第三章だいさんしょう  友達ともだち

このしょう登場とうじょうする未来みらい姿すがた

ぜん自動じどう農村のうそん

農業のうぎょうなどのなりわいはIoTアイオーティー・ドローン・ロボットがにない、人手ひとで不足ぶそく高齢者こうれいしゃ負担ふたん解消かいしょう生産性せいさんせいたかまり、景観けいかん維持いじ

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パノラマ教室きょうしつ

かべ天井てんじょうつくえがディスプレイになり、プログラミングで作成さくせいしたアプリのデモも表示ひょうじVRブイアールではいろいろな地域ちいき時代じだい体験たいけん学習がくしゅう可能かのうに。

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  「キヨタカさん、しょう時間じかんです」アイコのこえでキヨタカはます。

  「キヨタカ、おはよう。もうあさごはんできてるぞ」

  リビングにくと、ちちいところにたとわんばかりのかおをしてこえをかけてきた。

  あさからなんだよ、都合つごうわるいことでもあったのか)とおもいながらも「おはよう」と一言ひとことってキヨタカはせきについた。

  「さて、今日きょうのニュースはっと」

  朝食ちょうしょくくちにしながらキヨタカはおもむろに新聞紙しんぶんしひろげた。

  「またかみ新聞しんぶんんでるのか」

  毎朝まいあさアイコのニュースダイジェストをいているケンスケはそうう。

  「このかみしつかんがいいんだよ。しつかんが」

  まるでちがいのかるおとことでもいたそうなかおだ。平成へいせいいや、昭和しょうわ時代じだい資料しりょうでもたのだろうか。だれ影響えいきょうかはからないが、最近さいきんキヨタカはむかし文化ぶんかえてれ、たのしむことがマイブームとなっている。

  「ハンカチはちましたか? わすものはありませんか? 今日きょうはおひるからさむくなるので一枚いちまい羽織はおっていったほうがいいですよ?」

  いえようとするキヨタカにアイコがたずねる。

  相変あいかわらずおせっかいだなぁ、大丈夫だいじょうぶいまてるジャケットが自動じどう温度おんど調節ちょうせつしてくれるから。ハンカチもったし」

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  キヨタカはアイコの世話せわきにもれた様子ようすこたえた。

  「キヨタカさん、今日きょう学校がっこうでプログラミング大会たいかい

  「じゃ、ってきます!」

  アイコがはなしかけるのをあえてさえぎるようにいながら、くつのかかとをつぶしながらあしいえた。

  キヨタカの学校がっこういえからあるいて一五分じゅうごふんほど。大人おとなたちが会社かいしゃかない選択せんたくをするようになったことにおうするように、最近さいきんでは学校がっこう毎日まいにち登校とうこうしないどもたちもすこしずつあらわれ、社会的しゃかいてきにも許容きょようされるようになってきている。登校とうこうしないことに反対はんたいするひとたちもいるが、教室きょうしつない自身じしんのホログラムを登場とうじょうさせれば、実際じっさい登校とうこうしているかのようにコミュニケーションをることもできる。こうした仕組しくみが導入どうにゅうされたことで、むかしだったらうことのなかったかもしれないどう学年がくねんどもたちとも交流こうりゅうひろがってきている。

  しかし、いくら便利べんりになっても、キヨタカは学校がっこうくのをやめないがしている。何度なんどかバーチャル登校とうこうためしたことはあるが、学校がっこうく」という行為こういにより勉強べんきょうのスイッチがはいるタイプらしく、バーチャル登校とうこうをしたはいまいち授業じゅぎょう集中しゅうちゅうできなかった。その様子ようすて、サトミが「おとうさんの遺伝いでんね」とわらっていたのをキヨタカはおぼえている。

  キヨタカがこうもん手前てまえあたりにまでころミチヲの姿すがたえた。おな学年がくねんおとこで、キヨタカの親友しんゆうだ。

  「おう! いよいよ、今日きょうだな! おまえつためにめちゃくちゃ準備じゅんびしてきたんだぜ。絶対ぜったいけないからな!」

  ミチヲにるとみつくようにはなったが、ミチヲの表情ひょうじょうは、あさひかりらされながら一層いっそう自信じしんちているようにえる。

  「ふふふ、おはよう。今回こんかいちをゆずるつもりはないよ」

  今日きょう校内こうないひらかれるプログラミング大会たいかいプログラミングが小学校しょうがっこうひっしゅうとなって二十年にじゅうねんちかくがち、幅広はばひろ世代せだいにもプログラミングが浸透しんとうしてきた。

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高齢こうれい世代せだいでも、地域ちいきのサポーター制度せいど活用かつようして積極的せっきょくてきにプログラミングをまなひとえ、プログラム開発かいはつソフトを使つかって自分じぶん使つかいたいアプリがつくれる「だれでもプログラマー」の時代じだいだ。

  ミチヲはほとんどの勉強べんきょうにおいてほか生徒せいとおくれをとっているが、プログラミングにおいてはたぐまれなる才能さいのうゆうしていた。キヨタカはいわゆるしゅうさいタイプで、勉強べんきょうにおいてもつね学年がくねん一位いちい成績せいせきほこっていた。そんなキヨタカでもプログラミングについてはミチヲにたい勝利しょうりおさめたことは一度いちどもなかった。プログラミング大会たいかいはミチヲに挑戦ちょうせんする、ちにった機会きかいなのだ。

  教室きょうしつはい着席ちゃくせきするなり、

  「ハイ、トム。今日きょうもよろしくね」

  キヨタカが、専用せんよう学習がくしゅう補助ほじょようAIエーアイすと、端末たんまつすみひとかおのアイコンがうつされた。トムというのは、パーソナルTAティーエーTeachingティーチング  Assistantアシスタント)のあいしょうである。社会しゃかい理科りかプログラミングの授業じゅぎょうえ、算数さんすう国語こくご英語えいごむずかしくなった三年生さんねんせいからは、パーソナルTAティーエー各生徒かくせいとあたえられ、生徒せいとしゅうじゅく度合どあいにおうじた、きめこまかな学習がくしゅう補助ほじょ実現じつげんされている。たとえば、社会しゃかい勉強べんきょう理解りかいいついていないところがあれば、トムが、VRブイアールシステムを使つかって、世界せかい地形ちけい過去かこ風景ふうけいなどを体感たいかんさせてくれる。トムは、キヨタカの先生せんせいであり、コンシェルジュのような存在そんざいでもある。

  キヨタカのようにパーソナルTAティーエー今日きょう大会たいかいについてわせるもの和気わき藹々あいあいざつだんわしリラックスするものこくギリギリでんできていきととのえているものチャイムがったと同時どうじにゅうしつしてきた先生せんせい言葉ことばはっすると、あさ教室きょうしつ若干じゃっかん緊張きんちょうびる。

  「はーいみんなおはよう。さっそくだけど、今日きょうのプログラミング大会たいかいについて説明せつめいはじめるぞー」

  ひそひそごえざつだんがまだこえる、けんそういんのこ教室きょうしつではあったが、キヨタカのせんにらけるかのように先生せんせい一直線いっちょくせんで、ちょっかいをそうとしたクラスメートも躊躇ためらうほどだ。

  「今日きょう大会たいかいについては、まえにも説明せつめいしたとおり、みんなには色々いろいろなプログラムパッケージを使つかって、独自どくじのアプリをつくってもらう。

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その結果けっかについては、作成さくせいしたプログラム自体じたいしつきそう『技能ぎのう評価ひょうか』と完成かんせいしたアプリを使つかった感動かんどう面白おもしろさをきそう『相互そうご評価ひょうか』の点数てんすう合計ごうけいでランキングにするぞー。みんながんばるように」

  プログラミング大会たいかいは、ねん一回いっかい地元じもと大手おおてAIエーアイロボットメーカーが将来しょうらい技術者ぎじゅつしゃ育成いくせい目的もくてき開催かいさいしている。キヨタカのかよ学校がっこうではこれに全校ぜんこうをあげて参加さんかしている。このメーカーは、AIエーアイ技術ぎじゅつロボット技術ぎじゅつかんする幅広はばひろ事業じぎょう手掛てがける一大企業いちだいきぎょうで、一〇年じゅうねんほどまえからは、農業のうぎょう分野ぶんや進出しんしゅつし、のうじょう牧場ぼくじょう運営うんえいかか自動化じどうかシステムの導入どうにゅうについて注目ちゅうもくあつめていた。

  さんげつほどまえに、社会科しゃかいか見学けんがくでこのメーカーの最新さいしん技術ぎじゅつ導入どうにゅうしたのうじょうったさいのこと。

  「みなさん、これが『ぜん自動じどう農村のうそん』です。我々われわれさい先端せんたんAIエーアイ技術ぎじゅつとロボット技術ぎじゅつ使して、ほとんどすべての作業さぎょう機械化きかいか実現じつげんしています」

  「農業のうぎょうは、第一次だいいちじ産業さんぎょうといって、歴史れきしがとてもなが生業せいぎょうなんだ。時代じだいとともに第一次だいいちじ産業さんぎょう従事じゅうじするひとって後継あとつ不足ぶそく深刻しんこくになったけれど、こうしてテクノロジーで解消かいしょうされたんだぞ」

  担当者たんとうしゃつづいて先生せんせいもうわけ程度ていど説明せつめいするが、眼前がんぜんひろがる光景こうけいにみんなこころうばわれている。キヨタカやミチヲも例外れいがいではない。

  「おいおいおい、まじかよすげぇなミチヲ」

  「おう、いたことはあったけど、ほんとにぜん自動じどうだ」

  二人ふたり圧倒あっとうされた。

  キヨタカたちが見学けんがくしたものだけでも、肥料ひりょう散布さんぷようドローンの散布さんぷりょう飛行ひこうルートをAIエーアイ使つかって最適化さいてきかしたり、個々ここ作物さくもつせいじゅく度合どあいにあわせた管理かんり自動じどうのうによるこううん収穫しゅうかくのほか、こまかい作業さぎょうもロボットがおこなう。地域ちいき産業さんぎょうがひとつまるごと自動じどうおこなわれている。学校がっこうはなしいていたが、規模きぼおおきさをはだかんじることで印象いんしょうわった。見学けんがくだけでなく、農薬のうやく散布さんぷドローンの飛行ひこうプログラムを最適化さいてきかする体験たいけんおこない、それ以来いらいキヨタカにとってぜん自動じどうのうじょうのような大規模だいきぼAIエーアイシステムをつくることはあこがれになった。

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  なんでも、三年さんねんまえには生徒せいと授業じゅぎょうつくったアプリのアイデアが企業きぎょう採用さいようされ、そのアイデアをベースにサービスされたといううわさもある。

  おれのアプリも、その先輩せんぱいみたいに企業きぎょう採用さいようされたりしないかな、なんてな)

  自信じしんがあるからこそ期待きたいせずにはいられない。ミチヲに勝利しょうりし、なおかつ、大人おとなみとめるアイデアをしたとなれば、自分じぶんはどれだけおおきなしょうさんけるだろうか。大会たいかいいまにもはじまろうとするとき、キヨタカはにやけたかおをしていた。

  作業さぎょう開始かいしげるブザーがった。作業さぎょうにとりかかるまえに、今日きょうやるべきことをあたまなか整理せいりした。セキュリティチェックは絶対ぜったいわすれないこと、とくかせ作業さぎょう開始かいしした。

  午前ごぜん一一時じゅういちじ作業さぎょう時間じかん終了しゅうりょうらせるブザーがる。やれることはやったとキヨタカはおもった。つづいて相互そうご評価ひょうか時間じかんあとはこのアプリをみんながどうかんじるかだ。

  「みんな、アップロードはできたか。では、相互そうご評価ひょうかうつるぞ。評価ひょうかはあくまでみんながおこなう。それぞれのまったアプリを端末たんまつにダウンロードして体験たいけんしてみよう。体験たいけんとおしてかんじたこころ躍動やくどう感心かんしんを、端末たんまつ感知かんち数値化すうちかし、評価ひょうか基準きじゅんとなる点数てんすう『いいね』として加算かさんされる。最終的さいしゅうてきには、AIエーアイ評価ひょうかする技能ぎのう評価ひょうか点数てんすうとこの相互そうご評価ひょうかによる『いいね』の合計ごうけいもっとおおひと今年度こんねんど優勝者ゆうしょうしゃだ。簡単かんたんだろ?」

  人間にんげんこころうごきをのうから感知かんちする技術ぎじゅつ現代げんだいではひろ使つかわれている。からだ正直しょうじき」とはよくったものだ。

  「それじゃあ評価ひょうか時間じかん一時間いちじかん開始かいし!」

  キヨタカもさっそくミチヲが作成さくせいしたアプリをダウンロードし、プレイしつつプログラムのコードを確認かくにんしてみる。

  「すごい。さすがだな」おもわずキヨタカのくちから感嘆かんたんこえれた。

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  おれのアプリで、てるだろうか

  自分じぶんつくったものはこれ以上いじょうのものだっただろうか。一年間いちねんかんミチヲにつために準備じゅんびすすめてきた、それでも不安ふあんにならざるをなかった。それほどまでにミチヲのアプリがすぐれているものであるとかんじられた。まさにキヨタカがけを意識いしきしたとき教室きょうしつ前方ぜんぽうにランキングボードが表示ひょうじされた。まずはプログラムがちゃんとうごくのか、また、どれだけ実用的じつようてきなプログラムになっているかをAIエーアイ評価ひょうかする技術ぎじゅつ評価ひょうか結果けっかだ。一位いちい……ミチヲ。キヨタカはいで二位にいそして、相互そうご評価ひょうかはまだ進行中しんこうちゅうで、リアルタイムで数値すうちわっていく。現在げんざいはミチヲが一位いちいだが、二人ふたりの「いいね」はきんきそっている。技能ぎのう評価ひょうかではけたが、「いいね」の結果けっか次第しだいでは逆転ぎゃくてんもある。最後さいごまで結果けっかからない。

  (たのむ。たの

  いのるようなこころちで、のこりの時間じかんほか生徒せいと作成さくせいしたゲームをれた。

  しかし、結局けっきょくミチヲとキヨタカの得点とくてんちぢまることはなかった。

  (またけた

  今度こんどこそ、つよおもつづけてきたキヨタカにとってこの結果けっかはなかなかにこたえるものだった。

  すっかりらくたんしてしまったキヨタカはひっそりと家路いえじについた。

  「ただいま

  キヨタカはだれにも気付きづかれないよう、しつかおうとした。が、玄関げんかんくつぎ、かおげるとアイコがいた。

  「おかえりなさい、キヨタカさん」

  アイコからプログラミング大会たいかいのことをかれるまえにそのりたかった。

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  「どうしたのですか。からだ調子ちょうしわるいというわけではなさそうですね」

  ウェアラブルデバイスによってリアルタイムでキヨタカのバイタルデータを把握はあくでき、平常時へいじょうじのキヨタカのこえ調子ちょうし表情ひょうじょうをデータとして認識にんしきしているアイコにはキヨタカがんでいることがかってしまう。

  「大丈夫だいじょうぶ大丈夫だいじょうぶだから」

  と、キヨタカがしつあしけたつぎ瞬間しゅんかん背後はいごからアイコがやさしくきしめてきた。

  キヨタカは、はっとおどろいてからだ強張こわばらせた。しかし、すぐにこらえていたものがあふれだし、からはおおつぶなみだながれた。

  「くそっ、うぅうぅぅ

  本当ほんとうだれかになぐさめられたかったのかキヨタカにはからなかったが、そのときだけはただ、アイコの配慮はいりょあまえることにした。

  一頻ひとしきいたあとキヨタカはアイコにれいい、しつもどった。

  「はぁ今日きょう散々さんざんだったな」

  「コンコン」

  すこって、部屋へやのドアがノックされる。

  「はいぃ!」

  ノックのおとおどろき、キヨタカはおもわずこえ裏返うらがえってしまった。ノックの犯人はんにんはアイコだった。

  「アイコ!ど、どうした

  「キヨタカさん、夕食ゆうしょくができました。それと

  キヨタカにかってアイコはつづける。

  わたしは、キヨタカさんにとって『おねえさん』になれていますか?」

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  アイコのくちからはっされた言葉ことばはキヨタカの想像そうぞうだにしないものだった。

  「へねえさん  なんだそれそんなのらないよ! もうって!」

  キヨタカはそうはなち、アイコを部屋へやからした。突然とつぜん「おねえさん」って、なんなんだよ。

  その今度こんどはサトミがびにて、キヨタカは渋々しぶしぶダイニングへかった。はじめはまずくかんじていたキヨタカであったが、ケンスケとハルカの相変あいかわらずのペースにせられ、気付きづけばいつもの食卓しょくたくとなっていた。

  そのばん明日あした学校がっこう準備じゅんびをしていたキヨタカは、学校がっこうからはいしんされている情報じょうほうもとにアイコがまとめたスケジュールをて、ディベートのテストがあることをおもした。

  「あぁ、いけない。ディベートの題材だいざいあたまれておかないと」

  ディベートのテストは、りつろん相手あいてチームへの質問しつもんかぎられた時間じかん検討けんとうし、ディベートをおこない、AIエーアイ公平こうへい評価ひょうかくだす。

  「明日あしたのテーマは『ねこがたロボットは少年しょうねんにとって家族かぞくか』だったよな。明日あした議論ぎろんのために必須ひっす知識ちしきだけは復習ふくしゅうしておくか」

  キヨタカはおもむろにある機械きかいした。ヘッドギアとヘッドホンが一体化いったいかしたような形状けいじょうのその機械きかいは「ぐっすり学習がくしゅう」。そののとおり、まえあたまれたい事柄ことがらのテキストデータまた音声おんせいデータをセットしておくことで、すいみんのう状態じょうたいはかりながら、ていてものう外部がいぶ情報じょうほうりやすい状態じょうたいのときを見極みきわめて、音声おんせい情報じょうほうをインプットしてくれるというしろものである。キヨタカも時間じかん余裕よゆうがあるときは、「ぐっすり学習がくしゅう」を使つかわず、るときはきてから勉強べんきょうすることをこころがけているのだが、今回こんかいのようにいざというときにはちょうほうするすぐれものだ。

  むかしは、勉強べんきょういつかないときはてつしている生徒せいともいたというからおどろきだよなぁ。すいみん時間じかんけずってもなにもいいことないのに

  などとつぶやきながらキヨタカは端末たんまつから明日あした題材だいざいとなるむかし名作めいさく漫画まんがのデータを「ぐっすり学習がくしゅう」にインポートし、機械きかい頭部とうぶにセットする。

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テストの準備じゅんびもこれで万端ばんたんそのまま意気いき揚々ようようとベッドにもぐり、ねむりにつこうとした。

  三十分さんじゅっぷんっただろうか、ねむれない。キヨタカのあたま今日きょうのアイコの言動げんどうかえす。

  「『おねえさんになれていますか』ってなんなんだ。なんでアイコがおれのおねえさんになろうとするのか理解りかいできないっての。いや、て。なんでおれはそもそもこんなにムキになっているんだ  なんなんだ、この気持きもまさか

  堂々どうどうめぐりしていたキヨタカの思考しこう一瞬いっしゅん停止ていしした。まさか。まさか、ということは、可能性かのうせいたったということだ。

  「まさかとはおもうが、おれアイコのこときになっちゃったのか  でも、それってどうなんだ  ヒトとロボットの恋愛れんあいってゆるされるのか  ダメだダメだ! こんなこと悶々もんもんかんがえていたら『ぐっすり学習がくしゅう』がうごいてくれないじゃないか。あの機械きかいすいみんしていないとうごいてくれないし。いや、でもあいっていうものは

  そのばんは、思考しこう堂々どうどうめぐりをしているうちに、気付きづけばねむりにちていたのだった。

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