第1節 障害者差別解消法について

1.経緯

平成18年、障害者の人権や基本的自由の共有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進するため、障害者の権利の実現のための措置等を規定した障害者に関する初めての国際条約である「障害者の権利に関する条約」(以下「障害者権利条約」という。)が採択され、平成20年に発効した。

障害者権利条約は、合理的配慮の否定を含めた障害に基づくあらゆる形態の差別の禁止について、適切な措置を求めており、我が国においては、平成23年の「障害者基本法」の改正の際、同法第4条に基本原則として、障害者権利条約の差別の禁止に係る規定の趣旨を取り込む形で、「差別の禁止」が規定された。

この規定を具体化するものが「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(以下「障害者差別解消法」という。)であり、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的として、平成25年6月に成立し、平成28年4月から施行された。(法律の概要は図表1-1)

■ 図表1-1 障害者差別解消法の概要
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法〈平成25年法律第65号〉)の概要
障害者基本法第4条
基本原則差別の禁止
第1項:障害を理由とする差別等の権利侵害行為の禁止
何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。
第2項:社会的障壁の除去を怠ることによる権利侵害の防止
社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによって前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない
第3項:国による啓発・知識の普及を図るための取組
国は、第一項の規定に違反する行為の防止に関する啓発及び知識の普及を図るため、当該行為の防止を図るために必要となる情報の収集、整理及び提供を行うものとする。
具体化
Ⅰ.差別を解消するための措置
不当な差別的取り扱いの禁止
法的義務
合理的配慮の提供
法的義務/努力義務
具体的な対応
  1. (1)政府全体の方針として、差別の解消の推進に関する基本方針を策定(閣議決定)
  2. (2)国・地方公共団体等→当該機関における取組に関する対応要領を策定(※地方の策定は努力義務)
    事業者→主務大臣が事業分野別の対応指針(ガイドライン)を策定
実効性の確保 ●主務大臣による民間事業者に対する報告徴収、助言、指導、勧告
Ⅱ.差別を解消するための支援措置
相談・紛争解決 ●相談・紛争解決の体制整備→既存の相談・紛争解決の制度の活用、充実
地域における連携 ●障害者差別解消支援地域協議会における関係機関等の連携
啓発活動 ●普及・啓発活動の実施
情報収集等 ●国内外における差別及び差別の解消に向けた取組に関わる情報の収集、整理及び提供
施行日:平成28年4月1日(施行後3年を目途に必要な見直し検討)
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