JANNET障害分野NGO連絡会 メールマガジン 第191号 7月号 2019年7月26日発行 ―目 次―  トピックス 1. -連載企画18最終回ー モンゴルで開催された初めての国際障害会議 〜第4回CBID-AP 2019〜 ウランバートル市における障害者の社会参加促進プロジェクト(DPUB) JICA専門家 千葉寿夫 2.第4回アジア太平洋CBID会議 〜分科会発表とワークショップからの学び〜 特定非営利活動法人 難民を助ける会[AAR Japan] プログラム・マネージャー 野際紗綾子 3.第4回アジア太平洋CBID会議に参加したら予想以上に盛況で驚きました 公益社団法人 日本理学療法士協会事務局 国際事業課 伊藤智典 4.RIアジア太平洋地域会議(マカオ)概要報告 公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 参与 上野悦子 インフォメーション 1. RI地域会議マカオ報告会 8月2日(金)15:00-16:30 2. 国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 イベント情報 1.「SDGsとわたしたちにできることー英語と日本語で考える国際協力ー」 2019年8月8日(木) 2.第7回 視覚障害に関するアフリカフォーラム開催 エチオピア・アディスアベバ 2019年10月7日(月)-11日(金) 3. 第24回アジア知的障害会議 ネパール 2019年12月2日(月)-6日(金) トピックス -連載企画18最終回- 1.モンゴルで開催された初めての国際障害会議 〜第4回CBID-AP 2019〜 ウランバートル市における障害者の社会参加促進プロジェクト(DPUB) JICA専門家 千葉寿夫         「第4回・地域におけるインクルーシブ開発・アジア太平洋会議(4th Asia-Pacific Community-Based Inclusive Development : CBID Congress 2019)」 が7月2日、3日にモンゴルの首都ウランバートルで開催されました。海外から200名、モンゴル国内から400名ほどの人たちが参加し、成功裏に終了することができました。 障害分野においてモンゴル政府が実施した始めての国際会議だったので、準備段階から関係者の戸惑いが多く、担当した労働社会保障省は本当に苦労したと思いますが、その苦労が報われた会議になったと思います。 我々「ウランバートル市における障害者の社会参加促進プロジェクト(DPUB)」は、2017年の準備会合からモンゴル政府を支援し、労働社会保障省と一緒にこの2年間を準備に費やしました。最初は腰の重かったモンゴル政府が、本格的に準備を開始したのは会議のわずか半年前。それまで会議開催は無理ではないかと心配ばかりしていましたが、それも杞憂に終わりました。 本会議はモンゴルの障害分野に何をもたらしたのでしょうか。 思うところは3つあります。まず、モンゴル政府が一丸となり準備を進めたことで、これまであまり障害問題を真摯に考えてこなかった行政機関に、障害問題を考えるきっかけを与えたことです。 特に今回は、首相が開催する会議となったので、すべての大臣が本会議を無視するわけには行かず、準備会合にも各省の事務次官が必ず出席していました。 次いで、海外からの参加者にモンゴルの障害分野を知ってもらえたことです。私自身も赴任前はモンゴルについて知らず、障害者の現状や社会保障制度については、ほとんど分かりませんでした。特に東南アジアや南アジアの人にとってモンゴルは馴染みが薄く、またモンゴル政府も積極的に国際的な情報発信をしていたわけではないので、モンゴルはある意味未知の国だったと思います。それが今回の会議を通し、多くのモンゴル人に触れ、障害者団体とも交流し、アクセシビリティの現状などを見て、モンゴルを理解してくれたと思います。 最後に3つ目は、モンゴル社会一般に大きなインパクトを与えたように思っています。モンゴルでも、障害問題はあまり社会に知られていません。以前、車椅子を使う中途障害者の方が、「モンゴルで車椅子を使っているのは自分だけだと思った」と述べていたように、障害者が街に出ることは少なく、学校にも職場にもほとんどいないのが現状です。しかし最近はそんな状況が徐々に変わりつつあり、またこの会議を通して多くのメディアに取り上げられ(TVのほぼ全チャンネルで放送されました)、社会への大きなアピールになったと思います。恐らく本会議は、会議に参加した多くの障害者にとっても有意義なものになったのではないでしょうか。 このように多くの成功を収めた会議になりましたが、それももう過去のことです。モンゴルの障害分野は、これから更にひとつギアを上げ、施策を実施していかなくてはなりません。 今秋には、障害者権利委員会に報告書を提出する予定ですし、またDPUBも2020年5月で終了しますので、最後にプロジェクトの取りまとめもしなければなりません。JICAプロジェクトが終わっても、モンゴル政府がしっかりと施策を進められる体制を構築する必要があります。だから最後まで活動にも気が抜けません。ただモンゴル政府はしっかりと権利条約の実施に向け努力をしています。 最後に、DPUBの活動報告を2018年2月から本メルマガに掲載させて頂きましたが、今回で最後となります。これまで活動報告を掲載頂いたJANNET様には本当に感謝しています。今後も、JICAウェブサイトやフェイスブックなどを通してDPUBは情報発信を進めていきますので、ぜひそちらを御覧ください。また皆様ともどこかでお目にかかれると幸いです。 Website:?https://www.jica.go.jp/project/mongolia/015/index.html Facebook:https://www.facebook.com/jicadpub/ DPUBフェイスブックページ(日モ)もぜひ御覧ください。 https://www.facebook.com/jicadpub/ 1. 第4回アジア太平洋CBID会議 〜分科会発表とワークショップからの学び〜 特定非営利活動法人 難民を助ける会[AAR Japan] プログラム・マネージャー 野際 紗綾子   第4回アジア太平洋CBID会議では、7月2日から3日にかけて多くの分科会発表が行われ、分科会によっては席が埋め尽くされ、大盛況なところも多く見受けられました。当会は、ミャンマーのヤンゴン事業とパアン事業の発表を行いました。ヤンゴン事業については、東京事務所の後藤裕子とヤンゴン事務所のスエ・スエ・ラインが、2000年より運営している障害者のための職業訓練校について、特に就労斡旋や同国における政策提言など、最近の動きを中心に発表しました。ミャンマーでは初となる企業向けの「障害者雇用の手引き」を現地団体とともに発行した報告については、会議終了後に関連団体から同手引きの世界版を製作したい、といったお話しをいただくなど、少なからずの反響が寄せられました。 パアン事業については、パアン事務所駐在員の安齋志保が登壇し、カレン州におけるCBR事業の事例を発表しました。障害者の80%が暮らすといわれる、地方における障害者の社会参加について、参加者の方々も真剣に報告を聞き、質問が寄せられました。これらの発表を通じて、当会から参加した職員らも、新しい知識を吸収すると同時に、ネットワークを広げることができ、大変有意義な機会となりました。 会議終了翌日の7月4日には、終日ワークショップが開催され、アジア太平洋CBR(CBID)ネットワークの役員に加えて、関連機関や財団の関係者30名程が参加しました。アジア太平洋地域におけるネットワークの構築や連携の可能性について議論を交わしました。日本からはJANNETの窓口として私が参加しました。東京で開催された第3回アジア太平洋CBID会議から約4年振りに再会した、同ネットワークのグーラム会長や事務局を務めたAPCDのソムチャイ氏が中心に、国や地域を超えたネットワークの必要性や重要性が再認識されました。マンパワーや予算等、ネットワークの運営につきものの課題も挙がりましたが、直接協議することで具体的な提案もあり、引き続き協力していきたいという思いを新たにすることができました。   3.第4回アジア太平洋CBID会議に参加したら予想以上に盛況で驚きました 公益社団法人 日本理学療法士協会事務局 国際事業課 伊藤智典   JANNET研修研究委員会からCBID会議に出席させていただきありがとうございました。第3回会議(東京)の開催が2015年、ボランティアスタッフの方々と一緒にお仕事をさせていただいてから丸4年と思い返し、感動もひとしおどころか、ふたしお位で約2倍です。 学会前日の7月1日午前、私はワークショップに参加しましたところ、アジア圏のNGOスタッフの方々が多い印象でした。みな積極的で、自己紹介も意見提示もいずれも時間通りに終わらない、あちあちほくほくの議論でした。午後は労働社会保健省主催のイベントに参加し、ウランバートル市における障害者の社会参加促進プロジェクト、障がい児の早期発見プログラム、アクセシブルな学校建設ほか、青年海外協力隊員の活動などをお聞きしました。こちらは地方自治体の障害担当などの方も多く参加されており、自らの地域活動に活かしたいなど、具体的な意見や要望も聞かれました。 学会初日にプログラムをみていましたら、2015年の東京開催のプログラムと比較すると開催日が1日すくない2日で企画されており、Plenary Session4つとConcurrent Sessionが3つ、それぞれ1ずつセッションが少ないことが分かりました。一方で主催団体がモンゴル政府、労働社会保健省、CBR AP Networkの3組織、共催はWHO、EU、国連ESCAP、DPUB、Leonard Cheshire、AIFO、APCD、UNICEF、CBM、Liliane Fonds、LINCなど非常に幅広いこと、また開会式の冒頭挨拶にモンゴル国首相が来てスピーチをするなど、国をあげての支援姿勢が強く感じ取れました。2015年のテーマにはPoverty Reductionが入っていましたが、今回のテーマにはCBIDを通じたSustainable Social Development and Economic Growthとの記載があり、Concurrent SessionにおいてもInclusive Economic Empowermentなどがちりばめられており、今回の会議では経済成長につながる諸活動についてさらにヒントを得ることができました。学会2日目の7月3日はフライトの都合上、閉会式前に空港に向かう必要がありましたが、午後のセッションでJANNETの活動報告会をさせていただきました。 ああ、まだ語りつくせませんが、これら詳細は2019年7月27日(土曜)に開催予定の報告会&座談会でご紹介いたします。多くのみなさまのご参加をお待ちしております。     4.RIアジア太平洋地域会議(マカオ)概要報告 公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会 参与 上野悦子   2019年6月26日から28日までマカオでRI(国際リハビリテーション協会)のアジア太平洋地域会議が開かれ、筆者は参加したので報告します。 【はじめに】 この会議は、RIが4年に一度アジア太平洋地域で開催していたもので、前回2002年の大阪での開催から17年振りに開催されました。主催はRIで、ホスト団体は前年に新たにRIの会員になった、障害児の家族の会であるFuhong Societyマカオでした。参加者は1,500人で、障害者リハビリテーションの専門職、障害者団体、国際協力を行う国際団体、地域で活動するNPO・NGOなど多彩でした。同時開催された福祉機器やアートなどの展示には一般を含めて6,000人が参加しました。開催にあたり香港のFuhong SocietyおよびRI関係者が大きな協力をしました。(写真は開会式の様子) 【会議概要】 基調講演は中国最大手IT企業アリババの会長Mr.Lijun Sun、国連ESCAP事務次長Mr.Kaveh Zahedi、RI会長Ms. Haidi Zhang(中国)の3人でした。全体会は14あり、分野は雇用、教育、障害児の親の会の活動紹介、国際的な動き(障害者権利条約、インチョン戦略、SDGs、防災、ICT等。分科会は1日目に9、二日目に8あり、分野は長期的政策、精神障害、雇用、ジェンダー、高齢化、家族、ICT, 早期療育など包括的にカバーされ、中でもCBRの分科会は全部で合計4つ開催されました。日本からは10名が全体会や分科会で発表しました。 最終日にはマカオ声明が採択され、マカオとベトナムの3人の若い障害のある人が交代で読み上げて紹介しました。また、次回のRIアジア太平洋地域会議は2023年にマレーシアで開催されることが発表されました。 本会議の前(6月23-25)にはプレ会議として、ICTに関するワークショップおよびウエブベースによる職業訓練のイベントがあり、2日目のDAISYトレーニングには日本障害者リハビリテーション協会から講師が2名派遣されました。 【所感】 会議にはアジア太平洋地域から障害のある人を含めて若い人たちの参加が目にとまりました。また次回開催地が発表されたことから確実に次につながると思われます。 マカオはポルトガル領だった名残を残す古い街並み、仏教寺院、カジノのあるホテル群など多彩な姿を魅せるところです。また中国本土や香港(中国)とのかかわりについてもこの会議をとおして垣間見ることができました。  ************************************************************************************** インフォメーション 1.RI地域会議マカオ報告会 8月2日(金)15:00-16:30 国際リハビリテーション協会(Rehabiligtation International:RI)は 、6月26日(水)〜 28日(金)アジア太平洋地域会議をマカオで開催。 RIは、1922年に設立された世界的な民間組織で、世界100カ国以上の障害者団体、 障害者サービス提供団体、政府組織、障害関係研究者、支援者などが加盟しています。当協会は日本の窓口です。本会議の報告会を開催します。 日時:2019年8月2日(金)15:00〜16:30 場所:戸山サンライズ(東京都新宿区戸山1−22−1)  参加費:無料 定員:40名 プログラム:15:00- 開会 15:05- 報告 報告者:松井 亮輔(公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会副会長・法政大学 名誉教授・RI日本ナショナルセクレタリー) 柴田 邦臣(津田塾大学 学芸学部 国際関係学科 准教授) 香山 千加子(元 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職員(国際アビリンピック事務局担当)) 上野 悦子(公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 参与) 15:55- 休憩 16:05- 報告 報告者:寺島 彰(公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 参与)  上野 悦子(公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 参与) 野際 紗綾子(AAR Japan[難民を助ける会]プログラム・マネージャー) 16:35- 質疑応答 17:00 閉会 2. 国連障害者の権利条約(UNCRPD)締約国情報 (関連サイト:http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/right.html) 署名国・地域数162/ 締約国・地域数 179 (2019年7月末現在) https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=IND&mtdsg_no=IV-15&chapter=4&lang=en イベント情報 1.「SDGsとわたしたちにできることー英語と日本語で考える国際協力ー」 2019年8月8日(木) アジアでSDGsの達成にむけて活動する認定NPO法人アジア・コミュニティ・センター21 (ACC21)にサマーインターンとして参画するアメリカ人学生(カリフォルニア大学バークレー校在籍)を囲んで、日本とアメリカ・両方の視点から国際協力の潮流をまなび、わたしたちにできることを一緒に考えませんか? <開催概要> 日時:2019年8月8日(木)18:30〜20:30(18:15開場) 場所:東京都新宿区新宿5-11-10朝日ビル2階(地図URL:https://bit.ly/2ZiYM6g) 定員:40人 参加費:1,500円 主催:認定NPO法人アジア・コミュニティ・センター21(ACC21) <お申込方法> 下記サイトにアクセスし、Peatixを通じてお申込みください。 http://ptix.at/py87zN ※Peatixを通じたお申込みにご不安のある方は、個別にACC21までご連絡ください。 <お問合せ先> 認定NPO法人アジア・コミュニティ・センター21(ACC21) 電話:03-3945-2615(平日10時〜18時) メール:info@acc21.org 2. 第7回 視覚障害に関するアフリカフォーラム開催 エチオピア・アディスアベバ 2019年10月7日(月)-11日(金) 2019年視覚障害に関するアフリカンフォーラム開催イノベーション、アクセス、生涯学習を通じたSDGs達成のための 会議登録方法など下記URLをご覧ください。 URL:https://www.perkins.org/get-involved/events/africa-forum 2. 第24回アジア知的障害会議  2019年12月2日(月)-6日(金)    この会議では、知的障害、発達障害のある本人の皆さんによる意見発表、体験の交流が活発に行われます。本人、支援者、家族、専門家や行政担当が一堂に会して、熱い想いと知恵を語りあい「共に生きる社会」を目指すものです。 大会期間:2019年12月2日(月)〜6日(金) 主催:アジア知的障害連盟 大会HP https://afid24.org/ テーマ:Equity, Equality and Inclusion of People with Intellectual Disability 言語:英語、日本語 参加者募集:旅行期間2019年11月30日(土)-12月8日(日)9日間 旅行地:ネパール・カトマンズ 旅行代金:東京、名古屋、大阪、福岡発 共に224,500円 ホテル:Hotel Yak&Yeti(大会会場と同じ) 申込み締切り:2019年9月25日(水) 企画:公益社団法人 日本発達障害連盟 http://www.jldd.jp/ 問合せ先:ティ・シィ・アイ・ジャパン株式会社 電話03-3580-6311(担当:小林) 編集後記 第4回アジア太平洋CBID会議が無事終了し、今号はその報告を中心にお届けしました。当初は開催準備に関わるさまざまなご苦労もお聞きしていたのですが、現地組織委員会やネットワークの尽力・協力により、各国から多くの参加者が集い、モンゴル国内には大きなインパクトを与えるとともに、参加者がこのテーマについて知見を深める絶好の機会となりました。会議の開催に関わった多くの方々に敬意を表したいと思います。 この間、現地モンゴルの情報について執筆いただいた千葉寿夫さんの連載は今回で最後となります。千葉さんはこの会議の盛り上げのため、日本にもモンゴルの関係者の派遣を調整いただき、JANNETとJICAプロジェクトの共催でフォーラムを開催したことは皆様もご記憶と思います。現地でのさまざまな準備にもご苦労されたことと思います。この場をお借りして改めて感謝を申し上げます。 7月27日にはこのCBID会議の報告会も開催され、私を含め会議に参加できなかった人たちと情報を共有するとともに、今後の取り組みにどうつなげるかを話し合いました。その内容は、次号以降でまたご報告できると思います。この会議を通じて学んだものを、今後の活動に生かしていきたいと思います。 (原田 潔/JANNET広報啓発委員) JANNET事務局では、会員の皆様よりメールマガジンに掲載する国際活動に関する情報を募集しております。団体会員様のイベント情報などありましたら事務局までご連絡ください。 JANNET障害分野NGO連絡会 〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1 公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会内 【JANNET事務局直通】 TEL:03-5292-7628 FAX:03-5292-7630 URL: http://www.normanet.ne.jp/~jannet/ 以上