第一章だいいっしょう  世界せかい

このしょう登場とうじょうする未来みらい姿すがた

あらゆる翻訳ほんやく

みみ不自由ふじゆうでも、外国語がいこくご苦手にがてでも、自分じぶんえらんだメニューで会議かいぎ内容ないよう翻訳ほんやくしてざいつたえるシステム。

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ぼしマシン

各地かくち素材そざい使つかいつつ、個人こじん健康けんこう状態じょうたい加味かみしながら、家庭かてい有名ゆうめいレストランのあじAIエーアイ正確せいかくかつ高速こうそく再現さいげん

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どこでも手続てつづき

24時間じかん受付うけつけのネット窓口まどぐちたりまえとなり、画面がめんをさわるとあらわれる忠実ちゅうじつ有能ゆうのうしつロボが、役所やくしょイメージを刷新さっしん

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らくらくマネー

支払しはらい完全かんぜんキャッシュレス。こうばいれき作成さくせい信用しんようデータの形成けいせい自動化じどうかでき、家計かけい管理かんり借入かりいれや各種かくしゅ申告しんこく簡単かんたんに。

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  面接めんせつ以上いじょうとなります。結果けっかっておつたえします。本日ほんじつはありがとうございました」

  Terimaテリマkasihカシー  banyakバニャク(ありがとうございました)」

  かるいきをつき、どうせきしていた上司じょうしにもおつかさまでしたとかるしゃくをしたあとふとオフィスをながめる。

  入社にゅうしゃしたときからは随分ずいぶんわったもんだ)

  ケンスケはそうひとりこころなかでつぶやいた。労働力ろうどうりょく人口じんこう減少げんしょう解消かいしょうさくとして、おおくの企業きぎょう外国人がいこくじん労働者ろうどうしゃ積極的せっきょくてき雇用こようった。ケンスケの会社かいしゃ国際こくさいしょくあふれる光景こうけいひろがっている。外国人がいこくじん労働者ろうどうしゃれを加速化かそくかさせたのが、自動じどう翻訳ほんやく技術ぎじゅつ飛躍的ひやくてき向上こうじょうだ。義務ぎむ教育きょういく以降いこう語学ごがく真剣しんけんんでこなかったケンスケであったが、自動じどう翻訳ほんやく技術ぎじゅつによってなに不自由ふじゆうなくコミュニケーションをとることが出来できている。

  ひがしアジアに、東南とうなんアジアに、中東ちゅうとうに、アフリカと、あとそれから日本人にほんじん

  確認かくにんするように今日きょう面接めんせつしゃゆびかぞえた。面接めんせつ目的もくてきは、東南とうなんアジアでの通信つうしんインフラの整備せいびプロジェクトに必要ひつよう人材じんざいを、プロジェクトリーダーとして採用さいようすることであった。面接めんせつは、日本語にほんごはなすケンスケ、英語えいごはな上司じょうしそしてそれぞれの母国語ぼこくごはな面接めんせつけにていたひとたちなどの様々さまざま言語げんごうが、翻訳ほんやくデバイスをとおすことで、タイムラグはほぼしに、あらゆる言語げんご翻訳ほんやくされる。ほかにも、れきしょなどの文書ぶんしょをカメラがいたアイウェアしにれば、あらゆる言語げんご翻訳ほんやくされてレンズに表示ひょうじされる。さらに、言語げんご翻訳ほんやくにとどまらず、バリアフリーを見据みすえた機能きのうとうさいしている。聴覚ちょうかく障害しょうがいがあるひとには、相手あいてはなした内容ないようを、タブレットじょう表示ひょうじし、視覚しかく障害しょうがいがあるひとには、音声おんせいこえるようにすることも出来できる。まさに「あらゆる翻訳ほんやく」である。

  ケンスケのつとめる会社かいしゃでもからだ不自由ふじゆうひとかずおおはたらいているが、会社かいしゃ経営けいえいじんVRブイアール障害しょうがいもつ人々ひとびと世界せかい体験たいけんすることでオフィスない問題点もんだいてんあらしバリアフリーを徹底てっていしてすすめてきた。

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その結果けっか言語げんごだけでなく、あらゆる場面ばめん障害しょうがいもつ人々ひとびとにフレンドリーな企業きぎょうとして世界的せかいてき有名ゆうめいになり、いまでは世界せかい各国かっこくから入社にゅうしゃ希望きぼうのエントリーがとどくようになった。

  「よしっ。じゃああとはAIエーアイさまにおまかせしてっと」

  面接めんせつ所感しょかんを、業務ぎょうむようタブレットに保存ほぞんし、AIエーアイによる分析ぶんせきまえて採用さいよう可否かひ判断はんだんしていくことになる。ケンスケが就職しゅうしょく活動かつどうをしたときは、確認かくにん確認かくにんかさねるかのように採用さいようプロセスがとられていたが、いま面接めんせつようAIエーアイ登場とうじょうし、評価ひょうか部分ぶぶんになうようになることで、そうした確認かくにん作業さぎょうはあまり意味いみをなさなくなり、随分ずいぶん人事じんじ部門ぶもんはたらかたわった。面接めんせつよう専門せんもんAIエーアイ何十万なんじゅうまん何百万人なんびゃくまんにんもの人間にんげん面接めんせつかさねることで精度せいどたかめている。

  「おつかれさん。さそうな人材じんざいはいたか?」

  せきもどると、となりせきには商品しょうひん開発かいはつはたら同期どうきのアンディが陣取じんどっていた。ちなみにアンディはおさなころから日本にほんアニメにかれ、日本語にほんご堪能たんのうであるため、ここでは「あらゆる翻訳ほんやく」の活躍かつやく不要ふようだ。

  「おう。現地げんち状況じょうきょうをよく理解りかいしていたよ。この人材じんざいたちは一体いったいどこで、ってうえ満足まんぞくしているかんじだったよ」

  「そうか、収穫しゅうかくがありそうだな」

  そうはな二人ふたりだが、まわりはかんさんとしている。会社かいしゃなくても、えんかくでセキュアに仕事しごとができるようになってからというもの、通勤つうきん手間てまいとつとにん仕事しごと会社かいしゃそともとめた。会社かいしゃのスペースはおおきくり、しゅっしゃした人間にんげん部署ぶしょわずかたまってせきいている。それぞれしゅっしゃ理由りゆう様々さまざまだ。ケンスケは家庭かてい以外いがいにそこにけば自分じぶん場所ばしょ用意よういされているという安心あんしんかんしかった。さくでひとたりがいアンディは、会社かいしゃ社員しゃいん会話かいわすることがたのしいそうだ。

  アンディは椅子いすすわったままこちらにせてこちらとかたみ、みみちしてきた。

  今日きょうひるユイとめしべるんだけど一緒いっしょかねぇ?」

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  「ひさしぶりだなあ、ユイ。く。場所ばしょ

  「このまえAIエーアイひろってきた記事きじってたみせ美味うまいらしい」

  「かった」

  昼休ひるやすみをらせるチャイムがるやいなや、アンディとしゃがいす。

  みせぐち端末たんまつをかざし、店内てんないはいると、おくのテーブルせきにはユイがさきすわっていた。

  「よっ、しゃちく諸君しょくん元気げんきにやってる?」

  人口じんこう減少げんしょう外国人がいこくじん労働者ろうどうしゃ積極的せっきょくてき導入どうにゅうだけでなく、副業ふくぎょう積極的せっきょくてき推進すいしんにまでおよんだ。自分じぶん時間じかんりしてはたらひとえ、企業人きぎょうじんという概念がいねんうすれつつある。会社かいしゃのこ同期どうきった。ユイもそうした副業ふくぎょう割合わりあいえた結果けっか会社かいしゃめた一人ひとりだ。

  おれらは一人ひとりひとしかあいせないんだよ。な? ケンスケ」

  「四〇よんじゅうぎてどくしんのおまえ同意どういもとめられたくねぇよ。ユイ、まえだって集団しゅうだん面接めんせつとき『この会社かいしゃしゃふうかれました。』とかってたじゃねぇか」

  「よくそんなむかしのことおぼえてるね。だって、いまほうかせげるんだもん。さっ、あいさつはそれくらいにして、さっそく注文ちゅうもんしよ。ここわたしたかったんだ」

  「今日きょうのおすすめは

  ケンスケはテーブルじょうかれたスピーカーにこえをかける。

  「今日きょう大和やまとどりがおすすめです。さかな大分おおいたさんのアジがはいっています」

  「んー、じゃあにくほうで。はん大盛おおもりで」

  スピーカーにしゃべりかけたところ、ケンスケの個人用こじんよう端末たんまつから女性じょせいこえがした。

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  旦那様だんなさま最近さいきんせっせい生活せいかつつづいておりますので、はん普通ふつうにしてはいかがでしょうか

  ケンスケの個人用こじんよう端末たんまつはいっている自分じぶんようAIエーアイ助言じょげんをしてくる。

  「いいの、大盛おおもりで」そう端的たんてきげる。

  「うわー、ケンスケってばおくさまいるのに自分じぶんAIエーアイに『旦那様だんなさま』ってばせてるわけ? ちょっといちゃうなー」

  ユイがふざけて軽蔑けいべつするような眼差まなざしをけてくる。その様子ようすをみたアンディもポケットから上機嫌じょうきげん表情ひょうじょう自分じぶん端末たんまつし、ひょろりとした体格たいかくあかいジャケットを男性だんせいうつった画面がめんせつけてきた。どこかでたことのあるキャラクターを真似まねしてつくられているようだ。

  おれAIエーアイに『とっつぁん』ってばせてるぜ」

  それはそれでどうかとおもう、とユイはたんそくしてから、自分じぶん端末たんまつった。画面がめんつめ、一瞬いっしゅん表情ひょうじょうゆるめたのちに、自慢じまん二人ふたり画面がめんせびらかせてきた。

  「やっぱ、やしをくれるのは動物どうぶつでしょ。てよこれ、うちのワンちゃん。かわいいんだ」

  ユイがしめした画面がめんには、銀色ぎんいろ毛並けなみで凜々りりしいかおちをしたいぬうつっていた。いまだれもが端末たんまつ自分じぶんようAIエーアイち、自分じぶんおもどおりにカスタマイズされている。ケンスケのAIエーアイ半日はんにちかけてキャラクリエイトしてつくげたものだ。

  自分じぶんたちのAIエーアイ紹介しょうかいえたところで、各々おのおの端末たんまつをテーブルのうえき、かいわせる。こうすることで、AIエーアイどうも「会話かいわ」をはじめるのだ。会話かいわ」といっても、たとえばアンディのAIエーアイがこのみせ記事きじひろってきたように、それぞれのAIエーアイぬし趣味しゅみこうわせてひろってきた記事きじ情報じょうほう端末たんまつどう無線むせん通信つうしん共有きょうゆうして、話題わだい流行りゅうこうトレンドの情報じょうほう並列化へいれつか高度化こうどかしている。それでいてぬしのパーソナルな情報じょうほうらさないところはしっかり設計せっけいされている。

  こうしているあいだ厨房ちゅうぼうではロボットたちが料理りょうりつくっている。このみせでは、家庭的かていてき料理りょうりから一流いちりゅうシェフがつくるようなレシピまで、さまざまなメニューをまえ精密せいみつ動作どうさ再現さいげんするAIエーアイコックが調理ちょうりしている。

  「でさ、このまえおいじっ彼女かのじょれてくるって連絡れんらくがあってさ」

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  料理りょうりはこばれてきたところで、ユイがパシャパシャと写真しゃしんりながらしてきた。

  「でね、ってみたらその彼女かのじょがヒューマノイドだったわけよ。もう、これがおい趣味しゅみぜんかいあね彼女かのじょ紹介しょうかいしてきたとき状況じょうきょういたんだけど、あねだんこしかしてたって」

  「へぇー、いまわかってそこまでてるの

  ケンスケがおどろきのこえげる。

  「ああ、そういえばうちの会社かいしゃわかもそういういるとかいたわ。あんまり公言こうげんはしてないみたいだけど」

  アンディがふとおもしたようにらした。

  「マジ

  ケンスケはおもわずアンディのほういてたずね、アンディも「マジマジ」とおうじた。

  料理りょうりわったころに、端末たんまつがメッセージのじゅしんらせた。宛名あてなてみるとつまのサトミからである。

  【キヨタカとハルカの予防よぼうせっしゅやくわすれてないよね】

  わすれてた)

  「すまん、ちょっとせきはずす」

  しょくのコーヒーをたのしむ二人ふたりことわってからテーブルをはなれ、端末たんまつからAIエーアイす。

  「キヨタカとハルカのインフルエンザの予防よぼうせっしゅやくたのむ。できれば今度こんどにちちか病院びょういんで。あと、役所やくしょへの医療費いりょうひ助成じょせい申請しんせい一緒いっしょたのめるか

  「旦那様だんなさまぎょのままに。個人こじんIDアイディー情報じょうほう役所やくしょ医療いりょう機関きかん提供ていきょうしてよろしいですか」

  「もちろん」

  ここまでやっておけば、あとはAIエーアイがバックグラウンドで役所やくしょのシステムにアクセスし、住民票じゅうみんひょう情報じょうほう取得しゅとくして申請しんせい様式ようしきめてくれる。

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必要ひつよう作業さぎょう最後さいご承諾しょうだくボタンをすだけだ。そのため、役所やくしょ窓口まどぐちいま基本的きほんてき二四にじゅうよ時間じかん三六五さんびゃくろくじゅうごにちアクセス可能かのうで、わざわざ出向でむ必要ひつようい。最後さいご役所やくしょったのがいつだったか、記憶きおくがおぼろげですらある。これでサトミにおこられることもないと、一安心ひとあんしんしてせきもどると、二人ふたりはコーヒーをし、みせ準備じゅんびをしていた。

  「すまん、たせた」

  「じゃ、よっか。流石さすがみとめざるをないあじよね。るくらいはロボットならおのものとおもってたけど、デザートのケーキのスポンジのきめこまかさとクリームのなめらかさ。あれは普通ふつう人間にんげんには真似まねできないわ」

  「おじょうさま本日ほんじつのランチのせっしゅカロリーは八〇〇はっぴゃくキロカロリーでございます」

  会話かいわさえぎるように、ユイの端末たんまつがややしぶめのこえらせてくれた。どうやらユイが写真しゃしんをしきりにっていたのは、記録きろくよううよりはせっしゅカロリーの計算けいさんをしてもらっていたようで、その結果けっかたようだ。

  「『おじょうさま』とか、ユイ、まえたいがいだな」

  ケンスケはアンディとわせてしょうした。ユイはややバツがわるそうにしきりにれていた。

  三人さんにんみせ出口でぐちまでのすこなが廊下ろうかあるく。かべにはモンサンミシェルの写真しゃしん投影とうえいされており、フランスのまちみをまんきつしていると、ピッと電子でんしおんる。このエリアは支払しはらいエリアであるが、それを意識いしきさせることなく通過つうかすることで自動的じどうてき決済けっさいおこなわれる仕組しくみだ。支払しはら内容ないよう自分じぶん端末たんまつ表示ひょうじされるようになっている。現金げんきん端末たんまつれきのこさないでプレゼントなどの「秘密ひみつにしたい消費しょうひ」をしたいときに使つかうようになった。いまは、そろそろるサトミの誕生日たんじょうびにサプライズをするべく、現金げんきんにする機会きかいがあるごとにこっそりめている。

  ユイとわかれてから移動いどうちゅう端末たんまつ確認かくにんするとさきほどの予防よぼうせっしゅ申請しんせい様式ようしきがもう出来できていた。問題もんだいなさそうなので承諾しょうだくボタンをす。サトミにも「やっておいたよ」と用件ようけん端的たんてきつたえておいた。

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  会社かいしゃもどると、面接めんせつようAIエーアイからさきほどの面接めんせつしゃたちの評価ひょうかわったとの通知つうちていた。

  「三人目さんにんめかた優秀ゆうしゅうであると判断はんだんしました。これまでのキャリアにもいつわりがないようですし、冷静れいせいさと自信じしんれました。蓄積ちくせきされた過去かこ面接めんせつしゃのビッグデータからも上位じょうい三割さんわり能力のうりょくゆうしているとおもわれます。あとは一人目ひとりめかた五人目ごにんめかたでしょうか。三人さんにんとも採用さいようしてもよろしいかとおもいます」

  AIエーアイ面接めんせつしゃのバイタルや視線しせんうごき、こえ調子ちょうしわせて評価ひょうかしているようだ。

  「一人目ひとりめよりは四人目よにんめほうがコミュニケーションもかみっていたとおもうんだけどな」

  AIエーアイにメッセージで反論はんろんしてみる。

  「四人目よにんめかたわるくはないのですが、ややいさあしぎるきらいがあるとかんがえます。また、わたしかんがえるこのプロジェクトの重要性じゅうようせいかんがえると、情報じょうほう整理力せいりりょく分析力ぶんせきりょくにおいて、すこちから不足ぶそくかんがあるとおもいます」

  そんなやりとりをつづけ、

  「じゃあ、報告ほうこく資料しりょうをまとめておいてくれる?」

  AIエーアイとのメッセージをえる。

  「あとはAIエーアイさまぎょのままに、うえ判断はんだんあおぎますか」

  ただちに、AIエーアイ最終的さいしゅうてき採用さいようあんをまとめ、上司じょうしへの報告ほうこくおこなったが、AIエーアイ判断はんだんにはとくはさむつもりはないようで、この採用さいようあんすすめることとなった。

  その面接めんせつしゃへの通知つうち準備じゅんび採用さいようしゃ契約けいやく手続てつづき準備じゅんびすすめているとそらあかねしてきた。時計とけいると一六じゅうろくはんぎだ。今日きょうあさがた勤務きんむをしたので、ここらで仕事しごとげることにする。

  いえ到着とうちゃくし、玄関げんかんけると、ハルカが「パパおかえり」といいながら出迎でむかえてくれる。

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ハルカは昨晩さくばんからねつして今日きょう保育園ほいくえんやすんだがもう元気げんきいっぱいの様子ようすだ。

  夕食ゆうしょくそして家族かぞくとのだんらんのあとテーブルにはケンスケとつまのサトミ、そしてAIエーアイロボットのアイコ。夫婦ふうふのおたがいのごととして、大事だいじはなしときにはアイコをどうせきさせるようにしている。アイコも積極的せっきょくてき発言はつげんはしないが、発言はつげんもとめると客観的きゃっかんてきなコメントをしてくる。

  今日きょうのおだいいえ購入こうにゅうである。いま部屋へやはハルカがまれるまえからりているものであり、ハルカもだいぶおおきくなってぜまになってきたということで、そろそろいえ購入こうにゅう視野しやはいってきている。

  「自分じぶんようしょさいがあったら、いえ仕事しごとするようになって家族かぞくごす時間じかんがもっととれるようになるとおもうんだけどな」

  家族かぞく会議かいぎ冒頭ぼうとうぼそっと要望ようぼうげてみる。

  「はいはい。そういってやったとこたことないわよ」

  「いやいや本当ほんとうにそうおもってるんだ。こんなにもAIエーアイ仕事しごと代替だいたいする時代じだいになると、わかいときには想像そうぞうつかないくらい自分じぶん余裕よゆうてきて、かんがかたわってきたって実感じっかんするよ」

  ケンスケの言葉ことばいて、サトミはうれしくおもった。その気持きもちは素直すなおせずにサトミは会話かいわつづける。

  「でもまずはハルカのしつでしょ、それからもうすこしリビングをおおきくしたいかな。あ、そうそう、あとはアイコがひろいシンクのついたシステムキッチンしいってってたわよ」

  「うそけ」

  「そんなことないわよ。もっといいキッチンならアイコも料理りょうり美味おいしくつくれるわよね?」

  「

  「ほら。アイコだって反応はんのうしないじゃないか。まあいいや。部屋へやのことは今後こんごめていくとして、結局けっきょくのところうちがいくらくらいいええそうかさんしてみるか。アイコ、たのむよ」

  「わかりました。それでは、この一年いちねん収入しゅうにゅうおよ購入こうにゅうれき指定してい銀行ぎんこうそうしんしてよろしいでしょうか」

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  「ああ、もちろんだよ」

  アイコが自分じぶんとサトミの端末たんまつからそれぞれの購入こうにゅうれきを、個人こじんIDアイディーから収入しゅうにゅう情報じょうほう取得しゅとくしてまとめて指定してい銀行ぎんこう融資ゆうしシステムにそうしんする。最近さいきんでは収入しゅうにゅうだけでなく、おおきな買物かいもの中心ちゅうしん支出ししゅつ提出ていしゅつすることになった。自分じぶんがちゃんとした経済けいざい活動かつどうおこなっている人間にんげんである」ということをしめすために、まつ支出ししゅつ情報じょうほうであっても銀行ぎんこう提出ていしゅつし、融資ゆうしAIエーアイ判断はんだんしてもらうのだ。融資ゆうし可能かのうがく判定はんていけて、ひとまず今日きょうのところは会議かいぎ終了しゅうりょうアイコにもさげな物件ぶっけんをピックアップしておくようにおねがいし、しんしつかった。

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