を通算できる「事業協同組合等算定特例」を設けている。
障害者雇用率制度の履行を確保するため、ハローワークにおいて、法定雇用率未達成企業に対する指導を行っている。
実雇用率の著しく低い民間企業に対しては、ハローワークが障害のある人の雇入れに関する2年間(平成24年以降。それ以前は3年間)の計画の作成を命じ、当該計画に基づいて障害者雇用を進めるよう継続的な指導を実施している。また、雇入れ計画を作成したものの、障害のある人の雇用が進んでいない企業に対しては、雇入れ計画の適正な実施に関する勧告を行い、一連の指導にも関わらず改善がみられない企業については、企業名を公表している。
雇入れ計画を作成していた企業のうち、計画終期で一定の改善が見られなかった53社に対し企業名公表を前提とした特別指導を行ったところ、平成28年度については、公表対象企業は2社となった。
国及び地方公共団体の機関については、民間企業に率先垂範して障害のある人の雇入れを行うべき立場にあることを踏まえ、厚生労働省は国及び地方公共団体の各機関の任命権者に対し、計画的な採用を図るよう要請を行っている。すべての公的機関は、毎年6月1日現在の雇用状況を発表するとともに、未達成である機関については、障害のある人の採用に関する計画を作成しなければならない。また、その計画が適正に実施されていない場合には、厚生労働省は国及び地方公共団体の各機関の任命権者に対し、計画が適正に実施されるよう勧告を行っている。
平成28年6月1日現在の障害のある人の雇用状況では、国・地方公共団体で勤務している障害のある人は前年よりも増加しているものの、特に都道府県等の教育委員会では、未達成である機関が多くみられることから(法定雇用率未達成である都道府県教育委員会は47機関中12機関)、厚生労働省は未達成機関に対し、指導を行っている。
障害者雇用促進法は、障害者雇用率制度に加え、障害のある人の雇用に伴う事業主の経済的負担を調整するとともに、障害のある人の雇用を容易にし、社会全体として障害のある人の雇用水準を引き上げるため、84障害者雇用納付金制度を設けている。この制度では、法定雇用率未達成の民間企業(常用雇用労働者数100人超)から納付金を徴収するとともに、一定水準を超えて障害のある人を雇用している民間企業に対して、障害者雇用調整金、報奨金を支給している。
このほか、障害のある人を雇い入れるために施設、設備の改善等を行う事業主等に対する助成金の支給や在宅就業障害者に仕事を発注する事業主に対する在宅就業障害者特例調整金等の支給を行っている。
各府省・各地方公共団体で知的障害のある人等を非常勤職員として雇用し、1~3年の業務の経験を積んだ後、ハローワーク等を通じて一般企業等への就職の実現を図る「チャレンジ雇用」を推進している。
障害者雇用促進法において、職業リハビリテーションとは、「障害者に対して職業指導、職業訓練、職業紹介その他この法律に定める措置を講じ、その職業生活における自立を図ること」(同法第2条第7号)としている。これに基づき、障害者が職業を通じて社会参加できるよう、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどの機関を中心に障害者が適当な職場に就き、それを継続し、それにおいて向上することができるようにするための就労に関するサービスを実施している。
国では、民間企業が無理なく、かつ積極的に障害のある人を雇用できるよう、障害のある人を雇用した場合などに助成金を支給している。
例えば、身体に障害のある人や知的障害のある人、85精神障害のある人を継続して雇用する労働者として雇い入れる民間企業に対して助成する「特定求職者雇用開発助成金」や、業務に必要な援助や指導を行う職場支援員を配置する民間企業に対して助成する「障害者職場定着支援奨励金」(平成29年度から「障害者雇用安定助成金(職場定着支援コース)」に統合)、障害のある人を雇い入れたり、継続して雇用するために必要な職場の環境整備等を行った場合に費用の一部を助成する障害者雇用納付金制度に基づく助成金等を支給している。
助成金のほか、民間企業等が積極的に障害のある人の雇用を進めるためには、障害のある人の雇用管理に関する先進的な事例等を普及啓発する必要がある。そのため、各種マニュアル等を発行し、民間企業等への配布等を通じて障害者雇用の啓発を行っている。
また、厚生労働省では、9月の「障害者雇用支援月間」に障害のある人を積極的に多数雇用している事業所、障害者の雇用の促進と職業の安定に著しく貢献した団体、職業人として模範的な業績をあげている障害者に対し、厚生労働大臣表彰を行い、障害者雇用に対する国民の関心と理解を一層深めることを目指している。平成28年度には24の事業所、1名の障害者雇用等に貢献した個人、15名の働く障害者を表彰した。
障害のある人を雇用する民間企業に対し、税制上の各種の特例措置を講じている。障害のある人の一層の雇用促進につながるよう、平成29年度税制改正では、心身障害者を多数雇用する事業主が事業用施設等を取得した場合の不動産取得税の減額措置及び固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限の2年延長等を行った。
事項 | 内容 |
---|---|
機械等の割増償却措置 (法人税、所得税) | 障害者を雇用し、次のいずれかの要件を満たす場合、その事業年度(その年)又はその前5年以内に開始した各事業年度(各年)において取得、製作、建設した機械装置等のうち、障害者が労働に従事する事業所にあるものについては、普通償却限度額の24%(工場用建物等については32%)の割増償却ができる。
|
助成金に係る課税の特例措置 (法人税、所得税) | 国や地方公共団体の補助金、納付金及び障害者雇用納付金制度に基づく助成金については、助成金のうち固定資産の取得又は改良に充てた部分の金額に相当する金額の範囲内で、圧縮記帳による損金算入(法人税)又は総収入金額不算入(所得税)とすることができる。 |
事業所税の軽減措置 | 事業所税の従業者割については、課税標準としての従業者給与総額から障害者の給与分を控除し、また、障害者を10人以上雇用し、かつ、その雇用割合が50%以上である事業所であって、重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金等の支給に係る施設又は設備に係るものについては、事業所税の資産割に係る課税標準の算定につき、当該事業所床面積の2分の1を控除するものとする。 |
不動産取得税の軽減措置 | 障害者を20人以上雇用し、かつ、その雇用割合が50%以上の事業所の事業主が、重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金等を受けて事業用施設(作業の用に供するものに限る)を取得した場合において、その者が当該施設の取得の日から引き続き3年以上当該施設を当該事業所の事業の用に供したときは、当該施設の取得に対して課する不動産取得税については当該税額から価格の10分の1に相当する額に税率を乗じて得た額を減額するものとする。 |
固定資産税の軽減措置 | 障害者を20人以上雇用し、かつ、その雇用割合が50%以上の事業所の事業主が、重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金等を受けて取得した事業用の家屋(作業の用に供するもののうち、障害者の雇用割合に応じた部分に限る)に対して課する固定資産税の課税標準は、取得後5年間に限り、当該家屋の課税標準となるべき価格の6分の1を減額した額とする。 |
平成25年6月に「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律」が成立し、平成28年4月より雇用分野における障害のある人への差別が禁止され、合理的配慮の提供が義務化されることとなった。
このため、リーフレット・ポスター等を作成して周知に努め、平成29年2月に合理的配慮事例集(第三版)を公表するとともに、全国の都道府県労働局・ハローワークにおいて事業主・障害者からの相談に応じ、紛争に発展した場合は、都道府県労働局長や障害者雇用調停会議が必要な助言、指導又は勧告を行っている。
障害のある人の就労支援の充実と活性化を図るため、雇用・福祉・教育・医療の一層の連携強化を図ることとし、ハローワークを中心とした関係機関とのチーム支援や、一般雇用や雇用支援策に関する理解の促進、障害者就業・生活支援センター事業、トライアル雇用、ジョブコーチ等による支援などを実施している。
就職を希望する障害のある人に対しては、ハローワークで、求職の登録の後にその技能、職業適性、知識、希望職種、身体能力等に基づき、ケースワーク方式による職業相談を実施し、安定した職場への就職・就職後の職場定着を支援している。
このため、ハローワークにおける障害のある人の専門窓口では、障害のある人の就職支援を専門に担当する就職促進指導官を配置し、個々の障害特性に応じたきめ細かな職業相談を行っている。
就職を希望する障害のある人の一般雇用への移行を図るため、ハローワークが中心となって、障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センター、就労移行支援事業所、特別支援学校、医療機関等の関係機関からなる「障害者就労支援チーム」を作り、就職に向けた準備から職場定着までの一貫した支援を行う「チーム支援」を実施している。
平成23年度からは、障害者雇用の専門的知識を有する就職支援コーディネーターを活用し、地方自治体、医療機関なども含めた地域の関係機関との連携体制の更なる強化を行い、継続的な支援を実施することで、福祉・教育・医療から一般雇用への移行を促進している。
① 新規求職申込件数 | 前年度比 | ② 有効求職者数 | 前年度比 | ③ 就職件数 | 前年度比 | ④ 就職率(③/①) | 前年度差 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
平成17年度 | 97,626 | 4.8 | 146,679 | △4.7 | 38,882 | 8.4 | 39.8 | 1.3 |
18年度 | 103,637 | 6.2 | 151,897 | 3.6 | 43,987 | 13.1 | 42.4 | 2.6 |
19年度 | 107,906 | 4.1 | 140,791 | △7.3 | 45,565 | 3.6 | 42.2 | △0.2 |
20年度 | 119,765 | 11.0 | 143,533 | 1.9 | 44,463 | △2.4 | 37.1 | △5.1 |
21年度 | 125,888 | 5.1 | 157,892 | 10.0 | 45,257 | 1.8 | 36.0 | △1.1 |
22年度 | 132,734 | 5.4 | 169,116 | 7.1 | 52,931 | 17.0 | 39.9 | 3.9 |
23年度 | 148,358 | 11.8 | 182,535 | 7.9 | 59,367 | 12.2 | 40.0 | 0.1 |
24年度 | 161,941 | 9.2 | 198,755 | 8.9 | 68,321 | 15.1 | 42.2 | 2.2 |
25年度 | 169,522 | 4.7 | 207,956 | 4.6 | 77,883 | 14.0 | 45.9 | 3.7 |
26年度 | 179,222 | 5.7 | 218,913 | 5.3 | 84,602 | 8.6 | 47.2 | 1.3 |
27年度 | 187,198 | 4.5 | 231,066 | 5.6 | 90,191 | 6.6 | 48.2 | 1.0 |
新規求職申込件数 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
障害者計 | 身体障害者 | 知的障害者 | 精神障害者 | その他 | |||
うち重度 | うち重度 | ||||||
27年度 | 187,198 | 63,403 | 27,057 | 33,410 | 4,946 | 80,579 | 9,806 |
求職件数 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
障害者計 | 身体障害者 | 知的障害者 | 精神障害者 | その他 | |||
うち重度 | うち重度 | ||||||
27年度 | 90,191 | 28,003 | 11,321 | 19,958 | 4,339 | 38,396 | 3,834 |
事業所が障害のある人を短期の試行雇用の形で受け入れることにより、障害のある人の適性や業務遂行可能性を見極め、障害のある人と事業主の相互理解を促進すること等を通じて、88常用雇用への移行を促進する障害者トライアル雇用事業を実施している。
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構により各都道府県に1か所(そのほか支所5か所)設置・運営されている地域障害者職業センターでは、ハローワークや地域の就労支援機関との連携の下に、身体に障害のある人、知的障害のある人はもとより、精神障害のある人、発達障害のある人、高次脳機能障害のある人など、他の機関では支援が困難な障害のある人を中心に、専門職の「障害者職業カウンセラー」により、職業評価、職業指導から就職後のアフターケアに至る職業リハビリテーションを専門的かつ総合的に実施している。
障害のある人個々の就職の希望等を把握した上で、職業評価・職業相談を行い、これらを基に就職及び就職後の職場適応に必要な支援内容等を含む職業リハビリテーション計画の策定を行っている。
障害のある人に対して、就職又は職場適応に必要な障害特性や、職業上の課題の把握とその改善を図るための支援、職業に関する知識の習得のための支援及び社会生活技能等の向上のための支援を行っている。
就職又は職場適応に課題を有する知的障害、精神障害のある人等が円滑に職場適応することができるよう、就職時のみならず雇用後においても事業所にジョブコーチを派遣し、障害のある人に障害特性を踏まえた直接的かつ専門的な支援を行うほか、事業主に対して、雇用管理に必要な助言や職場環境の改善の提案等の援助を行っている。
また、安定した雇用継続を図るためのフォローアップも行っている。
精神障害のある人及び事業主に対して、主治医との連携の下、新規雇入れ、職場復帰、雇用継続のそれぞれの雇用の段階に応じた専門的な支援を総合的に行っている。
特に、休職中の精神障害のある人及びその方を雇用する事業主に対しては、円滑な職場復帰に向けた支援(リワーク支援)を進めており、精神障害のある人に対しては、生活リズムの立直しや集中力・持続力の向上等の支援を行うとともに、事業主に対しては、職場の受け入れ体制の整備等についての支援を行っている。
各地域における障害者就業・生活支援センターや就労移行支援事業者等の関係機関において、より効果的な職業リハビリテーションが実施されるよう、職業リハビリテーションに関する技術的事項についての助言や支援方法に係る助言や援助を行っている。
また、ジョブコーチの養成研修や関係機関の職員等の知識の習得、技術等の向上のための実務的研修を行っている。
障害者就業・生活支援センターでは、障害のある人の職業生活における自立を図るために、福祉や教育等の地域の関係機関との連携の下、障害のある人の身近な地域(平成29年4月現在332箇所)で就業面及び生活面の両面における一体的な支援を行っている。
例えば、就業やそれに伴う日常生活上の支援を必要とする障害のある人に対し、就職に向けた準備支援(職業準備訓練、職場実習のあっせん)や求職活動等の就業に関する相談と、89健康管理や住居、年金等の生活に関する相談などを行っている。また、必要に応じ、ハローワークや地域障害者職業センターなどの専門的支援機関と連絡を取り合い、支援を引き継ぐなど適切な支援機関への案内窓口としての機能も担っている。
近年、雇用障害者数が増加する中で、定着支援の取組の重要性が高まっており、センターの業務実績を見ると、就職件数、雇用者数の伸びにしたがって、企業からの相談の半数を定着支援が占めており、また、就業時点で就労支援機関の支援を受けていない障害者に対する定着支援を求められるなど、定着支援の比重が増している。センターでは、事業主に対し、本人の障害特性や症状・能力等についての助言や関係機関と連携した支援を行うほか、就職後に生じる課題の予測と実際に生じた際の事前準備や、センター職員による定期的な職場訪問や電話連絡等を通じ、本人が現在抱えている悩みや課題、事業主や上司・同僚等の意見等を把握し、問題が発生しないよう未然に対応をしている。
平成28年度には、職場定着支援の強化を図るため、ジョブコーチとして多くの障害者の支援に携わり、障害者の職場定着支援に関する豊富な知識と経験を有する「主任職場定着支援担当者」等を増員し、センターの定着支援機能の強化を図った。
障害者が地域で自立した日常生活又は社会生活を送るための基盤として就労支援は重要であり、障害者の就労支援として以下の取組を行っている。
一般就労を希望する65歳未満の障害者には、できる限り一般就労をしていただけるように、就労移行支援事業所では、生産活動、職場体験その他の活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、求職活動に関する支援、その適性に応じた職場の開拓、就職後における職場への定着のために必要な相談、その他の必要な支援を行っている。
雇用契約に基づき、継続的に就労することが可能な65歳未満の障害者に対し、生産活動その他の活動の機会の提供、その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行うとともに、一般就労に向けた支援や職場への定着のための支援等を行っている。
通常の事業所に雇用されていた障害者であって、その年齢、心身の状態その他の事情により、引き続き当該事業所に雇用されることが困難となった者、就労移行支援によっても通常の事業所に雇用されるに至らなかった者、その他の通常の事業所に雇用されることが困難な者につき、生産活動その他の活動の機会の提供、その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行うとともに、一般就労に向けた支援や職場への定着のための支援等を行っている。
平成27年度障害福祉サービス等報酬改定において、一般就労への定着支援を充実・強化するため、就労移行支援において、平成27年度から新たに利用者の就労定着期間に着目した加算を創設した。
精神障害のある人については、近年、ハローワークにおける新規求職者数が急激に伸びてきており、その専門窓口では「精神障害者雇用トータルサポーター」などの専門職員による個々の障害特性に応じたきめ細かな相談支援を行うとともに、90精神障害のある人に関する事業主の意識啓発から就職後のフォローアップ等の働きかけを行っている。
また、民間企業に対しては継続雇用する労働者へ移行することを目的に、一定程度の期間をかけて、週の所定労働時間を20時間以上とすることを目指す「障害者短時間トライアル雇用奨励金の支給」(平成29年度から「トライアル雇用助成金(障害者短時間コース)」)などを行っている。
さらに平成23年度から、事業主等を対象に、精神障害のある人の雇用管理をテーマにしたセミナーを継続して開催しており、平成28年度は全国10ブロックで開催した。
なお、精神障害のある人については、これら各般の取組を通して、その雇用促進を一層図ることとしており、障害者基本計画(第3次)では、50人以上の規模の事業主で雇用される精神障害のある人を、平成29年の障害者雇用状況報告で3.0万人にすることを目指しており、平成28年6月1日現在で4.2万人となっている。
発達障害のある人についても、近年ハローワークにおける新規求職者数が増加しており、その雇用の促進を図ることが必要となっている。そのため、ハローワークでは、発達障害のある求職者に対する職業紹介を行うに当たっては、地域障害者職業センターや発達障害者支援センターと十分な連携を図って、対応している。なかでも、発達障害などの要因によりコミュニケーション能力に困難を抱えている求職者について、専門の支援員(就職支援ナビゲーター(発達障害者等支援分))によるきめ細かな就職支援を実施する「若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」を実施している。
また、平成28年度から全国10か所のハローワークにおいて、発達障害などの要因により、コミュニケーション能力に困難を抱えている求職者について、小集団方式によるセミナーやグループワークなどを通じた職場でのコミュニケーションスキルなどの付与や、個別の職業相談などを実施している。
さらに、発達障害のある人をハローワーク等の職業紹介により新たに雇い入れ、雇用管理に関する事項を把握・報告する事業主に対して助成を行う「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発助成金」(平成29年度から「特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)」)による助成を実施しており、その雇用促進を図っている。
さらに、「発達障害者就労支援者育成事業」として、支援関係者等の発達障害者支援のための基盤作りのために、平成28年度は全国8ブロックで発達障害のある人の就労支援者及び当事者等を対象としたセミナーの開催や発達障害のある人を対象とした職場実習を実施し、発達障害のある人の雇用のきっかけづくりを行う啓発事業を実施した。
ハローワークでは、障害者手帳の有無にかかわらず、就労支援の必要な難病のある人に対して、難病相談支援センターとの連携による就労支援も行っている。平成25年度からは、ハローワークに「難病患者就職サポーター」を配置し、難病相談支援センターと連携しながら、就職を希望する難病患者に対する症状の特性を踏まえたきめ細かな就労支援や在職中に難病を発症した患者の雇用継続等の総合的な就労支援を行っている。
また、難病のある人をハローワーク等の職業紹介により新たに雇い入れ、雇用管理に関する事項を把握・報告する事業主に対して助成を行う「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発助成金」による助成を実施しており、その雇用促進を図っている。
平成28年度には事業主や就労支援に取り組む関係機関における必要な共通認識を促進するため、難病患者の雇用管理に資するマニュアルとして「難病のある人の就労支援のために」を独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が改訂し、ハローワークをはじめとした就労支援機関等で、難病のある人の就労支援に活用している。
自宅等で就業する障害のある人(在宅就業障害者)の就業機会の確保等を支援するため、これらの障害のある人に直接又は在宅就業障害者に対する支援を行う団体として厚生労働大臣の登録を受けた法人(在宅就業支援団体(平成29年1月現在で22団体))を介して業務を発注した事業主に対して、障害のある人に対して業務の対価として支払われた金額に応じて、障害者雇用納付金制度で、在宅就業障害者特例調整金(常用雇用労働者数100人以下の事業主については在宅就業障害者特例報奨金)を支給する制度を運用している。
従来、障害のある人が就労困難と考えられていた職業であっても、IT機器を利用することにより、就労の可能性が高まってきている。このため、障害のある人の職域拡大に資することを目的として、高齢・障害・求職者雇用支援機構において、障害のある人や事業主のニーズに対応した就労支援機器に関する情報提供、貸出事業等を通じて、その普及・啓発に努めている。
国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局においては、一般就労を希望する65歳未満の障害のある人に対して、就労に必要な知識や技能を獲得させるため、障害福祉サービス(就労移行支援)を実施している。身体又は発達障害のある方には、生産活動、職業体験等の必要な訓練を、視覚に障害のある方には、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家資格取得のための教育訓練を行い、就労に関する相談や支援を通じて、障害のある方の適正に見合った職場への就労とその定着を支援している。
生活福祉資金貸付制度は、低所得世帯、障害者世帯等に対し、資金の貸付けと必要な相談支援を行うことにより、その経済的自立及び生活意欲の助長促進並びに在宅福祉及び社会参加の促進を図り、安定した生活を送れるようにすることを目的に、都道府県社会福祉協議会を実施主体として運営されている。本制度の資金種類の1つとして、「福祉資金」が設けられており、障害者世帯が生業を営むために必要な経費や技能習得に必要な経費及びその期間中の生計を維持するために必要な経費等の貸付を行っている。
また、経済産業省では、地域経済を活性化させるため、産業競争力強化法(平成25年法律第98号)の認定市区町村(平成28年12月現在で1,275市区町村)において、新たに創業を行う者に対して、その創業等に要する経費の一部を助成し、新たな需要や雇用の創出等を促す取組を行っており、障害のある人も活用できる制度となっている。
障害者就労施設において、稲作や野菜、果樹、花き、畜産、農産加工や販売等、幅広い分野で農業活動等に取り組まれている。農業を通じて高い賃金・工賃を実現している事業所もあり、92障害者の就労機会の確保や賃金・工賃の向上といった面のみならず、地域の農業における労働力不足への対応といった面でも意味のある取組であり、農業と福祉の連携の推進を図ることは重要な課題となっている。
このため、農林水産省では、障害者等のための福祉農園の開設・整備等の取組を支援しているほか、全国の地方農政局等に行政、福祉、農業等の関係者で構成する「障害者就労の促進ネットワーク(協議会)」を設置し、セミナーを通じて優良事例や施策の紹介などを行っている。
一方、厚生労働省では、農業分野に取り組もうとする就労継続支援B型事業所等に対して、農業分野の専門家を派遣し、農業に関する知識・技術の習得や6次産業化の推進に向けた助言・指導を行うとともに、都道府県において農業に取り組む就労継続支援B型事業所等が参加する農福連携マルシェ(市場)の開催を支援している。
また、農林水産省と厚生労働省とが連携して「『農』と福祉の連携プロジェクト」を推進し、農業関係者と福祉関係者との相互理解を深めるための農福連携セミナーや農福連携推進フォーラム(平成29年3月24日開催)の開催、有楽町駅前での農福連携マルシェの開催に取り組んだところである。
これらの取組を通じて、両省が連携しつつ、優良事例や支援策の周知を含め積極的に情報発信を行い、農業と福祉の連携や、それを通じた障害者の賃金・工賃の向上の推進に取り組むこととしている。
障害のある人に対し、作業環境への適応を容易にし、訓練修了後も引き続き雇用されることを期待して、都道府県知事又は都道府県労働局長が民間事業主に委託して実施する訓練で、訓練生には訓練手当が、事業主には職場適応訓練費(2万4千円/月)が支給される(訓練期間6か月以内(原則))。また、重度の障害のある人に対しては、訓練期間を長くし(1年以内)、職場適応訓練費も増額(2万5千円/月)している。
障害のある人に対し、実際に従事することとなる仕事を経験させることにより、就業への自信を持たせ、事業主に対しては対象者の技能程度、適応性の有無等を把握させるため、都道府県知事又は都道府県労働局長が民間事業主に委託して実施する訓練で、訓練生には訓練手当が、事業主には、職場適応訓練費(960円/日)が支給される(訓練期間2週間以内)。また、重度の障害のある人に対しては、訓練期間を長くし(4週間以内)、職場適応訓練費も増額(1,000円/日)している。
司法試験においては、障害のある人がその有する知識及び能力を答案等に表すに当たり、その障害が障壁となり、事実上の受験制限とならないために、障害のない人との実質的公平を図り、そのハンディキャップを補うために必要な範囲で措置を講じている。具体的には、視覚障害者に対する措置として、パソコン用電子データ又は点字による出題、解答を作成するに当たってのパソコン(ワープロ)の使用、拡大した問題集・答案用紙の配布、試験時間の延長等を、肢体障害者に対する措置として、解答を作成するに当たってのパソコン(ワープロ)の使用、拡大した答案用紙の配布、試験時間の延長等を認めるなどの措置を講じている。
司法書士試験、土地家屋調査士試験及び簡裁訴訟代理等能力認定考査においては、その有する知識及び能力を答案等に表すことについて障害のない人と比較してハンディキャップを補うために必要な範囲で措置を講じている。93具体的には、弱視者に対する拡大鏡の使用や記述式試験の解答を作成するに当たってのパソコン(ワープロ)の使用を、また、試験時間の延長を認める等の措置を講じている。
重点施策実施5か年計画(平成20年度~平成24年度)において、国は公共調達における競争性及び公正性の確保に留意しつつ、福祉施設等の受注機会の増大に努めるとともに、地方公共団体等に対し、国の取組を踏まえた福祉施設等の受注機会の増大の推進を要請することとされていたことから、これを踏まえ、官公需(官公庁の契約)を積極的に進めるため、各府省の福祉施設受注促進担当者会議を開催し、更なる官公需の促進を依頼するなどの取組を行うとともに、平成20年に地方自治法施行令を改正し、地方公共団体の契約について随意契約によることができる場合として、地方公共団体が障害者支援施設等から、クリーニングや発送作業などの役務の提供を受ける契約を追加する措置を講じた。
また、国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律(平成24年法律第50号)(以下「障害者優先調達推進法」という。)の施行(平成25年4月)にあわせて、「予算決算及び会計令」を改正し、随意契約によることができる場合として、「慈善のため設立した救済施設から役務の提供を受けるとき」を追加する措置を講じた。
障害者就労施設、在宅就業障害者及び在宅就業支援団体(以下「障害者就労施設等」という。)の受注の機会を確保するために必要な事項等を定めることにより、障害者就労施設等が供給する物品等に対する需要の増進等を図り、もって障害者就労施設で就労する障害者、在宅就業障害者等の自立の促進に資する。
障害者就労施設等は、単独で又は相互に連携して若しくは共同して、購入者等に対し、その物品等に関する情報を提供するよう努めるとともに、当該物品等の質の向上及び供給の円滑化に努めるものとする。
障害のある人が自立した生活を送るためには、就労によって経済的な基盤を確立することが重要である。94そのためには、障害者雇用を支援するための積極的な対策を図っていくことも重要であるが、加えて、障害者が就労する施設等の仕事を確保し、その経営基盤を強化する取組が求められている。
このような観点から、障害者就労施設等への仕事の発注に関し、民間企業をはじめ国や地方公共団体等において様々な配慮が行われてきた。
平成25年4月からは、障害者優先調達推進法が施行され、障害者就労施設等で就労する障害のある人や在宅で就業する障害のある人の自立の促進に資するため、国や地方公共団体などの公的機関が物品やサービスを調達する際、障害者就労施設等から優先的に購入することを進めるために、必要な措置を講じることとなった。当該法律に基づき、すべての省庁等で調達方針を策定し、障害者就労施設等が供給する物品等の調達に取り組んでいる。(法律の概要については、図表3-2-13)
一般の公共職業能力開発施設において職業訓練を受けることが困難な重度の障害のある人については、障害者職業能力開発校において、職業訓練を実施している。
平成29年4月1日現在、障害者職業能力開発校は国立が13校、都道府県立が6校で、全国に19校が設置されており、国立13校のうち2校は高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営し、他の11校は都道府県に運営を委託している。
障害者職業能力開発校は、入校者の障害の重度化・多様化が進んでいることを踏まえ、個々の訓練生の障害の態様を十分に考慮し、きめ細かい支援を行うとともに、職業訓練内容の充実を図ることにより、障害のある人の雇用の促進に資する職業訓練の実施に努めている。
なお、障害者職業能力開発校の就職率については、障害者基本計画(第3次)において、平成29年度に65%となるよう目標設定されている。
都道府県立の一般の公共職業能力開発施設において、精神障害や発達障害のある人を対象とした訓練コースの設置を促進し、受講機会の拡充を図っている。
雇用・就業を希望する障害のある人の増大に対応し、居住する地域で職業訓練が受講できるよう、地域の企業、社会福祉法人、特定非営利活動法人、民間教育訓練機関等を活用した障害者の態様に応じた多様な委託訓練(以下「障害者委託訓練」という。)を各都道府県において実施している。
障害者委託訓練は、主として座学により知識・技能の習得を図る「知識・技能習得訓練コース」、企業の現場を活用して実践的な職業能力の向上を図る「実践能力習得訓練コース」、通校が困難な人などを対象とした「e-ラーニングコース」、特別支援学校高等部等に在籍する生徒を対象とした「特別支援学校等早期訓練コース」及び在職障害者を対象とした「在職者訓練コース」の5種類があり、個々の障害特性や企業の人材ニーズに応じて多様な職業訓練を行うことが可能な制度である。なお、委託訓練修了者の就職率については、平成27年度は47.9%であり、障害者基本計画(第3次)において、平成29年度に55%となるよう目標設定した。
ハローワークに求職を申し込む精神障害者や発達障害者の増加が近年著しいことを踏まえ、精神障害者や発達障害者の障害特性に配慮した訓練コースの設置を推進することとしている。95このため、都道府県が運営する障害者職業能力開発校で精神障害者や発達障害者の障害特性に配慮した訓練コースの設置が円滑に行われるよう高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営する障害者職業能力開発校において、訓練計画の策定、指導技法、訓練コース設置後のフォローアップ支援を行っている。
また、前述の障害者の態様に応じた多様な委託訓練においても、精神障害者の増加や精神障害者向けの職業訓練の実施に係るノウハウの蓄積が乏しい現状を踏まえ、平成26年度から、①地域の就労支援機関に委託して精神障害者向け職業訓練の受託先の開拓や職業訓練の設定、実施等の支援を行うことや、②精神障害者向けの職業訓練に関するモデルカリキュラム、指導技法等の開発・普及を行うこととしている。
全国障害者技能競技大会は、障害のある人の職業能力の開発を促進し、技能労働者としての自信と誇りを持って社会に参加するとともに、広く障害のある人に対する社会の理解と認識を深め、障害のある人の雇用の促進を図ることを目的として、アビリンピックの愛称の下、昭和47年から実施している。
平成28年度には、山形県で第36回大会が開催(10月28日~30日)された。
国際アビリンピックは、昭和56年の「国際障害者年」を記念して、障害のある人の職業的自立意欲の増進と職業技能の向上を図るとともに、事業主及び社会一般の理解と認識を深め、更に国際親善を図ることを目的として、昭和56年10月に第1回大会が東京で開催され、以降おおむね4年に1度開催されている。
第9回国際アビリンピックがフランス共和国ボルドー市において平成28(2016)年3月に開催され、日本から、第35回全国大会での成績優秀者31名の選手が参加した。
全国の法務局・地方法務局及びその支局では、人権相談等により雇用の場における障害のある人に対する差別的取扱い等の人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には、事案に応じた適切な措置を講じるなどして、人権侵害による被害の救済及び予防を図っている。
障害者雇用優良事業所、優秀勤労障害者の表彰
厚生労働省では、毎年9月に障害のある人を積極的に雇用している事業所、障害のある人の雇用の促進と職業の安定に著しく貢献した団体又は個人、及び職業人として業績をあげている勤労障害者に対し、厚生労働大臣表彰を行っている。障害のある人の職業的自立の意欲を喚起するとともに、障害者雇用に関する国民の関心と理解を一層深めている。平成28年9月6日に「平成28年度全国障害者雇用優良事業所等表彰式」において24社の障害者雇用優良事業所と、1名の障害者の雇用の促進と職業の安定に貢献した個人、15名の優秀勤労障害者の表彰を行った。
ICT等を活用した障害者の在宅雇用の事例
平成28年6月2日に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」においても「テレワークによる在宅雇用の推進などICTを活用した雇用支援等」が盛り込まれたとおり、障害者が希望や能力、障害や疾病の特性等に応じて最大限活躍できる環境整備を図るための選択肢として、ICTを活用した柔軟な働き方であるテレワークによる障害者の在宅雇用が注目されている。
通勤が困難な障害者にとっても、パソコンやインターネット等を活用して在宅で勤務するという機会が増えてきており、このような就労形態は、障害者の能力に応じた働き方の可能性を広げ、就労機会の拡大をもたらすものである。
厚生労働省では、平成28年度にモデル事業として、テレワークを活用して障害者を在宅雇用した会社における課題やノウハウを収集し、新たに障害者の在宅雇用を導入するためのガイドブックを作成し、障害者のテレワークに興味がある会社に対する周知・広報を行った。平成29年度も引き続きテレワークを活用して障害者を在宅雇用するモデル事業を実施し、雇用した会社から障害者のテレワークを活用した在宅雇用のノウハウを収集し、周知・広報を行う予定である。
在宅勤務をしている障害者の業務内容としては、ICT等を活用した在宅勤務により、文書、データ等の入力に加え、情報収集、調査、Webサイトのデザイン・制作等、拡大してきており、こうした選択肢も含め、障害者の働く場を広げていく必要がある。
通勤が難しいため働くことができなかった身体障害者が、ICTを活用し、IT企業の顧客向け操作サポートヘルプデスク業務を担っている。採用面接はWeb会議ツールを使い遠隔で実施し、1日8時間、体調の変動や通院も考慮し週3日の完全在宅勤務で働いている。在宅勤務の導入にあたっては、テレワークの手引きを作成し、業務がスムーズに進むよう、在宅勤務の障害者と同じ部署の社員、人事担当者でWeb会議ツールを使用しての業務実施について事前検証を行った。オフィスと常時Web会議ツールでつながっていることで、音もリアルタイムに聞こえ、オフィスにいるような感覚で仕事をすることができる。
また、Web会議ツールを使用することで業務だけではなく積極的なコミュニケーションをとることができるため、自宅でも孤独を感じることなく働くことができている。
ラッシュ時の通勤に危険が伴うことやリハビリのために在宅勤務を希望していた身体障害者が、金融機関でプロモーション事業を行っている。パソコンは片手で操作可能なため、週に3日は在宅でインターネットを活用してPR業務を行い、週に1度出社しコミュニケーションをとっている。在宅勤務は通勤の負荷がなく、集中して仕事ができ、業務遂行の効率も上がっている。
在宅勤務の導入にあたっては、テレワークの勤務規程を整備し、ノートパソコン、モバイルWi-Fi、リモートデスクトップ、携帯電話を用意し、テレワークの特徴を活かしやすい新たな配属先を検討した。また、配属部署の社員に対して、個別の障害特性を理解する研修を実施した。
働き方改革の推進
「ニッポン一億総活躍プラン」において、日本経済再生に向けた最大のチャレンジと位置づけられた「働き方改革」に関し、政府は平成28年9月2日に働き方改革実現推進室を設置した。
平成28年9月27日に第1回働き方改革実現会議を開催。安倍総理、関係大臣に加えて、労使双方の代表等の有識者議員による議論を実施。「同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善」をはじめ、合計9つのテーマに関して議論が行われ、平成29年3月28日に最終回である第10回を開催し、働き方改革実行計画をとりまとめた。
【働き方改革実行計画(首相官邸ホームページ):
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/ichiokusoukatsuyaku/hatarakitaka.html#headline】
働き方改革実行計画は、「日本経済再生に向けて、最大のチャレンジは働き方改革。働く人の視点に立って、労働制度の抜本改革を行い、企業文化や風土を変えようとするもの。働く方一人ひとりが、より良い将来の展望を持ち得るようにする。」「働き方改革こそが、労働生産性を改善するための最良の手段。生産性向上の成果を働く人に分配することで、賃金の上昇、需要の拡大を通じた成長を図る「成長と分配の好循環」が構築される。社会問題であるとともに経済問題。」「雇用情勢が好転している今こそ、政労使が3本の矢となって一体となって取り組んでいくことが必要。これにより、人々が人生を豊かに生きていく、中間層が厚みを増し、消費を押し上げ、より多くの方が心豊かな家庭を持てるようになる。」という基本的考え方の下、とりまとめられている(障害者等に関する施策については、第2回働き方改革実現会議(10月24日)での議論が踏まえられている)。
加藤内閣府特命担当大臣は、本計画の取りまとめに先立ち、平成29年3月23日(木)に東京大学先端科学技術研究センターを訪問し、同センターが研究を進める、異才発掘プロジェクト(ROCKET: Room of Children with Kokorozashi and Extra-ordinary Talents 99(志ある特異な(ユニークな)才能を有する子供たちが集まる部屋(空間))、障害のある方の特性に応じた進学や就労を支援するための、「DO-IT: Diversity, Opportunities, Internetworking and Technology」というIT等を活用した教育プログラム、「IDEA: Inclusive & Diverse Employment with Accommodation」モデルという短時間型の雇用モデル等、多様な能力を持った障害者を包摂する社会システムの構築を目指す研究について、研究者との意見交換を行うとともに、プログラムに参加する子供たちや障害のある方の参画状況を視察した。
視察後に取りまとめられた働き方改革実行計画のうち、障害者関連施策については、「8.子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労(2)障害者等の希望や能力を活かした就労支援の推進」として位置付けられており、今後の対応の方向性について「障害者等が希望や能力、適性を十分に活かし、障害の特性等に応じて最大限活躍できることが普通になる社会を目指す。このため、長期的寄り添い型支援の重点化等により、障害者雇用ゼロ企業を減らしていくとともに、福祉就労の場を障害者がやりがいをより感じられる環境に変えていく。また、特別な支援を必要とする子供について、初等中等・高等教育機関と福祉・保健・医療・労働等の関係行政機関が連携して、就学前から卒業後にわたる切れ目ない支援体制を整備する。」こととされた。
本実行計画では、合計19項目からなる対応策について、10年先の未来を見据えたロードマップが策定されており、このロードマップに基づき、今後、政府として具体的な施策を推進していくこととしている。
第35回全国障害者技能競技大会
全国障害者技能競技大会(アビリンピック)は、障害者が技能労働者として社会に参加する自信と誇りを持つことができるよう、その職業能力の向上を図るとともに、広く障害者に対する社会の理解と認識を深め、その雇用の促進を図ることを目的として開催されている。
平成28年度は、10月28日から10月30日までの3日間にわたり、山形県において第36回全国障害者技能競技大会が開催された。
大会には、技能競技22種目に全国から370人の選手が参加し、日頃培った技能を競い合った。最終日の30日には、山形県総合運動公園で閉会式が行われ、金賞や厚生労働大臣賞などの入賞者が表彰された。
また、今大会は、4年に1度開催される国際アビリンピックの選考会を兼ねている。今大会と第37回大会(平成29年度に栃木県で開催予定)の金メダリストは、平成31年度に開催が予定されている第10回国際アビリンピック(開催地は調整中)日本代表の候補選手として、第38回大会(平成30年度に沖縄県で開催予定)の競技にも参加し、成績が優秀だった場合は、第10回国際アビリンピックの日本代表選手に選ばれる。