平成28年度を中心とした障害者施策の取組

榎本雛さんの作品
平成28年度 障害者週間のポスター最優秀賞(内閣総理大臣賞)受賞
さいたま市・さいたま市立大成おおなり中学校1年 榎本えのもと ひなさんの作品
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第1編 共生社会の実現に向けて

第1節 共生社会の実現に向けた取組

1.共生社会の実現の重要性

平成28年7月26日、神奈川県相模原市の障害者支援施設「津久井やまゆり園」(以下「施設」という。)に施設の元職員である男が侵入し、多数の入所者等を刃物で刺し、19人が死亡、26人が負傷するという事件が発生した。

これを受け、様々な観点から必要な対策を早急に検討するため、政府は、直ちに「障害者施設における殺傷事件への対応に関する関係閣僚会議」(以下「閣僚会議」という。)を設置した。また、それを受けて同年8月に設置された「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」(以下「検討チーム」という。)では、事実関係の徹底した検証と、それを踏まえた再発防止策について議論が行われ、同年12月8日に報告書(以下「検討チーム報告書」という。)が取りまとめられたところである(事件の検証及び再発防止については、第2節に記載)。

今回の事件は、障害者への一方的かつ身勝手な偏見や差別意識が背景となって、引き起こされたものと考えられる。こうした偏見や差別意識を社会から払拭し、一人一人の命の重さは障害のあるなしによって少しも変わることはない、という当たり前の価値観を社会全体で共有することが何よりも重要である(「検討チーム報告書」より)。また、今回の事件発生を受け、共生社会の実現とそのための国民の理解促進の重要性が改めて認識されたものと考えられる。

障害者基本法(昭和45年法律第84号)第1条では、全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのつとり、全ての国民が、障害の有無によつて分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会(以下「共生社会」という。)を実現するため、障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする旨定めている。

それとともに、同法第8条では、国民の責務として、国民は、共生社会の実現に寄与するよう努めなければならない旨定めている。また、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)(以下「障害者差別解消法」という。)第4条では、同じく国民の責務として、国民は、障害を理由とする差別の解消の推進に寄与するよう努めなければならない旨定めている。

国民がこのような責務を果たしていくためにも、政府としては、共生社会の実現を目指す強い姿勢を明確に示しつつ、学校教育の段階からあらゆる場面において共生社会に係る教育を進めること等も含め、障害及び障害者に対する更なる国民の理解が促進されるよう、あらゆる機会を活用して、共生社会の実現に向けた様々な啓発等の取組を粘り強く着実に展開していくことが求められている。

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2.共生社会実現のための啓発の取組

政府では、全ての国民が障害の有無にかかわらず、互いに人格と個性を尊重し合い、理解し合いながら共に生きていく共生社会の実現に向け、障害者基本法及び障害者差別解消法の理念に沿って、障害及び障害者に対する国民の理解を促進するための広報啓発活動に取り組んでいるところである。

▶内閣府における取組

今回の事件も踏まえ、内閣府では平成28年度に共生社会の実現に向けたいくつかの具体的な取組を行った。

加藤内閣府特命担当大臣の施設訪問・献花の様子(平成28年8月29日)
加藤内閣府特命担当大臣の施設訪問・献花の様子(平成28年8月29日)
(1)障害を理由とする差別の解消に向けた地域フォーラムの開催

内閣府では、平成28年4月から施行された障害者差別解消法に対する理解及び各地域における取組の促進等を図るため、地方公共団体と連携して「障害を理由とする差別の解消に向けた地域フォーラム(以下「地域フォーラム」という。)」を開催している(平成28年度は全国15箇所で開催。詳細は「第3編第1章第5節」及び内閣府ホームページ(http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai/forum/kaisai_h28.html)参照)。

今回の事件後、神奈川県横浜市で開催された地域フォーラム(平成28年9月2日(金))では、加藤勝信内閣府特命担当大臣が出席し、一般の参加者を前に、命の尊さや共生社会実現の重要性について発信を行った。

障害を理由とする差別の解消に向けた地域フォーラム(神奈川)/加藤内閣府特命担当大臣出席

*  障害者の存在を否定するような発言は、断じて許すことはできない。

*  すべての命は等しく尊いものであり、かけがえのない存在。

*  内閣府として、すべての国民が障害の有無にかかわらず、互いに人格と個性を尊重し合い、支え合いながら未来を築いていく「共生社会」、「一億総活躍社会」の実現に向けて、障害者に対する関心と理解を深めるため、広報啓発など具体的な取組を行っていく。

※加藤大臣挨拶全文:内閣府ホームページ
http://www8.cao.go.jp/shougai/sagamihara_jiken/pdf/minister_msg.pdf
加藤内閣府特命担当大臣の地域フォーラムでの挨拶の様子(平成28年9月2日)
加藤内閣府特命担当大臣の地域フォーラムでの挨拶の様子(平成28年9月2日)
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(2)政府広報を活用した意識啓発

内閣府では政府広報を活用し、障害及び障害者に対する理解促進と共生社会の実現に向けた意識啓発を行った。

(政府広報:新聞広告の掲載)
政府広報内閣府 一人ひとり、かけがえのない命
【新聞突出し広告】
※平成28年9月13日~18日/70紙に掲載
(政府広報:動画番組の配信)
政府広報オンライン
【政府広報番組】
※政府広報ホームページ(政府広報オンライン:http://www.gov-online.go.jp/)
霞が関からお知らせします 2016
(3)障害者週間におけるシンポジウムの開催

障害者基本法では、12月3日から9日までの期間を「障害者週間」と規定しており、この期間を通じて、国、地方公共団体、民間団体が連携・協力し、障害及び障害者に対する関心と理解を深め、障害者が社会、経済、文化その他あらゆる分野への参加の促進が図られるよう、様々な取組が行われている(詳細は「第3編第1章第1節」及び内閣府ホームページ(http://www8.cao.go.jp/shougai/kou-kei/index-kk.html)参照)。

内閣府では、「障害者週間」事業の一環として、真の共生社会とは何かを改めて問うシンポジウムを開催した。

【シンポジウム概要】
「障害者週間」記念シンポジウム 【テーマ】真の共生社会とは何か、あらためて問う-全ての命と尊厳の尊重を
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神奈川県相模原市の障害者支援施設で殺傷事件が発生した直後の7月29日(金)に開催された内閣府の審議会「障害者政策委員会」(http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/seisaku_iinkai/index.html)では、冒頭で、石川准委員長が、今回の事件について触れた上で、亡くなられた方々への御冥福と御遺族の方々へのお悔やみ、負傷者とその関係者等へのお見舞いが伝えられ、全委員により黙祷がささげられた。

黙祷後、本委員会の構成員である全国手をつなぐ育成会連合会の田中正博委員より、今回の事件の発生直後に、障害のある人や御家族の不安を少しでも軽減させ落ち着いて暮らしてもらえるよう、団体が発出した声明文(※声明文は「障害のある方」に向けたものを含む2種類)が紹介された(声明文は机上配布)。 【声明文は全国手をつなぐ育成会連合会のホームページでも閲覧可能:http://zen-iku.jp/】

■声明文
神奈川県立津久井やまゆり園での事件について(声明文)

平成 28年7月 26日未明、障害者支援施設「神奈川県立津久井やまゆり園」(相模原市緑区、指定管理者・社会福祉法人かながわ共同会)において、施設入所支援を利用する知的障害のある方々が襲われ、19 人が命を奪われ、20 人が負傷するという未曾有の事件が発生しました。被害に遭われ亡くなられた方々に、衷心よりご冥福をお祈りするとともに、ご家族の皆様にはお悔やみ申し上げます。また、怪我をされ治療に当たられている方々の一日も早い回復をお祈り申し上げます。

抵抗できない障害のある人に次々と襲いかかり死傷させる残忍な行為に私たちは驚愕し、被害にあわれた方々やそのご家族の無念を思い、悲しみと悔しさにただただ心を震わせるばかりです。職員体制の薄い時間帯を突き、抵抗できない知的障害のある人を狙った計画的かつ凶悪残忍な犯行であり、到底許すことはできません。

事件は、当会会員・関係者のみならず、多くの障害のある方やご家族、福祉関係者を不安に陥れ、深く大きな傷を負わせました。このような事件が二度と起きないよう、事件の背景を徹底的に究明することが必要です。

今後、事件対応に関わる皆様には、まずは被害者及び被害者の遺族・家族、同施設に入所されている方々のケアを十分に行ってくださるようお願いいたします。その上で、事件の背景・原因・内容を徹底して調査し、早期に対応することと中長期に対応することを分けて迅速に行いつつ、深く議論をして今後の教訓にしてください。加えて、本事件を風化させないように今後の対応や議論の経過を情報として開示してください。

また、事件で傷ついた被害者やご遺族が少しでも穏やかに過ごせるよう、特に報道関係機関には特段の配慮をお願いします。

事件の容疑者は、障害のある人の命や尊厳を否定するような供述をしていると伝えられています。しかし、私たちの子どもは、どのような障害があっても一人ひとりの命を大切に、懸命に生きています。そして私たち家族は、その一つひとつの歩みを支え、見守っています。事件で無残にも奪われた一つひとつの命は、そうしたかけがえない存在でした。犯行に及んだ者は、自らの行為に正面から向きあい、犯した罪の重大さを認識しなければなりません。

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また、国民の皆様には、今回の事件を機に、障害のある人一人ひとりの命の重さに思いを馳せてほしいのです。そして、障害の有る無しで特別視されることなく、お互いに人格と個性を尊重しながら共生する社会づくりに向けて共に歩んでいただきますよう心よりお願い申し上げます。

平成28年7月26日
全国手をつなぐ育成会連合会
会長 久保 厚子
■声明文
津久井つくいやまゆりえんけんについて(障害しょうがいのあるみなさんへ)

7月26日に、神奈川県かながわけんにある「津久井つくいやまゆりえん」という施設しせつで、 障害しょうがいのあるひとたち19にんころされる事件じけんきました。容疑者ようぎしゃとして逮捕たいほされたのは、施設しせつはたらいていた男性だんせいでした。くなった方々かたがたのご冥福めいふくをおいのりするとともに、そのご家族かぞくには おやみもうしあげます。また、けがをされた方々かたがたが いちにちでもはやく 回復かいふくされることをねがっています。

容疑者ようぎしゃは、自分じぶんたすけをべないひとたちを 次々つぎつぎにおそい、きずつけ、いのちをうばいました。とても残酷ざんこくで、けっして ゆるせません。くなったひとたちのことをおもうと、とてもかなしく、くやしいおもいです。

容疑者ようぎしゃは「障害者しょうがいしゃはいなくなればいい」とはなしていたそうです。みなさんのなかには、そのことで 不安ふあんかんじるひともたくさんいるとおもいます。そんなときは、身近みぢかひとに 不安ふあん気持きもちを はなしましょう。みなさんの家族かぞく友達ともだち仕事しごと仲間なかま支援者しえんしゃは、きっと はないてくれます。そして、いつもとおなじように 毎日まいにちごしましょう。不安ふあんだからといって、生活せいかつのしかたを える必要ひつようは ありません。

障害しょうがいのあるひともないひとも、わたしたちは一人ひとりひとりが 大切たいせつ存在そんざいです。

障害しょうがいがあるからといってだれかにきずつけられたりすることは、あってはなりません。もしだれかが「障害者しょうがいしゃはいなくなればいい」なんてっても、わたしたち家族かぞく全力ぜんりょくでみなさんのことを まもります。ですから、安心あんしんして、堂々どうどうと きてください。

平成へいせい28ねんがつ27にち
全国ぜんこくをつなぐ育成会いくせいかい連合会れんごうかい
会長かいちょう  久保くぼ 厚子あつこ
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第2節 相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止

事件後、事実関係の徹底した検証と、それを踏まえた再発防止策を関係省庁一丸となって検討するため、政府は、厚生労働省を中心に、9名の構成員に加え、内閣府、警察庁、法務省、文部科学省のほか、神奈川県、相模原市といった関係自治体も参加した検討チームを平成28年8月に設置した。検討チームでは、その時点で把握された事実関係に基づく検証を行うとともに、関係団体等からの意見聴取を実施し、同様の事件が二度と発生しないよう、精神保健医療福祉等に係る現行制度に加え、いかなる新たな政策や制度が必要なのか、更には、いかなる社会を新たに実現していくことが必要なのかという観点から、計8回の会議を開催し、事実関係に基づく検証結果を中間とりまとめとして同年9月14日に、事件に関する再発防止策を報告書として12月8日に、それぞれ公表した。この翌日に開催された閣僚会議では、当該報告書の内容について報告されるとともに、再発防止策を実効性あるものとするため、関係府省庁で連携して具体的な取組を進めることについて確認された。

閣僚会議の様子(平成28年12月8日)
閣僚会議の様子(平成28年12月8日)
出典:首相官邸ホームページ(http://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/actions/201612/09syogaisya.html)

また、ここで明らかとなった課題等に対応するため、措置入院者が退院後に医療等の継続的な支援を確実に受けられるよう所要の措置を講ずること等を内容とする「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案」が平成29年2月28日に閣議決定され、第193回国会に提出された(法律案の概要については、図表1-1)。

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■ 図表1-1
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案の概要
改正の趣旨
改正の概要
改正の趣旨を踏まえ、以下の措置を講ずる。
1.国及び地方公共団体が配慮すべき事項等の明確化
国及び地方公共団体の義務として、精神障害者に対する医療は病状の改善など精神的健康の保持増進を目的とすることを認識するとともに、精神障害者の人権を尊重し、地域移行の促進に十分配慮すべきことを明記する。
2.措置入院者が退院後に医療等の継続的な支援を確実に受けられる仕組みの整備
措置入院者が退院後に社会復帰の促進及びその自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な医療その他の援助を適切かつ円滑に受けることができるよう、以下のような退院後支援の仕組みを整備する。
  1. (1)措置を行った都道府県・政令市が、患者の措置入院中から、通院先の医療機関等と協議の上、退院後支援計画を作成することとする。(患者の帰住先の保健所設置自治体が別にある場合は、当該自治体と共同して作成)
  2. (2)退院後は、患者の帰住先の保健所設置自治体が、退院後支援計画に基づき相談指導を行うこととする。
  3. (3)退院後支援計画の対象者が計画の期間中に他の自治体に居住地を移転した場合、移転元の自治体から移転先の自治体に対して、退院後支援計画の内容等を通知することとする。
  4. (4)措置入院先病院は、患者等からの退院後の生活環境の相談に応じる「退院後生活環境相談員」を選任することとする。
3.精神障害者支援地域協議会の設置
保健所設置自治体は、措置入院者が退院後に継続的な医療等の支援を確実に受けられるよう、精神障害者支援地域協議会を設置し、(1)精神科医療の役割も含め、精神障害者の支援体制に関して関係行政機関等と協議するとともに、(2)退院後支援計画の作成や実施に係る連絡調整を行う。
4.精神保健指定医制度の見直し
指定医の指定の不正取得の再発防止を図り、その資質を担保するため、指定医の指定・更新要件の見直しや、申請者が精神科医療の実務を行うに当たり指導する指導医の役割の明確化等を行う。
5.医療保護入院の入院手続等の見直し
患者の家族等がいない場合等に加え、家族等が同意・不同意の意思表示を行わない場合にも、市町村長の同意により医療保護入院を行うことを可能とする等、適切な医療の提供を確保する。
施行期日
公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日(1.については公布の日)(予定)
1.国及び地方公共団体が配慮すべき事項等の明確化
精神障害者に対する医療の役割を明確化する必要
右矢印
国及び地方公共団体の義務として、精神障害者に対する医療は病状の改善など精神的健康の保持増進を目的とすることを認識するとともに、精神障害者の人権を尊重し、地域移行の促進に十分配慮すべきことを明記する。
2.措置入院者等に対する退院後の医療等の支援を継続的に行う仕組みの整備
2.措置入院者等に対する退院後の医療等の支援を継続的に行う仕組みの整備
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3.精神障害者支援地域協議会の設置
精神障害者支援地域協議会の役割と構成
4.精神保健指定医制度の見直し
精神保健指定医の指定の不正取得の再発防止を図り、その資質を担保するため、以下の改正を行う。
  1. ①指定の不正取得の防止 【通知改正】
    指定医の指定に係る診断・治療に関する経験を、ケースレポートのみではなく、口頭試問により実践的に確認。
  2. ②指定医の資質の確保
    指定更新(5年)に当たり、研修受講だけでなく、措置診察や精神医療審査会への参加などの指定医業務の実績を要件とするとともに、指定・更新時の研修内容について、グループワークを用いた参加型研修を充実。
  3. ③指導医の位置づけの明確化
    指導医を一定の要件を満たす指定医として位置づけ、指定申請時の実務経験は、指導医の指導の下に行われるべきことを法律上明確化。
  4. ④処分対象者等への対応
    • 指定医の職務停止や取消処分を受けた者に対する再教育研修の仕組みを導入。
    • 行政処分に当たって行う聴聞通知後に指定医を辞退する者に対して、指定医の取消処分を受けた者と同様に5年間は再指定しないことができる旨を明確化。
5.医療保護入院の入院手続等の見直し
平成25年改正精神保健福祉法の施行後3年後見直しの規定等を踏まえ、以下の改正を行う。
  1. ①医療保護入院に係る手続の見直し
    医療保護入院の手続において、患者本人との関係悪化等を理由に家族等が同意、不同意の意思表示を行わない場合に、患者に対して適切な入院医療を提供する観点から、市町村長同意による医療保護入院を行うことを可能とする。
  2. ②措置入院者・医療保護入院者に対する入院措置を採る理由の告知
    都道府県知事又は政令市長が措置入院を行った場合に、措置入院者に対して行う告知の内容に、入院措置を採る理由を追加する。病院管理者が医療保護入院を行った場合も医療保護入院者に対して同様の告知を行うこととする。 ※現行では、入院措置を採る旨、退院請求に関すること、入院中の行動制限に関することを告知。
  3. ③措置入院が行われた場合の精神医療審査会による審査の実施
    都道府県知事又は政令市長は、措置入院を行った場合に、措置入院の必要性について精神医療審査会(指定医、精神障害者の保健福祉に関する学識経験者、法律家による三者構成)の審査を求めなければならないこととする。
資料:厚生労働省
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「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」報告書の要旨(事件の検証を通じて明らかになった課題と再発防止策の方向性)
※記載は平成28年12月時点のもの
(1)共生社会の推進に向けた取組
ア 事件の検証を通じて明らかになった課題
イ 再発防止策の方向性
(2)退院後の医療等の継続支援の実施のために必要な対応
ア 事件の検証を通じて明らかになった課題
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イ 再発防止策の方向性 
(3)措置入院中の診療内容の充実
ア 事件の検証を通じて明らかになった課題
イ 再発防止策の方向性
①措置入院中の診療内容等についてのガイドラインの作成等
②専門知識を有する医師の育成
(4)関係機関等の協力の推進
ア 事件の検証を通じて明らかになった課題
イ 再発防止策の方向性
①措置診察等の判断に係るチェックポイントの作成等
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②都道府県等における協議の場の設置等
(5)社会福祉施設等における対応
ア 事件の検証を通じて明らかになった課題
イ 再発防止策の方向性
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■ 図表1-2
「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」報告書(概要)
平成28年12月8日
1 共生社会の推進に向けた取組
検証を通じて明らかになった課題
  • 今回の事件は障害者への一方的かつ身勝手な偏見や差別意識が背景
  • 偏見や差別意識を払拭し、互いに人格と個性を尊重しながら共生する社会」の実現に向けた取組を進めることが不可欠
右矢印
再発防止策の方向性
  • 「障害者週間」、政府広報などあらゆる機会を活用し、政府の姿勢や障害者差別解消法の理念を周知・啓発
  • 学校教育をはじめあらゆる場での「心のバリアフリー」の取組の充実
  • 障害者の地域移行や地域生活の支援
2 退院後の医療等の継続支援の実施のために必要な対応
検証を通じて明らかになった課題
  • 容疑者は、退院後に、医療機関や地方自治体から医療等の支援を十分受けられず
  • 入院中から措置解除後まで、患者が医療等の支援を継続的に受け、地域で孤立することなく安心して生活できる仕組みの整備が必要
右矢印
再発防止策の方向性
  • 措置入院中から、都道府県知事等が退院後支援計画を作成(退院後支援の関係者による調整会議を開催)
  • 措置入院先病院が退院後支援ニーズアセスメントを実施その結果を都道府県知事等に確実に伝達
  • 退院後は、退院後支援計画に沿って保健所設置自治体が退院後支援全体を調整(他の自治体に転出後も確実に引き継ぎ)
  • 保健所等の人員体制等の充実
3 措置入院中の診療内容の充実
検証を通じて明らかになった課題
  • 措置入院中の診療内容における留意事項が示されておらず、診断や治療方針の検討が不十分
  • 医師の養成段階から生涯にわたる医学教育において、退院後支援や薬物使用に関連する精神障害に関する内容が不十分
右矢印
再発防止策の方向性
  • 国が措置入院中の診療内容のガイドラインを作成診療報酬等の対応を検討
  • 卒前・卒後教育の充実による専門知識を有する医師の育成
4 関係機関等の協力の推進
検証を通じて明らかになった課題
  • 警察官通報が行われたもののうち、措置入院等につながった割合は地方自治体ごとにばらつき
  • 措置入院の過程で認知された具体的な犯罪情報について、関係者間で情報共有する手続き等が協議されていない
  • グレーゾーン事例(※) があることについて、関係者が共通認識を持つ必要
    ※ 他害のおそれが精神障害によるものか判断が難しい事例
右矢印
再発防止策の方向性
  • 措置診察等の判断に係るチェックポイントの作成
  • 地域の関係者(自治体、警察、精神科医療関係者等)の協議の場(※) を設置
    ※ 措置診察に至るまでの地域での対応方針、具体的な犯罪情報を把握した場合の情報提供のあり方等
  • グレーゾーン事例のうち、医療・福祉による支援では対応が難しいものについての他害防止の措置は、人権保護等の観点から極めて慎重であるべき
5 社会福祉施設等における対応
検証を通じて明らかになった課題
  • 地域に開かれた施設という基本的な方針と安全確保の両立を目指す必要
  • 容疑者は施設の元職員。施設の職員が、心身ともに疲弊して孤立することなく、やりがいや誇りを持って働ける職場環境づくりが重要
右矢印
再発防止策の方向性
  • 9月に発出された防犯に係る点検項目通知を踏まえた各施設の取組を支援
  • 権利擁護の視点を含めた職員研修の更なる推進処遇改善や心の健康管理面の強化等による職場環境の改善
■ 図表1-3
「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」
1 構成員
岩崎 俊雄 社会福祉法人全国社会福祉協議会 全国社会福祉法人経営者協議会副会長
久保野 恵美子 東北大学大学院法学研究科教授
田中 正博 全国手をつなぐ育成会連合会統括
中原 由美 全国保健所長会 福岡県糸島保健福祉事務所長
平田 豊明 千葉県精神科医療センター病院長
松田 ひろし 特定医療法人立川メディカルセンター柏崎厚生病院院長
松本 俊彦 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長
村上 優 独立行政法人国立病院機構榊原病院院長
◎山本 輝之 成城大学法学部教授
※この他、内閣府、警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省、神奈川県、相模原市が関係省庁等として参画 (◎:座長)
2 検討の経緯
8月10日 検証・検討チームの立ち上げ
9月14日 「中間とりまとめ~事件の検証を中心として~」公表
10月24日 兵庫県精神・保健福祉センターを視察
10月31日 第7回検証・検討チーム(関係団体からのヒアリング)
  • 社会福祉法人日本身体障害者団体連合会
  • 全国手をつなぐ育成会連合会
  • 全国「精神病」者集団
  • 公益社団法人全国精神保健福祉会連合会
  • 公益社団法人日本精神保健福祉士協会
  • 全国身体障害者施設協議会
  • 公益社団法人日本知的障害者福祉協会
  • 公益社団法人日本精神科病院協会
  • 日本多機能型精神診療所研究会
11月14日 第8回検証・検討チーム
12月 8日 報告書公表
→厚生労働省の有識者会議(これからの精神医療保健福祉のあり方に関する検討会)において詳細な内容を検討
資料:厚生労働省
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