兵十が、赤い井戸のところで、麦をといでいました。
兵十は今まで、おっ母と
「おれと同じ一人ぼっちの兵十か」
こちらの
ごんは物置のそばをはなれて、向うへいきかけますと、どこかで、いわしを売る声がします。
「いわしのやすうりだアい。いきのいいいわしだアい」
ごんは、その、いせいのいい声のする方へ走っていきました。と、
「いわしをおくれ。」と言いました。いわし
ごんは、うなぎのつぐないに、まず一つ、いいことをしたと思いました。
つぎの日には、ごんは山で
「一たいだれが、いわしなんかをおれの家へほうりこんでいったんだろう。おかげでおれは、
ごんは、これはしまったと思いました。かわいそうに兵十は、いわし屋にぶんなぐられて、あんな傷までつけられたのか。
ごんはこうおもいながら、そっと物置の方へまわってその入口に、栗をおいてかえりました。
つぎの日も、そのつぎの日もごんは、栗をひろっては、兵十の家へもって来てやりました。そのつぎの日には、栗ばかりでなく、まつたけも二、三ぼんもっていきました。